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2. 著作物等に係る登録制度全般について

(1) 現行制度

○   我が国の著作権法は、権利の発生については無方式主義を採っており登録は権利取得の要件ではないが、権利の変動を公示するためやその他の特別な目的のため、以下の登録制度を設けている。

   1 権利の変動を公示するための登録(第三者対抗要件)
著作権の登録(第77条)
   著作権の移転又は処分の制限、著作権を目的とする質権の設定、移転等があった場合の当該事実の登録。

出版権の登録(第88条)
   出版権の設定、移転、変更等、出版権を目的とする質権の設定、移転等があった場合の当該事実の登録。

著作隣接権の登録(第104条)
   著作隣接権の移転又は処分の制限、著作隣接権を目的とする質権の設定、移転等があった場合の当該事実の登録。

2 その他の目的のための登録
実名の登録(第75条)
   無名又は変名で公表された著作物の著作者が、実名の登録を受けることができる。登録の効果として、実名の登録がなされている者が登録に係る著作物の著作者であるとの推定を受ける。

第一発行(公表)年月日等の登録(第76条)
   発行又は公表された著作物について、その最初の発行年月日又は公表年月日の登録を受けることができる。登録の効果として、登録原簿に登録された年月日に第一発行又は公表があったものとの推定を受ける。

創作年月日の登録(第76条の2)
   プログラムの著作物の著作者が、当該著作物を創作した年月日の登録を受けることができる。登録の効果として、登録原簿に登録された年月日に創作があったものとの推定を受ける。

○   著作物等に係る登録申請件数は、年間1,400件前後で推移しており、著作権等の取引や発行(公表)、創作の現状を考えると件数が多いとはいえない。現状では、著作物等に係る登録の申請を行うのは、登録によって得られる法的効果を必要とする者に限られており、例えば著作権の譲渡の登録(第77条)については、著作権の譲渡契約時に譲渡人による二重譲渡等の心配がなければ権利変動の効力を主張する必要が生じないので、登録申請が行われていないという状況がある。

(2) 検討の結果

○   著作物等に係る登録制度について、著作物流通促進の観点から、新たな登録制度創設の必要性などについて検討を行った。

1創作年月日の登録の対象となる著作物の拡大

○   プログラムの著作物に係る登録制度として、著作物の創作年月日の登録が設けられている。この制度は、プログラムの著作物は他の著作物と異なり、開発した企業等の内部において利用されたり開発を委託した特定のユーザのみが利用するなど、未公表のまま利用されることが多く、第一発行(公表)年月日の登録制度を活用できる場合が限定されていることから、プログラムの著作物に限り特別に設けられた制度である。

○   この創作年月日の登録をプログラムの著作物以外の著作物に拡大してほしいという要望がある。その背景には、創作年月日の登録の結果としての事実上の効果、すなわち登録に係る著作物の著作者が誰であるかを公示するという効果を期待するところがあると考えられる。

○   著作物の創作年月日の登録は、旧著作権法において認められていた著作年月日の登録制度と類似の制度であるが、現行著作権法が制定された際に、1著作年月日を証明することは実際上難しいこと、2第一発行年月日の登録制度の改善が図られるため制度を維持する必要性が低いこと等を考慮し、これを廃止したという経緯がある。

○   登録制度の活用状況、登録の効果等を総合的に勘案すると、現状において、現行制度創設時の理由を否定すべき特段の状況の変化は認められないことから、創作年月日の登録の対象となる著作物を拡大する必要性は乏しいと考えられる。

2登録原簿の調製

○   我が国では、e-Japan戦略等に基づき、電子政府構想を進めているところである。行政内部の電子化、インターネットを活用した電子申請、行政情報のインターネット公開・利用促進等の取り組みが進められていることから、登録原簿について帳簿をもって調製することとしている現行制度については、コンピュータ時代に合わせた検索しやすい媒体をもって調製できるように変更することが適当である。



(参考)著作権に関する登録申請件数の推移


    1:権利の変動を公示するための登録(第三者対抗要件)の申請件数の推移
表1:権利の変動を公示するための登録(第三者対抗要件)の申請件数の推移


2:その他の目的のための登録の申請件数の推移
表2:その他の目的のための登録の申請件数の推移



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