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2.著作物等に係る登録制度の在り方

1. プログラムの著作物に係る登録の実施主体について

(1) 現行制度

○   プログラムの著作物に係る登録については、プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律(プログラム登録特例法)により、文化庁長官が指定する者(指定登録機関)に登録事務の全部又は一部を行わせることができるとしており、その指定の基準について、文化庁長官が定める研修を修了した者が登録を実施すること、登録事務を適確かつ円滑に行う経理的基礎及び技術能力を有すること、民法第34条の規定により設立された法人(公益法人)であることなどを定めている。

○   指定登録機関にプログラムの著作物に係る登録事務を行わせることができるようにした理由は、

    1   プログラムの開発には、通常、高度な専門知識に加え、多大の時間、労力、費用が投じられるものであり、その経済的価値は非常に高いにもかかわらず、その複製は比較的容易であり、また、開発の実態は、他社にプログラムの製作を委嘱し、作成されたプログラムの著作権を譲り受ける場合も多いことから、プログラムの場合、登録により権利保全しておく必要性が他の著作物と比べて高いと考えられ、多くの申請が予想されるプログラムの登録事務について、それを適確かつ迅速に処理するためには、それに応じた相当の人的・物的条件を整備することが必要であること

2   著作権制度における登録は、申請書及びそれに伴う添付資料の内容が法令に定めた要件に合致しているかどうかを審査する形式審査であることから、中立性・公正性等を十分に保障し得る制度の下に登録事務を公益法人に行わせることは可能であり、むしろ行政の効率化という面から適切であると考えられたこと

などからであり、同時に指定登録機関の役職員への秘密保持義務の付与、みなし公務員規定の適用、登録事務規程及び事業計画の認可、役員又は登録実施者の選任又は解任の認可、登録事務の休廃止の許可など、公正的確な登録事務が確保されるよう必要な規定の整備が行われた。

○   このプログラム登録特例法に基づき、昭和62年1月、(財)ソフトウェア情報センターが指定登録機関として指定され、昭和62年4月から、プログラム登録事務の全部を実施しているところである。

(2) 規制緩和推進3ヵ年計画における提言

○   平成15年3月28日に閣議決定された、「規制改革推進3ヵ年計画(再改定)」では、民間参入の拡大による官製市場の見直しに関して、「プログラムの著作物の登録については、既に公益法人が指定法人として全面的に事務を行っているところであるが、当該事務を行わせることができる指定法人を公益法人に限定しないことも含め、当該事務の実施主体の在り方について、見直しを図る。」とされている。この計画の提言に基づき、プログラム登録事務の実施主体の在り方について検討を行った。

(3) 検討の結果

○   現行の指定基準では公益法人であることが要件となっている。本来国が行うべき登録事務を指定登録機関に行わせるためには、その中立性・公正性等が十分に保障されていなければならないことから、公益に関する事業を行う非営利の法人であり、主務官庁による設立の許可及び指導監督が行われる公益法人に限り指定できることとしたものである。

○   本来国が行うべき事務を他の機関に行わせるためには、どのような場合であっても、その機関の中立性・公正性等が充分に保障されるとともに、当該事務が適確に遂行される必要があることはいうまでもない。ただし、規制改革を推進する我が国政府の方針を踏まえ、この問題を考えた場合、
    1   一定の業務規制を行うとともに、定期的な検査等を的確に行えば、公益法人以外の機関であっても円滑な登録の実施は確保できると思われること

2   登録事務は形式的な事務であり、仮に円滑な登録を阻害するような業務の実施が行われたとしても、例えば、業務改善命令や指定登録機関の取り消し等の事後的措置によって、充分に申請者の利益が保護できると思われること

などから、公益法人要件を維持しなければならない積極的な理由は乏しいと考えられるので、公益法人要件は廃止することが適当である。なお、公益法人要件を廃止する際には、登録事務の円滑な実施を確保するための方策等について検討する必要がある。

○   また、指定登録機関制度を廃止し、一定の要件を備えた法人について登録制として、当該登録機関が著作権の登録事務を行うという考え方もあるが、著作権の場合、

    1   他の知的財産権のような権利発生要件の登録制度ではなく、不動産登記における保存登記のような制度がないため、全ての著作物等が登録されているわけではないこと

2   権利変動の登録のみならず、第一発行(公表)、無名・変名での公表、プログラムの著作物の創作など、ある事実が生じたときにそのことを公示するための登録制度があるため、登録の継続性がない(例えば、著作権者が著作権の譲渡登録をした後に、著作者が実名の登録をすることもできる)こと

などから、仮に多数の登録機関が存在して、プログラムの著作物に係る登録事務を行うこととなると、同一の著作物が複数の機関に登録されることのないよう、申請しようとする著作物等が既に登録されているかどうか確認する必要が生じること等から、利用者等の事務手続きは煩雑なものにならざるを得ない。また、ネットワークを構築し複数機関の登録を一元化することにより問題を解決することも考えられるが、一定の要件さえ備えれば多数の登録機関が存在しうることになると、このようなネットワークを整備・維持するための経費の負担が問題になるので、当面は指定登録機関制度を維持すべきであると考えられる。



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