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5. まとめ

○   契約流通小委員会は、平成14年度及び本年度の検討結果を踏まえ、著作物等の利用許諾契約における利用者の保護について、次のように提言する。

    1   利用者保護については、破産法・民法等の現行法の適用、利用許諾契約及び著作権等の譲渡契約における契約条項の改善等により相当程度解決できると考えられるので、今後も関係者においては、現行法の適用や契約による利用の継続の方法について調査研究を進める必要があるが、著作物等の流通の促進に伴い、今後著作権等の譲渡取引等はますます多くなると思われるので、利用秩序に関する基盤整備の一環として利用者保護の制度整備を図ることが望ましい。

2   制度整備に当たっては、破産時における破産管財人の利用許諾契約の解除の場合のみならず、著作権等の譲渡に伴う利用許諾契約との関係も視野に入れた制度設計が必要と考える。

3   現行制度との整合性や破産法における双方未履行契約における破産管財人の解除権制限に対する改正案の内容から、著作権制度において、利用許諾契約に基づく利用者の保護を図るとすれば、それは対抗要件の制度によるべきである。
   この場合、現行制度を前提とすれば、登録による公示の制度を基本とすべきであると考えるが、申請に係る手続きの煩雑さや利用許諾契約の内容が公示により明らかになることは取引内容の秘密保護の点で支障があるなどの意見に配慮し、現行の著作権等に関する登録制度の仕組みにとらわれることなく、申請手続、公示される内容等についてはできるだけ利用者の要望に配慮した制度になるよう、著作物等を利用する権利を識別し得る最低限の情報を公示するだけの簡易な制度も含め登録制度の在り方について十分に検討する必要がある。
   なお、公示によらず対抗要件を付与する制度(書面による契約)については、利用者の利便性の観点から考慮に値する制度と考えるが、現行制度の前提を大きく変えるものであり、慎重な検討が必要である。

4   利用者が対抗要件を取得した場合の利用許諾契約における許諾者の地位の承継については、法律で一定の制限を加える等の措置をすることは適当ではなく、基本的には判例・学説の蓄積により秩序形成を図るべきである。なお、契約の承継の在り方については、不動産の場合における考え方を参考に、著作権等の譲受人に承継されることを基本として考えるべきであるが、著作物等の利用許諾契約は、不動産における賃貸借契約と違い複雑な契約形態であるものも多いことから、今後も関係者間で研究が行われる必要がある。

5   最後に、利用者の保護については、知的財産権全般に通じる制度設計が求められているところであり、著作権制度のみが特別な対抗要件制度を設けることは適切ではないので、他の知的財産権における同様の検討を待った上で、整合性のある制度にすべきである。



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