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平成14年度の検討結果
○ 平成14年度の契約・流通小委員会は、著作権又は著作隣接権(以下「著作権等」という)に関する利用許諾契約が増加しているにもかかわらず、当該契約における利用者は、著作権等が第三者に譲渡された場合や著作権者又は著作隣接権者(許諾者)が破産した場合、引続き当該著作物、実演、レコード、放送及び有線放送(以下「著作物等」という)を利用することについて、著作権等の譲受人や破産管財人に対抗することができず、利用者の地位が不安定になっているとして(図1参照)、その保護について検討を行い、制度上の問題について次のような整理を行った。1
図1
【著作権が第三者に譲渡された場合】
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著作権者と利用者で利用承諾契約を締結 |
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その後、著作権者が第三者に著作権を譲渡
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著作権の譲受人は、利用承諾契約を継承しないため、利用者は引続き著作物を利用できなくなる。 |
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【著作権者が破産した場合】
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著作権者と利用者で利用承諾契約を締結 |
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著作権者が破産し、破産管財人が著作権を管理
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破産管財人は、双方未履行の契約については破産法第59条に基づき解除できるため、利用者は引続き著作物を利用することができなくなる可能性がある。 |
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利用者の保護の範囲
○ 独占性、契約期間、保守保証義務、クロスライセンス等の特約条項について、どこまで保護すべきであるかについて、委員の意見を整理したが結論には至らなかった。
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保護すべき利用者の特定
○ どのような利用者を保護対象とすべきか(保護対象を特定する方法・方式)については、
ア |
利用許諾契約が書面(電子契約を含む)によりなされているときは、当該利用許諾は著作権等をその後に取得した者に対し対抗できるとする案 |
イ |
利用許諾の登録がされている場合には、その著作権等をその後に取得した者に対して、その効力を生ずるとする案 |
ウ |
譲受人が悪意の場合、すなわち利用許諾契約を承知している場合には、利用許諾契約を承継させる(譲受人が善意無過失で利用許諾契約を承知していない場合には譲受人は利用許諾契約を承継せず、譲受人に軽過失があって利用許諾契約を承知していない場合には譲受人は利用許諾契約を承継するものの独占性については承継せず、譲受人に故意又は重過失がある場合には譲受人は独占性を含め承継する。)という案 |
エ |
利用許諾契約に基づいて事業を行っている事実をもって、その著作権等をその後に取得した者に対抗できるとする案 |
について検討したが、更に検討すべき課題があるとし結論に至らなかった。 |
(2) |
本年度の検討事項
○ |
本年度については、平成14年度の検討結果の中の、
「(今後の)検討に当たっては、まず必要な保護の範囲自体を明確にすべきであり、この点については産業界等においても検討が必要である。
また、保護対象を特定する方法・方式については、個々の案の利点を活かしつつ複数の案を組み合わせた案を検討していくべきである。
利用者の保護については、債権的な利用許諾契約を物権の譲渡に優先させるという法構成上大きな課題を有しており、物権と債権の関係、破産法との関係、利用者間の債務順位等を整理しつつ、実効性の高い最善の方策を慎重に検討する必要がある。」 |
との提言を踏まえ、この問題に関する産業界の意見を聞いた上で、「利用者保護の在り方について」及び「利用許諾契約に基づく許諾者の地位の承継について」の検討を行い、最後に平成14年度と本年度の検討結果を踏まえ、提言をまとめることとした。 |