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第5章   人材の育成と国民意識の向上

   あらゆる制度を支えるのは人である。「知的財産立国」の実現には,知的財産創造の担い手を育成することに加え,その権利化や紛争処理,知的財産ライセンス契約等の高度な専門サービスを提供する専門家の増員及び養成が急務である。
   このため,以下の施策により,知的財産に強く国際競争力のある,弁護士・弁理士を始めとした専門人材の充実を進める。また,高度な知的財産専門人材を輩出すべく,質・量ともに充実した知的財産教育を推進するとともに,法律・技術・経営など各領域の知識に通暁した「融合系人材」の養成を推進する。さらに,知的財産教育を推進するために,知的財産実務に精通した学者・研究者を大量に養成することを目指す。
   加えて,研究者,児童・生徒,大学生,社会人それぞれに対して知的財産に関するきめの細かい教育を行って国民の知的財産に対する理解を深めていく。

1. 知的財産関連人材の養成と知的財産教育・研究・研修を推進する

(1)専門人材を育成する
   1 弁護士・弁理士の大幅な増員と資質の向上を図り,知的財産に強く国際競争力のある弁護士・弁理士を充実する
 
    1    2003年度以降,法曹人口の大幅な増加を図る中で,知的財産に強い弁護士を増加させる。
(司法制度改革推進本部,法務省)
  2    現行制度下の特定侵害訴訟代理人としてのいわゆる付記弁理士について,新たな制度の運用状況や弁護士・弁理士の活動状況などの実情も踏まえ, 特定侵害訴訟における単独受任等の検討も含めた弁理士の積極的活用等について, 2003年度以降検討を行う。
(司法制度改革推進本部,法務省,経済産業省)
  3    弁理士試験の在り方及び弁理士の試験合格者の実務能力を担保する方策等について,知的財産専門職大学院等との関係も踏まえて,2003年度以降検討を行い,弁理士の量的・質的拡大を図る。
(文部科学省, 経済産業省)
  4    高度な専門性,国際性等を備えた弁理士を多数育成するために,知的財産専門職大学院等の活用による, 弁理士又はいわゆる付記弁理士のための研修の在り方について,2003年度以降検討を行う。
(文部科学省,経済産業省)
  5    米国における守秘特権(attorney-client privilege)と日本の弁理士の業務との関係につき,日本弁理士会の協力を得つつ調査を行い,関係法令による対応の可能性を含め,今後の方策につき2003年度以降検討を行う。
(経済産業省)

2 知的財産法を司法試験の選択科目にする
 
       新しい司法試験においては,知的財産法の重要性や法科大学院における知的財産法関連科目の開設状況等を踏まえた選択科目について,2005年度中に検討を行う。
(司法制度改革推進本部,法務省)

3 法科大学院の教育と司法試験との連携を図る
 
       法科大学院における知的財産に強い法曹の養成を実現するため,2003年度以降引き続き,法科大学院における教育内容と司法試験との有機的連携の確保を図る。
(司法制度改革推進本部,法務省,文部科学省)

(2) 知的財産に関する大学院,学部,学科の設置を推進し,知的財産教育を魅力あるものとする
   1 夜間法科大学院の開設など知的財産教育を進める環境を整備する
 
    1    2003年度以降,法科大学院,技術経営大学院(MOT[マネージメント・オブ・テクノロジー]),知的財産専門職大学院,知的財産を専攻する学部・学科について,夜間法科大学院を始め夜間の講座の開設等,社会人教育や実務家教員の参画を容易にするための各大学の取組を促す。
(文部科学省)
  2    2003年度以降,法科大学院,知的財産専門職大学院,MOTの学生の経済的負担を軽減するための措置を検討し,所要の措置を講ずる。
(文部科学省,関係府省)
  3    2003年度以降,技術と法律・経営といった文理融合型の人材や法科大学院,知的財産専門職大学院,MOTの各プログラムを総合的に理解した人材の充実を図るため,各大学におけるジョイント・ディグリーの取組を奨励する。
(文部科学省)
  4    2003年度以降,知的財産分野に精通し,研究開発,経営,起業等に豊富な知識・経験を有する民間企業等の人材を,法科大学院,知的財産専門職大学院,MOT,知的財産を専攻する学部・学科の教員又は講師として積極的に活用するよう促す。
(総合科学技術会議,文部科学省)

2 知的財産に重点を置いた法科大学院や専門職大学院,技術経営大学院など,あらゆる段階における知的財産教育を推進する
 
ア)    法科大学院における知的財産教育を推進する
 
1    2004年度以降,法科大学院の教員資格については,法学部の教育経験にとらわれず,実務経験をも重視して,専任教員に関する審査を行う。
(文部科学省)
2    2003年度以降,知的財産に重点を置いた法科大学院の設置が可能となるよう,設置の審査においては,理工系大学を含めて,各大学の創意工夫に基づく科目の開設や必修単位の設定を尊重する。
(文部科学省)
3    2004年度以降,各法科大学院の入学者選抜方針に基づく入学試験における理系出身者への配慮や,法科大学院の学生が他の大学院等における技術系科目を受講できるようにするといった法科大学院の自主的な取組を促す。
(司法制度改革推進本部,文部科学省)
4    米国LLM(法学修士コース)なども参考にして,知的財産専門家の教育を充実させる法科大学院の自主的な取組を促す。
(文部科学省)

イ)    技術経営大学院(MOT)プログラムを推進する
 
1    2003年度以降,科学技術の事業化を戦略的にマネジメントでき,国際的にも通用する専門家を養成するため,技術系大学卒,技術者を主な対象に,文理融合による実践的教育を行うMOTプログラムを実施する各大学の自主的な取組を促す。
(文部科学省)
2    2003年度以降,各大学におけるMOTプログラムの充実を図るため,各大学におけるMOTの教育プログラムの開発支援を行う。その際,技術の標準化や知的財産管理に関する内容を盛り込むよう各大学の自主的な取組を促す。
(経済産業省)

ウ)    知的財産専門職大学院等における知的財産教育を推進する
   2004年度以降,弁護士,弁理士に限らず,広く知的財産に携わる専門家を目指す者に対して,実務,ビジネス,知的財産政策,国際面を含めた教育を施し,知的財産に強い専門家を育成する知的財産専門職大学院を設置する大学の自主的な取組を促す。
(文部科学省)

エ)    大学における知的財産教育を推進する
   2003年度以降,弁護士,弁理士等の高度専門職業人のみならず,企業や大学等の知的財産関係者,研究者等に対する知的財産に関する知識の啓発のため,学部・学科レベルの優れた知的財産教育を推進する。そのため,入学者にインセンティブを与えることや,専門人材としての能力評価指標の在り方について検討を行う。
(文部科学省,経済産業省)

(3)知的財産教育・研究の基盤を整備する
   1 知的財産教育に関する児童・生徒向け教育及び教員向け研修を推進する
 
       小学校の早い段階から知的財産マインドを涵養し,特許権や著作権などの知的財産を尊重する意識を身に付けさせるため,2003年度以降,特許権や著作権などの知的財産教育プログラムを策定するとともに,学校での知的財産教育を支援するため,初等中等教育向けの教材の作成・提供,教員向けの研修等の実施や手引書の作成,学校における知的財産教育の具体的手法の研究開発など,知的財産に関する教育事業を実施する。
(文部科学省,経済産業省)

2 国際的な研究・研修機能を充実させる
 
       2003年度以降引き続き,アジアの知的財産人材育成の推進,及び我が国の実務者の国際競争力の向上等を図るため,官民の適切な役割分担の下で,知的財産研究・研修機能の充実を図る。
(文部科学省,経済産業省)

3 知的財産に関する総合的かつ学際的な研究を推進する
 
       情報学や環境学の発達によって,情報(IT)産業や環境関連産業が発達したことに鑑み,2003年度以降,法学,技術,経済学等の多様なアプローチに基づき,知的財産に関する総合的かつ学際的な研究を推進する。
(文部科学省,経済産業省)

4 知的財産関連統計の活用を図る
 
       2003年度以降,3の研究を促進する他,ユーザーの多様なニーズに対応した政策展開に資するよう,知的財産政策の企画立案の基礎となる知的財産関連調査統計の幅広い活用を図る。
(総務省,経済産業省)


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