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第3章   活用分野

   知的創造活動により優れた成果が創出され,適切に保護されたとしても,それが有効に活用されなければ,言わば「宝の持ち腐れ」であり,経済の活性化は図れない。しかしながら,我が国においては,権利を取得したものの,利活用されていない未利用特許が多いとされる。また,民間における研究開発投資が必ずしも経済成長に結びついていないのではないかとの指摘もある。「知的財産立国」の実現のためには,企業等の知的財産を有する者が知的財産を事業活動の中で最大限に活用していくことが求められていると同時に,政府もそのための環境を整備していく必要がある。
   このため,以下の施策を講ずることにより,企業等における知的財産の戦略的活用を支援するとともに,知的財産活用の環境を整備する。また,自社の技術の価値を最大限に高めるという観点から国際標準化活動を支援していくこととする。

.知的財産の戦略的活用を支援する

(1) 知的財産重視の経営戦略を推進する
1    企業は知的財産を「企業の将来の経済的便益を生み出す競争優位の源泉」と認識し,知的財産を経営戦略の中核に位置付けるべきである。一部の企業においては経営戦略会議において,事業戦略,研究開発戦略,知的財産戦略について三位一体で取り組む先進的な動きが見られる。このような取組を促進するため,企業が「知的財産の取得・管理指針」「営業秘密管理指針」「技術流出防止指針」(経済産業省2003年1月及び3月公表)の3指針を参考に,2003年度以降,経営戦略を策定することを奨励する。なお,知的財産を核とした企業戦略の策定に当たっては,企業の自主性も尊重しつつ行うべきである。
(経済産業省)
2    企業の営業秘密管理及び技術流出防止については,より一般的に促進するため,指針に記載された組織内マネジメントをJIS化すべく2003年度中に検討を開始し,2005年度末までに結論を得る。
(経済産業省)

(2) 知的財産の情報開示を促進する
   証券市場が個々の企業における知的財産の位置付けを事業との関係で的確に把握できる開示の在り方を検討する必要があり,企業による自主的な知的財産の情報開示について,環境報告書・環境会計の例に倣い,以下の取組を行う。なお,情報開示を行うか否かについては,個別企業の判断に委ねるべきである。
1    知的財産と証券市場のコミュニケーションを高めるため,経済産業省が作成した「特許・技術情報の開示パイロットモデル」(2003年3月公表)を踏まえ,知的財産情報開示促進のための実現可能な指針を2003年度中に策定する。
(経済産業省)
2    有価証券報告書等における知的財産に関する記載や会計情報の開示の在り方について,2003年度から検討を開始する。
(金融庁,経済産業省)

(3) 知的財産戦略指標を策定するためのガイドラインを作成する
   知的財産に関する日本の国際競争力は必ずしも強力ではないため,国際競争力を更に強化するために2004年度末までに知的財産戦略指標を策定することを検討する。ただし,画一的ルールに従って指標策定を行うのではなく,知的財産戦略指標を各企業が自らの意思で明確に目標として捉え,それに挑戦できるようなガイドラインを作成する。
(文部科学省,経済産業省,関係府省)

(4) 知的財産の価値評価手法を確立する
   知的財産が有する価値に関し客観的に評価できる基準(定量的分析(金額換算値)あるいは定性的分析)の在り方について,各種民間団体調査機関が設ける手法を参考に,知的財産権の種類毎の特性に応じて2004年度までに検討・整理する。また,今後,本格化すると予想される合併・買収における特許等の価値評価事例を整理公開することにより,特許等の譲渡に関する相場確立を目指す。なお,最終的に,価値評価は企業の判断や創意工夫に任せる等フレキシビリティを持たせるべきである。
(経済産業省)

(5) 知的財産の管理及び流動化の促進に向けて信託制度等を活用する
1 管理信託
   グループ企業の下での特許やブランド等の一元管理,中小・ベンチャー企業等が有する特許やブランド等の管理代行・流通,TLOによる大学発特許の企業への移転などの促進を目的として,信託の担い手の在り方や著作権等管理事業法における規制の在り方を十分検討しつつ,知的財産権の特性を踏まえた管理業務を適切に遂行しうる信託の担い手が創出されるよう,2003年度中に所要の法整備を行う。その際,グループ企業内の管理会社やTLOの参入は原則自由とし,地域技術高度化センター等の地域企業を振興する公益法人等の参入ニーズも踏まえた検討を行う。なお,受託者の権利濫用等により健全な企業活動が阻害されないよう配慮する。加えて,特許を受ける権利も信託対象とするべく,知的財産権の信託に係る公示方法や弁護士法・弁理士法との関係等について検討を行う。
(金融庁,経済産業省)

2 流動化(資金調達)信託
   資産流動化法上,特定目的信託の仕組みが可能とされ,信託受益権の有価証券化が可能とされたが,流動化を更に促進するため,1知的財産を信託業の対象とするとともに,2一般事業会社の参入を認めるよう,2003 年度中に信託業法の改正等を行う。その際,受託者の権利濫用等により健全な企業活動や投資家の利益が阻害されないよう配慮する。
(金融庁,経済産業省)

3 その他の知的財産による資金調達
   2003年度以降,エクイティ投資,プロジェクトファイナンスの利用促進,中小企業融資等,知的財産による資金調達制度の多様化を図る。
(金融庁,経済産業省)


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