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2.模倣品・海賊版対策

   模倣品・海賊版などの知的財産権侵害品により被害を被っている我が国の企業数は年々増加しており,被害額も拡大の一途を辿っている。例えば,関係団体の推計によると,中国における我が国のコンテンツの年間の侵害規模は約2兆円に達し,また国内の偽ブランド品による年間の商標権被害額は5千億円以上に上る1
   特に近年は,模倣品は偽ブランド品のような商標権侵害品に加え,意匠権や特許権についての侵害品の比率が増大し,侵害する側の技術レベルの向上が指摘される一方で,企業のアジア各国における知的財産管理や模倣品対策が不十分であるとの指摘もされている。また,情報技術の発展に伴いインターネット上に音楽ファイルの無許諾コピーが大量に出回るなど,新たな対応が求められる侵害形態も出現している。
   模倣品・海賊版は企業の持つ無体財産権の言わば窃盗であり,消費者を欺くとともに,我が国に莫大な損害を与えており,早急に解決策を講ずる必要のある問題である。我が国が「知的財産立国」を目指す上で大きな障壁となっている模倣品・海賊版問題を解決し,国民及び企業の利益を守り,新たな知的財産権の創出意欲を生み出すよう,1外国市場対策の強化,2水際及び国内での取締りの強化,3官民の体制の強化を推し進めるべきである。

.外国市場対策を強化する

(1) 我が国の企業の諸外国での権利取得及び権利行使を支援する
1    2003年度以降引き続き,模倣品・海賊版被害にあった場合の対応策や事例など,我が国の企業が侵害国において訴訟提起などの権利行使をするために必要なノウハウなどの情報を収集し,まとめた資料を企業へ配布する。
(外務省,文部科学省,経済産業省,関係府省)
2    2003年度以降引き続き,我が国の企業による諸外国での模倣品・海賊版対策の取組を支援するため,国際知的財産保護フォーラム,コンテンツ海外流通促進機構,不正商品対策協議会等の民間団体の諸外国での活動を支援する。
(警察庁,外務省,文部科学省,経済産業省)
3    官民の協力により「海外偽物白書」(仮称)を2004年度の早い時期に作成する。その中には,例えば知的財産権侵害の危険が高い国を我が国の企業が把握するための諸外国の模倣品・海賊版対策のランク付けや,実際の模倣品・海賊版対策の成功事例など,我が国企業の模倣品・海賊版対策に資する情報を盛り込むよう官民で協力する。
(経済産業省,関係府省)

(2) 官民の連携を強化する
1 模倣品・海賊版に係る情報ネットワークを構築する
1    2003年度以降,知的財産権の侵害多発国における我が国企業の模倣品・海賊版による被害状況及び現地政府の模倣品・海賊版の取締り状況の把握,並びに先進諸国の業界団体との情報交換の促進のため,日本貿易振興会(JETRO)等関係団体の海外事務所,我が国の大使館・総領事館の活動を強化する。
(外務省,経済産業省,文部科学省,関係府省)
2    2003年度以降,関係府省のインターネット上の模倣品・海賊版関連情報の掲載を更に充実させるとともに,模倣品・海賊版対策のポータルサイト(インターネット上の総合窓口サイト)を設ける。その中で,国内外の模倣品・海賊版関連情報を集約し提供することにより,情報利用者の利便性を高める。
(警察庁,外務省,財務省,文部科学省,経済産業省,関係府省)

2 官民連携による模倣品・海賊版対策を講ずる
1    上記ネットワークによる官民の情報を活用し,2003年度以降引き続き,政府による侵害発生国への取締り強化の申入れ,現地の我が国企業と現地政府との間の意思疎通及び連携の支援などを実施し,官民が結束して模倣品・海賊版対策を推進する。
(警察庁,外務省,経済産業省,文部科学省,関係府省)
2    2002年12月に実施された業種横断的な官民合同ミッション「知的財産保護官民合同訪中代表団」の適切なフォローアップをするとともに,2003年度以降,業種別ミッションの実施などを通じ,官民が一体となった侵害国への働きかけを強化する。
(外務省,文部科学省,経済産業省,関係府省)

(3) 侵害の発生している国への政府の取組を強化する
1 二国間での取組を強化する
1    2003年度以降,模倣品・海賊版対策を推進するよう,例えば自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)や二国間税関協力協定に取締りの強化や情報交換に資する規定を盛り込むよう努力するなど,様々な二国間交渉の機会を利用し知的財産権侵害取締りの強化に関する取組を積極的に求めていく。
(外務省,財務省,文部科学省,経済産業省,関係府省)
2    2003年度以降引き続き,アジア地域を中心とする我が国に関連する知的財産権侵害の多発国・地域に対し,侵害品の取締りを強化するよう閣僚レベルも含め様々なレベルで強く働きかける。
(警察庁,外務省,文部科学省,経済産業省,関係府省)
3    二国間での取組をより効果的に進めるため,2003年度以降引き続き,米国及び欧州との連携を強化する。
(外務省,文部科学省,経済産業省,関係府省)
4    2004年度以降,アジア地域に所在する我が国の大使館,総領事館等に知的財産権の担当官等を置くなど,管轄国・地域の中央政府・当局及び地方政府・当局への積極的な働きかけを強化する。
(外務省,関係府省)

2 多国間での取組を強化する
1    2003年度以降引き続き,世界貿易機関(WTO)の対中国経過的レビューメカニズム及び知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の法令レビュー,貿易政策検討制度(TPRM)を積極的に活用し,アジア諸国・地域に模倣品・海賊版を取り締るよう強力に要請する。
(外務省,文部科学省,経済産業省,関係府省)
2    2003年度以降,我が国産業界からの要請を踏まえつつ,他のWTO加盟国が我が国の知的財産権を適切に保護しておらずWTOのTRIPS協定に違反すると判断される場合に,WTO紛争処理手続を積極的に活用し,問題解決を図る。
(外務省,文部科学省,経済産業省)
3    2003年度以降引き続き,世界知的所有権機関(WIPO)において,模倣品・海賊版のエンフォースメント問題を主要議題として取り上げ,模倣品・海賊版の取締りをWIPO加盟国が一体となって取り組むべき問題であるとの認識を加盟国間で共有するよう積極的に取り組む。
(外務省,文部科学省,経済産業省,関係府省)
4    アジア太平洋経済協力(APEC)において支持された知的財産権サービスセンターについて,2003年度以降,我が国において早急に設置されるよう準備を開始し,各国・地域にも早期に設置されるよう,積極的に働きかける。また,我が国が提案している知的財産権保護のための包括戦略についてもAPECの場で合意するように努める。
(外務省,経済産業省)

3 ODA政策における知的財産制度の整備・執行の強化への支援の位置付けを強化する
   開発途上国における貿易投資の拡大と経済発展のために知的財産権の適切な保護が不可欠であることに鑑み,2003年度以降,開発途上国の知的財産制度の整備・執行の強化に対する支援について,ODA政策における位置付けを強化する。
(外務省,関係府省)

4 アジア諸国の模倣品・海賊版対策の能力構築を支援する
1    現在関係府省が実施しているアジア各国政府の取締担当職員等に対する各種セミナーなどの能力構築に関する取組を踏まえ,関係府省の連携の下,アジア各国の知的財産権侵害品の取締り実施状況を把握した上で更に効果的な手法を検討し,2004年度からその手法を実施する。
(警察庁,外務省,財務省,文部科学省,経済産業省,関係府省)
2    2003年度以降,アジア諸国の政府関係者や民間の団体・企業等に対し各府省が実施している知的財産権の保護に関する能力構築(キャパシティービルディング)を我が国企業やJETRO等の関係団体と連携を図りつつ,一層効果的に実施する。
(警察庁,外務省,財務省,文部科学省,農林水産省,経済産業省)


1    コンテンツ侵害額は社団法人著作権情報センターの調査,商標権侵害額はフランス公益法人ユニオン・デ・ファブリカンの調査による。双方とも「推計侵害品市場規模×正規品平均価格」により侵害額を算出した。


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