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海賊版実態把握の強化 海賊版流通の実態を把握することは,海賊版対策を講じる上での大前提である。その実態を把握することはその性質上容易ではないが,現地事情に精通した調査会社,先行的に調査を行った実績を有する海外の団体の知識を活用し,侵害発生国の関係行政機関の協力を得つつ,海賊版被害の把握のための海外調査団の派遣等,その被害実態を把握するための取り組みを強化することが必要である。特に,中国,台湾については,2001年末から2002年初頭にかけてWTO加盟国となり,「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の遵守義務が生じていることから,国内的な海賊版流通の実態に変化があるとも考えられ,この観点からの調査も強化することが必要である。
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二国間協議の実施 海賊版が流通している国に対しては,相手国との間で直接二国間協議を行い,適切な著作権保護制度の整備及びエンフォースメント強化等について働きかけを行うことが効果的である。このため,特に我が国著作物の海賊版の流通が多く見られる中国等との間で,早急に二国間協議の場を設置し,関係機関等から提供される情報を最大限活用しつつ,我が国著作物の適切な保護についての働きかけを行うことが必要である。
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国際機関の積極的活用 現在,世界貿易機関(WTO),世界知的所有権機関(WIPO)等の国際機関においても,著作権のエンフォースメント等についての議論が行われているところである。特に,WTOにおいては,中国等に対してTRIPS法令レビューが行われている最中であり,これらの制度も最大限に活用しつつ,我が国著作物の海賊版が流通している国々に対して,法制度整備,エンフォースメントの強化を働きかけることが必要である。
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海賊版対策を実施している海外諸国等との戦略的連携 海賊版が流通しているアジア諸国においては,既に米国等の諸国は二国間の対話を通じた海賊版対策の強化を当該国に要請する等の働きかけを実施している。また,国際レコード産業連盟(IFPI),ビジネスソフトウェアアライアンス(BSA),著作権協会国際連合(CISAC),録音権協会国際事務局(BIEM)等の海外の権利者団体も侵害発生国において現地事務所を設置し,弁護士,調査会社を活用した権利行使を行う等積極的な海賊版対策を実施している。これら海外の政府,団体の有する海賊版対策についての経験,ノウハウ等は我が国が侵害発生国で対策を講じていく上で極めて有用なものであると考えられる。このため,我が国政府及び権利者においても,これら政府,団体と連携し,海賊版対策を行うことが必要である。
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侵害発生国における「著作権」に対する関係者の意識の向上 海賊版に対応していく上では,侵害発生国の一般国民の意識を高めていくことが重要であり,その際,「著作権」の制度整備,エンフォースメントなどを行う関係政府機関等は重要な役割を果たすものと考えられることから,当該国の関係政府機関,司法,警察等関係者の「著作権」に関する理解を高めていくことが重要である。このため,侵害発生国において,相手国政府機関等の協力のもと,セミナー・シンポジウムの開催等を通じて,先ず,これら関係者の意識の向上を図ることが必要である。
また,侵害発生国において一般国民の「著作権」についての意識を高めていくためには,当該国の権利者が自らの権利を行使して適正な対価を得ていくことも有効である。権利を権利者から預かり集中的に行使していく権利管理団体は,このような対価を権利者が得るにあたり重要な役割を果たすことから,当該国における権利管理団体の育成・発展についての協力を行っていくことが必要である。
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コンテンツ海外流通促進機構を通じた権利者の支援 2002年8月に設立された「コンテンツ海外流通促進機構」においては,中国に対するミッション派遣,海賊版流通の実態調査等現在積極的な海賊版対策を行っているところである。これらの活動は長期的・継続的に行ってこそ効果があがるものと考えられる。政府においても,「コンテンツ海外流通促進機構」と密接な意見交換を行い,それを踏まえて,権利者の訴訟提起等に役立つよう,各国における権利行使のために必要な調査を行う等,機構の長期的・継続的な活動を最大限支援していくことが必要である。
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在外公館等の積極的活用 海賊版対策を講じるにあたっては,現地の事情に精通しており,また,現地の行政機関とも関係の深い各国にある日本大使館,日本貿易振興会等とも密接に連携し,我が国権利者の保護という観点から,海賊版対策と模倣品対策を一体とした対策を講じていくことが必要である。
また,権利者においても,現地に代理店あるいは事務所等がある場合は,それらを活用した実際の訴訟提起を行う等積極的な権利行使をすることが望まれる。また,海外展開に積極的に取り組んでいる企業等において,単独で海外拠点を設置することが経済的に困難な場合においては,複数の企業等で連携し,共同の現地事務所の設置,現地の弁護士,調査会社の活用を図る等積極的な権利行使も望まれる。 |