第3章 国際小委員会における審議の経過
検討の内容
国際小委員会は,「国際的課題」への対応について検討するため設置された。
「国際的課題」への対応について,「知的財産戦略大綱」及び「知的財産基本法」には,それぞれ次のような記述がある。
(海賊版の問題) 海外における模倣品・海賊版等の知的財産権侵害製品が我が国経済に与える損失は極めて大きく,これを放置した場合,損失は一層拡大するものと懸念される。今後,我が国が知的財産を基礎とした発展を図っていく上で,国際市場における技術,デザイン,ブランド等の模倣や,音楽,映画,放送番組,ゲームソフト等の違法な複製(海賊版)を看過することはできない。その際には,大規模・組織的な工程が必要な模倣品,パソコンさえあれば個人でも製作できる海賊版等,製品ごとの特性を考慮しつつ,権利侵害に対する有効な対策を検討すべきである。 政府として,侵害の発生している国の中央政府・地方政府に対し,この点に留意しつつ,世界貿易機関(WTO)創設に併せて発効した「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」等で認められた権利を最大限行使し,強力な働きかけを行わなければならない。 WTO加盟国において,模倣品・海賊版等が大量に製造・流通している場合は,WTOのレビューシステムを最大限活用しつつ,侵害発生国の制度とその運用の監視に努め,併せて,WTO非加盟国に対しても二国間交渉等を通じて知的財産の保護強化を迫るべきである。 さらに,世界知的所有権機関(WIPO)における知的財産権のエンフォースメントに関する議論に積極的に参画し,国際的な模倣品・海賊版等への対策の強化に努める。 このような取組に当たっては,各国にある日本大使館・総領事館,日本貿易振興会(JETRO)等の政府関係機関も積極的に活用して,毅然たる態度で二国間交渉,多国間協議に当たり,我が国の産業界,そして国民の利益を守らねばならない。 (国際ルールづくり,途上国支援) また,地球規模での競争の激化や情報伝達技術の発展に伴い,知的財産の国際的保護水準の適正化や制度間の調和が求められていることから,二国間・多国間の枠組みを通じた新たな国際ルールづくりや,開発途上国の制度整備支援等の取組を推進すべきである。 |
(権利侵害への措置等)
(国際的な制度の構築等)
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国際小委員会では,これらに示された政府全体の方針について必要な施策の検討を行うこととし,具体的には次のような事項について検討を行った。
【検討事項】
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検討の結果
国際小委員会は,平成14年7月2日に第1回を開催し,6回にわたり検討を行った。平成14年度における検討の結果は,次のとおりである。
1 | 海賊版対策
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2 | インターネット上の著作権侵害に対する国際裁判管轄及び準拠法
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3 | 新たな条約策定等への参画 現在,世界知的所有権機関(WIPO)においては,ベルヌ条約,実演家等保護条約において著作者,著作隣接権者に付与している権利を近年のデジタル化・ネットワーク化に即したものに対応させる作業が進行中である。 このうち,著作者の権利にかかる「著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)」については1996年に採択,2002年3月に発効しており,レコード製作者及び音の実演家にかかる「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)」についても1996年に採択,2002年5月に発効したところである。しかしながら,視聴覚的実演及び放送機関に関する条約については,現在もWIPOにおいて検討が継続されているところである。
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