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資料  1
文化審議会著作権分科会(第5回)議事要旨

日時 平成14年7月19日(金)午前10時30分〜午後12時30分
     
場所 東海大学校友会館「望星の間」
     
出席者 (委員)
北川分科会長,齊藤副分科会長,入江,岡田,小熊,角川,金原
迫本,里中,瀬尾,辻本,富塚,永井,中山,野村,半田,松下
松田,松村,丸島,三田,紋谷,山口の各委員
(文化庁)
河合長官,銭谷次長,丸山長官官房審議官,村田国際課長
岡本著作権課長,尾崎著作権等管理事業室長ほか関係者
     
配付資料  
     
  資料1 文科審議会著作権分科会(第4回)議事要旨
  資料2 「知的財産戦略大綱」(2002年7月3日 知的財産戦略会議)(著作権関係部分の抜粋)
  資料3 「知的財産戦略について」〔総合科学技術会議知的財産戦略専門調査会の中間まとめ〕(平成14年6月13日 総合科学技術会議知的財産専門調査会)
  資料4−1 文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会」(第1回)について
  −2 文化審議会著作権分科会「契約・流通小委員会」(第1回)について
  −3 文化審議会著作権分科会「国際問題小委員会」(第1回)について
  −4 文化審議会著作権分科会「著作権教育小委員会」(第1回)について
  −5 文化審議会著作権分科会「司法救済小委員会」(第1回)について
  資料5 著作権分科会の審議スケジュール(案)

概要
(1) 稲葉昭典委員が辞任し,角川歴彦(社団法人日本映像ソフト協会会長)氏が新たに委員に就任したことが報告された。
(2) 「知的財産戦略大綱」等について事務局から報告するとともに,各小委員会主査から第1回の概要が報告された。
(3) 文化審議会分科会のスケジュール案が提案され,原案どおり承認された。
(4) その後,次のような意見交換が行われた。

(以下委員○,事務局△)

○:   知的財産戦略大綱で掲げている「知的財産ライセンス契約の安定強化」には,著作権契約の安定ということも入っていると理解している。是非この部分に「文部科学省」を加えていただきたい。
  契約・流通小委で,「ライセンシーの第三者対抗要件の問題」を重要事項として検討するようであるが,一番気にしているのは,ライセンサーが破産した時に破産法が優先しているという問題である。破産したときもライセンシーが安定してライセンスの継続ができるという視点での検討をお願いしたい。
  法制問題小委で「私的録音録画補償金については,対象の拡大や複製行為の実態に即した徴収方法などについて広く検討する必要がある。」とされているが,世の中は,プロテクトをかけるような方向に向かっていると思う。なぜ私的録音補償金を徴収する対象機器の拡大を検討しなくてはならないのか。
  司法救済制度小委で「「機器」と「プログラム」については,公衆譲渡等の罰則が規定されているが,「ノウハウ」のほか,「暗号」や「パスワード」の流布などを罰則の対象とすることについて検討する」とされているが,技術的保護手段の関係を規定したときはメーカー側の意見がずいぶん強く出たと記憶している。メーカー側も発言できるよう委員構成を考えていただきたい。
 
△:   ライセンシーの問題について,知的財産戦略大綱では何処の行政機関が責任を持ってやるかということを明確にするため省庁名が入っている。大綱の「知的財産ライセンス契約の安定化」の部分に「文部科学省」は入っていないが,これは,著作権についてはこの問題について一旦経済産業省から要望があったものの,再検討するということで経済産業省が引き取った形になっているからである。ただし,この問題は契約・流通小委で検討することとなっているので御安心いただきたい。
  私的録音録画補償金については,前々回のこの分科会で問題提起されたことを受けたものである。そのときの問題提起は,メーカー側の立場から「コピープロテクションがかかっているものについて,補償金を見直すべきである」というものであったが,権利者側からは「実態に合わせるというのであれば,例えばパソコンのような汎用機にも補償金をかけるべきである」という意見が出されている。権利者側,メーカー側ともに意見があることから,片方だけでなく双方の主張について,法制問題小委で御検討いただくことにしている。
  「ノウハウ」等の話については,御指摘のメーカーの方々だけでなく,メーカー以外の企業の方々でコピープロテクションに関する研究をしている方々や大学・研究所の学者の方々などについても,例えば研究成果として論文を発表したら侵害となるのかどうかなどといったことについて,非常に広範に関係する。メーカーの方々だけでなく,影響を受ける方々のご意見を必要に応じヒアリング等で承ろうと考えている。ヒアリングすべき方々をご推薦いただければ法制問題小委で意見を聞くということにしたい。また,法制問題小委で決まったことがそのまま法制化されるのではなく,当然この分科会でも議論されることとなる。その時点でもメーカー側の意見を踏まえたチェックが行われることになると考えている。
 
○:   「ノウハウ」等の流布の問題については,極めて重要で,かつ微妙な問題を含んでいる。例えば「ノウハウ」「暗号」「パスワード」等が営業秘密としてどのように保護されるかということについては,既に不正競争防止法上の「営業秘密の保護」という保護の方法もあり,なおかつこれをさらに不正競争防止法の改正を含めて強化するかどうかの議論が進んでいるやに聞いている。それらとの整合性にも充分考慮して検討しなければならないと思慮している。
 
○:   前々回の会議では,「プロテクトがかかってるものから補償金をとるのは,不合理ではないか」と申し上げたのであり,「幅広く見直す必要がある」と申し上げたわけではない。方向としては逆で,「なぜ機器から補償金をとらなくてはいけないのか。具体的行為からとればいいのではないか」というのがこれからの方向だと思っている。
 
△:   重ねて申し上げるが,前々回の会議における問題提起の趣旨は理解している。この補償金制度は個々の複製行為の実態を必ずしも反映しない便法であるため,実態との差異については,メーカー側・権利者側の双方に不満がある。前々回の会議での御指摘はメーカー側に立ったものだが,権利者側からは「実態に合わせるというのであれば,現に複製行為が行われている汎用機器・汎用媒体からも補償金を取るべきだ」という意見が寄せられており,片方だけの意見を是とした検討はできない。
 
○:   私的録音録画制度については,将来は個々の複製行為に対応したシステムになるべきだと思うが,今はすべての行為を把握できないため,特例として機器・媒体のメーカーが代わって一括で支払うという仕掛けになっている。こういう方法は過渡的なものとしては止む得ないが,いきづまる可能性があるように思う。
  ライセンス契約の保護の問題については,デジタル技術を活用する場合の契約形態というものも検討していくことが必要である。当事者により適切なシステムが確立されれば,実際に録音録画を行う者が使用料を支払うという原則に戻れるわけである。
  技術的保護手段や権利管理情報の電子的埋め込みは,条約レベルでも国内法においても法制はできているが,実際にビジネスの世界でどう実用化していくかが試されている。今の段階では機器のメーカー,記録媒体のメーカーが補償金を支払う形になっており,協力義務として先ず徴収にも関与しているが,これはあくまでも過渡的な状況によるものであり,ビジネスの世界の人々によるシステムの確立が必要である。
 
○:   補償金の問題は,制度として何か調整・是正すべきことがあるのではないか。この制度を作る時の議論の中で,そもそもコピーする予定がないテープを購入した場合どうかというような議論を大分した記憶がある。つまり方向性の問題は別として,制度と実態の整合性の検討は必要かと思う。
  ライセンスの問題については,まず契約・流通小委で議論がなされるが,その時の議論の中で,法制問題小委とも関わるかもしれない。両方にまたがり係わる問題と認識している。もう少し深めた議論がこれから小委員会でされていくと理解している。
 
○:   法制問題小委で,「教育」「図書館」に係る権利制限の見直しが行われていることは非常に評価できる。教育現場ではコピー問題が野放図にされていて,それによって学者・作家等の権利が侵害されていると思う。図書館においても然りである。そういう点で,著作権教育小委で知的所有権に対する認識を高めるための検討を行うことは非常に意義のあることと思う。「ルールに関する知識」の教育に加え,「モラルを高める」ことを実現させるための手法がどうあるべきかということとなると,著作権教育小委と法制問題小委がお互いにインタラクティブにやらないといけないのではないかという感じがする。
 
○:   5つのテーマが分かれており,あまり他のテーマに越境してはいけないが,しかし超えざるを得ないというところもある。そのような流れの中で著作権教育小委と法制問題小委がいろいろと繋がって行くこととなる。
 
○:   重要なご指摘だと思う。5分野全部に絡む問題である。常に連携したり,他の小委員会でどのような検討が行われているかの情報を交換しないと効率の悪いことにもなる。また,それぞれ縦割りでいくとその枠の中で考えることになり,窮屈になることも考えられる。契約・流通小委の中でどうなのか,教育の中でも契約システムをどう取り入れるのかということを考えると常に連動している。
 
○:   コピープロテクションをかけるのはハード側・ソフト側の権利の保護のためものであるが,ユーザー側がソフトをインストールするシリアルナンバーを共有するということが起こっている。「私が持っているシリアルナンバーをただであなたに教えますから,あなたが持っているものをただで教えてください」というようなことである。最近は,そういうことがなし崩しに起こってきている。このようなことが平然と行われると,大変大きな問題になる。このアクセスの問題についてもどうするかということを審議の対象にしていただきたい。
  ゲームソフトの中古訴訟が最高裁で結論が出たが,コンテンツ業界全体に中古の被害が及ぼす影響がたくさんある。また一方で,価格体系を維持しつつ中古を流通させるという問題もある。審議会で中古が良いとか悪いとかよりも,中古の対策について何か審議の対象にしていただきたい。
 
○: いわゆるPtoPの問題は,これからの難しい問題の一つで,今後,何が起こってくるか分からない。最近,ヨーロッパでオンライン検索サービスが著作権侵害で検索エンジンが著作権侵害になりかねないという現象が起こっている。今のゲームソフトの中古の問題は法的な意味でけりが付いたと思うが,色々な問題について,この分科会で審議すべき事項との関係でどう盛り込むか整理が必要と思われる。
 
○: 舞台芸術は非常に複雑な要素が絡んだ総合芸術になってきている。たくさんの権利が錯綜していて,これらに関する基本的なシステムの不備が,創作,流通,イノベーションというものを阻害している。例えば,ある創作を思いつき創ってみたが,様々な要素のスキルが低レベルなのでこれを少し工夫すれば国際的にも流通するものになるのにという場面がずいぶんある。これが,やはり狭い世界で仁義上流通できないとか,互いにすくんでしまって発展できない。著作権は権利を守るものであるが,創造を発展させるというような側面もこれから期待されると思う。いろいろ議論はあろうと思うが,全体的な創作に寄与した者に権利を契約等で一元化させるような形に発展させることができないだろうか。新しいテーマではないかと前から思っている。
 
○:   只今の意見は,いわゆるデジタル・コンテンツの世界だけでなく,舞台芸術の世界でもどのように権利や活用を具体化させていくべきかという問題提起だと思うが,これは,契約・流通小委において,これからの課題として取り上げていけるかと思う。
 
○:   知的財産戦略大綱の対応すべき課題の海賊版の問題のところで「音楽,映画,放送番組・・・」と書かれているが,実際の問題として出版物も海外においてかなり海賊版が出回っている。「ゲームソフト等」の「等」の中に入っていると思うが,出版物という著作物の形態としては確固たるものがある。国際小委員会では出版物も対象に入れて御検討いただければと思う。
 
○:   舞台芸術の問題は,様々な権利を法律において一つの法人に一元化するということも言われているが,これは条約違反ともなり,不可能であろう。舞台芸術というものは,コンセプトがはっきりしている映画と比べて,その前提作業が大変ではないかと思うが,契約で多数権利者が合意するしかない。著作権の上での権利でないものについても,法的な利益があればそれを織り込んでシステムを作ればいいので,まさに契約システムとして考えるべきものである。
 
△:   契約・流通小委員会では,よく話題になる映像コンテンツが中心としてイメージされているが,舞台芸術については,私共もあまりよく例を存じ上げないので事例を教えていただきたい。それにどう対応できるかということを契約・流通小委のテーマにさせていただきたい。
  また,中古品の話が出たが,中古品の話は二つの種類がある。一つは,中古車と同様に,ビデオ,本,ゲームソフトのように,自分が使っていたものに飽きてしまったから売ってしまうという場合であり,もう一つは音楽CDのように,30条コピーが作られることによってオリジナルが転売されてしまう場合である。これは国際的にも二種類あると認識されており,前者は中古車と同じように著作権とは関係しない単なる中古品問題と認識されている一方で,後者はコピーが関わっているため著作権問題だと認識されている。1996年の条約を作るときもこのことは話題になったが,音楽CDなどについては,プロテクションで対応するとともに,暫定的に補償金で対応することが,国際的にも,条約でやるか国内法でやるかは別にして行われている。私的使用のためのコピーを伴う中古品の問題は,法制問題小委員会のテーマに入っている。一方,単に飽きたから売ってしまうというのは,国際的には著作権問題ではないと整理されているが,何らかの対策がないかということは,ACCS,書籍出版協会,映連,映像ソフト協会が共同して,社団法人日本経済団体連合会と協議を始めるという動きになっている。これは,一旦売られたもののコントロールについては,日本経済団体連合会が絶対反対と表明しているためであり,まず関係者の間で,何処に問題があるのか,どのような対応の可能性があるのか,といったことについて,整理をしていただく段階にある。
 
○:   ゲームソフトの中古問題は,著作権問題ではないということであるが,最近ではゲームソフトについても,音楽CDのように,新品を買いコピーして中古に流す流通もある。我々はその問題の波及効果を非常に心配していることを汲み取っていただきたい。
 
△:   ゲームソフト業界は「コピーを伴わない中古品」の流通を問題視して訴訟を起こされたので,そちらに分類しているが,ゲームソフトについても音楽CDと同様に,コピーを伴う中古品問題があるのであれば,法制問題小委で取り上げることになる。現在,レコード協会がプレゼンテーションの準備を進めているので,ACCSにもお願いしたいと思う。
 
○:   大綱は,産業政策的な観点から,しかも2005年までの具体的なアクションプランを創るということを念頭に創っているので,著作権については,現在審議会で議論されているようなことを超えてやるものはない。
  2005年までのアクションプランで文化庁これをしろというものはあまり多くはない。現在の小委員会の議論で尽きていると考えている。



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