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資料  2

知的財産戦略大綱
(著作権関係部分の抜粋)

 


平成14年7月
文化庁


目次

基本的な考え方と方向性に関する部分
   
各分野(5分野)の具体的な施策に関する部分
   
 
1 「法律ルール」の整備
   
2 「円滑な流通」の促進
   
3 「国際的課題」への対応
   
4 「著作権教育」の充実
   
5 「司法救済制度」の充実


(注)見出しとアンダーラインは文化庁において付加

◎ 基本的な考え方と方向性に関する部分


<基本的な考え方>

(デジタル・コンテンツの保護)
  著作権制度については、インターネット等の普及を踏まえた保護の在り方を検討すべきである。デジタル情報は、今後、極めて重要な財産となるが、その最大の特色は、複製・改変が極めて容易かつ安価にできることである。コンピュータ・プログラム、音楽、映画、放送番組、アニメーション等のデジタル情報が強力に保護されなければ、デジタル・コンテンツ産業は成立しない。(P.10)

(バランスの確保)
  知的財産法は情報の独占的利用を認める制度であるが、その保護があまりに過度となった場合には、学問・研究の自由、表現の自由などといった現代社会が有している基本的価値と抵触する可能性がある。知的財産制度の整備に当たっては、これらの基本的価値に留意しつつ、バランスのとれた制度を目指さなければならない。(P.6)


<法制に係る現状認識>
(国際的に見た保護水準)
  我が国の著作権法は、インターネットへの対応等に関して国際的に見て極めて高い水準にあり、デジタル・コンテンツについても、法的保護を与えている。(P.10)


<対応すべき課題>

(契約システムの問題)
  我が国においては、創作時・利用時における契約システムが十分に機能していない面があるため、著作物の円滑な流通に支障が生じている場合が多い。(P.14)

(海賊版の問題)
  海外における模倣品・海賊版等の知的財産権侵害製品が我が国経済に与える損失は極めて大きく、これを放置した場合、損失は一層拡大するものと懸念される。今後、我が国が知的財産を基礎とした発展を図っていく上で、国際市場における技術、デザイン、ブランド等の模倣や、音楽、映画、放送番組、ゲームソフト等の違法な複製(海賊版)を看過することはできない。その際には、大規模・組織的な工程が必要な模倣品、パソコンさえあれば個人でも製作できる海賊版等、製品ごとの特性を考慮しつつ、権利侵害に対する有効な対策を検討すべきである。(P.12)

(権利行使の実効性の問題)
  インターネットで流通する場合に典型的に見られるように、デジタル化された情報そのものが、その媒体である本やレコード等の有体物から離れて流通するようになった結果、誰もが情報を複製し、加工し、発信することができる状況が発生している。このため、情報の利用者があまりにも多くなり、権利を持っていても、現実には権利を行使することが極めて難しい状況が生じつつある中、権利行使の実効性確保が大きな課題となっている。(P.10-11)


<必要な基本的取組>

(セキュリティ技術、契約システム、訴訟制度)
  新たな状況を踏まえ、今後、実効性を担保しつつ、権利者と利用者の双方にとってバランスのとれた保護を実現するため、有効なセキュリティ技術の開発、訴訟制度の改善、権利処理を円滑にする契約システムの構築等、デジタル・コンテンツの適切な保護の仕組みを確立すべきである。(P.11)

(海賊版対策)
  政府として、侵害の発生している国の中央政府・地方政府に対し、この点に留意しつつ、世界貿易機関(WTO)創設に併せて発効した「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」等で認められた権利を最大限行使し、強力な働きかけを行わなければならない。(P.12)
WTO加盟国において、模倣品・海賊版等が大量に製造・流通している場合は、WTOのレビューシステムを最大限活用しつつ、侵害発生国の制度とその運用の監視に努め併せて、WTO非加盟国に対しても二国間交渉等を通じて知的財産の保護強化を迫るべきである。(P.12)
  さらに、世界知的所有権機関(WIPO)における知的財産権のエンフォースメントに関する議論に積極的に参画し、国際的な模倣品・海賊版等への対策の強化に努める。(P.12)
  このような取組に当たっては、各国にある日本大使館・総領事館、日本貿易振興会(JETRO)等の政府関係機関も積極的に活用して、毅然たる態度で二国間交渉、多国間協議に当たり、我が国の産業界、そして国民の利益を守らねばならない。(P.12-13)

(国際ルールづくり、途上国支援)
  また、地球規模での競争の激化や情報伝達技術の発展に伴い、知的財産の国際的保護水準の適正化や制度間の調和が求められていることから、二国間・多国間の枠組みを通じた新たな国際ルールづくりや、開発途上国の制度整備支援等の取組を推進すべきである。(P.13)


◎各分野(5分野)の具体的な施策に関する部分


I  「法律ルール」の整備
(放送事業者・実演家の権利拡充)
  国際的にも条約の検討が進められている、放送事業者の権利の拡充(既に放送された番組の二次利用に係る権利の拡充)や、実演家の権利の拡充(動画コンテンツに録画された俳優の演技等に係る権利の拡充)など、ネットワーク上での著作権の保護強化について検討を行い、遅くとも条約採択後に所要の措置をとる。(P.33)


II  「円滑な流通」の促進

(セキュリティ技術、契約システム)
  実効性を担保しつつ、権利者と利用者の双方にとってバランスのとれた保護を実現するため、有効なセキュリティ技術の開発、訴訟制度の改善、権利処理を円滑にする契約システムの構築等、デジタル・コンテンツの適切な保護の仕組みを確立すべきである。(P.11)

(未活用著作物の流通促進)
  現在活用されていない個人のものも含め、著作物の円滑な流通を促進し、積極的にそれが活用されるよう、契約システムや権利者の意思表示システムの構築を図るべきである。(P.14)

(流通システム構築支援、ネット上契約システム開発、意思表示システム開発)
  コンテンツの円滑な流通の促進を図るため、2002年度以降、新技術と著作権契約システムを組み合わせたコンテンツの新しい流通システムの構築に向けた取組を支援するとともに、ネット上での著作権契約システムの研究開発(2004年度までに実施)や、コンテンツの利用可能範囲に関する権利者の意思表示システム(例えば「自由利用マーク」)の開発・普及を行う。(P.37)


III  「国際的課題」への対応

<海賊版対策の強化>

(官民の連携と二国間・多国間の枠組の活用)
  特許権、意匠権及び商標権を侵害する模倣品、著作権を侵害する海賊版等について、侵害される知的財産権の特徴に留意しつつ、

1 我が国産業及び国民の利益を守るべく、2002年度以降、侵害国の中央政府・地方政府に対して、二国間交渉・多国間交渉を通じた働きかけを強化する。
   
2 「国際知的財産保護フォーラム」と連携をとりつつ、海外における知的財産権保護の強化に取り組む。加えて、2002年度中に、著作権関係団体、コンテンツ産業等が侵害実態の監視や訴訟等への対応を目的として設立する民間組織である「コンテンツ海外流通促進機構(仮称)」と連携・協力する体制を構築し、海外における海賊版対策を強力に展開する。
   
3 WTO加盟国に対しては、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の法令レビュー、貿易政策検討制度(TPRM)といったWTOのレビューシステムも活用し、制度・運用の監視に努める。
   
4 世界知的所有権機関(WIPO)において行われている工業所有権及び著作権等のエンフォースメントに関する合同諮問委員会の議論に積極的に参画し、模倣品・海賊版等への対策の国際的強化に努める。
   
5 これらの模倣品・海賊版等への対策に当たっては、各国にある日本大使館・総領事館、日本貿易振興会等も積極的に活用して、毅然として二国間交渉、多国間交渉に当たる。また、これらの対策が、より実効性のあるものとするため、侵害国政府の自助努力を支援するための人材育成協力等を実施する。
   
6 これらの対策の実施状況について、2002年度末までに、各侵害国における制度・運用の改善状況を勘案しつつ、フォローアップを行う。(P.28-29)

(水際措置)
  また、海外で生産された知的財産権侵害製品を水際で効果的に阻止するため、その国境措置の在り方について、遅くとも2004年度までに、法制面及び運用面の改善策等を講ずる必要がある。(P.12)

  知的財産権侵害品を水際で効果的に阻止するため、税関においては、特許庁等の関係省庁と協力しつつ、早急に取締体制の強化を図る。また、2003年度末までに、米国ITC(米国国際貿易委員会)の制度等も参考にしつつ、知的財産権に係る侵害品の国境措置の在り方について育成者権侵害品を対象に加えること及び特許権、意匠権等の侵害品に対する措置の強化を含め、関係省庁間で検討を行い、法制面及び運用面での改善策について具体案を策定し、遅くとも2004年度までに所要の措置を講ずる。(P.29)


<国際知的財産制度の調和と協力の促進>

(アジア各国の制度整備支援)
  2002年度以降、我が国の特許等の審査関連情報をアジア各国の特許庁に提供する「アジア工業所有権情報ネットワーク」の構築を推進する。さらに、アジアの開発途上国に対し、知的財産法制度の運用に係る体制整備や知的財産保護の重要性に関する啓蒙、模倣品対策に有効な意匠権、商標権の取得をASEAN等のアジア地域等において迅速かつ円滑に行う環境整備のため、2002年度以降、二国間・多国間交渉や、JICAスキーム、WIPOジャパン・トラスト・ファンド、植物新品種保護国際同盟(UPOV)ジャパン・トラスト・ファンド等の各種枠組みを用いた専門家派遣、セミナーの開催、研修生受入れ等の人材育成協力、教材開発協力、情報化協力等を実施する。(P.30-31)

(国際的保護水準の維持)
  知的財産権の国際的保護水準を維持すべく、2002年度以降、WTOを中心とした自由貿易体制の下で、二国間・地域的取組を戦略的に展開し、アジア地域等の途上国がTRIPS協定の義務を確実に履行するように強力に働きかける。(P.31)

(国際裁判管轄等)  
  2002年度以降、引き続きヘーグ条約等知的財産権に関する国際裁判管轄等の問題を取り扱う可能性のある条約に関する議論に戦略的に取り組む。(P.31)

(インターネットに対応した新条約策定の推進)
  2002年度以降も引き続き、インターネット上でのデジタル化された著作物等の無断複製や送信行為を防ぐための権利や義務を定めるため、現在、世界知的所有権機関(WIPO)で検討が進められている、視聴覚的実演や放送機関に関する新条約の議論を推進するために積極的な役割を果たす。(P.31)

(条約加入の働きかけ)
  2002年度以降、アジア諸国を中心に、既に効力発している「著作権に関する世界知的所有権条約」や「実演・レコードに関する世界知的所有権機関条約」をはじめとするWIPO新条約への加入を働きかける。(P.31)


IV  「著作権教育」の充実

(学校教育)
  2002年度以降、知的財産意識の啓発、創造性の重要性に関する教材、副読本の提供など、初等・中等教育における知的財産に関する教育の推進を図るとともに、教職員に対する知的財産制度のセミナーの実施等により、知的財産に関する教育手法の研究等、教育者の知的財産制度に関する知識向上を図る。(P.24-25)

(総合的普及啓発)
  2002年度から、広く国民に対し、ネットワークを利用した情報提供など、様々な方法により,知的財産権に関する知識と意識の普及を図るための総合的な事業を実施する。(P.41)


V  「司法救済制度」の充実

(訴訟制度の改善)
  実効性を担保しつつ、権利者と利用者の双方にとってバランスのとれた保護を実現するため、有効なセキュリティ技術の開発、訴訟制度の改善、権利処理を円滑にする契約システムの構築等、デジタル・コンテンツの適切な保護の仕組みを確立すべきである。(P.11)

(損害の認定制度の検討)
  知的財産権の保護を強化し、「侵害し得」の社会からの脱却を目指す観点から、望ましい損害の認定制度の在り方について、2005年度までに検討を行い、結論を得る。(P.28)


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