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資料  1
文化審議会著作権分科会(第4回)議事要旨

1    日   時   平成14年5月7日(火)12時〜14時
   
2    場   所   東海大学校友会館「阿蘇の間」
       
3    出席者   (委   員)
板谷,稲葉,入江,岡田,小熊,金原,北川,齊藤,酒井,迫本,里中,瀬尾,富塚,永井,中山,野村,半田,松下,松田,松村,丸島,三田,村上,山口の各委員
    (文化庁)
河合長官,銭谷次長,丸山長官官房審議官,岡本著作権課長,村田国際課長,尾崎著作権等管理事業室長ほか関係者

4   配付資料
資料1   文化審議会著作権分科会委員・臨時委員・専門委員名簿
資料2   文化審議会著作権分科会の概要
資料3   文化審議会著作権分科会運営規則(案)
資料4   文化審議会著作権分科会の議事の公開について(案)
資料5   著作権をめぐる最近の動向について
資料6
−1   知的財産戦略会議の開催について(平成14年2月25日  内閣総理大臣決裁)
−2   日本のレコード産業からの提言(平成14年4月10日  (社)日本レコード協会会長  富塚  勇)
−3   我が国の知的財産戦略に関する提言
  (平成14年4月10日  (社)日本レコード協会会長  富塚  勇  外12社)
−4   映画・映像ビジネスへの投資循環と新たな作品創造のために
〜映画・映像ソフト製作者の要望〜(平成14年4月10日  (社)日本映画製作者連盟会長松岡  功  外1社)
資料7   知的財産戦略専門調査会の設置等について(平成14年1月30日  総合科学技術会議)
資料8   司法制度改革推進計画(抄)(平成14年3月19日閣議決定)
資料9   文化審議会答申「文化を大切にする社会の構築について」(平成14年4月)
資料10   戦略的対応を行うべき5つの分野
資料11
−1   著作権法の一部を改正する法律案の概要
−2   著作権法制に関する基本的課題について
−3   関係者間で合意形成が進められつつある事項等
−4   関係省庁からの著作権改正要望(平成13年度)について
資料12   円滑な流通の促進−契約システムの改善とIT活用の促進−
資料13   教育の充実
資料14   司法救済制度の充実
資料15   国際的課題への対応
資料16   小委員会の設置について(案)

5  概   要
(1)   分科会長に北川委員が選任され,また,分科会長職務代理として,齊藤委員が指名された。
(2)   「文化審議会著作権分科会運営規則」及び「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」,事務局からの説明の後,以下のような意見交換があり,原案のとおり了承された。

(以下委員○,事務局△)

○:   議事の公開については,前期と同じと言うことであるが,内閣府等他省庁では,一般傍聴も認めるなどいろいろ見直しを図っている。他省庁の審議会の動向を踏まえ,内容の見直しを図って行くべきである。
△:   文化審議会著作権分科会運営規則で,議事は,原則公開して行うこととなっている。「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」は,その手続きを定めるものである。また,会議の傍聴については,従来から,実際上柔軟な取り扱いをしてきており,今後とも柔軟に対応していく。
(3)   小委員会の設置については,分科会長から自身の考え方が示されるとともに,事務局から,著作権をめぐる最近の動向及びそれを踏まえた小委員会の設置案について説明を行い,特段の意見もなく,原案どおり了承された。
  また,分科会長から,次の考え方が示され,了承された。
1   審議検討の方法については,先ず小委員会においてテーマに沿って検討を行い,各小委員会の報告を受けつつ,分科会本体においても大所高所からの議論を行うことで進めること
2   小委員会に分属する委員には,後日分科会長から連絡すること
3   次回の分科会については,「知的財産戦略会議」における「知的財産戦略大綱」がまとめられた直後の7月に開催すること
(4) その後,次のような意見交換が行われた。

(以下委員○,事務局△)

 
○:   情報化の時代を向かえ知的財産について国家的戦略を立てる必要性がでてきたが,知的財産については,所管省庁だけでなく,実質的に10前後の省庁が関わることから,知的財産戦略会議については,官邸に設置し,総理が主催することになっている。
  座長には,阿部博之東北大学長が就任しており,国家戦略大綱の起草委員長を私が努めている。大綱の内容等については検討中であるが,2005年までの間に各官庁が実施するアクションプランを期限付きで提示する予定になっている。
  21世紀においては,著作権については,特許とともに知的財産の両輪となるものである。著作権にも目配りをしながら大綱を執筆したいと考えている。そのためには,関係者の意見が必要である,色々な意見を寄せていただきたいと思う。
  今年の7月のはじめに大綱を発表する予定である。その中では,知的財産基本法というものを考えており,内閣官房の中に推進本部を置くこととなろう。この推進本部が今後の知的財産の司令塔になろう。7月の大綱が出たら,文化審議会や文化庁に対して色々なことをお願いすることになると考えている。

○:   知的財産戦略会議に参加しているが,著作物を商品とする国際競争力とは,経済の活性化とはどのようなものかということを考えると,著作物がデジタルコンテンツという形になってきている現在においては,セキュリティーの確保というものが非常に重要になってきている。これが崩れるとインセンティブというものが全くなくなってしまう。セキュリティーの確保などを大綱に盛り込んでもらうよう提言している。
  そこで問題となってくるのが著作権法第30条の私的録音・録画という規定である。今,誰でもが著作者になれると同時に誰でもコピーできるという時代になってきている。どのような行為が私的録音・録画の目的として認められるのか,また,認められないのか,もう少し具体的に規定できればと考えている。

○:   総合科学技術会議の知的財産戦略専門調査会は,科学技術の振興の立場から知的財産の保護・活用を検討する場である。特許に絡む著作権についても併せ考えている。
  科学技術の振興策についてはこれまでも検討され,また,国からの投資も行われてきたが,その成果の保護と活用という観点から,これを知的財産を軸としてあらためて考えるという面が強く出ているようである。
  これまで,専門調査会が3回,ワーキング・グループが2回開催され,国の研究投資に対応した知的財産の保護(研究機関等からのヒアリング),先端技術分野における知的財産の保護と活用(委員会のプレゼンテーション,一人当たり5分)について検討が行われており,今後,基盤整備等について討議されることとなっている。

○:   大綱を書く際に各界から意見を欲しいということであるが,意見を出せるのは何時までなのか,また誰に言えばいいのか。

○:   この種の会議としては異例のスピードで進んでいる。意見があればなるべく速く,できれば次回の戦略会議が今月の22日に開催されるので,その前が望ましい。意見は,内閣官房の担当者に出して欲しい。

○:   基本法構想を新聞で見たことがある。どの程度まで形ができているのか。

○:   新聞記事については,全く事実無根であり,根拠は全くない。これから考え始めることとしているが,基本法という性格から,理念的なことが中心となろう。ただ実際一番大事なのは,推進本部を官房に作るということである。私の心づもりでは,IT推進本部,司法制度改革推進本部と同じく,総理を本部長にして関係閣僚で構成されるものと思われる。有識者がそれにどうか関わるかは分からない。これは一起草委員としての意見であり,どうなるか分からないが大筋はそのようになるのではないか。

○:   戦略会議の趣旨に,国際競争力の強化と経済の活性化の観点が全面に押し出されている。これに異を唱えるものではないが,メンバーを見ると,その面に独走するのではないかとの懸念がないわけではない。関係団体からの要望書でも提言されているように,知的財産保護に関する小・中・高校生への教育の充実,知的財産保護に関する啓発活動の強化ということも,大変重要な観点である。是非忘れず検討していただきたい。

○:   大綱には書かないが,知的財産というのは脇役であると考えている。主役はあくまでも創作をする人であると思っているし,そちらを重視しなければならないと思っている。
  創作というところもかなり力を入れて書くつもりである。できてしまった後どうするかは,戦略的に考えるところだと考えている。経済に限っているが,例えば,人格権などは経済問題はないと考えられているが,仮に人格権の存在が情報の流通の妨げになっている,経済の活性化に妨げになっているとかになってくれば経済問題になってくる。
  なるべく知的財産全体を見据え,それを経済の観点から捉えることを考えている。

○:   経済の活性化,産業の競争力の強化はおかしいことではないが,それだけではないという点も然りである。そのへんのバランスが問題になると思う。

○:   世の中金だけで,経済だけで,できているわけではないことは重々認識している。ただ,会議ではどうしても経済重視になることも事実である。現に日本のもの作りが息詰まりを見せており,もの作りから情報作りに大きな転換をしなければならないという観点から全体のトーンができあがるのは間違いないことである。
  大学での発明というものが問題になるが,これが強調され,ややもすると金儲けする分野がいい学問で,金儲けをしない学者は駄目だとする傾向もないわけではない。大学というものは玉手箱のように色々な新しい技術を作って,ベンチャーを作って,日本の経済の活性化に役に立つというイメージがあるが,大綱の中ではそれを書きつつも,大学の本旨というものは基本的には基礎研究,基盤研究にあることも述べてバランスをとりたいと考えている。

○:   我々が関連している映像ソフトについては,非常に輸入超過の状態が続いているのが現状である。こういうことに対しての国としての資金的な援助等といったものが,知的戦略会議等の中で議論されるのか,また,大綱に盛り込まれるのかお聞きしたい。

○:   現在のところは,個別的な業界を援助するための資金的な援助というような議論は出ていない。7月に大綱を出すという大変速いスピードで議論しており,おそらく戦略の大綱を練ることが中心となっくると思う。個別の業界のことについては一般論でしか触れることはできない。

○:   知的財産というものは,文化に処する行為によって発生するものである。  経済原理に則って物事を考え始めると,ローカルな物とか,非常に廃れそうな文化とかというものが,蔑ろにされる恐れがあると思う。経済原理だけで文化を考えるのではなく,文化は人間存在の根元に係る非常に心優しい物であるという観点に立つべきで,そういう基本的な考えを根底に流した基本法を作ってもらいたいと思う。

○:   著作権全体としては文化という観点は重要であるが,ただ著作権の中には産業寄りのコンピュータのソフトウエアとかも入り込んでいる。そのため,広い意味での著作権を見たとき,文化と産業との葛藤があるのではないか。産業の国際競争力の強化,経済の活性化のためにどうしたらいいかということに的を絞った議論を行うのが戦略会議だと思う。著作権の文化的な視点については省かれているのではないかと思う。文化的な視点を蔑ろにしろとは言わないが,日本の産業競争力を高めるためには何をしたらいいのかが取り上げられると理解している。
  そういう意味で,経済産業省から要望の出ている「ライセンス契約の保護」については,経済産業省の研究会で検討しており,報告書の中で,特許面では対抗力を付ければ破産法との検討と相まって,ライセンス法がきるという方向が見えてきたと理解している。具体的な検討はこれからであるが,いずれ文化庁に要望書が提出されると思う。要望書が提出された場合には検討いただきたいと思う。特に,コンピュータソフトウエア関係の契約,特許権の契約等流通促進が叫ばれているが,ライセンサーが破産したときに,その契約については破産法が優先され管財人が一方的に解除することができる。そのとたんにライセンシーが実施できなくなってしまうなど非常に影響力が大きい。アメリカでも既に,破産法が改正され,知的財産が例外になっている。日本も産業競争力という観点から是非この法律を通してもらいたいと思っている。著作権も,コンピュータソフトウエアの関係で言えば,こういう部分で保護されるべきと考えている。

○:   経済原理に則って物事を考え始めると,ローカルな物とか,非常に廃れそうな文化とかというものが,蔑ろにされる恐れがあるという発言はもっとものことだと思う。ただ,現在行われている戦略会議等の議論で,地方文化を抑圧するとか,フォークロアをなくす懸念のあるものはないと思う。
  今議論しているのは,著作権でいえばエンフォースメントの強化ということであるが,むしろそのことが弱い立場の人に役に立つこともある。おそらく発言のような懸念はないと思うが,それでも懸念があるのであれば具体的にここはおかしいという点をご指摘願いたい。

○:   文化と産業との関係は難しい議論である。文化審議会の昨年の議論で,私の理解では,文化庁で言われる文化以上に,かなり広い意味での文化について議論されたと思う。そういうレベルの文化は,文化対経済,文化対産業,という図式ではとらえられないものがある。もう少し深いところから,文化,経済,産業というものを考えるべき時期にきていると考えている。

○:   東アジア全体で海賊版対策をどのようにしていくかが重要になってきていと認識している。特に中国が非常に開放的な国造りに大きく転換している中で,摩擦のないしかも実効性ある枠組みに参加してもらうことが,非常に重要ではないか。
  また,海賊版対策という言葉が,悪い印象を与えていないか。東アジア全体でリーガルマインドを相互理解の下に進めるという視点が重要であり,“海賊版が多数流通しているのだからその対策を講じるべき”というトーンだけでとらえられると,また摩擦の原因になりかねない。
  表現の問題を含めて,どのように実効性をあげていくかといった議論をすべきである。

○:   中国の関係者も「海賊版」という言葉を普通に使っている。「海賊版」という言葉を変える必要はないと思う。
  これに関連して,経済産業省が民事と刑事のカテゴリーでエンフォースメントを考えているが,私はもう一つあると考えている。中国の特徴的な制度に,行政が警察権を持つ,市場警察という表現がいいと思うが,行政の例えば著作権課の担当官が海賊版を取り締まる権限を持っており,かつ,大きなネットワークを持っていることがある。中国の著作権課と日本の著作権課との大きな違いは,中国では各地方に担当者がいてその主な仕事はエンフォースメントである。そのような制度を参考にしたり,当該部局との間で意見交換を行うことが有益ではないか。

○:   著作権というものは,権利者と利用者との調和の上に成り立つというのは当然だと思う。著作権の問題を法律上具体化にしていく場合は,必ずしも文化的な面だけではなく,経済的な側面が出るということも,当然のことではある。しかし,文化的な本質を忘れてはならないと思う。
  著作権教育の充実の問題は重要だと思う。文化庁で全国の中学生に140万部の読本を配布しているということであるが,これがどのように活用されているかということが重要である。著作権教育を考える場合,そういう点にも気を配るべきである。

△:   教育の部分については,文化庁及び著作権情報センターがそれぞれ読本を作成・配布しているが,それがどう使われているかが問題であることは認識している。今後,教育が大きなポイントになろう。例えば,授業時間が少なくなってきている中で,1年に1回著作権という授業をやればいいのかということもある。文化庁が先生向けに今年度に開発しようとしているものも,国語,音楽,図工などの授業をしているときに,子供たちがやっていること,子供たちがやられたくないことに引っかけて「どうなのかな」という,いわば先生の一言集である。
  また,子供たちにとって何が分かり易いのか,それからこの読本のどの部分をどのように使ったらいいのかという教材の使い方の開発を教育の専門家と一緒にやろうとしている。
  なお,今年度から教育を専門に行う係を作り専任の者を2名配置したところである。
  ライセンシーの問題であるが,特許について経済産業省で一定の方向性が出されていることは承知しているが,特定の契約を登録しておくことによってその契約についてライセンシーの立場を保護するというものであると理解している。著作権でこのようなことをやるには,無方式主義との関係について問題はないかといったことについて,経済産業省と議論しなければならない部分がある。要望が出てくれば,小委員会で議論することになろう。
  行政警察の話であるが,3年ほど前にタイでも法改正があり,タイの著作権課の担当者が警察権を得たということがあった。外国の事例もよく調査し,司法の小委員会で議論をいただければと思っている。
  経済と文化の関係が議論されているが,広義の文化には経済が含まれ,逆に広義の経済には文化も含まれている。
  いたずらに,「経済か文化か」ということを定義をはっきりさせずに議論をするよりは,「ものを創り出す人を大切にしていく」という基本を維持しつつ,その場合,どの部分をどのように大切にしていくかというルールをこの場で御議論していただきたいと考えている。本質を見失わないようにやっていきたいと考えている。

○:   教育関係で,権利制限については現在協議中ということであるが,拡大の方向で協議中なのか,それとも縮小の方向で協議中なのか。

△:   教育も,図書館も,拡大の課題と縮小の課題の両方が検討されている。


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