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著作権分科会 国際小委員会(第4回)議事録

1 日時 平成17年8月4日(木曜日)14時〜16時

2 場所 パレスビル3階3−E号室

3 議題
   
 (1)   著作権分科会国際小委員会中間報告書案について
 (2)   その他

配付資料
資料1   著作権分科会国際小委員会中間報告書(案)
資料2   著作権分科会国際小委員会審議予定
参考資料1   著作権分科会国際小委員会(第3回)議事録
(※著作権分科会国際小委員会(第3回)議事録へリンク)

午後2時開会
 

○道垣内主査 本日の議事は公開ということで、傍聴者にはそのまま傍聴していただくことにいただくことにいたします。
 初めに、事務局より、今年度から新たに就任された委員のご紹介と、それから配布資料もあわせてご説明お願いいたします。

○事務局 それでは、新たに就任された委員をご紹介申し上げます。
 井上由里子神戸大学教授でいらっしゃいます。

○井上委員 井上でございます。なかなかスケジュールが合わなくて、今日が初めての参加ということになりましたけれども、勉強させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○事務局 よろしくお願いいたします。
 資料のご確認をさせていただきます。まず、議事次第、資料1、報告書案でございます。資料2、国際小委員会審議予定、それから参考資料1として第3回の議事録をつけさせていただいております。以上です。

○道垣内主査 ありがとうございました。
 それでは議題に入りたいと思います。
 本日は、資料1の国際小委員会報告書案についてご議論いただくということになっております。まず事務局からこの内容につきましてご報告していただきたいと思います。

○事務局 それでは、資料1の報告書案、既にあらかじめご送付させていただいておりますので、簡単にご紹介だけさせていただきたいと思います。
 まず、表紙の目次でございますが、「はじめに」と、2345と、これまでのご議論いただきました4つの論点、放送条約への対応のあり方、フォークロアの保護への対応のあり方、アジア諸国等との連携の強化及び海賊版対策のあり方、デジタル化に伴う著作権の課題への対応のあり方と、4つのテーマを取り上げさせていただいております。それぞれ現状と今後の対応の方向性ということで、ちょっと送らせていただいた案は平仄が合っておりませんでしたので、平仄を全部各所合わせて直しております。
 ページをめくっていただきまして、まず、「はじめに」のところでは、これまでの国際小委員会の審議の経過をご紹介しておりまして、ただいまの4つの論点について、それぞれ議論を行ったということを書いてございます。これについて、最後、引き続きこれらについて検討を続けていく予定であるということで、小委員会自身は、また引き続き検討をお願いしているかと思いますが、とりあえず、今年の中間報告書案ということでまとめさせていただくということでございます。
 中身でございますが、放送条約への対応のあり方。これは、まず1.のところで、放送条約がどういう位置づけにあるかということで、デジタル化、ネットワーク化に対応したWIPO関連条約のWCT、WPPTに続く、ひとつの重要な構成要素として放送条約とAV条約が検討されているということを紹介しております。我が国の対応のあり方としては真ん中のあたりにございますけれども、放送条約の早期採択ということを第一目標として積極的に参画してまいったということでございます。
 真ん中の少し下のところにございますように、「しかしながら……」とございますが、昨年の2004年9月の一般総会で、途上国を中心とする一部の国から、来年の一般総会で改めて議論すべきという発言があったことから、今年の秋の一般総会で再度議論ということで、これに向けての対応のあり方というのが、今回の報告書の中心テーマでございます。
 さらに、その後、昨年以降の動きとしては、その議論を受けて、ちょっと下のところにございますが、本年4月に再修正された「条約テキスト案」及び「ウェブキャスティングについての作業文書」が提示されたということで、これを踏まえて、9月の一般総会で外交会議の開催可能性ということで議論されるということになっております。
 放送条約への対応の方向性ということで、3ページでございますが、まず第一の論点、2ページの一番下のところからでございますけれども、1つ目の論点が、放送条約の趣旨というところでございまして、これは放送条約と我が国著作権法の微妙な違いとして、3ページの一番上のところにございますように、放送条約のテキストにおいては、「放送機関」とは「音もしくは……」というところにありますように、放送番組の内容へのかかわりということが、放送条約のテキストに書いてあるのと、我が国の著作権法で、特にそういうことが規定されていないというような、ちょっと微妙な差異がございます。ここはいろいろな委員の方からのご指摘を踏まえて、多少修正させていただいたところでございますけれども、我が国の著作権法の考え方としては、そういう放送番組のかかわりということが背景にございますので、最後の「以上より」というところで結論を書いておりますけれども、微妙な違いはあるものの、条約テキストは、我が国の著作権法制度の考え方におおむね沿ったものではないかということで、サポートしていくという考え方を示しております。
 それから、3ページの真ん中あたりから、保護の対象ということで、1のところが条約保護の対象を法人に限定すると。これも我が国の著作権法では、特に法人という規定がございませんことから、この違いをどう考えるかということでございますが、これも3ページの下から5行目ぐらいに書いておりますように、実態としては我が国で法人と規定されていなくとも、放送を行うためには一定の投資が必要であり、あと放送事業者として保護されるということは、裏を返せば、それなりの実態を持った企業として存在することは必要であるということで、特段の問題はないだろうということで、ここについては問題がないということを書いてございます。
  2の「放送機関」と「有線放送機関」を保護対象にするというのは、我が国と同じなので問題はないということでございます。
 4ページの3、ウェブキャスティングの取扱いということで、これまでの経緯としては、欧米とその他の国で、それぞれウェブキャスティングの取扱いをいろいろ挙げている提案があったわけでございますが、本年4月の議長提案の作業文書で2つの方法で提案されておりまして、真ん中より下のあたりですけれども、これらいずれの方法につきましても、ウェブキャスティングを保護の対象にするということについては強制ではない、というオプションでございますので、これについては、現状ではそれほど問題はないのではないかということです。イ)以下の検討の課題というところの内容でございますけれども、3行目で、我が国の著作権法では隣接権を同時送信の放送、有線放送に分けて考えておりまして、ウェブキャスティングのような視聴者からのアクセスということを必要とするような行為については、ちょっと別の法律上の概念を置いておりますことから、ウェブキャスティングを同じように保護できるかどうかというのは慎重な議論が必要ということでございます。議長提案の作業文書であれば非強制的保護でございますので、そのこと自身は、今、直ちに結論を出す必要はないのかもしれませんが、結論としては、我が国としても将来の国際的な議論に備えて引き続き検討を進める必要があるということでございます。非常に重要な論点なので、また引き続き議論が必要かと考えております。
 それから、(3)の支分権の内容、放送条約で保護される支分権として、1から4まで挙げておりますが、12がほぼ同じ論点でございます。今、現状、条約テキストで固定された放送の利用可能化権ということが挙げられているんですが、我が国では、固定されていない放送についても、利用可能化権で保護されておりますので、固定かどうかということを条件とすることなく、いずれも保護していくことは必要ではないかという考え方を示しております。
 それに対して、2の再送信権の付与については逆に条約テキストの再送信行為に放送、有線放送だけでなく、コンピュータネットワークを介した送信というものも入っているんですが、これは先ほどの利用可能化権と重複するところでございまして、また他の著作隣接権については、WPPTなどでは、そういった再送信行為まで保護されていないということとの整合性という観点からも、むしろ利用可能化権という形で保護していくのが望ましいのではないか、ということを書いてございます。
 それから、3、これも委員の方々からご意見をいただいたところなんですが、米国の提案で、固定後の二次利用について、禁止権の付与という選択肢が掲げられたというような提案があったところでございますが、これについて排他的許諾に対して禁止権というのはどういうことなのかというのを、ちょっとこの小委員会でもご議論いただいたと思いますが、現時点、とりあえずの案としては、米国の提案の趣旨がわからないということで、米国の提案について詳しく書くことは避けた案になっておりますけれども、そこをちょっとご議論いただければと思います。
 それから、その他の支分権は著作権法と対応しておりますので、特に問題ないだろうということでございます。
 (4)はちょっと送らせていただいた案では支分権として全部書いてしまったのですが、それでは整理が悪いだろうというご意見をいただいて分けさせていただいたところです。技術的保護手段と権利管理情報について、いずれも重要な論点でございます。暗号解除に関しましては、アクセスコントロールの問題がございまして、これは後ほど最後のデジタル課題のところでも出てまいりますが、我が国で著作権法ではアクセスコントロールについては著作権法の体系とどうなのかという問題と、あと不正競争防止法で保護されていることとの関連でどう考えるかという問題です。6ページの一番最後のところに結論でございますが、各国における議論の動向を踏まえながら、慎重に対応の状況を考慮しつつ検討を行うべきであるということでございます。
 それから、権利管理情報については、同様の規定ということで、必要であるということでございます。
 それから、3のフォークロアの保護でございます。これは7、8ページと経緯が書いてございまして、論点として9ページの2.のところから、どういう論点があるかということを紹介させていただいております。保護の目的と保護の方策と、それから制度の効力というあたりが、論点になってまいります。対応の方向性のところで、それぞれ考え方を書いてありますので、そちらの方で詳しくご紹介させていただきますが、10ページの3.のフォークロアの保護への対応の方向性ということで、フォークロアの保護の根拠としては、1、正当な対価を与える必要性、2、尊厳、文化的表現に対する尊厳を保証する必要性、それから、3、精神性のある文化的表現が失われずに次代に継承されることをする必要性、というあたりが述べられているわけでございます。
 これに対して、どのように考えるかということについては、1の対価を与えるというのは、知的財産制度が新たな創作活動に対しての独占による報酬ということで、逆に伝統的伝承の文化的表現というものに、そういう独占権を与えるというような知的財産制度の目的とは、むしろ逆になってしまうので、適当ではないのではないかということでございます。
 それから、2の文化的表現に対する尊厳という点につきましては、これはモラルとしてはそういう尊厳を尊重するということは重要であるということは認めた一方で、創作者というものがフォークロアについては特定できないので、人格権的保護というのは、制度になじまないのではないかというような考え方。他方で、著作権制度とは別の形で特別な権利、sui generisによる保護とか、そういったものについては考える余地があるんじゃないかということでございます。
 それから3の継承ということにつきましては、これについても著作権制度ということではなくて、国の文化財保護政策の一環として何らかの支援を行う、ということが考えられるのではないかということでございます。
 その次に書いてありますように、考え方としては、各国の地域特性とか文化にあわせて実施していくということで、柔軟性と包括性あるアプローチを進めるということです。ガイドラインのほか、モデル規定としての位置づけを中心に国際ハーモナイゼーションを目指すべきではないかという結論に達しております。
 その次は11ページ、アジア諸国等との連携の強化と海賊版対策のあり方でございます。ここについても、現状を書いておりまして、現状、行っている政策として11ページの一番下のところから、1がAPACEプログラム、2、FTA、EPA交渉、3が政府間協議というあたりを中心にやっております。
 さらに、アジア諸国でも海賊版対策についての連携がございまして、さらに、12ページの下から13ページのところでございますが、各国の海賊版の状況について、今、IFPIの2003年の調査の数字を挙げさせていただいておりますが、これは2004年版にアップデートできればしたいと考えております。
 いずれにいたしましても、韓国、台湾、香港、中国などで、非常に海賊版のシェアが高いということでございます。それに対して、我が国の取り組みは、(2)のところでございまして、知財本部を中心にさまざまな対策が進められ、先般の、下から10行目あたりですけれども、7月のグレンイーグルズサミットにおいても、特別声明ということで、海賊版対策について声明を採択したということでございます。
 それから、民間団体というか、CODAによっても、13ページの一番下のところですが、取り締まり権利執行活動に力を入れて実施させていただいておりまして、14ページの上のところですが、107件を摘発、59名の逮捕、DVD70万枚の押収という成果を上げられているということです。
 14ページのところで、連携の強化と海賊版対策への対応の方向性を書いておりますが、1番目として、侵害国への、個別に各国への働きかけ、それから(2)が、前提として著作権制度に対する理解がないと対策が進められないということで、普及の支援、(3)が、権利者自身が権利履行しないと、なかなか実際には守りようがないということで、権利行使をすることを支援していくということが重要だということでございます。
 それから、(4)官民の連携ということで、政府間での働きかけと民間における権利行使が一体としてやっていけるようなシンポジウムですとかセミナー、ミッションというようなことをやっていくことが重要ではないか。
 あるいは、権利を主に持っている利害の共通する欧米先進国とも連携していくことが重要ではないかというのが(5)のところでございます。
 以上がアジアとの連携でございます。
 それから、15ページの一番下のところから、デジタル化に伴う著作権の課題への対応のあり方ということでございまして、これは先日、私どもの方で、ちょっと繰り返した先日の話でございますけれども、まずデジタル化ということに対して、どういう新しい課題が起きているか、96年にはデジタル化、ネットワーク化に対応してWCT、WPPTが採択されて、デジタル化に対応した権利の保護の強化ということが進められているところなんですが、そこからさらに10年近くたって、さらなる技術が進歩したということで、特にPeer to peerによるファイル交換ということが、非常に著作権、コンテンツの流通ということに大きな影響を与えているということでございます。ちょうどこのページの真ん中のあたりに、下の注の6のところにありますように、ファイル交換掲載コンテンツのうち、約92パーセントが著作権のあるコンテンツが、今、交換されているのではないかという調査がございます。
 それに対して、逆にそれを保護する手段としてはDRMのような技術があるということで、これをうまく使えば、著作権の保護に非常に効果的である反面、その使い方をうまくやらなければ、相互運用性というか、それぞれのソフトごとのDRMで囲い込みのようなこと起きてしまうと、またそれは著作物の利用という関係も生じてまいるというので、これについてもどういうふうな考え方をしていくか、国際的に調和していかなければならないのではないかという問題意識でございます。
 それで、17ページ、デジタル化に伴う課題への対応ということで、まずファイル交換について、どのように対応していくかというところでございます。まず、(1)でファイル交換の種類は2種類、中央管理型と非中央管理型があるということでございまして、(2)で、どのような状況にあるかということをずうっと書いております。重要なところでは、17ページの一番下のところで、ファイル交換による権利侵害に対してどういう議論があるかというのをイ)とウ)で、直接的なというのと、間接的なという分け方でファイル交換した人と、それから、そういうファイル交換システムを提供した企業の責任についてそれぞれ分けて、どのような議論があるかということを書いてございまして、まず、直接的なというのは18ページの一番上のところで、アップロードとダウンロード、それぞれファイル交換に必要になってくるわけですけれども、アップロードに対しては、日本とドイツなどでは利用可能化権を侵害しているということで、ここで違法とすることは可能ということです。それに対してアメリカでは、利用可能化権がないので、頒布権とか複製権を使って適用している。逆にアップロードについて権利侵害には当たらない、という判例もカナダなどではあるというようなことでございます。
 それから、アップロードではなく、自分がとる方のダウンロードにつきましては、私的複製に当たるということであれば、我が国でも権利制限で、そこは違法にはならないということでございまして、これについては、国際的な状況との関係はどうかという問題が生じてくるわけでございます。それに対して、米国では権利制限について、どういうものが該当するかというのは、フェアユースということで書いておりますので、ダウンロードもフェアユースに該当しないということを権利者側に読まれる可能性がある。
 それから、ドイツでは、立法によってダウンロードを違法にしたという改正が行われたということでございます。これは直接侵害でございます。
 それから間接侵害、こちらがむしろ実際の運用上重要でございます。直接侵害をとらえていくことは非常に難しいということで、間接侵害をどういう法的構成で捉えるか、そのやり方に各国非常に苦心しているところでございます。米国が一番そういう動きが大きなところで、先日のグロクスター判決については、その前に判例として確立していたベーターマックス事件から、さらにグロクスターが控訴審判決ではそれを踏襲したものに対して、最高裁判決ではファイル交換システム提供者が助長・誘因したということに対して責任を求める、という判決が出たということでございます。
 それから、オランダではカザー事件判決で、侵害責任がないという判例が出ている。
 それから、我が国では、ファイルローグ事件で、これは間接かどうかというあれはありますけれども、ファイル交換サービス提供者を侵害の主体にとらえるという判決も出ております。
 こういったあたりも、今後、非常に重視していかなければならないというところでございます。これは間接侵害です。
 それから、挙証責任については、法定損害賠償制度というのが米国、カナダにはございますということを紹介してございます。
 (3)で、結論としてファイル交換に、国際的にどのように対応していくかということでございまして、日本でも国際的な議論の動向に合わせて、こういったものを放置しないということが必要でございまして、送信可能化権の適用、あるいは共同不法行為であるとか、民事法体系を使って、そういったものの取り締まりが行われていくということでございます。さらにそういったものについて、官民一体となって国際的にどういうふうに対応すべきかというハーモナイゼーションを進めていくことが必要ではないか。
 「さらに」というところでございますが、さらに適用法令ですとか、裁判管轄の問題について法制審議会の検討状況を踏まえて検討していくことが必要ではないか、ということを書いております。
 それから、最後19ページの下のところのDRMでございます。DRMが非常に急速に発達しているということで、ちょうど今日、iTunes(アイチューン)の発表があったということで、新しい音楽配信サービスですとか、携帯電話コンテンツのサービスが広がっていく上では不可欠な技術ではないかということで、普及が進んでいるということが(1)でございます。それを踏まえた各国の議論の状況が20ページの(2)のところでございまして、我が国の著作権法の技術的保護手段では、コピーコントロールの回避は規制対象になっているんですが、アクセスコントロールの回避ということについては、著作権法では法体系上、保護の対象になっていないということで、不正競争防止法でアクセスコントロール、専用機器への販売・輸出入が規制されているという状況になっております。
 次に米国ですが、米国ではDMCA(デジタル・ミレニアム・コピーライト・アクト)においては、アクセスコントロールについての技術的保護手段回避規制というのが定められているということでございますが、これをどの範囲で適用するかということについては、さらにさまざまな判例が出ているということで、米国がDRM保護規定をどの程度の位置にしようということについては、ちょっと揺れ動いているということが書いてございます。
 米国に次いでEUについて、21ページの8行目あたりのEUの状況ですが、EUではDRM保護について著作権指令第6条というものが出されているわけですが、これに対しての各国の立法の動きというのも注視していかなければならないということでございます。
 (3)、結論としてDRMについてどのように対応していくかというところでございますが、これについては、DRMの活用というのを適切な著作権保護に使っていくというのを積極的に対応していくことが重要であるということで、我が国の対応としては、3つ。1の、大前提として、それを各国に技術的保護手段に対する措置、あるいは権利管理情報に対する措置を講じることを求めるために、WCT等の条約への加盟を促していくというのが一番重要ではないか。
  2は、先ほどのファイル交換同様に、裁判管轄と準拠法の問題というのを明らかにしていく必要があるのではないか。
 それから、3として、これは各国ともどういう法律構成でやっていくか、どういう基準をつくっていくかというのを、まだ明確なところがないところでございますので、各国で調和して裁判や実務状況について意見交換を行って調和するということと、法的安定性を確保していくということが重要ではないか。
 それから、最後のところは、橋本委員から意見をいただいたとろでございますが、そういったものについて、民間がどういう技術の標準相互運用性を確保していくかというのを民間主体でやっていくということと、さらにそういったものをどういうふうに評価していくかというようなところについては、政府としても積極的に対応していくことが必要であるということでございます。以上でございます。
 参考資料として資料1から資料12までつけさせていただいております。

○道垣内主査 どうもありがとうございました。
 主題としては、4つで、2から5まででございまして、そのうちでも特に放送条約と最後のデジタル課題というのが、やや時間を要するかなと思いますが、本日の目的はこの報告書をまとめていただいて、9月の著作権分科会に提出するものとする、ということでございまして、事前にいただいてはおりますけれども、改めて、ですから、禁反言とかいうことは気になされずに、あるいは前に言ったけれども、同じことかもしれませんが、そういうものを構わず、しかし、具体的に文章に沿ってといいますか、ここはこうしたらいいんじゃないかという形でのご議論をいただければと思います。
 順次、2からやっていきたいと思いますが、その前に、私、今のことから考えまして、前のところ、タイトルと1のはじめに、のところですが、これは中間報告書になるんですかね。そうすると、最初のページのところに「中間」が入るんですね。

○事務局 はい。すみません。

○道垣内主査 それと、はじめにの冒頭のところで「平成16年9月2日から」と書いてありますが、この小委員会としては続いているということなんですか。前との中間だったんですか。昨年度末のものも。

○事務局 昨年末は、2枚紙で一応議論した課題だけを……

○道垣内主査 この中間というのは、最終もあるから中間なんですね。

○事務局 そうです。

○道垣内主査 ミッションはいつまでと決まっているんでしたか。

○事務局 著作権分科会の全体の最終報告は12月までに出すということで、全体に動いておりますので、それに合わせたいと思うんです。

○道垣内主査 そうすると、平成16年9月2日から始まり、今年の12月ですべて終わるということですね。

○事務局 はい、そうです。

○道垣内主査 そのときに最終報告書になるということですか。

○事務局 そういうことです。

○道垣内主査 わかりました。
 それでよろしゅうございましょうか。
 それでは、もう一度、はじめにのあたりについて、問題がないようでしたら、2のところからお願いしたいと思います。放送条約への対応のあり方について何かご意見がありましたら、おっしゃっていただけますでしょうか。
 3ページの引用している注の2がついているところですか、「略中」となっていますが、これは「中略」なんですかね。

○事務局 これは「中略」ですね。

○道垣内主査 あるいは「……」でもいいと思いますけれども、2カ所あります。
 そういうつまらないことではなくて、もっとほかのことで何かございましたら……。どうぞ、橋本委員。

○橋本委員 実際に議論をしたときにも申し上げたんですけれども、ここの文書であるように、ほとんどのものが、どうしても継続検討という形になっているんですけれども、2点あります。1つは、条約上の放送機関、もしくはその方針限定されている面、それとローマ条約で放送の定義はあっても、事業者が定義されていないという部分の記述が3ページにありますけれども、これはいろいろなところで話していることでもあるんですけれども、我が国でいうと、役務利用放送法という放送法上の放送事業者というのが存在していて、それが著作権上の立ち位置というのが、少なくとも放送に区分されないという、そういうねじれが生じています。したがって、各国のスタンダードである条約の条文は条文として、その背景にある、これはウェブキャストともつながるんですけれども、背景となる考え方と国内の法律がねじれを起こさないような議論というのをしていくべきだ、というのが私の意見の第1点目でございます。
 2点目は、ウェブキャスティングの取り扱いという意味合いでいうと、米国、EUという先進国とそれ以外という、概念の違いといいますか、背景となる技術力の違いというものがあって、そういう結果になっているんですが、日本は技術力でいうと、アメリカよりも、EUよりも優れている部分が、現実においてブロードバンドにおいては多々存在しているんですが、にもかかわらず、この分野における立ち位置というのが、後進国あるいは中進国と同等の立ち位置になっているという部分の背景にあることも、きちっと議論、検討されるべきだろうというふうに考えます。以上です。

○道垣内主査 今の点、何か文章上、こう書いたらいいのではないかという具体的なご意見につながりますか。

○橋本委員 一応、継続検討という記載が随所にありますので、その継続検討の内訳か何かというのが、実際にこの部分を議論したときには同じような結果に、コンセンサスを得た議論ではないであろうということなのかなというふうに解釈しているわけですけれども、一応意見としては、あらゆる機会を通じて私としては言いたいということもあって申し述べました。もし可能であるならば、書き方というのは、また検討できるかなとも思うんですが、ここの趣旨が放送条約に対する意見ということでいうと、国内法のねじれとか、そういうものを書く場ではないのかなというように理解しておりますので、文章自体には特にありません。

○道垣内主査 わかりました。どうもありがとうございました。
 そのほか、ございますでしょうか。どうぞ、増山委員。

○増山委員 6ページの3、放送の固定後の二次利用に係る権利でありますが、この部分に関しましては、アメリカの提案、いわゆる禁止権の付与の問題ですけれども、確かに平成16年12月17日付けの第2回小委員会で、これについて相当議論をしました。そのとき、アメリカがなぜ禁止権の付与を提案したのかについての説明があって、つまり、条約の保護の趣旨と関連しておりまして、これはコンテンツ保護なのか、それとも海賊版対策なのかという問題です。アメリカとしては、海賊版対策であれば禁止権を付与すればいいと。しかし、二次利用のことを考えれば、放送事業者により幅広い権利を、例えば貸与権だとか頒布権だとか、そういったものまでも付与してしまうとの考えもあります。実際、これはかなり重要な論点だと考えておりまして、今、この部分に関する記述は、非常に省かれており、いずれ9月にパブリックコメントを求めることになりますので、その時、読者の国民にとってはこの問題の背景についてよくわからないのではないでしょうか。それぞれ、各審議項目の過去の議事録を読んでコメントを書くという手もあるんですけれども、せっかくここで報告書をつくるんですから、ここでもうちょっと禁止権の付与の背景につきまして、説明内容を入れたらいかがでしょうか。私も過去の議事録を読み直したんですけれども、事務局はかなり詳細な説明をし、その上で議論が行われ、確かに上野委員も発言をされましたし、この辺、もうちょっと工夫はできないでしょうかなという意見が1つでございます。
 あともう一つ、次の7ページなんですが、2、権利管理情報に関する義務。細かいかもしれませんけれども、2行目の最後あたりに「電子すかし技術など権利管理情報に関する規定」、今の文言だと、電子すかし技術そのものが権利管理情報というふうに理解されるおそれがあるんじゃないでしょうか。この辺もっと、もし表現を工夫できたらいいなと思います。以上です。

○道垣内主査 どうもありがとうございました。
 それは対応可能でしょうか。

○事務局 はい。

○道垣内主査 ありがとうございました。
 そのほか、いかがですか。

○上原委員 電子すかしの方は、今、増山委員がおっしゃったとおり、電子すかし自体は、要するに情報を守るための技術だと思いますので、そこは間違いのない表現に訂正していただいたらいいと思いますが、米国の禁止権につきましては、私どもで前の議論で、事務局からも、たしかかなりあったんですが、私自身が聞いたWIPOのスタンディングコミッティ(SCCR)での米国の発言からすると、米国はそこまで詳細に述べていなかった部分が、少なくともSCCRの本体での議論ではあるので、その辺をどこまで書いたらいいのかというあたりがいささか難しい。つまり米国の意図を忖度してまで説明するのか、あるいはSCCRの席で出ていた米国の発言に即したところでとどめるのか。とどめると、ある意味、増山委員が今おっしゃったパブリックコメントのときに、一般の方がわかりにくい部分にはなるかとは思いますが、実際、アメリカ自身がSCCRの公式発言としては、余り細かい説明、むしろどちらかというと、海賊対策であるのだから、禁止権だけで結構だよ、ということだけしか言っていなくて、もし、その理屈が本当に全部に通るのであれば、もともとSCCRにおける議論が、本条約自体が海賊行為に対する対応に主眼があるということで、ローマ条約のアップデート、デジタルネットワーク時代への対応ということで検討されておりますので、であるならば、再放送権やその他の権利についても全部禁止権で済んでしまう部分もあるんじゃないかというところがあろうかと思うんですね。その辺ちょっと、米国の趣旨自体があいまいなので、書き方としては非常に難しいんではないかなと。ちょっと工夫をどうされるのかなという問題があろうかなと思います。
 増山委員のご趣旨としては理解できるところもありますが、私自身が聞いた限りでは、SCCRでは、米国はそこまで、逆にこの委員会で事務局がご説明いただいたほどまで踏み込んでの発言がなかったな、というふうに記憶しているんですが、増山委員も毎回SCCRに出ていらっしゃいますので、どの様にお聞きになっておられますでしょうか。

○道垣内主査 どうですか、増山委員。

○増山委員 今、上原委員がおっしゃった部分は、多分、WIPOでの議論において、アメリカの提案に関する理解の違いによるものじゃないかと思います。アメリカは決して放送事業者を保護しないのではなくて、放送の目的を達成すれば、その後は無許諾の固定物の複製について排他的な複製権を持っていれば十分ですと。それ以外の利用については、海賊版対策であれば禁止権を付与すること、これはアメリカの提案が非常に明確に示しているわけです。これは実際、放送条約の保護の趣旨の部分に関しては、随分議論があったわけなんです。
 私はここでアメリカの提案趣旨を国民の皆さんに、ああだこうだと解説をするのではなくて、WIPOでの議論においては、少なくともこのような経緯で保護の趣旨に関して違う提案があると、その背景をある程度説明すれば、場合によっては我々よりも詳しい読者がいるかもしれませんので、いい意見とコメントが得られるんじゃないかなと期待しております。

○道垣内主査 それはわかりやすくするということでよろしいでしょうか。それとアメリカがそこまでは言っていないという点ですが、ややずれているかもしれませんけれども、間違いでなければ、よろしいんでしょうか。

○上原委員 間違いでなければわかりやすく書いていただく分には構わなくて、逆にSCCRの説明がこの程度だけれども、アメリカのこういう意味が込められているという書き分け方をしていただいても、誤解がなくていいかと思います。ただ、今の増山委員のお話に絡んで申し上げますと、今回の、アメリカ以外の他国も、基本的にはすべてコンテンツではなくてシグナルのパイラシーに対抗するために本条約を締結されるのであるということを言った上で、禁止権ではなくて許諾権で行くべきという発言をしておりますので、アメリカの趣旨をそこで強調しますと、アメリカ以外の他国が、あくまで海賊版対策で許諾権で行きましょうと言っていることの意味が、逆に消えてしまうといけませんので、そこの部分が消えないような書き振りにしていただければと思います。

○道垣内主査 そこは工夫をしていただくということでよろしゅうございますか。

○事務局 はい。では、ご相談させていただければ。

○道垣内主査 そのほか、この件につきまして何かありますか。どうぞ。

○石井委員 この放送条約の考え方については、私も基本的にこの記述で問題ないというふうに考えております。今、増山委員から指摘のありましたところにつきましては、この書き振りで私は十分だとは思いますけれども、確かに、何で米国がそういう提案をしてきた、というところが若干わかりにくいというところもありますので、必要があれば、海賊版対策にはそれで十分ではないかという背景があるのではないかということをやっていただいても、全く差し支えないのではないかなというふうに考えおります。
 それから、橋本委員のご発言について幾つか申し上げさせていただきますけれども、この中間報告とは直接関係がなくなるかもしれませんけれども、役務利用放送の件ですけれども、役務利用放送であっても、今の著作権法上、放送あるいは有線放送に見なされる場合というのは、あるのではないかなというふうに私は理解しております。
 それから、EUの提案で、放送機関からが放送と同時ネット上で行うウェブキャスティングについてのみ記述しているということですけれども、これは放送機関にとっては大変都合のいい提案ではあるんですけれども、逆に、その他のウェブキャスティング機関を排除すると、差を設けてしまうということになっておりますので、我が国はそれとは一線を画するというか、必ずしも技術的な先進国というものにふさわしくない、ということではないのではないかというふうに考えております。もちろんウェブキャスティングをどう扱うかについては、今、さまざま状況がございますので、今後の検討が必要だというふうに考えております。

○道垣内主査 ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、続きまして、7ページ、3、フォークロアにつきましてご意見をいただければと思います。用語の点ですが、WIPOではTCEsと呼ばれているけれども、ここではフォークロアという言葉を使いますということがはじめの方に書いてあるわけですが、9ページあたりになると、またTCEsが出てきていますね。WIPOの中の議論を紹介する場合にはともかくとして、そうでないところについては、一貫してフォークロアでいいんじゃないかと思います。そういう方針でよろしいでしょうか。
 何か内容につきましてございますでしょうか。どうぞ。

○大楽委員 9ページと、もう1カ所にあったと思うんですが、「特別な権利」について、"sui generis"という表現との組み合わせ方がちょっと落ちつかない感じですので、「特別な」の後に、"sui generis"をおくか、または「特別な権利(sui generis rights)」もしくは「特別な保護(sui generis protection)」などとされるといいかなと思います。

○道垣内主査 そのほか、何かありますでしょうか。

○井上委員 ちょっと今までの議論にきっちりついていっていないかと思いますので教えていただきたいということなんですが、10ページのところで、上から六、七行目に、「こうした制度を活用する『柔軟性と包括性』の原則については、多くの国々から支持が得られている」というふうに書いてございますが、9ページの1行目あたりを見ますと、「『包括性』と『柔軟性』の原則を尊重する先進国を中心とする国々と途上国との間ではうまく結論が出なかった」というふうに書いてありまして、さらっと読んでいきますと、10ページのところで「多くの国々の支持が得られた」とあり、先の表現と整合性がとれないように思え、読んでいてちょっと引っかかりました。このあたりをもう少し明確に表現していただければと思います。
 それから、もう一点でございますが、10ページの下の方でございますが、「対応の方向性」のところで、フォークロアの保護の根拠を言われているところを3つ挙げて、それに対してコメントを付すという形になっておりますけれども、対応の方向性として1に関してということで、「知的財産制度の目的にかんがみて適当ではない」というふうに書いてございますが、知的財産制度といいますと、例えば標識ですとか、不正競争防止法のようなものも入ってしまいかねないような気もしまして、そのところを見ますと、著作権類似の制度を創設するとまずいということですので、創作法というのを、当然念頭に置いていると思いますので、「著作権制度」にするなり何なり、ちょっと限定していただいた方がわかりやすいのかなと思いました。
 同じようなことなんですが、その次のところで、「2については」ということで、創作者を特定できないのに人格権的な保護を与えることは制度上本来なじまない、といっているわけですが、これは創作法、特に著作権法のもとで、創作者というものを特定して、その創作者の人格権的な保護を守るのが著作権法の1つの目的だというところを前提にしまして、創作者を特定できないようなフォークロアについては、これになじまないというふうに言っているわけですから、「制度上」というところに「著作権の制度上」というような限定を付していただいた方が、わかりよいのではないかなと思いました。以上です。

○道垣内主査 最初の柔軟性と包括性の原則については事実認識の問題ではありますが、主観も入るので、何かご説明をいただくことございますか。

○事務局 委員の先生方にWIPOのIGCの会合のフォローをしていただいていますので、追加できればと思いますが、私の理解では、前半の9ページの当初に書いてございますのは、まず先進国は包括性と柔軟性の原則ということを尊重すれば、いわゆる条約のような法的な拘束力のあるものを新たに設ける必要はないのではないか、という主張をしておりまして、それに対して途上国の方は、包括性と柔軟性ということは、もちろん大事だけれども、フォークロアを保護するためには特別な権利のような形を創設することを法的な拘束力を持ったもとで、各国の国内規範をつくっていくことが必要だ、ということを主張しているということが対立としてあるということを書いております。
 10ページの(2)の一番最後のところにありますのは、それにおいても、こういったいろいろな取り組みによってフォークロアの保護をしていくということ自体について、何ら反対するものではないということで、その意味では途上国も含めて多くの国からの支持が得られているということを言っているものでございます。
 ただ、ご指摘のような、若干論理としてつながらない点もあろうかと思いますし、10ページの方はもう少し記述を丁寧に書いた方がいいかもしれないと思っております。

○道垣内主査 9ページの方も、その原則に加えて法的拘束力も必要だというのが必要であれば、そのように対処して、少なくとも前者については一致が得られているというか、ほぼコンセンサスを得られているというものであると思います。
 それから、10ページの下の方の知的財産権制度、あるいは単に制度と書いてあるところについても、著作権等の制度ということであれば、そうなんですが、ただ、この10ページの但書のところとあわせてみると、これは1と2に両方に絡んだ話なのでしょうか。それとも2だけに関係することなのでしょうか。そこもちょっとわかりにくいような気がします。次に3があるので、2だけにかかっているのでしょうか。別に創作法としては不適当だというのと、では別のハードな枠組みをつくったらどうかというのは、対立関係にあるということですね。そういった点を含めてご調整いただくということで、井上委員、よろしゅうございますでしょうか。

○井上委員 はい。

○道垣内主査 そのほか何かございますでしょうか。どうぞ。

○上原委員 今のところで、これは逆にどう書いたらいいのかという具体的なところですが、(3)の今のIGC会合のところですけれども、確かにIGC会合、毎回毎回、バインディングを求める途上国とノーバインディングを求める先進国との対立がずうっと継続している部分はあるんですが、ある意味、非常にわかりやすくするためには、前回のIGCが、とりわけ最初から最後までそれで終始して物別れに終わっているという経緯がございますので、今までのIGC会合では、フレキシビリティを基本としつつもどのような対応をすべきかが議論されてきたが、前回会合では、途上国を中心として拘束力を求めたのに対し、先進国側は、あくまで拘束力のない柔軟な制度にするべきと議論に終始したという形で、前回の会合のことをきちんと決め込んで書いてあげるとわかりやすいのかなと。流れとしては、前回の会合以外の、確かにその対立がずうっとあったんですが、極めて表面的にばしっと出ているのは前回だったと思うので、そういう書き方をされたら、読まれる側がわかりやすいんじゃないかなと思いましたが、大楽先生、いかがですか。

○大楽委員 たまたま今回参加しておりましたので、その印象をお話し申し上げます。私、8回目で初めて参加したのですが、前回7回目までは、そういうふうだったのかもしれませんが、今回は、まさに上原さんがおっしゃったような感じで、9ページの1行目の最後から前半部分は、余り出ておりませんでした。途上国側は、強硬派を中心として、かなり多くの国々が"legally binding international instrument(法的拘束力のある国際的文書、LBII)"を要求し続け、一方、反対する側は、「包括・柔軟性の原則」の主張というよりは、むしろ一歩後退して、「例えば「創作者をどう考えるか」とか「保護期間」といった、非常に基本的な問題について依然として議論が尽くされていないのにLBIIを求める意見には賛成できない」というスタンスから一歩も引かない。双方にらみ合いのうちに終わってしまったという印象でした。

○道垣内主査 今、お話されたようなニュアンスが出るでしょうか。またご相談いただきながら調整していただきたいと思います。よろしゅうございますか。
 それでは、4の海賊版のところでございます。11ページ以下でありますけれども、何かございましょうか。書かれていることは、すべてごもっともですが、しかし、実施の点が問題だと思います。
 どうぞ、高杉委員。

○高杉委員 先程、事務局の方からも触れていただきましたけれども、13ページの上から4行目のところに、国際レコード産業連盟の調査による2003年の各国のいわゆる海賊版比率が載っておりますけれども、2004年の数字がわかりましたので、ご報告をさせていただきたいと思います。
 韓国が16パーセント、台湾が36パーセント、香港が19パーセント、中国が85パーセントという数字でございます。2003年においても香港は10パーセント〜24パーセントの海賊版比率でしたので、2003年時点の香港の50パーセントという数字は、私どもの方で提供したデータかもしれませんが、間違っていたと思います。2004年の調査では19パーセントという数字でございます。

○道垣内主査 著しい改善すぎますからね。

○大楽委員 14ページなかばの(2)のJICA(ジャイカ)の研修の名前は、これでよろしかったですか。

○事務局 すみません、これは「集団研修」です。

○道垣内主査 16ページの注6のところですが、注6の3行目のところの「著作物」というのは、「著作権で保護される著作物」というようになさった方がいいのかなと思います。

○菅原委員 12ページのFTA、EPAのところの書き振りですけれども、頭のところは「アジア諸国との締結については」と記載していますが、本文では「これまでシンガポールとメキシコとの間で締結した」となっています。頭の「アジア諸国との」を取ってしまえば、次の段にはアジア諸国と書いていますから、その方がよろしいかと思います。

○道垣内主査 はい。そのほか何かございますでしょうか。
 それでは、最後の大きな項目ですが、15ページの一番下のところからの、デジタル化に伴う著作権の課題という項目です。ここは国際小委員会委員でございますので、その点の一応縛りがあるという中で、ここまでは書けるのだろうということでございますが、いかがでしょうか。どうぞ。

○児玉委員 20ページあたりから、各国のDRMに対する議論の動向というところですけれども、各国ということで、我が国のことも入れておいていただければと思います。この中にありますようにアクセスコントロールについては、現在、不正競争防止法の対象になっているだけであって、著作権法の方には対象になっていませんが、法制問題小委員会の下のデジタル対応ワーキンググループで、アクセスコントロールを、著作権法の規制の対象にできないかという検討を既に行っております。一応今年においては、早急に著作権法を改正する必要はないという結論を出していますけれども、先日の法制問題小委員会で報告されたところでは、継続審議という格好になっていますので、我が国の中でアクセスコントロールについての著作権法の規制の対象にしてほしい、という意見もあるというようなことを、この辺に加えていただければと思います。

○道垣内主査 ありがとうございました。

○山地委員 確かにアクセスコントロールと著作権の関係について継続して検討することになっているのは事実ですから、その記述をつけ加えることは差し支えありません。
 ついでに、もう一点コメントしたいのですが、今のところと関連する20ページの(2)の3行目の「アクセスコントロール回避のみ」という表現があるのですけれども、たしか、これはいろいろ議論をして、「のみ」ではなく「専ら」という言葉にしたような記憶があります。「専ら」と「のみ」との違いは、たしか記憶では「のみ」の方が狭くて、「専ら」の方が少し広いという議論があった上で、「のみ」をやめて「専ら」としたような記憶があるので、それを確認しておいて下さい。

○道垣内主査 前段のところについては、(2)のタイトルが現状というよりは動向なのでしょう。

○事務局 その件、もしご異論なければ、何か適当な修文をということなんですか。

○道垣内主査 そうですね。

○事務局 デジタルのワーキングチームの方での意見としては、アクセスコントロールを著作権法の対象に加えたらどうかという意見と同時に、アクセスコントロールについて、法体系全体の問題というのがあるという意見もあって、今後さらに検討となっているということがありますので、書くとすれば、両方書かないと、1つの意見だけ書くと、何かちょっと法制小委員会の方と平仄が合わなくなりますので、その辺をちょっと。

○道垣内主査 はい。そのほか、何か……。どうぞ、上原委員。

○上原委員 案をいただいたときから文章に即して書き足すには、どこに書いていただいたらいいのか、すごく悩んでおるんですが、どこにというのはちょっと後であれしまして、趣旨といたしましては、実はファイル交換の問題のときに、私、申し上げさせていただいたと思いますが、基本的にWCT、WPPTの条約上の利用可能化権というものを、日本の送信可能化権のように、きっちりとした形で国内法に落としていただけると、まず第一にそこで、現実にどこまでエンフォース出来るかという問題は別にして、違法化が明確になる。これをとりあえず国際的にまずは基本として持っているべきではないか。当然、それですべてが足りるということではなくて、それ以外に各国がいろいろと工夫している間接侵害であったり、あるいは新しい考え方としてダウンロードの違法化という議論は、当然していくべきであると考えておりますが、まず出発点として、条約の利用可能化権をきちんと日本の送信可能化権のように法律に落とすことによって、国際的に条約で担保された権利を持って、P2P(ピアツーピア)を違法化するということを求めていいというところが、まずベースにあってほしいなと思っております。それをどこに入れるかということですが、また難しいところで、この文章で見ていきますと、17ページのイ)の「直接的な侵害」に関する議論の動向の続きのところでは、18ページの頭の方に、そこのあたりでカナダでは利用可能化権が国内法にないのでP2P(ピアツーピア)が合法と判断された判例もあるみたいなことがありますので、その辺で「利用可能化権をWCT、WPPTの批准とともに、そこにある利用可能化権をきちんと国内法に落とすことによって、このような実例がなくなっていくことが望まれる」というような書き方なのか、あるいは19ページの(3)、ファイル交換に関連する国際的対応のあり方というところで、「著作権法の送信可能化権を適用したり、我が国の民事法体系を適用したりすることにより対応することになる。『なお国際的には、条約上の利用可能化権を明確に送信可能化権のような形で国内法に落とすことによって、P2P(ピアツーピア)に対する基本的な対応のべースをつくることが求められる』」というような、どちらかにしていただけたらと。あくまでこれを出発点ということでございますが、出発点としてはいい案だと思っておりますので、お願いしたいと思っております。

○道垣内主査 どうぞ。

○橋本委員 今のご意見について一言言っておくと、私も著作権法の成り立ちというのは、結構それなりに、おかげさまで勉強させていただいたんですけれども、技術基準、技術判断の領域に踏み込むことは基本的に避けていただきたいということを強く感じます。いわゆる自動公衆送信権となるものは、世界水準でいうと、多分、どこも追随しないと思います。なぜかというと、技術自体にふたをするような結果になりがちであるからです。そういうことをフランスやイタリア、あるいはイギリスの事業者からしょっちゅう話を聞いております。きちっと技術として、それが認識、認定できる制度的あるいは技術的な予算の手当等ができないのに、技術を判断基準にすべきではない。要するに余り技術面にこだわる形にならざるを得ないような概念というものを認めるというのは、私は軽々にするべきではなくて、各国の放送の定義もそうですけれども、あくまでも目的として定義されているものに、技術的なものを安易に導入するというのは、私としては反対でございます。

○道垣内主査 その点につきまして、ほかの方。どうぞ。

○上原委員 橋本委員のおっしゃられるのは、それはそれでいいと思いますが、私が申し上げているのは、自動公衆通信権を書き込んでくれということではありませんで、あくまで利用可能化権をきちんと落とすということで、カナダのようにそれが落としていないがゆえに違法性が認められない判例が出てきたということですので、そんなことがないようにという意味で、私の提案としては、自動公衆送信権ということまでは言ってはおりございません。

○道垣内主査 今の、結局、条約上の義務の範囲、その限度できちんと対応すべきだということですね。

○上原委員 まだ十分にし切れていない国がありますので、そこを出発点にすべきだということです。

○道垣内主査 ほかにありますでしょうか。どうぞ。

○井上委員 サブスタンスではないんですけれども、読ませていただいておりますと、各国の最高裁判決ですとか、個別に挙げているものが幾つかあるわけですが、その引用があった方がいいのかなというふうに思います。資料の方についているのかなと思ったんですが、資料の方も特にないようなので、どちらかに正確な引用をつけていただいた方が親切かなということです。
 あと、17ページ等に、そのファイルローグですとかナップスターですとか、いろいろなシステムの名称が挙げられているわけですが、これは片仮名になっているところと、ローマ字標記になっているものが混在していますね。どういうご方針でなっているのかなというのが、ちょっとパッと見たときに不思議に思いましたので、その辺、どちらも書くのか、あるいはどちらかに統一するのがよろしいかなというふうな気がいたしました。

○道垣内主査 注を幾つか使っているので、注でかなりのところが、さらに参考資料のところもわかるように、これだって注がないと、何のことかわからないという人もいるかもしれませんけれども、全部つけていると大変でしょうし、適当にわかるようにしていただきたいと思います。
 ほかにございますでしょうか。
 私の方から、21ページに裁判管轄と準拠法のところがあって、ご説明のときに、ハーグ国際私法会議の条約はもうできちゃって、裁判管轄の合意だけになりましたというので、法制審議会だけをリファーしていてもいいんじゃないかと申し上げたんですが、法制審議会も7月にばたばたと2つ終わってしまいまして、国際裁判管轄部会と国際私法現代化部会、いずれも答申案を求めて終わりました。「法制審議会の検討状況等を参考にしながら」と「等」がついているので、よさそうではありますが、ここで国際小委員会ですので、国際的な場での議論を参考にしながらとか、あるいは注視しながらとかということで、特に知的財産権については、ドイツのマックス・プランクとか、ニューヨークの大学の先生とかが中心になって、幾つか案を考えたりされていますので、そういうシンポジウム等も幾つか開かれているので、だんだんと時期が来ればという話になるかもしれませんし、そのことを念頭にちょっと書き直しいただければと思います。「等」は残しておいていただければと思っているんですが。いくつかあるでしょうから。
 ほかにございますでしょうか。どうぞ。

○平嶋委員 ファイル交換に関係してちょっと指摘ということで、これについては大体において内容的な異論はございませんが、言い回しという意味で若干指摘させていただきたいと思います。まず表現で少し気になったのが、19ページの(3)に「違法行為を助長するファイル交換システムを提供する行為を放置することは適当ではない」。これは読むと本当にそのとおりだというところなのですが、ここがある意味でファイル交換をめぐる問題の本質のようなところがある、つまり違法行為となるのかどうかというところの評価というところが、すごく実質的な価値の判断を伴うというところがありまして、多分、小委員会の議論の事務局のペーパーのところでも、ファイル交換のシステム自体としては、それなりに一応の有益な使い方があって、そのシステムをどう使うかという使い方によっては、ある意味では違法になる場合もあるし、そうじゃない場合のもあって、そういうものが混在するということがあったのだと思います。もちろん、そういう使い方もあるのじゃないかということで、17ページの真ん中辺、(2)の1のところに、ファイル交換の特徴として、最適化が図られたりするというプラスの面も提起されているのですが、そういう点、この報告書案では、どちらかというと、もっぱら違法行為をどうするかという方向性で進んでいるんですけれども、そうでない部分もあって、そもそもそれとどう切り分けていくかという議論というのも、本来は多少かなりあるのではないかなということであります。感想というか、指摘にすぎないことでありますけれども。

○道垣内主査 法制小委員会の方でもそういう議論をされているんですよね。そうじゃないですか。そこのところ、知りませんけれども。今の点、そのニュアンス、要するに、適用な利用があって、そこは害さないようにというようなことが出た方がいいということですか。

○平嶋委員 はい、そういう要素もあるのかなというところの記述が、これだとちょっと見えにくいかなという側面があると思います。17ページのところで、そこはちらっと書かれていらっしゃるので、19ページの先ほどの文章も、意味として、言わんとするところは全くそのとおりということではあるのですが、そうでない側面というのも、あるのではないかということです。むしろ、どういう形でそれを盛り込むかというのは難しいと思うのですが、多少そういう検討も要するのではないかということでありますけれども。

○橋本委員 これはファイル交換の定義ですね。ファイル交換全般の説明のところと分けてみると、違法ファイル交換とか、そういう固有名詞的な使い方をされると、全体のファイル交換という説明の部分の信頼性というか、例えば19ページの(3)あたりなんかは、違法ファイル交換という言い方をされたりしますけれども。

○道垣内主査 17ページでファイル交換と定義されているので、それとの関係で違法なファイル交換と、何を違法というかが問題だと思いますけれども、違法というのでよろしいんですね。違法かどうかを決めるときに、違法というのも何か……

○橋本委員 難しいところですね。

○道垣内主査 そこは工夫……。どうぞ。

○山地委員 関連して、私も平嶋委員の意見に賛成する者です。今の文章の問題は、2行目のところはファイル交換……

○道垣内主査 何ページでしょうか。

○山地委員 19ページです。(3)の2行目、「ファイル交換を行う行為」となっています。その次の行では、「ファイル交換システムを提供する行為」となっています。この文脈では、システムの提供する行為が違法であるということになっています。確かにウィニーの事件では、そういうことに、正確に言うと、ソフトウエアを開発したことを問題にされていますが、ただ、あれは刑事事件なので、著作権の文脈とは少し違うところがあると思います。ファイル交換をする行為と、プログラムを開発したり、システムを提供したりする行為とは、基本的に違う性質があるので、両方まとめて違法という言葉でくくるのは問題があるように、私も思います。

○道垣内主査 事務局から何か。

○事務局 ここのコンセンサスの問題でもあると思うのであれですけれども、ファイル交換システムをとらえていくべきだという、要するにアップロード、ダウンロードの場面じゃなく、ファイル交換システム自身も抑えていく必要があるという価値判断自身がどうなのか、という問題が、まずあるかと思います。

○道垣内主査 そうです。これは審議会でも交換自体がどうなのかについては、意見が必ずしも一致はしていなかったと思いますけれども、システム提供の方はだめだということですか。そこは一致しているんでしょうか。

○山地委員 どちらもコンセンサスがあるわけではないのですが、著作権が付与されている著作物を無許諾でファイル交換する行為は、どちらかというと違法であるという意見の方が多数だと思います。しかし、そのファイル交換のためのプログラムを開発したり、システムを提供したりする行為は、どちらかというと違法ではないのではないかという意見の方が多いのが現状だと思います。ですから、それを両方区別しないで、「違法だから問題なので検討していけ」というニュアンスで一くくりにしてしまうのは、言い過ぎではないかというコメントです。

○道垣内主査 わかりました。ただ、ここの文章は、違法行為を助長するというのが後者にはかかっているので、それは適法行為のためのプログラムであれば、また別だということになるかもしれません。どうぞ。

○上原委員 大変コンセンサスがないままに議論が非常に沸騰した会議だったと思いますので、まとめるのが一番難しい会議であろうと個人的にも思いますが、基本的には私は山地委員や平嶋委員がおっしゃっていることはよく理解できるところでありまして、ファイル交換そのものにおいても、果たしてそれが違法であるかどうかという評価が個別に違ってくる部分があって、ファイル交換だから全部アウトだということではない。そういう問題点を明確にさせるために出したどなたからのご質問で、久保田委員からのご質問だったと思いますが、逆に言うと、完全に合法的な役に立つファイル交換とは何だろうという話があって、山地委員の方から、いわゆるIP電話がその一番いい例である、というようなお話があったと思うんです。したがいまして、無許諾で著作物のファイル交換を行う行為、これについては明らかに問題があるわけだと思いますので、無許諾で著作物のファイル交換を行う行為というのはいいと思うんですが、その後で違法行為を助長するファイル交換システムという意味でいっているところでは、非常に難しくて、恐らくは、前のページでいえば、間接侵害にかかわる部分との流れが混乱してしまっているのではないか。間接侵害としてとらえられるという形で、いろいろやられている例がありますという議論が大変なされたわけですが、それがエンフォースメントの上ではなかなか役に立つであろうということで研究的な議論が行われたということですが、それをもって著作権保護制度の中におけるファイル交換のプログラム自体が違法なものであるということの議論にはなっていなかったと思いますので、そこを書き分けていただいたらいいのではないかというふうに思いますが、そういうことですよね、山地委員がおっしゃっているのは。

○山地委員 そうです、そうです。

○事務局 高杉委員あたり、よろしければ、ファイル交換システム提供自身も、もうちょっとトーンダウンした書き方も可能ですが。

○高杉委員 今、上原委員がおっしゃった点について、私も基本的には同じ考えです。ここの(3)のファイル交換に関連する国際的対応のあり方というのは、(2)を受けてまとめられていることなので、確かに(2)のところで、間接侵害の議論とか、いろいろ書いていますので、直接的な侵害行為者じゃない、場の提供者というか、そういう行為を行う者についても、何らか触れなければいけないということで、こういう形になったと思うんですが、ファイル交換システムを提供する行為自体は、白黒、どちらかというと白の行為で、ただ、そこで提供される行為が、提供の仕方によっては黒になるということだけですので、書き方をちょっと工夫すればよろしいと思います。

○道垣内主査 どうぞ。

○上野委員 ここの部分では我が国における対応のあり方が記述されていると思うんですけれども、文章表現に関しましては、たとえば、他人の著作物を無断でファイル交換することは違法であることは明らかであるが、そうした違法なファイル交換を行う行為のみならず、違法行為を助長等するシステム等を提供する行為に対しても、著作権法上の送信可能化権を適用したり、我が国の民事法体系を適用したり、――ちなみにこの「法体系を適用する」という表現はちょっとおかしいように思いますけれども――、そういうことによって対応していく可能性がある、というような記述にするという方法もあろうかと思います。

○道垣内主査 どうぞ。

○山地委員 もう一つ、コメントさせていただきますが、「違法行為を助長するファイル交換システム」という言い方は正しいというニュアンスのご発言がありましたが、私はそう思っておりません。こう書くと、「ファイル交換システムは、すべからく違法行為を助長するものである」というふうにも読めますが、現実はそうではないです。全く合法目的にしか使われないファイル交換システムというのもたくさんあるわけです。こう言われると、「ファイル交換システムはすべて間接侵害だ」というニュアンスですが、それはミスリーディングだと思うというコメントです。
 例えば、BitTorrentというシステムがあります。これは違法行為にも使われているけれども、全く合法にも使われている。P2P(ピアツーピア)アプリケーションであるスカイプ・テクノロジーズのIP電話はすべて合法目的にしか使われていない。

○道垣内主査 それは私がちょっとさっきちらっと申し上げたんですが、私は読み方が違っていて、ゲインテイクとしての、要するに適法のものもあるけれども、違法行為を助長するシステムについて書いている。それを普通の形容詞で必ず読みから……

○山地 まあ、読み方から入るんです。

○道垣内主査 そうですね。前田委員、どうぞ。

○前田委員 今の点を明確にするためには、「ファイル交換システムのうち違法行為を助長するものを提供する行為を」としておけばよいのではないでしょうか。

○道垣内主査 それは最小限ですけれども、もっと工夫していただければ。どうぞ。

○上野委員 今のような表現でも結構かと思いますけれども、「ファイル交換」という言葉と「P2P(ピアツーピア)」という言葉の使い分けが、もしできるのだとすれば、そのあたりを明確にする方法もあるのではないでしょうか。そもそも、IP電話というのは本当にファイル交換なんでしょうか。たしかに、IP電話はP2P(ピアツーピア)技術を使っていると言えるとは思いますけれども。もしそれがファイル交換ではないと言えるとすれば、「P2P(ピアツーピア)」と「ファイル交換」を分けることによって書き分けができれば、そういう方法もあろうかと思います。

○山地委員 これも人によって解釈が違うのかもしれませんが、ウェブなどで読んでいると、IP電話はP2P(ピアツーピア)ファイル交換技術を用いているのは間違いありません。ファイルというものをどうとらえるかですが、ファイル交換だといっているのは、音声をアナログからデジタルに変換し、そのデジタルデータをパケット化して送る。それが音声ファイルを送っているのだという理解です。したがって、SkypeのIP電話は、P2P(ピアツーピア)技術を使ったファイル交換である、そういう意味で、私は、今申し上げました。
 ただ、ファイルと言われると、「コンピュータのディスクの中にデジタル情報で記録されているものだ」という解釈を仮にされるのだとすると、しゃべった声はファイルではないのではないかというご質問かと思います。これは技術論争になって、少し深入り過ぎるかもしれないと思います。ただ、私は、スカイプ・テクノロジーズのIP電話も、ファイル交換の一種だという議論が多いと理解しています。

○奥邨委員 私も今の点、若干補足しますと、P2P(ピアツーピア)というのは、ネットワークの構成としてピアとピアがつながっているということを言っているだけの物理的な世界の話ですから、その上で、どのようなアプリケーションを実行するかは別なのです。ファイル交換は、P2P(ピアツーピア)でなくても電子メールでの交換もあれば、サーバーを立てるということもあり得るわけです。また、インターネットが普及するずうっと前の段階では、一般的に使っている社内のネットワークというのは、Peer to Peerだったという言い方もできます。いずれにしましても、P2P(ピアツーピア)というのは物理的な部分だけでして、P2P(ピアツーピア)ファイル交換といわれるものは、ワンセットで考えるべきで、P2P(ピアツーピア)とファイル交換を分けてしまうとここでの問題としているものとしては、少し違ってくるのかなというふうに思います。

○道垣内主査 まとめられませんが、今のをまとめると、また何かご意見が出そうですから、今の話をすべてドラフトしていただいた上で、もう一回ご相談……

○事務局 要するに、基本的にファイル交換のメリットを出して、すべてが悪いんじゃないというトーンを出せば、大体ここのコンセンサスということでよろしいですね。

○道垣内主査 誤解のない表現に……。
 ほかに何かございますでしょうか。
 私、さっき申し上げた19ページの(3)の一番最後のところにも似たようなことが、また出てきますので、ここも法制審議会が終わってしまっているとすると、ちょっと適当じゃないかもしれません。
 そのほか、ご意見ございませんでしたら、もう一回全体にわたってご注意いただく点、ございますでしょうか。参考資料は、これはリファーなしでつけるのが普通ですか。本文との対応関係はないですか。本文中には、ここを見ろとは出てこないですが、これはそういうものですかね。対応箇所で、ここを見れば詳しく書いてある、みたいな注をつけることも考えられますけれども、すべてがそういう資料でもないので、なかなかそこは難しいかもしれませんが。

○事務局 その方がよろしければ。

○道垣内主査 ですから、ここに来て初めて、ああ、こんなのがついていたのだったらわかるというのだと、どうかなと思ったものですから。

○事務局 では、適宜リファーできるところは、リファーするということで。

○道垣内主査 名簿とかもありますので、全部についてはそうはいかないと思いますが。
 そのほかよろしゅうございますでしょうか。
 そうしますと、幾つかご意見をいただきましたので、注につきましては、関係の方に事務局の方から修正案をお送りし、それがまとまった段階で、もう一回全員にお送りするということにさせていただいてよろしゅうございますか。ただ、時間的には限界がございまして、9月8日ですし、お休みという方もいらっしゃると思うので、後で事務局の方から、いつまでに、というのは……。

○事務局 メールで連絡ということ。

○道垣内主査 そういうことで、最終的には、しかし、この会合自体は開かないということにすれば、取りまとめをご一任いただくほかないのですが、よろしゅうございますでしょうか、私にお任せいただくということで。

○一同 はい。

○道垣内主査 それでは、そうさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、これで、この小委員会を終了したいと思いますけれども、この報告案が確定しました段階で、それを9月8日の著作権分科会に報告させていただきます。
 最後に、事務局から連絡事項等ございましたら、よろしくお願いします。

○事務局 既にご紹介いただいたところですが、9月8日の著作権検討分科会で、道垣内主査から中間報告をいただいた後に、意見募集手続を行いまして、その上で次回の国際小委員会で報告書についてご議論いただきたいと考えております。
 なお、次回小委員会の開催は10月または11月を予定しております。
 本日はありがとうございました。

○道垣内主査 どうもありがとうございました。

午後4時閉会


(文化庁長官官房国際課)

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