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資料2

放送条約テキストに関する論点

 2004年4月、SCCR議長により条約テキストが提示され、第11回(同年6月)、第12回(同年11月)にて検討された。放送条約の保護の対象に関する論点は以下のとおり。

1 条約テキストにおける課題

1. 放送条約における保護の趣旨

  本条約における「保護の趣旨」に関連して以下の論点が考えられる。

(1) 保護の要件
   ローマ条約において、放送事業者に著作隣接権を付与した理由としては、「著作物の伝達者」としての役割が挙げられる。このほかにも、放送番組の制作や他の権利者との権利関係の調整の要素も考慮されている。一方、放送条約では、放送事業者の保護の趣旨として、従来の「著作物の伝達者」としての役割に加えて、「送信する信号への関わり」が挙げられる。
具体的には、現行著作権法第2条第9号において、「放送事業者」は「放送を業として行う者」と規定されている。一方、条約テキスト第2条(b)において、「放送事業者」の定義は「〜コンテンツの収集及びスケジューリングを主導し責任を有する法人」と規定されており、「送信する内容に責任をもつ」ことが求められる。
放送条約において放送事業者に著作隣接権を付与する際、以上の要件を付加することは適当か。また、具体的な「放送事業者」の規定について修正する必要はないか。

(2) 単純再送信の取扱い
   条約テキスト第3条において、「あらゆる手段による単純再送信」は保護の対象から除外されている。本規定の趣旨は上記(1)と同様、放送行為に加えて「放送内容への関わり」を考慮したものと考えられる。現行著作権法第9条の2においても、有線放送事業者による有線放送のうち「放送を受信して行うもの」は保護の対象から除外されている。我が国の放送の実態、著作隣接権の趣旨を考慮すれば、放送条約において、有線放送だけではなく、放送にも本規定を適用することは適当か。なお、条約テキストにある「単純再送信」は定義されていないが、対象範囲を明確化する必要はないか。

2. 保護の対象となる行為類型

   条約テキストでは、各国の提案を受けて、放送、有線放送、ウェブキャスティングが定義されている。現時点では、これらの放送を区別するため、無線、有線、コンピュータネットワークといった送信形態を用いて定義がなされている。しかしながら、国際的には、ウェブキャスティングを放送条約の対象から外す方向で議論されており、まず、放送条約の保護の対象となる行為を合意することが求められる。そして、放送条約の保護の対象となる行為が定まったところで、改めて定義を精査する必要があるが、現時点で保護の対象、放送の区分の在り方について留意すべき事項はないか。

3. 保護の対象となる主体

 
(1) 保護の対象となる主体を法人に限定することの妥当性
   ローマ条約では、「放送」は定義されているが、「放送事業者」は定義されていない。また、著作権法では、「放送事業者」は「放送を業として行う者」とあり、業として反復継続性があれば法人に限らず対象となる。一方、条約テキストでは、「放送事業者」は「音もしくは映像などの公衆への送信〜を主導し、責任を有する法人」とあり、「法人」に限定されている。放送を行う場合の投資の必要性、権利者の特定の必要性などから、放送条約の保護の主体を「法人」に限定することは適当か。

(2) 保護の対象となる行為と保護の対象となる主体の関係
   著作権法では、「放送事業者」、「有線放送事業者」はそれぞれ、放送、有線放送を業として行う者として規定されている。一方、条約テキストでは、保護の対象となる主体として、「放送を行う放送事業者」、「有線放送を行う有線放送事業者」、「ウェブキャスティングを行うウェブキャスター」のほかに、EUの提案により「同時ウェブキャスティング(放送事業者が放送と同時にネット上でウェブキャスティングを行うもの)」が規定されている。
著作隣接権を付与する趣旨は準創造性のある放送行為に着目したものであるが、同じ行為を行う放送事業者とウェブキャスターの間に差異を設けるEUの提案に対して、我が国はどのように対処すべきか。

(3) 有線放送事業者への著作隣接権の付与の考え方
   我が国は1986年、ケーブルテレビ事業者による番組制作の実態等を踏まえた上で、著作権法において「有線放送事業者」として位置付けた。一方、我が国の条約提案では、保護の対象となる主体として「放送事業者」のみを提案している。これまでの放送条約の検討では、「有線放送事業者」は「ケーブルテレビ事業者」を想定して議論されているが、現行著作権法で保護の主体となっている「ケーブルテレビ事業者」を放送条約の保護の主体とすることは適当か。また、さらに検討すべき特段の問題はないか。

2 ウェブキャスティングの取扱い

 
(1) 放送条約におけるウェブキャスティングの取扱い
   ウェブキャスティングについては、第8回会合にて、米国から放送条約の主体とする提案がなされ、第9回会合にて、我が国から放送条約とは別に検討することを提案した。我が国は、ウェブキャスティングについては、概念・定義の整理、各国での事業形態の整理、個人活動・事業活動の区分、他の権利者との関係の整理など様々な課題を有することから、放送条約とは切り離して検討すべき旨主張してきたが、引き続き、同様の方針で対応することが適当か。

(2) 放送行為の概念
   条約テキストでは、ウェブキャスティングは「〜コンピュータネットワーク上で実質的に同時に公衆に対してアクセス可能にすること」と定義されており、放送の概念「送信行為」から「アクセス可能な状態にする行為」に拡大することも想定される。これは、著作権法の「放送」と「自動公衆送信」の概念の変更にも繋がるものであるが、放送行為の概念についてどのように捉えるべきか。

(3) ウェブキャスティングに関する検討の課題
   今後のウェブキャスティングの取扱いについて検討する場合、どのような観点から検討すべきか。特に、以下の事項についてどのように考えたらよいか。また、この他に考慮すべき事項はあるか。
1 行為の態様(放送の概念として、アクセス可能な状態にする行為を含めるか、オンデマンド形態を放送の形態に含めるか。)
2 保護の対象(法人の活動に限定すべきか、個人の活動も対象に含めるべきか、その際、どのような規定が望ましいか。)
3 対象を定める要件(コンテンツを顧客に安定的に供給するため、事業内容、送信容量、設備要件、顧客規模などの要件を定めるべきか。)

以上


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