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資料4

放送条約テキストに関する論点

 本年4月、SCCR議長により条約テキストが提示され、第11回(本年6月)、第12回(本年11月)にて検討された。放送機関の支分権、法的措置に関する論点は以下のとおり。

1. 技術的手段に関する措置(第16条)
(1) 暗号解除に関する措置(第16条第2項)
 条約テキストでは、アルゼンチン等の提案により「暗号解除に関する技術的手段」の条項(第16条第2項)が規定されている。これは、暗号化された放送に対して暗号解除した場合に法的救済を講じることを目的としたもの。
 また、欧米など一部の国では国内法で著作物へのアクセスに関する技術的手段を規定している。しかしながら、米国では、技術的手段を用いた行為が独占禁止法の観点から問題となった訴訟も発生している(Lex Mark Case、Skylink Case)。
 放送条約において、放送の暗号解除を技術的手段の対象とすることは、著作隣接権制度の趣旨、措置の内容の観点から認められるか、具体的にアルゼンチン等の提案をどのように修正すべきか、我が国は著作権法以外の法令も含めて国内法でどのように対応すべきか。

(2) 公有財産(パブリックドメイン)の情報への影響(第16条第1項)
 ブラジルは前回会合にて技術的手段の条項(第16条第1項)の削除を提案した。これは、放送機関が公有財産である情報が入った放送に技術的手段を講じた場合、一般人は当該放送の技術的手段を回避して公有の情報にアクセスすることができなくなることから、利用者の利便性を過度に妨げる恐れがあるというもの。本条約において、ブラジルが指摘する懸念は問題ないか、ブラジルの提案に対してどのように対処すべきか。

2. 権利管理情報に関する措置(第17条)
 WCT、WPPTと同様、放送条約において、権利管理情報に関する法的措置を規定すべきか。将来のデジタル放送において、本条項はどのように活用されるのか、その際の課題はないか。

3. 利用可能化権の付与(第12条)
 条約テキストでは、第12条において、固定された放送の利用可能化権が規定されている。
 我が国は、放送形態として技術的に固定されていない放送をそのままインターネットにアップロードする形態(ストリーミング)が存在することから、固定の放送だけではなく、固定されていない放送についても、利用可能化権を付与する提案を行っている。一方、欧米は、利用可能化権の対象を固定の放送に限定し、固定されていない放送については、再送信権(4.参照)の付与により手当てすべきと提案している。

 他の隣接権者との権利のバランスに留意しつつ、放送のネットワーク化にいかに対応すべきかが課題となっている。具体的には、デジタル化に対応した放送機関の権利として、
1) 「固定の放送の利用可能化権」及び「同時・異時の再送信権」の付与
2) 「固定・非固定の放送の利用可能化権」及び「同時・異時の再放送権」の付与が考えられる。放送の実態面、我が国の法制度面からどのような体系が望ましいか。

4. 再送信権の付与(第2、6、11条)
(1) 「同時」から「同時・異時」への範囲の拡大
 ローマ条約では、「再放送権」が規定されているが、その対象は「同時の再放送」に限定されている。現在は固定による異時の再放送が一般的に行われており、本条約では、異時の再放送にも権利を及ぼすべきかどうかについて検討がなされている。条約テキストでは、第2条にて「再送信」が定義されており、第6条では「同時の再送信」、第11条では「異時の再送信」が規定している。
 本条約において、同時だけではなく、異時の送信形態にも権利を付与することは放送の実態及び他の著作隣接権とのバランスの観点から妥当か。

(2) 「再放送」から「再送信」への範囲の拡大
 条約テキストでは、「再送信」として「放送機関によるあらゆる手段での送信による公衆への同時送信」と定義されており、形態としては、放送、有線放送、コンピュータネットワークなど、あらゆる手段による送信行為が対象となっている。
 コンピュータネットワーク上での再送信に関する権利はWPPTでは認められていない「自動公衆送信権」とも重なることから、他の著作隣接権とのバランスを考慮すれば、「再送信権」の対象を限定する必要はないか。一方、「再送信」は「放送機関による送信」に限定されていることから、例えば、放送機関以外の者がネットワークで送信した場合、「再送信権」の対象にはならないが、放送の実態から問題はないのか。むしろ、「利用可能化権」(第12条)の対象を「固定物」から「非固定物」にも広げることにより、これらの問題に対処できるのではないか。

5. 禁止権の付与(第9、10、11、12条)
 条約テキストでは、固定後の二次利用に係る権利(譲渡権、頒布権、再送信権、利用可能化権)について、従来の排他的許諾権の付与のほか、米国の提案を受けて、禁止権の付与が選択肢として規定されている。
 米国の提案は、放送条約の目的を放送の海賊版対策と考えて、固定の段階で許諾が得られていない放送については、二次利用を阻止することを目的とするもの。
 排他的許諾権を付与する場合と、無許諾の固定後の二次利用に関して禁止権を付与する場合では、法的効果、放送実態の面でどのような差異が生じるのか。また、我が国は放送における禁止権の付与についてどのように対処すべきか。

以上

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