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文化審議会著作権分科会
国際小委員会
H14.10.24

著作権侵害事件における裁判管轄・準拠法の問題点等について



富士通株式会社
法務・知的財産権本部長
山地克郎




目次


問題の所在
著作権侵害事件における準拠法
ハーグ国際私法会議における検討経緯と産業界の意見
特許権侵害事件等における裁判管轄
著作権侵害事件における裁判管轄
その他の問題



問題の所在

インターネットの出現や国際取引に係わる紛争増加・複雑化に伴い、国際裁判管轄・準拠法ルール確立が急務。
実体法の国際ハーモ及び各国での法の 運用の妥当性や透明性の確保も重要。


著作権侵害事件における準拠法

保護国法説(道垣内教授)
  ベルヌ条約5条2項:「保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる」
「保護を求める国の法律」が適用される。
  著作権侵害が同時に複数国で発生し、当該複数国の著作権法が適用される。
複数の著作権法が適用されることによる問題
権利範囲(権利制限規定の解釈等を含む)の異なる国で被告となることを余儀なくされることによるインターネットビジネスへの萎縮効果。
複数国にまたがる行為(公衆送信等)に適用される権利の保護・行使に関する準拠法の選択について予見可能性が低いこと。


ハーグ国際私法会議における検討経緯

民事及び商事に関する国際裁判管轄及び外国判決に関する条約案
  −「国際裁判管轄の確定」及び「外国判決の承認・執行」に関する国際ルール
        1999.10   条約草案提示
        2001.  2   非公式会合
        2001.  6  第1回外交会議  (2001年草案公表)
        2002.  4  国際私法会議第1委員会
          −コアエリア及び追加可能な事項をスターティングポイントとして、進められることになった。
        ※コアエリア:合意管轄、被告住所地管轄、応訴管轄、物理的損害にかかる不法行為
(physical injury tort)に関する管轄、信託に関する管轄、反訴管轄
        ※その他の懸案事項:doing business による管轄のブラックリスト化
        2002.  9  非公式準備会合    
        2003  前半  特別委員会(予定)
        2003  後半  外交会議(予定)


産業界の意見

・2001.  1.17     経団連:「知的財産権の専属管轄に関する規定の取扱いについて」
有効性判断は権利所在国または登録国専属管轄、侵害訴訟は登録国(権利所在国)、普通裁判籍、応訴・合意管轄

・2001.  1.       日本知的財産協会:「ハーグ条約準備草案について」
有効性判断は権利所在国または登録国専属管轄、侵害訴訟は登録国(権利所在国)、普通裁判籍、応訴・合意管轄

・2001.  1.19     JEITA法的問題専門委員会:「ハーグ条約草案」に対する意見
有効性判断は権利所在国または登録国専属管轄、侵害訴訟は登録国(権利所在国)、普通裁判籍、応訴・合意管轄

・2001.11.30     JEITA法務・知的財産権総合委員会:ハーグ条約に関する意見

・2002.  9.14     JEITA法務・知的財産権総合委員会:「ボトムアップ方式によるハーグ条約交渉に関する意見」

※JEITA: (社)電子情報技術産業協会)
  Japan Electronics and Information Technology Industries Association


特許権等の侵害事件における裁判管轄(1)

■有効性判断事件における裁判管轄
  ・99年草案(12条4項)
      登録国の専属管轄とする
  ・日本の立場
      JEITA、経団連、日弁連ともに「登録国専属管轄」を支持
  ・各国の立場  
      「登録国専属管轄」でコンセンサスあり


特許権等の侵害事件における裁判管轄(2)

■侵害事件における裁判管轄
・各国の立場(2001.6)
○登録国専属管轄とする提案(英国)
  「保護範囲の問題や無効主張の扱いは各国ごとに異なる」
○通常の管轄ルールに従うべき(不法行為)とする提案(スイス)
  「被告に都合のよい被告住所地の管轄を否定する必要はない」
・日本の立場
○産業界:「登録国専属管轄」案を支持


著作権侵害事件における裁判管轄(1)

・ハーグ条約案の検討における諸見解
1条約の適用範囲から排除
2不法行為事件として扱う
3判決の承認執行の段階で、承認執行国で適用されるべき法律と異なる法律に基づいて下された外国判決であって、その国の法律を適用した場合と異なる結論になる場合、あるいはその国の知的財産権保護の原則と相容れない場合には、承認執行は拒否できる。
4承認執行義務を負う外国判決をTRIPS 締約国又は著作権法の国際ハーモ達成国に限定する留保を認める。
5準拠法所属国の専属管轄とすべき。


著作権侵害事件における裁判管轄(2)

2 説の問題点

「行為地」「損害発生地」概念が曖昧。
必ずしも密接な関係のない国における提訴が容認(=フォーラムショッピング)される懸念。
全世界規模の行為について侵害の有無や損害賠償額の認定等について特定国の裁判所での判断に委ねられてしまう懸念。


著作権侵害事件における裁判管轄(3)

■JEITAの見解(有効性判断・侵害事件)
  ・ 第1案:条約上に独立の条項を設けたうえで、「被侵害権利の所在国、普通裁判籍、応訴・合意管轄」とする。
  ・ 第2案:  (不法行為事件として扱われる場合)「損害発生地は、被侵害権利の所在国に限定する」旨を明記する。
  ・ 第3案:  (上記案が受け入れられない場合)
(ハーグ)条約の適用範囲から外す。


その他の問題(1)

■INCIDENTAL QUESTION
  ライセンス契約に関する訴訟等のいわゆる前提問題(incidental  question)として、特許の有効性や侵害の有無が争われる場合:
  → “incidental question”の定義の明確化が先決
  → 営業譲渡に伴い知的財産権が譲渡された場合における権利の有効性の判断事例のように、必ずしも専属管轄化が望ましくない事例もあり得る。


その他の問題(2)

■インターネット関連事件
  インターネットを介在して生じる問題を条約の対象外とすべきか。
  → かかる問題については、裁判管轄ルールの明確化の要請があるものの、未だ実態の把握や議論が熟しているとはいえないため、条約の対象外とすることに反対するものではないが、不法行為事件の管轄規定の適用を“physical injury”を伴う不法行為事件に限定することによって達成されるものであるかは、なお検討を要する。


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