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平成14年10月24日
わが国のコンピュータソフトウェア(プログラム)についての
アジア各国・地域における著作権侵害の実態
社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)
専務理事 久保田 裕
1.アジア各国・地域における海賊版の流通実態
・ | 流通・製造地域は広範(国際的な流通・製造) |
・ |
被害甚大、ただし全体的な流通量・被害額は未算定
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事例)2001年7〜9月の間、バンコク国際空港税関はプレイステーションの海賊版ゲームソフトの密輸を3件摘発し、合計15万枚の海賊版を押収。メキシコ、ペルー、オーストラリア等に向けた貨物で、パソコン部品の輸出などを装っていた。 |
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参考1)ゲームソフトメーカーによるアジア各国・地域での権利執行例
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ソニー・コンピュータ
エンタテインメント |
任天堂 |
セガ |
ナムコ |
押収ソフト |
摘発件数 |
押収ソフト |
摘発件数 |
押収ソフト |
摘発件数 |
押収ソフト |
摘発件数 |
中国 |
83,317 |
9 |
71,059 |
22 |
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香港 |
3,093,991 |
1,150 |
1,950 |
1 |
約200,000 |
約70 |
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台湾 |
3,429,754 |
450 |
1,035,110 |
2 |
約1,000,000 |
約50 |
− |
5 |
韓国 |
40,853 |
42 |
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− |
1 |
シンガポール |
484,382 |
81 |
1,952 |
20 |
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マレーシア |
232,780 |
14 |
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タイ |
831,837 |
71 |
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マカオ |
4,970 |
3 |
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フィリピン |
911,758 |
90 |
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インドネシア |
27,830 |
3 |
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備考 |
※〜2001年 |
※2001年1月〜9月 |
※2001年3月〜2002年3月 |
※2001年3月〜2002年3月 |
参考2) | 「海外における著作権侵害の現状と課題に関する調査研究・海外調査編」
(社団法人著作権情報センター附属著作権研究所)
■ゲームソフトの侵害規模推計値
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市場規模(千本) |
侵害品市場規模
(逸失売上・百万円) |
侵害品割合 |
香港 |
15,267 |
55,892 |
80% |
台湾 |
17,843 |
61,659 |
62% |
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参考3) |
アジア各国・地域における海賊版ゲームソフト市場価格(ACCS調べ)
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海賊版の価格 |
購入場所など |
中国(2001年) |
16〜80元(GB)、90〜130元(GBA)、10元(PS) |
※1元≒15円
北京・広州・シンセン・上海 |
香港(94年) |
1,000〜2,000円(PC)、100円(SFC) |
ゴールデンコンピュータセンター |
台湾(2002年) |
250NTWD(PS2)、60〜100NTWD(PS) |
※1NTWD≒3.8円
台北・士林夜市 |
台湾(98年) |
60NTWD(PS) |
※1NTED≒4円
台北・万年大楼 |
台湾(95年) |
50NTWD(SFC・フロッピー)
1,500NTWD(SFC・CD-ROM) |
※1NTWD≒3.4円
台北・光華商場 |
韓国(95年) |
60,000ウォン(SFC・3本)
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※1ウォン≒0.12円
竜山電子商街 |
シンガポール
(94年) |
7,000〜19,000円(GB)
3,000円(メガドライブ) |
オーチャードプラザ |
マレーシア
(2000年) |
3〜5リンギット(PS)
5〜7リンギット(DC) |
※1リンギット≒30円
KL・スンガイウォンプラザ、チャイナタウン夜店、インビプラザ |
タイ(2000年) |
35バーツ(PS)
80バーツ(PS2)
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※1バーツ≒3.0円
バンコク・パンティッププラザ、マーブンクローンセンター |
タイ(96年) |
20バーツ(PS)
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※1バーツ≒4.5円
バンコク・パンティッププラザ |
フィリピン
(98年) |
75〜100ペソ(PS)
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※1ペソ≒3円
マカティ地区
グリーンヒルズ・ショッピングセンター |
インドネシア
(97年) |
5,000ルピア(PS)
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※1ルピア≒0.05円
マンガドゥアモール、ウ・ロード |
DC=ドリームキャスト、GB=ゲームボーイ、GBA=ゲームボーイアドバンス、PS=プレイステーション、PS2=プレイステーション2、SFC=スーパーファミリーコンピュータ
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2. |
海賊版の流通に関連する諸問題
・ |
技術的制限手段回避専用装置(いわゆる「MOD-Chip」)の流通
事例)2000〜2001年にACCSがタイ・バンコクのマーケットを調査したところ、「MOD-Chip」を取り付けたプレイステーション本体が約9,000円、プレイステーション2本体が約66,000円で販売されていた。プレイステーション2本体を持ち込んでMOD-Chipの取り付けのみを依頼する場合には、工賃を含め約5,000円であった。
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※海賊版ゲームソフト店の店頭で、プレイステーション本体にMOD-Chipが取り付けられ、販売されている(タイ・バンコク、2001年撮影)
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・ |
「ネットカフェ」における著作権侵害行為の増加
アジア各国・地域では、繁華街を中心として「ネットカフェ」が急増していることから、設置されたパソコンを利用し、インターネットを通じた著作権侵害や、CD-R等を利用した著作物の複製が増加することが懸念されている。 |
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3. |
ACCSによる権利者への支援等
・ |
現地関連機関等への表敬訪問、感謝状の贈呈
1999年6月・台湾
台湾経済部査禁倣冒商品小組
法務部調査局経済犯罪防制中心
法務部調査局台北市調査処
1999年12月・韓国、中国
韓国・ソウル地検
中国・広東省工商行政管理局(商標)、同省専利管理局(特許)
中国・深セン市専利管理処
2001年9月・タイ
タイ国警察(Royal Thai Police)
バンコク国際空港税関(Bangkok International Airport Customs
Bureau)
タイ商務省副大臣(Ministry of Commerce)
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・ |
ソフトウェアメーカーによる権利行使への支援
1998〜99年には、WTO加盟以前の台湾における海賊版ゲームソフト販売に対して、複数のゲームソフトメーカー共同による商標権侵害に基づく刑事告訴が行われた。ACCSでは、各権利者への支援などを実施した。
情報入手 |
地区 |
被疑者 |
告訴会社 |
備考 |
1998/10/29 |
台北 |
A |
コーエー、コナミ、ナムコ |
IPAPA(台湾の権利保護団体)より依頼・地裁に移送
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1998/10/29 |
今高雄 |
B |
コーエー、コナミ、ナムコ |
IPAPAより依頼・地裁に移送 |
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台中 |
C,D,E |
任天堂、カプコン、コーエー、コナミ、ナムコ、ハドソン
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台中 |
F,G,H,I,J,K |
任天堂、カプコン、コーエー、コナミ、ナムコ、ハドソン
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1999/3/18 |
台北 |
L(L電視遊楽器) |
SCEI、カプコン、コーエー、コナミ、ナムコ、ハドソン
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1999/9 懲役7月執行猶予4年 |
1999/3/18 |
嘉義 |
M(M商店) |
SCEI、カプコン、コーエー、コナミ、ナムコ、ハドソン
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1999/10/15 懲役1年執行猶予4年 |
1999/3/18 |
台南 |
N |
SCEI、カプコン、コーエー、コナミ、ナムコ、ハドソン
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1999/3/18 |
台中 |
O(O電視遊楽器専売店) |
SCEI、カプコン、コーエー、コナミ、ナムコ、ハドソン
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1999/9/17 |
嘉義 |
P(P商店) |
SCEI、カプコン、コーエー、コナミ、ナムコ、ハドソン
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1999/11/22 懲役8月執行猶予3年 |
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・ |
さいごに
日本国内における侵害対策と同様に、アジア各国・地域での著作権侵害対策については、当該地域における権利執行(侵害対策)を、著作権制度の普及のための広報・啓発活動の一環として実施することが重要であると考える。広報・啓発の内容については、当該地域での権利者の教育・育成と、ユーザーへの教育との両側面について配慮する必要がある。
広報・啓発の具体的な方策としては、当該地域におけるマスコミへの積極的な情報提供、著作権教育の普及への援助、セミナー等の開催、「コピー禁止マーク」の活用等が考えられる。例として、ACCSでは日本国内において捜査当局に対する情報提供のため、警察学校等への講師派遣を実施しているが、アジア各国・地域においても、捜査ノウハウ等の“成功例”を提供していくことなども考えられる。 |
以上
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