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資  料  1

文化審議会著作権分科会国際小委員会(第3回)議事要旨

1  日  時 平成14年9月3日(火)10時30分〜13時

2  場  所文部科学省別館第5、6会議室

3  出席者(委員)
齊藤、今村、上原、大山、加藤、小泉、児玉、関口、大楽、道垣内、前田、増山、山地、山本の各委員
(文化庁)
丸山長官官房審議官、吉尾国際課長ほか

 配付資料

資料1 文化審議会著作権分科会国際小委員会(第2回)議事要旨(案)
資料2海外における著作権侵害について(児玉委員説明資料)
資料3アジア各国における権利執行の実務上の問題点
(前田委員説明資料)
資料4著作権に係る国際私法上の問題(道垣内委員説明資料)
資料5著作権侵害訴訟の裁判管轄権と準拠法の問題点
(山本委員説明資料)

参考資料1コンテンツ海外流通促進機構について
参考資料2日中著作権シンポジウムについて

  概  要
(1)海賊版対策について
  児玉委員及び前田委員から資料に基づき説明があった後、各委員より以下のような意見交換が行われた。

(○:委員  △:事務局)
  中国の刑事罰は現実にほとんど適用される実態はないのか。

  ない。アメリカの権利者についても同様。新聞記事で大量に海賊版が差し押さえられているという話があるが、それはAPECの会議等の前にイベント的に行われているだけ。あくまで一過性のものに過ぎない。

  それに関連して、つい最近北京でも海賊版を大量に押収して壊すシーンが放送されているが、警察が独自に動いたことの結果なのか。

  国家版権局も行政罰としての執行権限があるので、どちらがやったのかは不明。いずれにせよ権利者の告訴に基づくというよりは、キャンペーン的に行われているのが実態。

  台湾のレコード海賊版については、経過措置があり、2001年11月30日に作られたものが、それ以降も販売可能であるかのように解釈されるが如何。

  微妙な問題である。昨年の12月までに製造されたものが果たして権利侵害物になるのか。台湾のIPOのホームページによると、これらについては2年の制限はかからないと解釈しているようにみえる。ただ、中国語だけなので、よくわからない。

  台湾の経過措置について、「利用に着手し」というのは、複製、送信も含まれるのか。

  「利用の着手」及び「投資」については、単なる海賊版作成ではなく、日本の楽曲をスタジオ及び実演家を手配してCDを作成した場合が例として挙がっている。ただ、CD−Rへの複製自体は簡単な行為なので、複製行為を断続的に行う場合、全体を一回の「利用」とみなすのか、それとも一回複製すれば「利用」が終了したとみなすのかは不明。

(2)インターネット時代の著作権を巡る国際私法上の課題について山本委員及び道垣内委員から資料に基づき説明があった後、各委員より以下のような意見交換が行われた。

(○:委員  △:事務局)
  複合行為説について、立法の仕方としてそういうことがありうるのは理解できるが、そのことと準拠法をどうするかというのは、結びつきの問題ではないか。仮に日本が複合行為を抑えるような立法をしたとして、日本からX国に公衆送信が行われたとき、準拠法としてどちらを選ぶのかは、依然、理論的には両方日本、両方X国の法律を適用する可能性が残るのではないか。(日本で複合行為説をとり、外国で訴訟が提起された場合)

  準拠法の問題として、どこの国の法律に基づいて成立した著作権について問題が生じているのかといえば、日本法である。著作権は著作権を認める国の数だけ存在する。原告として訴訟を提起する場合、どこの国の法律に基づく権利が侵害されているかという問題になる。公衆送信権を例にとれば、日本の公衆送信権は不法行為地説をとっているので、日本からの発信であれば日本の著作権の侵害になる。次に、差止め請求権については、ベルヌ条約第5条に基づく保護国、つまり日本に差止め請求権を認めるべき。損害賠償請求権については、仮にX国が行為地主義をとっているとすれば、行為地である日本法に基づいて損害賠償請求を認めることが可能。

  日本もX国もどちらも複合行為説をとっていたら、理論としては、どちらの国の法律を適用することも考えられるのではないか。

  その場合には、侵害行為が2つある。A国、B国を例にとれば、A国では発信行為が、B国では受信行為がある。原告はB、A国だけでなく、国における著作権侵害を訴えることも可能。これは二者択一の問題ではない。

  属地主義の問題と準拠法の問題との結びつきがややわかりにくい。著作権法は国ごとに別個のケースがある。訴訟物としては別個のものであるのはわかるが、それは準拠法とは別の問題なのではないか。例えば、アメリカでパブリックドメインになっているが日本では著作権が存続しているものについて、アメリカで無断複製された場合、仮に準拠法が日本法であるとしても、アメリカ国内では権利侵害は生じていないので、違法になりえないのではないか。属地主義と準拠法の問題は別。準拠法を決めた上で、その後に権利侵害がある場合に、属地主義の問題が出てくるのではないか。

  属地主義の発想はサビニーの発想になじまない。個別の行為を見るのか、行為全体を捉えるのか。行為全体を捉えないとわからない。流れは一つ。発信行為と受信行為のセットが一つの考え。インターネットだと色々な国に発信されるが、発信される数だけ行為がある。複合行為説をとった場合、一つの単位法律関係について2つの準拠法があるということはなく、必ずどちらか一つの準拠法となる。

  前述の意見を捕捉する。問題は、適用法の競合の問題と、権利の競合の問題である。複合行為説の前段階には、権利の競合がある。先ほどの例によれば、A国、B国にはそれぞれの著作権法があるから、それぞれ権利の競合が発生している。複合行為説をとった場合には、権利の侵害が1個でなく、2個存在し得る。それぞれの損害に対して、実際には権利が2個発生することになる。これは権利の競合の問題になる。名誉毀損の事例でA国、B国それぞれで権利侵害が生じるケースがあると聞いたが、それと同じ。A国でもB国でも損害が発生していると考える。これは適用法の問題ではなく、権利の競合の問題である。

  根本的に考えれば前述の意見のとおり。我が国の著作権法が書いているのは、日本の著作権法の権利。いまや、サビニーの言うような単純な世界ではない。サビニーの言うような私法概念に著作権法を入れ込むのは無理がある。それでは国家戦略である、ということで公法で考えることも一つの手である。

  公法的アプローチをとったつもりはない。あくまで著作権の性質に応じた解決方法を考えているのみ。国際私法の問題ではないとのことだが、それはまさにそのとおり。日本法の権利の構成の問題。

  一回の議論では整理しきれない問題だと思う。発信行為と受信行為とをセットで考えるという考え方は、衛星放送等とあわせて考えたときに、発信地から複数地に発信する場合、発信と受信の両方を押さえるのは難しいと思う。今日の話には出てこなかったが、利用許諾や権利の譲渡などの契約について、債務不履行による損害賠償請求については、入らないと考えていいのか、確認したい。

  契約については、基本的に当事者間で決定すればいいのだが、現在の国際私法の特徴としては、他の領域まで進出してきており、国際私法の精神には合わない問題ではあるが、相続や不法行為も含まれるのでは、という議論もでてきている。

6.閉会
  事務局から、次回日程等について説明があった後、閉会となった。

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