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資料1
文化審議会著作権分科会国際小委員会(第2回)議事要旨(案)

日時 平成14年7月24日(水)10時30分〜13時
     
場所 日本芸術文化振興会第一会議室
     
出席者    
(委員) 齊藤、今村、上原、加藤、久保田、児玉、関口、大楽、道垣内、半田、前田、増山、山地、山本の各委員
(文化庁) 丸山長官官房審議官、村田国際課長、岡本著作権課長ほか関係者

配付資料
資料1    文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)議事要旨(案)
資料2    知的財産戦略大綱のポイント
資料3    「知的財産戦略大綱」(平成14年7月3日、知的財産戦略会議)
(著作権関係部分の抜粋)
資料4    「知的財産戦略について」(総合科学技術会議知的財産戦略専門調査会の中間まとめ)(平成14年6月13日  総合科学技術会議知的財産戦略専門調査会)(著作権関係部分の抜粋)
資料5    「国際小委員会」平成14年度審議事項(案)
資料6    「国際小委員会」平成14年度審議スケジュール
資料7    海賊版対策について
資料8    インターネット時代の著作権を巡る国際私法上の課題

概要
(1) 「知的財産戦略大綱」等について
事務局から資料に基づき説明があった。
   
(2) 著作権分科会(第5回)の概要について
齊藤主査から7月19日に開催された著作権分科会について報告があった。
   
(3) 「国際小委員会」審議事項(案)及びスケジュール(案)について
事務局から資料に基づき説明があった後、各委員により以下のような意見交換が行われた。

(○:委員  △:事務局)
  審議事項(案)について、「海賊版対策」では調査と実態把握にとどまっていて、アクション・プランの要素が薄く、国際知的財産保護フォーラムと比べて温度差があるように思うがどうか。
   
  「権利行使を行う上での問題点の特定と対応」という部分で、アクション・プランの作成を念頭においている。実態把握に留まらず、対応策まで踏み込んで最終的には審議のとりまとめまでできればと考えている。
   
  国際小委員会とコンテンツ海外流通促進機構、海賊版対策連絡協議会それぞれの住み分けはできているのか。
   
  コンテンツ海外流通促進機構は、基本的には民間組織という位置付けで、政府とも連携しながらどのように対策するかを検討する。本小委員会では、随時同機構の動きも把握しつつ、著作権を所管している文化庁の海賊版に対する取組について、検討していただきたい。

(4) 海賊版対策について
事務局から資料に基づき説明があった後、各委員より以下のような意見交換が行われた。

(○:委員  △:事務局)
  アジア・太平洋地域に絞られているようだが、はじめから限定する必要があるのか。それとも今後、他の地域についても対応していくつもりなのか。
   
  我が国著作物の海賊版被害が最も大きいアジア地域から対策を講じていくことが、国益に合致していくのではと考えている。ただし、侵害実態が把握しにくいこともあるので、他の地域についても適宜調査し、侵害が大きいようであれば、対策を講じていきたいと思っている。
   
  資料7について、「12.2権利の執行に関する協力事業」で、行政手続が中国等では非常に有効な手続となっているので、加えたほうがいいのではないか。また、「21.コンテンツ海外流通促進機構の設立」で訴訟等への対応を目的とする、としているが、原告になることまで考えているのか。それとも支援に留まっているのか。
   
  一点目について、現在作成中の中国に関するエンフォースメント・マニュアルでは、行政手続についても記述している。二点目について、海賊版対策連絡協議会では、すべての構成メンバーというよりも、利害が一致する権利者が任意で集まって原告となることも考えられるのではないか、という意見が出ていた。いずれにせよ、今後機構で考えていくことである。
   
  集中管理団体間での協力については、団体まかせなのか、それとも文化庁も何か支援しているのか。また、機構では、「コンテンツ」と名称に冠している以上、伝統的な海賊版に限らず、インターネット上での流通についても対象とするのか。
   
  一点目について、文化庁ではWIPOと協賛しているAPACEプログラムで集中管理団体の育成支援をしており、著作権制度整備支援の一環として今後も継続していきたい。二点目について、同機構の名称に海賊版を付さなかったのは、相手国に対して必ずしも効果的なアクションがとれるわけではなく、むしろわが国及び相手国のコンテンツの流通を前面に打ち出すことで、WinーWin関係を築くことができるのでは、と考えたためである。当面の課題は、CD等のいわゆるパッケージ物であるが、もちろん、インターネット上の著作権侵害についても視野に入れて活動していきたい。
   
  不正商品対策協議会や海賊版対策協議会、コンテンツ海外流通促進機構など、同じような組織が複数あるが、活動が重複しないのか。包括的な観点からこれらの組織を立ち上げているのか。
   
  機構は、著作権に焦点をあてて海賊版対策にとりくむことを目的としており、不正商品対策協議会には、警察庁とも相談して、機構の構成員として活動に協力いただくこととなっている。なお、機構の活動については、今後不正商品対策協議会と重複しない形で、むしろ協力して行っていくことができるようにしたい。また、海賊版対策連絡協議会は、中国、台湾のWTO加盟等に伴い、当面の課題を検討していただき、報告書をまとめたところである。なお、同協議会のメンバーには、機構の企画委員会委員として、中核的な役割を担っていただくこととなっている。本小委員会では、文化庁の取組について議論していただきたい。
   
  現地で訴訟を起こすのは被害の立件の面から非常に難しい。次回本小委員会で海賊版対策について議論するのであれば、どこまでやるのか、決めてほしい。ある程度覚悟を持って臨まないと、掛け声だけで終わってしまう。
   
  米国などでは、民間企業が組織を作って調査等をし、そのデータをもとに政府が対象国に圧力をかけていく、という構図になっている。したがって、海賊版対策自体は、民のやる気と連動しているので、まず民のやる気が原動力となって、その上で官も積極的に対応していきたいと考えている。
   
  いわゆるパッケージ物の海賊版については、違法性ははっきりしており、エンフォースメントにおいても、やることははっきりしている。本小委員会では、これから生じるであろう問題の違法性に対する理論的構築を行うべき。韓国ではブロードバンドが非常に発達しており、インターネット放送もさかんである。放送局が少ない上に、国策としてブロードバンドの普及を推進しているため、すでに地上波で流している番組を権利処理をせずにインターネット上で流すことについて、政府は黙認している。その延長線上で、日本の放送番組も無許諾でインターネット上に流されている。日本でもブロードバンドの普及に伴い、同様の問題が生じると思われるので、韓国に焦点をあてて、インターネット放送について勉強してみてはどうか。
   
  韓国においては、放送事業者が、作成又は発注した放送番組に関し、他の権利者よりも圧倒的な地位にあり、その権利をむりやり取り上げてしまうのだが、そのことが今後問題になってくるのではないか。日本の放送番組も無許諾のまま、大量にインターネット上で流通している。それらのホームページは全文ハングルで、パスワードが原則韓国人にしか配布されないことから、日本からは実態が把握しにくい構造になっている。
nbsp; 機構の在り方について、本当にWinーWin関係を築こうと考えているならば、フィリピンなど、外国の著作物の海賊版が日本国内に多く流通していると批判を受けているので、その対応が必要になるのではないか。
   
  機構の主な活動は、アジア地域における日本の著作物の海賊版の流通への対応であるので、日本国内での海賊版の流通はその活動の対象外ではないか。ただし、日本も国際条約に加盟しており、他の加盟国の著作物を国内で保護する義務があるという点では、それらの問題に対応していく必要はあると思う。
   
  機構では、訴訟を沢山起こし、問題点が集積していった時点で、政府には二国間・多国間協議で対応していただきたい。現在、訴訟を行っていく上で、弁護士費用、調査費用が大変高いことがネックとなっているので、いかに安く、多くの事例を積み上げていくか、が今後の課題である。政府としても、私権の実現が国益にも繋がるので、日本政府の協力弁護士事務所を設立して、割引価格で対応するなど、個々の具体的執行に役立つ支援をしてほしい。
   
  官でできることとしては、刑事告訴やWTO提訴がある。インターネット上の権利侵害であれば、日本国内でアクセスできることから、国内で刑事告訴を行えば、見せしめ効果もあるし、ここで得た情報を民事訴訟で利用できる。
   
  機構における文化庁や経済産業省の具体的な支援策はあるのか。
   
  機構における支援とは、事務局的機能を果たす、という程度の意味。もちろん、JETROや在外公館の積極活用等も必要だと認識している。
   
  従来よりも一歩踏み込んだ検討が必要。また、従来の海賊版だけでなく、ウェブキャスティング、ブロードキャスティングの仕切りについても検討すべき。
   
  著作権分科会のうち、国際小委員会だけが、他の小委員会すべての審議内容を扱っており、その住み分けをせずに議論しているように思う。海賊版対策については、官がすべきことと民がすべきことを識別することが必要。民がまず行動を起こしてみて、何が問題で、何をしてほしいかを整理して言ってもらわないと、官も動けない。

(5) インターネット時代の著作権を巡る国際私法上の課題について
事務局から資料に基づき説明があった後、各委員より以下のような意見交換が行われた。

(○:委員  △:事務局)
  CISACでは、サーバーがどこにあっても、実質的に管理している人又は団体が責任をもつというルールになっており、各国はそれに従っている。米国だけがサーバー設置国主義を主張していた。
   
  差止請求権と損害賠償請求権と分けて議論すべき場合もあるのではないか。一般的なルールとは別に、現実問題として、日本語については、母国語とする人が大多数日本に居住しているという特殊性から、裁判管轄及び準拠法については日本でいいのではないか、との議論もありうる。これを抽象化すると、発信者が受信者としてどこの国に居住している人を主として予定しているか、ということをメルクマールにする、という考え方もあるのではないか。
   
  インターネットに関しては、国内法で公衆送信権を付与しているか否かによって、どの権利の侵害とみなすかがかわってくる、という問題もある。
   
  国際私法の考え方では、まずどの国の法律を適用するか、を決めるので、どの権利の侵害とみなすか、は適用する国の法律による。

閉会
  事務局から、次回日程等について説明があった後、閉会となった。


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