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文化審議会

2001/05/31 議事録

文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)議事要旨

文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)議事要旨

平成13年5月31日(木)
10:30〜13:00
三田共用会議所第3特別会議室

出席者

(委員)

齊藤主査、小泉委員、児玉委員、関口委員、道垣内委員、山口委員、山地委員、山本委員、北川会長

(事務局)

林審議官、村田国際課長、岡本著作権課長、その他の担当官

1.開会

2.委員及び文化庁出席者紹介

事務局から委員及び事務局の紹介が行われた。

3.議事

(1)国際小委員会主査の選任について

  文化審議会著作権分科会運営規則第3条第3項の規定により当該小委員会に属する委員及び臨時委員の互選により選任することになっており、道垣内委員より齊藤委員が適任との推薦があり、満場一致で齊藤委員が主査に選任された。
  また、文化審議会著作権分科会運営規則第3条第5項の規定に基づき、半田委員が副主査に指名された。

(2)国際小委員会の概要について

  事務局より、本小委員会の設置の趣旨や所掌事務等について説明が行われた。

(3)国際小委員会議事の公開の対応方針の制定について

  事務局より、国際小委員会の議事の公開の対応方針について説明が行われ、了承された。

(4)国際小委員会の検討事項について

  事務局から資料に基づき説明があった後、各委員により以下のような意見交換が行われた。

【委員】

  刑罰法規の適用について、現在の刑法施行法の第27条によると著作権法に定める罪については、刑法にある国民の国外犯の規定に従うとされている。そうすると日本人あるいは日本企業が国外で行った行為について、日本の著作権法が及ぶこととなり、刑罰がかけられることになる。刑法理論上国外犯について、国籍を基準に域外適用していくことについては、それ自体合理的であるかどうかの議論があり、実際には適用例はないが、刑罰法規なので適用例がないからよいということではないと思う。現在における合理性を検討し、合理的でなければ、違う形での域外適用ということも考えられるかもしれない。そのようなことを本委員会で検討してはどうか。

【事務局】

  他の小委員会とも調整し対応を検討したい。

【委員】

  WIPOにおけるデータベースの保護に関する議論の取り扱いについて、創作性の有無を問わず、別の角度から保護するという議論ではなかったか。投資を保護する立場から保護の仕組みを検討しているのではないか。

【事務局】

  指摘の通り、投資やどれだけ労力をかけたかといった側面に着目した保護の在り方を検討している。著作権ではなく特別の権利で保護していくというやり方は、ヨーロッパではダイレクティブができており、確立されている。5月に行われたWIPO著作権等常設委員会でも、データベースの保護に関する各国の状況報告が行われた。ヨーロッパ諸国では、投資の側面に着目し、新たな権利を付与し保護するということが主流となっているようである。

【委員】

  最近出された東京地裁の判決では、データベースの利用を著作権ではなく、不法行為としてとらえている。現状、不法行為の範囲は広くなっており、確立した権利がなくとも違法性があれば対応できる。データベースの保護に関し、日本として条約等によって独立の権利を認めた上で保護していくのか、一般の民法の不法行為だけでも足りるのかどうかという議論も必要であると思う。

【事務局】

  最近、自動車情報のデータベースについて、投資や労力の側面に着目して、著作物ではないが保護するという判決が出されている。データベースに関する議論は情報小委員会において行われるものであるが、判例の内容や、国際的な動向も踏まえながら、本委員会でも必要に応じ、取り組んでいきたい。

【事務局】

  この問題は国内問題に関係してくるものであり、著作権課では著作隣接権に関する課題であると考えている。ドイツの著作権法では、ベータベースの保護に関して著作隣接権の章で規定している。著作隣接権は創作性を求めていないので、実演等ある行為をした瞬間から保護される。一方、条約で検討されているのは、サブステンシャルインヴェストメントが保護の条件となっており解釈が違っている。かつて、データベースに関する条約を作成しようという動きがあった際に、国内で対処方針を検討する過程で、現状のデータベース保護において何か困っていることはないかということを関係業界に聞いたのだが、その時はほとんどなかった。ヨーロッパではもともと、日本の著作権法でいうデータベースを保護するのではなく、編集著作物の著作物性のないもの、例えば企業のカタログ等を保護することというのが議論の始まりであった。数年前に国内関係業界に問い合わせた際、1つだけ要望があったのは、時刻表の一部分だけをとりあげ、売られているのは困るということであった。最近は電子化されたデータベースからデータをとってくることがおきており、条約の動向を見極めながら、また具体の事例の情報を収集しながら、必要に応じて情報小委員会等でも検討するつもりである。

【委員】

  米国のデータベース保護に関する対応について、情報があれば教えてほしい。していくことが大切である。これは文化行政全般についてもいえることであり、省庁の垣根にとらわれず、総合的に文化政策を展開していくことが必要である。

【事務局】

  5月に行われたWIPO著作権等常設委員会では、米国からデータベースの検討状況について説明があった。米国では創作性のあるデータベースについては著作物として保護され、創作性のないデータベースの保護の在り方については、現在米国著作権局及び特許商標庁において検討が行われている最中であるということであった。また、米国では不正競争防止の観点からデータベースを保護しようという法案が前回議会会期中に廃案になってしまい、現在新たなデータベース保護の在り方について、検討が行われているとの説明もあった。その他米国議会の商務委員会、法務委員会においても、包括的なデータベース保護を法制化するということを目指して検討が進められているということである。条約交渉についての具体的な話は出ていない。

(5)その他

  事務局から資料に基づき説明があった後、各委員による以下のような意見交換が行われた。

【委員】

  放送機関の保護に関する検討については、放送小委員会においても議論されているところであるが、国際小委員会との役割分担はどうなるのか。

【事務局】

  条約への対応を検討していくにあたっては、我が国著作権法における対応の検討及び国内における利害関係間の権利の調整を行っていくことが必要である。このため、放送小委員会など個別の委員会等でまずは基本的な対応についての検討を行っていただくこととなる。検討の内容については適宜国際小委員会にも報告していくこととしたい。

【事務局】

  指摘の問題は日本の著作権制度が内外無差別という考えをとっていることによる。日本は国際的な義務ではない内外無差別を国内著作権法がとっている関係で、国際秩序を提案するときに国内秩序が先行しないといけないということを政策的に行っている。そうした関係から、国内的に秩序を受け入れられるか検討してから、国際的に提案するということになる。検討にかけられる時間的な余裕との関係があるが、国内秩序はこうであっても国際的にはもっとこういう提案をする必要があるのではないかという検討を国際小委員会でしていただき、その意見を放送小委員会にフィードバックしていくというやり方が理想である。

【委員】

  ハーグ国際私法会議について指摘しておきたい。99年10月の条約草案採択の際、本条約草案ではインターネット対応、電子商取引対応ができていないことと、知的所有権に関する議論が十分ではないということから、それを中心に非公式会合を開くことが決議された。また2000年5月の会合では米国の反対もあり条約採択が先延ばしにされた。そして、条約採択を先延ばしにする代わりに、どのような条文を作成すべきかについて非公式会議を開くという決議がなされ、それに基づいて何回か会合が開かれた。条約草案第10条の不法行為に関してはいろいろな会合で議論されている。その際、実際に被害を及ぼしてしまってもディスクレーマーを明記しておけば許されるかという点については、ディスクレーマーだけでは不十分であり、合理的な技術的手段をとるべきである等の考え方も出されており、また不法行為事件についてはセーフハーバー規定を置くこと自体に相当議論があるが、関係業界からはなんらかの歯止めがほしいという意見が出されている。また第3項については、日本は従来から盛り込むことに反対の立場であり、非公式会合の結果では削除の方向となっている。さらに第4項については、日本法では不法行為地国であれば、請求の基礎が同一である限り、外国で生じた損害についての請求についても裁判管轄が認められている。そうしたことを制限し狭めようとするのが第4項の規定である。これはブラッセル条約にはない規定であるが、ブラッセル条約のもとでの判例において、第4項前半部分のような判断を示した判例が出ている。名誉毀損の事例において、損害発生地が複数であるような場合、その地の1つで訴えるのであればその地で生じた損害についての賠償だけを請求することができるというものである。著作権については、名誉毀損とかプライバシーと不法行為の局面については同じであるのだという認識が一般的であり、その方向で議論が進んでいる。また2001年1月にWIPOにおいて準拠法も含めた国際私法に関するシンポジウムが開かれ、そこではベルヌ条約の解釈上、準拠法については、各国間でまったくコンセンサスがないということが明らかになった。そうした準拠法の在り方についてベルヌ条約上、明記されているのかどうかはっきりさせることと、明記されているとすればその解釈はどうなるのかということについての検討が必要かと思う。検討をせずにそのままにしておき、管轄に関する条約ができてしまうと、本条約は承認執行についても明記しているので、各国で勝手な法適用をした結果を受け入れるというになってしまう。現状において準拠法に関する検討のペースが管轄に関する検討と合っていないことが相当な問題であり、日本として、ベルヌ条約の解釈を検討する等し、なんらかの形で条約に書いてない点については何法が適用されるのかについて、明らかにするようなことを本小委員会における検討項目に付け加えてもよいかと思う。

【委員】

  ベルヌ条約に関する検討は極めて重要で緊急性のあるものだと思うが、なかなか結論が出にくいであろう。国際小委員会の場で集中して考える必要があるかもしれない。

【委員】

  ハーグ国際私法会議について、ここ1年ぐらいの間で産業界や工業界でも議論されてきているが、条約草案に関し業界からのコメントが複数の省庁に出されているかと思う。もしも国際小委員会の場で検討されるのであれば、全貌を知っておく必要からも、各団体からどのような意見が出されているか、可能であれば、他の省庁に出されている意見も含めて紹介してほしい。

【事務局】

  国際私法に関する課題については、法制審議会において検討がなされている。本件はかなり専門的な議題であり、今後どのような形で検討していくかについて事務局の方で検討した上で相談したい。

【委員】

  著作権あるいは無体財産権の分野からどうアプローチできるか、本委員会のような場で別途検討していかないと、法制審議会にだけ任せておくと、適当な回答が出てこないと思う。

【委員】

  本課題はこれからのIP政策、著作権と関連するものであり、特許の場合と著作権の場合とでは、この問題に関して日本のビジネスの対応が分かれる気がする。準拠法が入ることにより、極めて難しい法律論が重なってくることになり、それに新しい技術がどうなじむかといった問題と、伝統的なIPへの対応とが整理されないと、問題が錯綜するだけで進まないのではないかという懸念がある。

4.次回日程

次回日程については、事務局から日程調整等がつき次第、後日連絡する旨の発言があった。

5.閉会

(文化庁国際課)

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