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文化審議会

2001/09/28 議事録

文化審議会著作権分科会総括小委員会(第3回)議事要旨

文化審議会著作権分科会総括小委員会(第3回)議事要旨

平成13年9月28日(金)
14:00〜16:00
日本芸術文化振興会第1会議室

出席者

(委員)

北川分科会長、齊藤主査、大山委員、岡村委員、渋谷委員、道垣内委員、土肥委員、野村委員、松田委員、山口委員

(事務局)

銭谷文化庁次長、岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官

1.開会

2.議事

はじめに、議事及び配付資料の確認が行われた。

(1)著作権法制に関する基本的課題について

  事務局及び松田委員から、それぞれの資料に基づき説明があった後、各委員による以下のような質疑応答、意見交換が行われた。

@ 契約秩序の構築と著作権法の役割

【委員】

著作権法第61条第2項は、当事者の契約に任せているからこそ、契約時の趣旨をいちいち争わずにすむように一応の推定をするというものである。逆の形での推定にすべきというのはわかるが、規定自体を削除するというのは論点がずれていると思う。

【事務局】

削除という趣旨は、せっかく当事者間で明確な契約を交わす動きがあるのに、この推定規定があるとかえって安定性を欠くのではないかということである。

【委員】

第61条第2項は契約がなかったときのものであって、契約を補完するものである。

【委員】

著作者保護の観点からは第61条第2項は残すべきだと考える。

【委員】

推定規定の意味と規定の置き方と2つの論点があるので分けて考えるべきである。前者はこのような規定を入れた方が得かどうか、後者は書きぶりに関わってくる。

【事務局】

もちろん逆にこのような規定を増やすべきとの意見もあり、規定の増減について両方の意見があるのであれば、当事者の意思を尊重して何も規定しないという選択肢もあり得る。それに、このような規定を特定の分野だけに置いておくことも問題である。

【委員】

このような規定がたくさんあると、著作権法を熟知していない人にとってかえってトラブルの元になるし、対等な契約関係を前提としていないようにみえて、法律として未成熟な感じがする。できるだけ増やさない方がよい。

【委員】

著作権者の意識の問題ではないか。事務局の考えは比較的権利意識が高い権利者は自分たちの権利について契約でしっかり守るということだと思うが、世の中にはそうでない者もたくさんいるので、この程度の規定なら置いておいた方がいいであろう。

【委員】

第61条2項は、権利を譲渡しても、著作物の二次的利用についてはもう一度考えさせようという意味で有効である。

【委員】

著作権の中で、複製権は第30条等で私的領域における権利制限があるが、他の公衆への提供・提示の形の権利についてはそれがなく、だから第61条第2項のような規定をおいておくことは著作者にとって意味があると考えることはできると思う。

【委員】

松田委員から説明のあった、デジタルコンテンツ利用契約の事例について(資料4、P51)、写真家と電子出版社との間の利用許諾契約において履行請求権の内容は何か。デジタルコンテンツの提供を求める権利はあるのか。それとも履行請求権はないと考えるのか。ライセンス契約により写真家の側に不作為債務が生じて電子出版社には作為債権が発生するというのは英米法の考え方である。日本では履行請求権の概念があるので、ライセンスを得ると利用権と呼べるものが設定され、そこからコンテンツの提供を求めること等ができるはずである。

【委員】

ライセンス契約の本質は、ライセンシーがライセンサーに対して持っている不作為債権であるという最高裁判例もある。知的財産一般に関する契約の本質は、不作為債務であり、それに付随して作為債権も生じさせている場合があると考えられ、海賊版等無断複製が起こった場合も、債務者たるライセンサーは自己の債務を完全に履行しており、代位すべき債権がないと構成するのが通常である。

【委員】

シュリンクラップ契約については、契約一般の問題であると思うが、著作権法特有の問題が何かあるのか。

【事務局】

おっしゃる通り一般的な問題ではあるが、問題を提起されている以上著作権法を改正するかは別として、著作権分野においてもこの問題を検討したいという趣旨である。

【委員】

シュリンクラップ契約については、特にソフトウェアに関し購入したときに予期した効果が得られないことが問題となる。しかも、効果が確認できるのは購入してからだいぶたってからではないか。これは民法上の「錯誤」の問題や商取引法上の「買い手の検査義務」の問題も関わり、ソフトウェアの特徴を生かして一般法を適用できないかどうかも検討に値する。

A 紛争処理の在り方

【委員】

東京・大阪両地裁での裁判所内の調停制度(非公式)が比較的活用されているので参考にしたらよい。

【委員】

国際商事仲裁協会も実績があるのでその他の紛争処理機関として加えたらよい。
また、日本の「調停」と欧米での conciliation や mediation とは、構造的な違いがあるので、注意する必要がある。日本では当事者どうしの話し合いをさせずに間に調停人が入るという形だが、 conciliation は両当事者を付き合わせて話し合うというものである。

【委員】

ADRの活用という視点がある一方で、訴訟の活性化という観点も重要である。ADRも訴訟がしっかり機能していないと意味をなさない。
また、別の問題として、刑事罰の活用という問題もある。刑事罰を規定しておいて実際に使われていないと遵法意識の観点から望ましくない。本当に処罰するものについてのみ規定し、処罰しないものは規定しない、規定されているものは徹底的に活用するということが必要である。

【事務局】

執行・罰則の問題については昨年の法改正によって整備されたが、まだおっしゃるような課題も残されており、我々としては今まで検討してきた延長線上と考えており、その意味で基本的課題としては紛争処理制度と合わせて根本的に見直す必要があるかどうかという観点から挙げているが、委員のご意向があれば、罰則についてはあっせん制度とは項目を分けてグループCに追加し、ご議論いただいてもよい。

【委員】

放送番組等の二次利用がしにくくなっているという問題を考えることに関連して、最近、文化庁長官の裁定制度における裁定の判断に、かつてのような厳しさがなくなってきたように思われる。このような制度も紛争解決には有効であり、利用しやすくするという観点から制度の枠組みについて検討が必要ではないか。

【事務局】

裁定の制度は国際的には全廃の方向に向かっているが、「強制許諾制度の在り方について」としてグループCに追加する。

【事務局】

放送番組の二次利用の問題は、基本的には契約の問題である。放送局は過去のものについては契約で処理するように努めているようであるが、まだ一部である。総務省、経済産業省と連携して、最初に番組を作る際に二次利用についてもきちんと契約をするように、少なくとも権利者のリストを作るようにという実験も始めている。

(2)著作権法改正要望について

事務局から資料に基づき説明があった後、各委員による以下のような質疑応答が行われた。

【委員】

学校用のソフトウェアについてのシュリンクラップ契約の問題がある。市販されているソフトは通常パソコン1台にインストールすることしか許容していないが、教師はそれを授業用の複数のパソコンにインストールしているという実態がある。このようなソフトの利用許諾契約と学校教育の問題について検討をしたことはあるか。

【事務局】

教育目的での利用については、改組後も審議会にワーキンググループを設けてこれまで約半年間検討を行ってきているところであるが、ソフトウェアの問題はあまり議論されていない。なぜなら、ソフトウェアのインストールについては契約秩序が既に発達してきており、学校用ソフトは教育委員会がまとめて業者から購入し、その際に授業で使う範囲で必要な対価を支払っているという実態がある。市販のソフトウェアを学校の複数のパソコンにインストールする行為はいけないという意識も強まってきていると思う。

【委員】

私が把握している実態は数年前のものなので、今はしっかり権利が守られていると思う。

(3)その他

事務局から本小委員会の「審議経過の概要」のイメージについて説明があった。

3.閉会

事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。

(文化庁著作権課)

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