2000/10/17 議事録
平成13年10月17日(水)
10:30〜13:00
三田共用会議所大会議室
半田主査、秋田委員、上原委員、大塚委員、加藤委員、齊藤委員、田名部委員、寺島委員、東郷委員、生野委員、宮下委員、山下委員
天野審議官、岡本著作権課長、村田国際課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他担当官
事務局から、文化庁関係者に異動があった旨の報告が行われた。
事務局から資料の説明が行われた後、放送事業者側から送信可能化権に関する補足意見があった。
【委員】
放送事業者の権利拡大等について、現段階で極めて緊急性が高いと考えているのは、固定されていない放送の送信可能化である。
1999年の半ばから、一部マニアのサイトで自分の好きなタレントが地方に出て行く時に、別の地方のファンのためにストリーミングで流すサービスが見られるようになった。一度固定されているものを送信可能化するものについては、複製権等侵害で対応しているが、固定されていない放送、中でも生番組の音声系については、放送事業者としては何も言えないので対応に苦労している。今後、デジタル技術の発達により、映像のストリーミングも容易になることが予想されるので、是非この部分については早急な対応をお願いしたい。
【委員】
送信可能化権の付与により、放送番組に含まれている著作権、著作隣接権、その他契約等によって番組に協力いただいている方々の権利についても、我々の方から一括してものを言えるという意味で、皆さんにとってもメリットが大きいと思う。是非ともお願いしたい。
放送事業者側の補足意見の後、本小委員会の審議経過の概要(案)に関して、以下のような意見交換が行われた。
【委員】
資料4ページでは「現行の著作権法では放送事業者に権利が付与されていないため」と言い切っているが、同一のコンテンツを同時にリアルタイムで配信する行為は、有線放送権の侵害で止めることができるという議論も有りえると思うので、「権利が付与されていないため」とするのではなく「送信可能化権が付与されていないため」と明記してほしい。2ページの(1)送信可能化権の部分も同様に修正してほしい。
【事務局】
条約上のインタラクティブ送信は「公衆への送信が受信者が選んだ時に起こる」と定義しており、この部分は紛れは無いと思っているが、わが国著作権法では、放送を「同時に送信する」と書かず、「同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として」と定義しているため、インタラクティブ送信を放送の定義に含める解釈も一部にあるが、このように解釈すると条約上でも齟齬が出てくるので、文化庁としてはそういう解釈はとっていない。ただ、ご指摘の部分については修正したい。
【委員】
先ほど放送事業者側から実態的な補足意見があったが、審議経過の概要に実態的な資料は添付されるのか。実態が見えないと説得力に欠けるのではないか。
【事務局】
最終的に著作権分科会のレポートというのは、各小委員会のレポートを束ねたものになる予定だが、各小委員会とも、論点整理した部分、あるいは、結論が出た部分はその結論の部分だけ書くようにしている。
【委員】
放送番組の二次利用の促進についてだが、これを読むと、何でもかんでも二次利用ができるよう先に許諾がとれるルールを関係者間で作れという趣旨に捉えられるが、すべての番組でその必要があるわけではない。また、番組制作者が実際に番組を制作しながら、形式上、契約で局制作になるものなどは、番組制作者が二次利用の権利処理をすることはありえないので、このあたりの実態をご理解いただきたい。
【事務局】
放送番組すべての二次利用を促進することが可能かどうかについては、また別問題であるが、何でも二次利用すべきという印象を与えるのであれば、表現を修正しても構わない。また、二次利用の促進の部分は、番組制作者の努力だけが必要という趣旨ではなく著作者やレコード製作者、実演家など番組に関わっている契約当事者全体のことを指しており、実態も含めて契約の問題を改善すべきという趣旨で記載している。
【委員】
資料の「契約ルールの整備」というのは、権利処理ルールと考えて構わないのか。それとも、放送事業者と番組制作者の間の契約も含めてのことか。
【事務局】
権利者団体の間の契約にとどまらない契約全体という意味である。
【委員】
「保存されている放送番組の二次利用の促進について」とあるが、最初の段落では、すでに保存されている番組の活用に言及して課題を書いているが、次の段落では、これから制作する番組の契約ルールに関することに話が移っている。また、44条によって保存されている番組の二次利用に関する課題についての検討もあると思うが、いかがか。
【事務局】
一時的固定によって保存されている放送番組の二次利用については、当初から二次利用を含めた契約による保存も必要という趣旨で記載している。また、タイトルと内容が違うという件については、タイトルの「保存されている」という文言を削除した方がいいのかもしれない。
【委員】
保存番組の二次利用で実際に困っているのは、著作者団体とか実演家の団体に所属していない人の番組だと思う。また、著作権があるから二次利用できないのではなく、むしろ、放送局などの意思で動かないのだと思う。
【事務局】
放送番組そのものも多様であり、それが制作、放送されるときの契約も多様なので、ここでは、権利処理といえるかどうか不明な契約も含めて、広い意味での契約による対応が必要という趣旨で記載している。
【委員】
保存されている番組というのは、44条の一時的固定、29条2項の局制作の場合、29条1項の場合の3つだと思う。この保存されている放送というのが、全てをカバーしているのか、一部なのか読んでいて分かりにくい気がする。
【事務局】
保存されている番組は、ある人にとってみれば44条だが、ある人にとってみれば二次利用の許諾を得ている場合もあるので一概に3種類とは言えないのではないか。そこに関わっている一人一人の権利者をみれば、多様な契約が考えられるので、その二次利用にはいずれにしても契約が必要ということになる。
【委員】
実態としては、一時的固定から記録保存所へ移されるものと契約関係あるいは録画許諾を得て保存しているものがあり、実演家については、93条の放送許諾に基づく録音、録画という場合がある。出演者の少ないものはどのパターンなのか分かるが、複雑なものになると色々なパターンでやっている。
【委員】
一時的固定の権利制限は、何でもかんでも保存できるというわけではないと思うが、このあたりは、どのようにお考えか。
【委員】
まず、保存すべきものがあって、契約等でカバーできないものは記録保存所で保存しているのであって、保存する価値のないものは保存していないし、将来において意義があるもので今保存しておかなければならないものなどを記録保存所に申請しているという状況であり、記録保存所を安易に使っているというわけではない。
【事務局】
参考までに著作権法施行令4条第1項では、「記録保存所において保存することができる一時的固定物は、記録として特に保存する必要があると認められるものでなければならない」と明記されており、民放連の記録保存所においても、特に保存する必要があると認められるものを保存しているものと理解している。
本小委員会の審議経過の概要(案)については、基本的に原案どおり了承され、意見を踏まえた修正については主査に一任された。
事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。
(文化庁著作権課)