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文化審議会

2001/04/10 議事録

文化審議会著作権分科会放送小委員会(第1回)議事要旨

文化審議会著作権分科会放送小委員会(第1回)議事要旨

平成13年4月10日(火)
14:00〜16:00
三田共用会議所大会議室

出席者

(委員)

秋田委員、上原委員、大塚委員、齊藤委員、須田委員、多賀谷委員、田名部委員、千葉委員、寺島委員、道垣内委員、東郷委員、半田委員、松田委員、宮下委員、山下委員

(事務局)

岡本著作権課長、村田国際課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他担当官

1.開会

2.委員及び文化庁出席者紹介

  事務局から、放送小委員会の委員及び文化庁関係者の紹介があった。

3.議事

(1)放送小委員会主査の選任について

  齊藤委員から、半田委員が主査に適任との推薦があり、文化審議会著作権分科会運営規則第3条第3項の規定に基づき、互選により半田委員が主査に選任された。続いて、文化審議会著作権分科会運営規則第3条第5項の規定に基づき、齊藤委員が副主査に指名された。

(2)放送小委員会の概要について

  事務局から、本小委員会の概要について説明が行われた。

(3)放送小委員会の議事の公開の対応方針の制定について

  事務局から、本小委員会の議事の公開の対応方針について説明が行われ、了承された。

(4)放送小委員会の検討事項について

  事務局から資料に基づき説明があった後、各委員による以下のような意見交換が行われた。

【委員】

  マルチメディア小委員会放送事業者等の権利に関するワーキング・グループにおいて、すでに片付いている問題もあると思うが、その部分も再度議論するのか。

【事務局】

  すでに結論めいたものが出ている部分については、再度議論するつもりはない。例えば、放送事業者の権利の在り方については、ある程度方向が定まったものもあるが、放送前送信などは、まだ結論が出た訳ではないので、そういう部分については引き続き検討する必要がある。また、今後条約の議論の進展によっては、一度議論したものでも再度議論する必要が出てくるものもあると思う。

【委員】

  主として、議論の対象と考えているのは、「放送」、「放送事業者」の定義の在り方の部分か。

【事務局】

  これまでは、放送事業者の権利の在り方を中心に検討していたが、放送の定義については、これまであまり議論が進んでいなかった部分であり、従来の放送とは違った形の放送、あるいは、放送波を使った様々な事業の出現が考えられるため、この部分については、更に検討の必要があると考えている。

【委員】

  情報通信技術の発達に伴い、伝統的な意味での放送とは違う形の放送や新しい送信が出てくる場合も考えられるので、放送という枠の中で特化して考えるのではなく、隣接領域との接点も模索しながら柔軟に対応すべき。

【委員】

  資料では、放送事業者の権利の在り方に関する部分だけ条約のことが書いてあるが、この部分だけは条約の動向を待つということなのか。また、今後、法改正につながる議論をするのであれば、期限を設けないと議論は進まないのではないか。

【事務局】

  放送事業者の権利の在り方に関する部分だけ条約待ちという趣旨ではない。この部分は、ある程度国際的な動向を見ながら議論を進める必要があったため条約のことに触れた。また、文化審議会では1年ごとに報告を出すことになっており、著作権分科会も今年の末ぐらいに各小委員会の検討状況を公表する必要がある。従って、著作権分科会の報告の前に小委員会レベルの一定の報告が必要となる。

【委員】

  情報通信技術の発達は予想以上に早く進むと思われるので、早急に議論を進めるべき。

【委員】

  キー局からネット局へ送信され、そのまま視聴者に送信される場合の放送前送信は、同一の内容のものを同時に受信することを目的とした送信と考えられるので放送にあたるのではないか。また、放送を受信し、そのままコンピュータ入力した後、アクセスのある利用者に送信するのは、同一の内容のものを同時に送信する放送と考えられないか。

【事務局】

  A地点からB地点へポイントツーポイントの送信が行われ、B地点から公衆向けの送信が行われている場合に、A地点からB地点への送信は公衆送信ではないと解釈している。また、サーバからの送信がアクセスがあった時にしか起こらないのであれば自動公衆送信であるので、インターネット放送は、著作権法上の放送ではなく自動公衆送信にあたる。放送や自動公衆送信などの切り口を変えることは困難であるため、切り口はそのまま維持しつつ、権利の係り方の検討をする他ないと考えている。

【委員】

  公衆送信権や放送権など、権利を細分化している現在の状況を維持すべきかという議論もあると思う。日本として、条約の放送概念を変えることは考えられないのか。

【事務局】

  もちろん考えられるが、放送事業者の権利を条約上の権利より狭めると、その時点で条約違反に陥るため、この場合には、国内法を改正するのではなく国際的に法秩序を作るという形になると思う。早急に改正しなければならないものと長期的に見て議論が必要なものとを分けて検討する必要がある。

【委員】

  最近、ブロードバンド事業を始める会社が現れているが、ブロードバンドなどは、著作権法のどの概念に該当するのか分からない。どのように分けて考えればよいのか。

【事務局】

  ブロードバンドというのは、現在色々な意味で使われているが、著作権の世界で議論する場合には、著作権法上の用語を使用することが大切である。今までの著作権法の切り方で不都合なところがあれば変えればよく、新しく概念が必要であれば加えればよい。まず、現行法の切り方から検討すると混乱しなくていいと思う。

【委員】

  自動公衆送信は、コンテンツを通す中身ではなく仕組みに関わるという点で、放送ではなく通信事業に近いと思う。ただし、今後、コンテンツに対して何らかの支配管理権を持つような仕組みになった場合には、現在の区分けを考え直さなければならない。
  また、個人が放送に近いサービスを行うからといって、事業性を持たない限り放送事業者ではないと考える。仮に、インターネットによる放送的なサービスが業のレベルに達した場合には、その間の整理をしなければならない。

【事務局】

  実演家、レコード製作者になるためには許認可は必要ないが、放送事業者になるためには、通信放送法制で許認可が必要である。普通、個人は放送事業者や有線放送事業者にはならないが、自動公衆送信的なサービスであれば、個人でも行える状況になっている。従って、放送通信行政の傾向との係わりについては本小委員会の特有のポイントかもしれない。

【委員】

  例えば、ケーブルテレビを使ってビデオオンデマンドを行う場合は通信で、ニアビデオオンデマンドを行う場合には放送になるのか。また、免許を持たない小出力のボランティア放送局の場合、放送事業者の権利はあるのか。

【事務局】

  著作権法は行為に着目しているので、衛星を使おうが、光ファイバーを使おうが、どのようなルートであろうと、アクセスがあった場合にだけ公衆への送信があれば自動公衆送信となり、常に送っていれば放送または有線放送になる。また、放送事業者の定義が放送法と著作権法は違うので、免許を持っていなくても著作権法では放送事業者になる。ただ、実態上、放送法等のシステムがあるので、これを無視することは適切ではない。

【委員】

  民間放送事業者は、それぞれがインターネット放送を行っているが、それは、放送事業者としてではなく一つの企業として行っている。放送の世界では国籍主義、発信地主義が当てはめられているが、インターネットの世界では、その秩序は必ずしも成り立たない。このような一国ではクリアできないシステム上の問題も、今後法制度として広くすくいあげて検討すべき。

【委員】

  放送事業者がインターネット関連の事業を始めたということだが、将来の選択として、放送事業とインターネット事業の比率をどう考えているのか。

【委員】

  多くの民間放送事業者は、インターネット事業を放送事業の補完、あるいは、新しいツールとして考えているが、どの程度の事業になり得るのかは見通しを持っていない。ただ、10年後にインターネット事業の規模が半分になるのかもしれないという恐れも抱きつつある。

【委員】

  NHKの場合、インターネットでニュースを流しているが、これは、あくまで放送に附帯する業務として行っているものである。また、ラジオジャパン(ラジオ国際放送)でニュースをインターネットを使って流しているが、これは調査研究として行っているものである。本格的にインターネット事業へ参入するのであれば附帯業務というわけにはいかなくなるが、現段階でNHKがいわゆるインターネット事業を行うということは放送法の関係であり得ない。

【委員】

  従来、インターネット放送は、放送に代替するものではなかったが、技術の発達により、高音質、高画質のものが送信され、放送に匹敵するようになると、有料放送番組をリアルタイムで送信するような者が出現する可能性がある。リアルタイムだから複製もなく放送でもないとなると権利主張できなくなる。法制度上の対応が必要だが、それ以前に解釈論として対応を図る検討も必要ではないか。

【事務局】

  放送事業者の送信可能化権については、日本からの条約提案の一つの目玉になっている。今までの放送概念にとらわれず、ビジネス全体がどうなっていくか、放送事業者の許認可がどうなるかなど全体を見つつ、著作権の切り口から見てそれぞれの行為をどう考えるかという視点で検討する必要がある。

【委員】

  今後、どういうメディアが出現するかという議論の前に、原点に戻って利用者の利益、権利者の保護のバランスをどう確保するのかといった検討から始めるべき。また、国際的な動向も視野に入れつつ検討する必要がある。

(5)その他

<放送事業者の権利に関する新条約への提案について>

  事務局から、本年5月に開催されるWIPO常設委員会の場で、日本政府として放送事業者の権利に関する新条約に関して提案を行いたい旨の発言があり、続いて提案内容について説明があった。

4.閉会

  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。

(文化庁著作権課)

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