文化審議会
2001/08/08 議事録
平成13年8月8日(水)
10:30〜13:00
三田共用会議所大会議室
紋谷座長、北川会長、金子委員、上林委員、久保田委員、後藤委員、齊藤委員、佐々木委員、中山委員、生野委員、松田委員、山地委員
天野長官官房審議官、岡本著作権課長、村田国際課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官
Mihaly Ficsor(B S A Special Counsel)
Stave Metalitz(B S A Special Counsel)
事務局の異動について、報告がされた。
【その他の委員】
一時的蓄積を複製と認めなくても他の権利行使でカバーできるのではないか、カバーできない例は何かという実例を具体的に示さないと議論は遅々として進まないだろう。
【その他の委員】
説明された例によると、サーバーに著作物を不正におく業者Xがいるが、このXが著作物をどこからどのように入手したのか不明である。
【その他の委員】
ASPの事例において、Xはサーバーに著作物をおく場合、必ずハードディスクに複製していると認識しており、複製を伴わないASPの事例は知らない。
【その他の委員】
ASPで使われるプログラムはユーザー側のハードディスクに複製がされており、RAMの上にだけ複製がされていることは考えられにくく、単純に複製権侵害で十分に対応が可能であると考える。
【説明を行った委員又は説明者】
Xが複製物を入手する方法は多種多様あり、合法的に入手するとか、第2国、第3国で入手したかもしれない。結果的にXはユーザーCが不正の一時的複製をすることを可能にしている。権利者BはXに対して侵害行為を追及することは難しい。
【説明を行った委員又は説明者】
Xが複製物を合法であろうが違法であろうが、入手方法は我々の論点とは無関係である。論点となるのはXが他者に配信する行為が合法であるのかどうかである。合法でない場合、受信者側が使用する行為を独立の複製と認識し、受信者側がXが違法であると通知されたときから、その行為は違法となると考える。
【事務局】
WGで議論することは、いわゆる一時的蓄積を複製権の対象としないと困ることがあるのかということを確認することであり、あくまでもビジネスの実態を踏まえ、新たな法的な仕組みを整える必要があるのかどうかということを議論していただきたい。
【その他の委員】
Xがどのように著作物を入手したかは関係ないという点については入手行為が複製権侵害、公衆送信権の侵害になるケースもあり、その点をきちんと整理しないとまともな議論ができない。
【その他の委員】
受信者側に一時的複製があるから違法とすべきという意見については、サーバーのプログラムによっては、受信者側に一時的複製がされないケースもあるが、その事実について認識しているのか。
【その他の委員】
ユーザーを責めるという考え方もあるかもしれないが、そもそも基本的に法的な制裁をするとしたら、まずXに対してするべきではないのか。
【説明を行った委員又は説明者】
Xが情報を許諾を得ずに送信する行為が権利者を侵害することについては異議はない。また善良なユーザーは責められるべきではなく、責められる行為は、侵害であるという通知を受け、知りながら侵害行為を行っていることである。
【説明を行った委員又は説明者】
Xに対する救済措置が適切でない場合も多く、ユーザーに対して権利行使をするしかないケースも多々ある。
【その他の委員】
サーバーの複製が合法であろうと違法であろうと、日本の著作権法においては、Xの行為を公衆送信権侵害により差止める法制度をもっている。ユーザー側の複製を違法にしなければならない事情というのは、ユーザー側のASPビジネスに参画する適法性の確保を求めているのではないのか。
【その他の委員】
ユーザー側での一時的蓄積を複製とみなしても、ユーザーがXが違法行為かどうかを事前に認識することも難しく、違法であると通知されたときに、自らの利用も違法になるのでは、このビジネス利用をすることに萎縮効果を与えるのではないのか。また、ユーザー側においても違法行為を捕捉することは困難だと思われる。
【その他の委員】
この事例における一時的蓄積の正確な概念についてどのように考えているのか。
【説明を行った委員又は説明者】
送信中の過渡的な状況ではなく、送信後も固定されているという固定のことである。
【その他の委員】
RAMに入っているものは全て一時的複製と考えるのか。
【説明を行った委員又は説明者】
電源を一旦遮断された場合には消滅するようなRAMもしくは揮発性のような記憶装置に複製されているものは一時的複製であり、これは日本の著作権法では保護していないと認識している。
【その他の委員】
事例におけるビジネスについて、著作権法だけで解決しなければならない必要性はあるのか、契約もあれば不正競争防止法等、他の法体系によっても解決できる部分はあるのではないのか。
【その他の委員】
一時的蓄積が複製として認められているアメリカにおいて、ユーザーに対する権利行使が実際に実行性をあげているのか。送信する側を探すのが大変であるということだけで、ユーザーをたたくという発想は、著作権法のパラダイムをひっくり返してしまうことになってしまうのではないのか。
【説明を行った委員又は説明者】
日本の法律において一時的蓄積を複製とする際には、あわせてその例外についても話し合われると考えている。また権利者はユーザーに対して不正の行為によって一時的な複製をつくっていることを通知することが必要になる。
【その他の委員】
このような事例は実際にビジネスとして行われていることか。
【説明を行った委員又は説明者】
我々が懸念している実際の事例の一つとしては、ユーザーのところで、意図的に違法なサイトにアクセスし、ダウンロードしてハードディスクにコピーしない前提で使い続ける場合がある。
【その他の委員】
Xの存在を確認することが困難であるということだが、Xが有料サービスを行っている場合には、所在地を確認することはそれほど困難ではないと思われる。
【説明を行った委員又は説明者】
有料で料金の行き先を突き止めることは簡単かもしれないが、実際に情報を送信しているサーバーがどこにあるのかということは別問題であり、突き止めることは困難である。有料でないケースもあり、またピア・ツー・ピア技術や新たな技術の進展によりXの位置を限定することは非常に難しくなっている。確かに公衆送信権は一つの強力な解決であるが、新たな状況に対応するにはそれだけでは十分ではない。
事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。
(文化庁著作権課)