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文化審議会

2001/05/21議事録

文化審議会著作権分科会情報小委員会複製ワーキング・グループ(第1回)議事要旨

文化審議会著作権分科会情報小委員会複製ワーキング・グループ(第1回)議事要旨

平成13年5月21日(月)
10:30〜13:00
永田町合同庁舎第4,5,6会議室

出席者

(委員)

紋谷座長、金子委員、久保田委員、後藤委員、齊藤委員、佐々木委員、生野委員、山地委員

(事務局)

林長官官房審議官、岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官

1.開会

2.委員及び文化庁出席者紹介

事務局から委員及び事務局の紹介が行われた。

3.議事

1複製ワーキング・グループ概要について

事務局より、本ワーキング・グループの設置の趣旨や所掌事務等について説明が行われた。

2複製ワーキング・グループの議事の公開の対応方針の制定について

事務局より、複製ワーキング・グループの議事の公開の対応方針について説明が行われ、了承された。

3一時的蓄積の実態について

 久保田委員から一時的蓄積の実態について発表が行われ、各委員による以下のような意見交換が行われた。

【その他の委員】

例えば、台湾から無許諾で音楽を送信されると、条約に加盟してもらわない限り、送信部分で防ぐ手立てがない。パッケージであっても送信という手段であってもユーザーに届くものは同じなので、一時的蓄積を複製と捉え、結果として違法複製物が送信されるのを防止したい。ただ、ユーザーのところでは私的複製と考える余地があるので悩ましい問題である。

【その他の委員】

1条約非加盟国からの送信、2不正受信への対応、3受信されたコンテンツの再送信については、ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)だけの問題点と捉えていいのか。

【説明を行った委員】

必ずしも、ASPの問題だけでなく、送信の事業の係る問題点と理解していただきたい。

【その他の委員】

通信回線の先のあるソフトをコピーせずに利用するタイムシェアリング的な使い方、ダウンロードして自分のコンピュータの中で利用する使い方などがある。一時的蓄積を伴わないケースもあり、その点を明確に区別すべきである。

【その他の委員】

ストリーム配信は瞬間的にRAMに蓄積されるものの一回再生されれば消えてしまうが、ダウンロード配信はRAMであっても蓄積されていて何度も再生できる。最近は使用機器も携帯電話、電子手帳などに広がり、プログラムに限らずコンテンツの利用も可能になり、一般の人も利用主体になっている。従来はコンピュータの電源を切ればRAMに蓄積されていたものが消去されるので、一時的蓄積に関し瞬間的・過渡的という概念の議論がされていたが、最近はフラッシュメモリー等、電源を切ってもデータが保持できるものがあり、時間軸の概念が曖昧になっている。
 利用者が意図していない複製について、どこに責任を負わせるのか等の問題もあり、様々な利用形態を考慮して検討しなければならない。

【その他の委員】

仮にRAMへの一時的な蓄積を「複製」に含まれると解したとき、複製の主体は誰なのか。受信する側が複製されている点について意図していない場合にどうするのか等、様々な状況設定をして誰のどの権利を保護するのかということを検討すべきである。

【その他の委員】

ビジネス展開によって一時的蓄積に関するファクターが変わっているところはあるかもしれない。ただ、送信という行為と蓄積という行為はきちんと書き分けて整理すべきである。また、本WGで議論をするに際し、刑事罰と民事救済の問題は区別して検討すべきと考える。

【その他の委員】

権利者の権利被害の規模を明確にするため、コンテンツプロバイダーのサービスとブロードバンド化等技術的な変化に伴い、恣意的・意図的な蓄積を違法に行う例がどのくらいあるのか検証すべきである。

【その他の委員】

国際的な動向も踏まえて、議論すべきである。立法を待たないとサービスができないようでは、今後のネットワーク社会・電子的社会の到来に禍根を残す。

【その他の委員】

「家庭内で使用することを目的としてプログラムの複製が行われたが、これが業務用に使用されたとしても何ら許諾の対象とならないことを正当化する根拠は特にない」とあるが、根拠がなければ違法であることになるので問題はないのではないか。正当化されるかもしれないから、それは問題であろうというのなら理解できるがどうか。

【説明を行った委員】

必ずしも違法であるとは言っていない。違法であるとはいいきれないというニュアンスが含まれている。

【事務局】

先ほどから、条約非加盟国からの送信であるとか、RAMに蓄積する行為が問題であると言われているが、そもそも違法利用を摘発できないのが問題ではないのか。

【説明を行った委員】

法律にこういった行為は違法であると明記されることによる抑止効果はあると思う。ある行為が違法かどうか判断しにくい場合があるなど、ビジネスをするにしても、著作権法上において整理するこは有意義なことであると考える。

【その他の委員】

インターネットを開設する場合にタックスヘブンということで税金が課税されない地域で開設されることがあり、必ずしも日本からコンテンツが配信されるとは限らない。一時的蓄積の問題を考えるにしても国際的な調和に留意しなければならない。

【その他の委員】

以前は頒布については複製の許諾の中で処理をしていた。送信に関しても、ダウンロードや再送信、二次的利用まで含めて一つ一つ区別して処理する手法があるのではないか。その場合技術的なバックアップが重要となる。

【その他の委員】

RAMへの蓄積を複製と解した場合、受信者の一定の範囲の利用とは、どの範囲までを法的規制をするという意味なのか。

【説明を行った委員】

ソフトウエアやコンピュータプログラムを利用して何らかの利益を享受している者とはその対価を支払うべきという意味である。ただ著作権法上はそこまで言えるかという観点はあるが。

【その他の委員】

受信されたコンテンツの再送信について、送信行為でのRAMへの蓄積を複製をみなさなければならないとあるが、これは複製ではなく、再送信行為としての権利を検討すべき事項ではないのか。何か具体的に事例があるとわかり易いと思うのだが。

【説明を行った委員】

もう少し分析してみたい。

【事務局】

現実として、一時的蓄積を複製と認めないことで1番困っていることは何か。

【説明を行った委員】

平成9年に公衆送信権を法整備したが、RAMに蓄積する行為を複製と捉えれば全てが解決するのではないかと思っている。

【その他の委員】

欧州では、RAMの蓄積を複製として、ソフトウエアの価格に上乗せして対価を得ようとする動きがある。パソコン購入者はRAMに蓄積する意思を持って購入するわけではないので、違和感は多少はある。

【その他の委員】

その考え方は、1965年にドイツで考え出された制度であり、機器等に課金する形でパソコンにもそれを応用しようということである。それは過渡的でもあるので、電子的な管理に変えた方がいいと思われる。
 複製権の及ぶ範囲として、複製権が及ぶ場合、複製権を及ぼすのが妥当でないとして複製権を制限する場合、そもそも複製権を論ずる必要のない複製の場合と3パターンあると思う。

【説明を行った委員】

コンピュータの電源が入っている限り、再生し得るということで複製と考えることができる。

【その他の委員】

複製であることを法律上明記することにどういった意味があるか。コンピュータ業界としては、一時的蓄積の問題は契約で解決できる話であると理解している。

【事務局】

過去の著作権審議会において一時的蓄積は複製ではないとされているが、本WGにおいては、具体的にこういった利用形態において問題があり、複製と認めてほしいという事例を聞いて検討するというスタンスで考えている。

4.閉会

 事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。

(文化庁著作権課)

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