審議会情報へ

文化審議会

2001/07/27 議事録

文化審議会著作権分科会情報小委員会図書館等における著作物等の利用に関するワーキング・グループ(第4回)議事要旨

文化審議会著作権分科会情報小委員会図書館等における著作物等の利用に関するワーキング・グループ(第4回)議事要旨

平成13年7月27日(金)
14:00〜16:00
日本芸術文化振興会第1会議室

出席者

(委員)

紋谷座長、北川会長、糸賀委員、金原委員、木村委員、小阪委員、児玉委員、後藤委員、齊藤委員、酒川委員、杉野委員、土屋委員、筒井委員、中西委員、名和委員、前園委員、松村委員、三田委員

(事務局)

天野長官官房審議官、岡本著作権課長、村田国際課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官

1.開会

2.事務局の異動について

  事務局の異動について、報告がされた。

3.議事

  • 図書館等における著作物等の利用に関するWGの論点整理について
      事務局から図書館等における著作物等の利用に関するWGの論点整理について説明が行われ、各委員による以下のような意見交換が行われた。

【委員】

  権利制限縮小の論点整理(案)に記載されていない意見があるが何故か。

【事務局】

  この論点整理(案)は法改正という観点で作成されており、法改正に関する議論でないものはこの整理から外している。

【委員】

  現在の図書館における複写サービスについても報酬請求権制度のようなものが必要と考える。全般的に図書館等における複写は、制定当時とは使いやすさも大きく変わっているなど、実態にそぐわない部分もあるので報酬請求権制度のような取り入れることを検討すべきである。また図書館が複製の主体となっているのかどうかも疑わしい部分があるのでその点も検討していただきたい。

【委員】

  図書館等に設置されたインターネット端末から利用者が著作物をプリントアウトできるようにすることが図書館サービスとして必要なのか疑問である。インターネット上の著作物には違法アップロードされたものが多いが、そこをどのように整理するのか。

【委員】

  インターネット端末からの利用は非常に危険であり、公的機関が関与して更に違法状態を拡散することには問題がある。

【委員】

  電子化の時代ということで、図書館だけでなく他の公共施設においてもインターネット端末が導入されている。都立図書館においてもインターネットの閲覧サービスを行っているが、プリントアウトできないかという要望もかなりある。

【事務局】

  この論点整理(案)には権利者側利用者側双方の要望は全部入れている。図書館において図書館資料以外の情報も何らかの方法によって情報提供機能を拡大すべきであるということは政府が表明している。ただ実態としてそれを権利制限規定でやるのか、お金を払ってやるのかは別問題である。

【委員】

  家庭や職場でインターネットにアクセスできない人のデジタルデバイドの解決のためにも図書館でのインタネット利用、それに関連してプリントアウトしたいという要求は当然あるだろうと思う。またWebサイトにアップロードした者が図書館でプリントアウトすることに権利侵害という意識があるとは思えない。公共施設であれば使ってほしいという人が多いのではないか。情報リテラシーを広める意味でも情報産業の育成においても必要なのではないか。

【委員】

  違法にアップロードを排除するためには別の手段を講ずるべきであって、そのことでプリントアウトできないとすることはおかしい。プリントアウトされたからといって、自分の権利侵害と感じていない人が圧倒的に多いので、黙示の許諾という解釈でいいのではないか。どうしてもプリントアウトしてほしくないという人はホームページ上に明示すればいいだろう。

【委員】

  インターネット利用というのは、図書館以外にはどんなところがあるのか。

【委員】

  公民館、生涯学習センターといった自治体の公共施設等である。

【委員】

  アメリカのガバメント・プリンティング・オフィスでは国内の寄託図書館にインターネット端末を置いて政府の電子刊行物をとれる仕組みにしている。政府情報の利用という点でも公共図書館の端末は意味がある。

【委員】

  花粉症を直すのに専門的に扱っている病院を調べるとか、インターネット利用は日常的な生活の中に位置づいている。

【委員】

  専門図書館としても、書誌情報等をインターネットからプリントアウトできるようにしたいと考えており、前向きに検討していただきたい。

【委員】

  違法アップロードの問題は権利制限の拡大縮小の問題とは別であり、違法アップロードへの対処はプロバイダー責任のような形で処理すべきではないか

【委員】

  ホームページに他人の著作物をアップロードする場合にはきちんと権利処理をしなければいけないという意識はまだ十分に定着していない。特に音楽の世界では顕著であり、権利制限を拡大する議論する際にはその点をしっかりと意識して議論しなければいけない。

【委員】

  プリントアウトというのは、文字通り紙への複写ということに限定していいのか。

【委員】

  法律においてはプリントアウトといっても複製ということでプリントアウトを越える行為もあり得る。それと同じでファクシミリの行為に関しても、公衆送信という用語になるとファクシミリをはるかに越える利用形態までの含んでしまう可能性があり、慎重な議論が必要である。

【委員】

  全般的に図書館がサービスを無料でやることに関して、民業を圧迫していないか疑義がある。インターネット利用に関しても、個人でパソコンを購入したり、プロバイダーに加入することなく、図書館に行けば利用できるようになるとすると、民業を必ず圧迫することになり好ましくない。利用者に無料でサービスを提供するのではなくて、何らかの規制をおく必要があると考える。

【委員】

  必ずしも図書館サービスが民業を圧迫するとは言えない。図書館で初めてパソコンを触ったので、興味を持ったから購入してみる、図書館で本を読み感銘したので買ってみた等、共存共栄の部分もある。

【委員】

  推理小説等の本は一回読んだら終わりであるし、インターネットで情報を無料で引き出せるとならば、例えば育児百科とか病気の本を家庭に常備する必要性がなくなってしまう、特に地図等はそうであろう。民業を圧迫する危険性はある。

【委員】

  公衆送信権にはファクシミリ送信だけでなく、基本的に公衆送信権に定義するものは全て含まれることを意味している。安全性から言えばむしろ電子的媒体の方が技術的保護手段等の方策をとることができる。

【委員】

  デジタル送信の手段によって、様々な利用がされやすいので、やはり権利制限ではなく契約等の形で解決する手段を模索した方がいいと思う。

【委員】

  ILLや文献複写による被害は大きい。但し、利用行為に対して否定的であると主張しているのでなく、何らかの権利処理がされれば問題はない。

【委員】

  これまでこの問題について権利者と利用者が協議する機会があまりなかったので、今後建設的に現状を踏まえた上で両者で議論できればと思っている。

【委員】

  利用者・権利者側数人のグループを作り、何らかのガイドラインの可能性を探った上でこの問題を議論した方がよいだろう。

【委員】

  ファクシミリ送信について、送信先を図書館とし、プリントアウトしたものを利用者に渡すこととすれば権利者が懸念している点はかなり解消されると思われる。

【委員】

  ファクシミリ送信は単に複製物の提供の手段に過ぎず、それほど問題にすることではない。デジタル送信とは違う。

【委員】

  情報そのものに価値がある著作物は、デジタルであろうがアナログであろうが複製等により利用されることについては同じである。どんな複製であれ適正な使用料や補償金をとるべきである。

【委員】

  著作物を全て複製して、それを全文で検索するような広い概念でのデータベース化に対する権利制限は反対である。

【事務局】

  そうすると画像情報としての蓄積なら問題ないのか。

【委員】

  何とも言えないが、とにかくデータベースという書きぶりだとあまりにも広いので困る。

【委員】

  アナログ利用に関しては基本的に検討の余地はある。デジタル利用の場合は権利制限の対象にすることに抵抗がある。ファクシミリ送信に関しては郵送の手段とそれとも変わらないので、それ以外の電子媒体による公衆送信とは区別できると思う。

【事務局】

  送信先で更に利用されたり、加工されるか部分利用される可能性が大きい場合と小さい場合で制度上分けることが検討課題になる可能性がある。

【委員】

  電子情報で利用者に送付する場合、利用者側による利用の拡大の危険性は避けがたいので、権利制限ではなく個々の利用許諾で処理した方がよい。

【委員】

  視覚障害者のために録音図書を作成できるようにする点については、既に民間の出版社等で行っているところもあり、図書館での作成件数もそう多くないであろうから、権利制限ではなく許諾ですべきではないのか。

【委員】

  大学図書館では現在許諾を得て、録音図書を作成している。ただ福祉の目的のため、視覚障害者に限定して利用されることが担保されることを前提に、著作権法第37条3項に含めてほしいと主張している。

【委員】

  録音図書は健常者も利用し得るので現状のままで十分である。

【委員】

  視覚障害者は登録して利用しており、対象の限定は現行でも十分担保できる。

【委員】

  点字図書館では視覚障害者の図書にニーズを必ずしも満たしていないし、視覚障害者で点字を読めるのは全体の1割程度である。公共図書館が録音図書を作成するニーズはかなりあり、健常者の利用に関しては条件を付す等で解決できると考える。

【委員】

  再生手段の入手が困難である図書館資料を保存のために複製する場合と図書館資料をデータベース化する場合、原本の扱いをどう考えるのか、整合性の問題がある。公衆の用に供するコピー機を利用した私的使用のための複製を権利制限の対象から除外する要望は、著作権法第30条の解釈で運用している公共図書館を念頭においているのであろが、コンビニのコピー機をどうするか等、様々な問題がある論点である。

【委員】

  出版界としては図書館だけでなく、コンビニのコピー機も含め、附則5条の2を廃止してほしいと考えている。日本複写権センター、その他の処理機関が出来てきており、今後附則5条の2の必要性はなくなってくると考えている。

【委員】

  ファクシミリ送信の件は、著作権法第31条の解釈による郵送でする部分をファクシミリに置き換えて済む問題ではないのか。

【委員】

  営利目的の「調査研究」を目的として利用者が複製を求めた場合について権利制限の対象から除外することを強く要望する。

【委員】

  立法趣旨では、「調査研究」は営利・非営利を問わないとあり、それを変えるには何らかの説得力のある相当の理由がなければいけない。

3.閉会

  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。

(文化庁著作権課)

ページの先頭へ