文化審議会
2001/06/18議事録
平成13年6月18日(月)
13:30〜15:30
永田町合同庁舎第4,5,6会議室
紋谷座長、北川会長、糸賀委員、金原委員、小阪委員、児玉委員、酒川委員、杉野委員、土屋委員、筒井委員、中西委員、名和委員、前園委員、松村委員
林長官官房審議官、岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官
【その他の委員】
大学図書館における資料費は、横ばいか微増程度であり、専門書の単価が上がれば専門書の購入数も減少するのは当然である。よって、直接に複写利用と専門書の売上が結びついているとは言えないのではないか。また、ILL(図書館間協力)についても疑問を感じざるを得ないという点に関しては、大学図書館の財政事情・学術研究等の充実発展のためには、必要不可欠であり、厳格に運用していきたいと考える。
セルフコピーについても、13年くらい前から権利者との間で話し合いを進めている。また、学会誌の購読数の減少についても、海外の学会誌の方が国内の学会誌よりも比重が高いという背景がある。
【説明を行った委員】
専門雑誌の購読数は図書館自体というよりも、大学の教官等の個人の購読数が減少しているのが影響している。また、予算がないからILLによるしかないというのは、著作権法第31条の趣旨から言って疑問を感ずる。図書館というものは「館」であり、実際にそこに来た利用者を対象にするのが基本的な制度だと考える。
【説明を行った委員】
国内の評価の高い論文誌についても購読数は減少しており、その原因として、コピーをして必要な論文を利用するスタイルに変化しているということが考えられる。
【その他の委員】
例えば、国立国会図書館の海外雑誌の購入数は、ここ数年で購入単価が3倍になったことで購入タイトル数は3分の1になっている。雑誌等が売れなくなったという点とコピーの関連性は必ずしもあるとは言えない。
【その他の委員】
コピーの増加により書籍・雑誌等の購入数が減少しているというのなら、何らかの具体の立証をしなければならない。わが国の科学技術・学術研究の振興のためにはILLが必要であるという点を考慮しながら全体的な視点にたって、検討すべきではないのか。
【その他の委員】
著作権法第31条第1項2号の図書館資料の保存のために必要がある場合の条項については、法制定当時に想定していなかったデジタル化による保存が増えている。絶版になったものをデジタル化で商売にしている事業者もいるので、制定当時と現状との変化を踏まえて検討してほしい。
【説明を行った委員】
デジタル化による保存に関してはきちんと契約でやっていると思われるので問題はない。
【その他の委員】
JST、大学等の図書館における複写が広く利用されることにより、企業内の図書室における複写利用が激減しているとのことだが、その根拠はあるのか。
【説明を行った委員】
具体的な根拠はないが、企業内図書室の規模は年々縮小してきており、それによって、社内の複写件数が減っている。JST、大学等の図書館が広く利用されているのだと思われる。
【その他の委員】
企業内の図書購入数の激減と日本複写権センターとの複写許諾契約交渉が進まないと関連付けるのはどうかと思われるが。
【説明を行った委員】
実際に企業に契約交渉をすると、外部で複写処理をしているとの対応が多いことが経験上ある。
【その他の委員】
日本複写権センターも海外の学術雑誌を中心に扱えば、企業も契約をしやすくなるのではないか。
【説明を行った委員】
実態面として検討する余地はあると思う。
【その他の委員】
補償金システムには慎重に論議をしなければならないとはどういう意味なのか。
【説明を行った委員】
補償金ということになると、著作権者の経済的な側面は保護されるかもしれないが、著作権という認識が希薄なまま著作物が利用されるということになる。よって、しかるべき使用料を徴収する集中管理的な許諾が望ましい。
【その他の委員】
一般の利用者が購読する価格と図書館が購入する価格には差異があると思うが、だいたいどれくらいか。
【説明を行った委員】
日本の論文誌でいうと、概して3倍から5倍くらいである。
【その他の委員】
新聞記事の利用に関する契約で1対1による契約ではかなり煩雑になるので、トランザクションコストの軽減ということで何らかの集中管理システムを構築した方がいいと思う。
【説明を行った委員】
データベース化されている新聞については、多くの新聞社と契約で結んでいるディストリビュータがあり、そこを通して契約をすることが考えられる。
【その他の委員】
全国紙・地方の新聞紙について現在どのくらいデータベース化されているのか。
【説明を行った委員】
はっきりとしたことはいえないが、契約するのに手間がかかるほどではない程度にデータベース化されていると思う。
【その他の委員】
現在、ILLによる企業からの要請については運用していない。また、受益者負担という意見があったが、学術研究成果をあげる研究者などはともかく、学生に負担させるのはどうかと思う。
【説明を行った委員】
学生が利用する場合は、著作権法第30条、31条の範囲内で処理できるので、そもそも問題はない。
【その他の委員】
電子ジャーナルを学外から利用する場合の契約はどうなっているのか。
【その他の委員】
大学図書館においてはだいたいサイトライセンス契約になっている。講義での使用のためのコピーや、他大学へのFAXは契約の範囲に含まれる。
【その他の委員】
最終的には図書館の利用者の利用しやすい、負担にならないシステムの構築をしていくことが重要である。
【事務局】
著作権法第41条において時事の事件の報道のための利用により権利制限されている著作物を二次利用する場合には、新聞社は権利者に無断でその部分の許諾をしているか。
【説明を行った委員】
二次利用に関し、他人の著作物を含んでいる記事に関してはそもそも許諾していないし、するつもりもない。
【事務局】
著作権法第38条第4項又は附則第4条の2関係の非営利の貸し出し行為に関し、昨今、ある図書館がベストセラー本を大量に貸し出している状態があるとかの問題があると思うが、出版界として特に問題意識はあるか。
【説明を行った委員】
その点については、きちんとした論議をしたことはないが、現状としては特に問題はないと思う。
引き続き、権利者の立場として、児玉委員から説明が行われ、以下、その質疑・応答が行われた。
【その他の委員】
日本映像ソフト協会と日本図書館協会が非営利無償上映問題の協議を平成9年9月以降、開始しているが、日本図書館協会以外に協議を行っている団体はあるか。
【説明を行った委員】
団体間協議ということになると、現状としては日本図書館協会だけである。ただし、個別の相談などは、学校教育関係者等、各団体から受けている。
【その他の委員】
仮に法改正された場合に、何か集中的に管理する方策は考えているか。
【説明を行った委員】
ビデオに関する権利者と上映の利用に関する権利者が異なっているケースがあるので、そこをどのように集中的に管理するか、個別的に扱うかは今後考慮して検討しなければならない。
【その他の委員】
著作権法第38条の趣旨に沿うような教育的・文化的な興行利用でない上映に関しては権利制限規定に盛り込むことができるようにしてほしいと思う。
【その他の委員】
そもそも図書館が無償で上映することにより、権利者の上映にどのような侵害があるのか。
【説明を行った委員】
無償で上映されることによる上映機会の喪失である。
【その他の委員】
そうすると、図書館で上映することによって、映画館等の営利的な上映利用が侵害されるということになると思うが、日本図書館協会との協議にもあるように、図書館では営利的な上映に競合するような上映はしないようにするという運用はなされているので、問題はないのではないか。
【説明を行った委員】
著作権法第38条第1項によりできるという意識を持った周辺部分があり、また2番館、3番館といった近隣の映画館の上映が図書館の上映により影響を受けている場合がある。
【事務局】
著作権法第38条第1項から「上映」という文字を削除すると、38条5項にも影響が出てくる。38条1項の権利制限で残していい部分はどこなのかということをまず示してほしい。例えば、図書館で借りたビデオの上映はいいとか、38条5項の補償金で上映まで含めているとか、又、教育目的利用のような場合の上映はいいとかがあるが、何か具体的にあるか。
【説明を行った委員】
まったく削除するのではなく、教育目的利用などに関しては、上映の時間制限とか、補償金などで何らかの手当てをしなければならないと思っている。
事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。