文化審議会
2001/05/31議事録
平成13年5月31日(木)
14:00〜16:00
尚友倶楽部会議室第1、2号室
紋谷座長、北川会長、糸賀委員、木村委員、小阪委員、児玉委員、後藤委員、 酒川委員、杉野委員、土屋委員、筒井委員、中西委員、名和委員、前園委員、松村委員、三田委員
林長官官房審議官、岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官
事務局より、委員の異動について報告があった。
まず、利用者の立場から、小阪委員と前園委員から発表が行われ、以下の質疑・応答が行われた。
【その他の委員】
図書館の実態は貸本業務だという指摘もあるが、この貸本業務と公共図書館の関係はどうなっているのか。
【発表した委員】
たしかに、利用者のリクエストによりベストセラー本などを優先的に購入している図書館もあるが、図書館は自治体の図書館政策によって一定の判断がなされ、図書館運営が行われているので、一部の図書館を捉えて公共図書館全体について判断することはできない。
【その他の委員】
公立図書館の使命の一つとしての利用者のニーズに応えて資料を提供するという一面を過度に捉えて、最近よく図書館の貸本屋論という話をされているが、遺憾である。公立図書館といっても、市町村によってレベルは様々であり、規模に応じた資料の収集又は相互協力という形での資料の動かし方等、構造的に重なりあっており、そういった点も踏まえて判断していただきたい。
【その他の委員】
図書館の貸本屋論による批判について、公立図書館の中で問題になっているのか、何か具体的なアクションがなされているのか。
【その他の委員】
くだらない本を貸しているといわれているが、資料がくだらないかどうかは読む側の判断である。本を選ぶというのは図書館の中で重要なことだと思うが、全体の動きの中で専門的な職員の人数が年々減ってきており、東京23区の図書館の中では専門の資格を持った職員は全体の20%をきっている状態であり、資料選択の能力が弱くなってきている。
【その他の委員】
人気がある本を数十冊種類購入して、図書館で貸し出す行為についてはどう思われるのか。
【その他の委員】
日本図書館協会の調査でいうと、東京23区の例では、たしかに一つの自治体で同じ本を多いところで80冊購入したとあるが、これは一つの区という話であって、一つの区には10館、15館あるので、一つの図書館あたりの数はそれほどでもないという点と、一つの図書館の全体の資料費における副本の割合は一番多いところでも0.8%程度である。
【その他の委員】
専門図書館における電子ジャーナルの取扱いはどうか。
【発表した委員】
現在、電子ジャーナルを購読する際、契約をしており、その契約の内容の範囲内での利用となっている。
【その他の委員】
利用者側の理解度はどのレベルか。
【発表した委員】
利用者側の電子ジャーナルの利用に関する著作権の理解度はまだまだ低いだろう。
【その他の委員】
デジタルコンテンツ(電子ジャーナル等)の著作権に関心があるのは、一般の利用者ではなくて、図書館側の立場として関心があるということなのか。
【発表した委員】
そうである。
【その他の委員】
CD−ROMの公立図書館の利用はどうなっているのか。
【発表した委員】
CD−ROMに関してはまだ全体としてまだそれほど普及していない状態である。契約については個別処理をしており、契約内容も図書館によって統一されてはいない。
【その他の委員】
日本複写権センターのファクシミリ送信の権利処理に関して、あまり積極的ではないから積極的な姿勢を望むという発表があったが、文化庁としてはその点についてどの程度把握しているのか。
【事務局】
日本複写権センターは、公衆送信権のうち、ファクシミリ送信に関しては権利を預かっている。ただ実際に許諾しているケースは大宅文庫に対してだけであり、それ以外では現実に許諾契約をしているところはない。
【事務局】
整理のため言っておくが、このWGは権利制限をどうするのかというテーマを検討するのであって、契約システムはテーマではない。
【その他の委員】
公共図書館・専門図書館においてファクシミリでの遠隔地への文献送信の要望がかなり強いということだが、実際にどれくらいの件数があるのか。
【発表した委員】
専門図書館だが、実際の件数までは把握していない。ただ要望が多いという声はかなりあることは認識している。
【発表した委員】
公共図書館だが、我々も全体的な数字は把握していない。東京都立中央図書館でいえば、複写の中で郵送の依頼は平成12年度の実績で約7,000枚程度であり、これは全体の複写の件数からすると微小である。郵送の中でファクシミリによる要望の度合いは把握していないが、参考としてファクシミリによるレファレンスは年に約1,000件程度ある。よって、ファクシミリ送信ができると非常にありがたい。
【その他の委員】
大学図書館では、年間約100万件が郵送で行われている。ただこの郵送という手段は、現在の大学の図書館職員数からすると、非常に業務を圧迫し、本来のサービスを十分にすることができない状況となっている。
【その他の委員】
Britishlibraryの調査によれば、そこでは図書館においてFAXによるサービスが行われているということだ。また、全学会誌を電子化するという検討をある大きなシンポジウムで行われたが、今のところ見送られている状況である。
【発表した委員】
昭和60年を最後に著作権法施行令第1条の3第1項第6号による文化庁長官による図書館の指定が行われなくなっている。指定する要件を充足するような図書館もあると思われるが、そのあたりの運用等はどうなっているのかという点で、指定の継続を強く希望する。
【事務局】
指定の基準はオープンになっている。この場は審議会なので、文化庁に対する要望を聞く場ではない。本日の要望もこのWGに対する要望である。今後、論点整理に入ることになるが、権利制限を広げるのも狭めるのも具体的な案を出してから議論して検討していただきたい。
引き続き、権利者の立場から、三田委員の発表が行われ、以下の質疑・応答が行われた。
【その他の委員】
このWGで検討すべき問題を事務的にきちんと整理した方が、WGの審議として整理しやすいのではないか。
【事務局】
論点整理のときには、当然整理する。三田委員の発表の中には、ブックオフ等の、このWGのテーマからは少し外にでる話と、利用者側からの権利制限拡大の要望に対する危惧という話、それから既に存在している権利制限規定の縮小として、図書館からの貸し出しに関する補償金の導入の大きく分けて3つあり、特に3点目が重要であると考える。
【事務局】
図書館の貸し出し行為について補償金を導入する点について、実際の図書館のやっている行為が、どれくらい具体的に出版業界に害となって現れているのかというデータが必要なのではないか。
【その他の委員】
本等の売上げの減少の原因は、図書館なのか、それともインターネットや携帯電話といった趣味の多様化による影響なのか、その因果関係を立証することは困難なのではないのか。
【その他の委員】
図書館の開架式について、別途著作権料を徴収した方がいいという提案があったが、書店での本の立ち読みなどとの兼ね合いもあり、自由にした方がいいのではないか。
【その他の委員】
日本複写権センターと大学図書館との間では、厳密な事前審査、事後点検なども含めて議論が行われている。
【事務局】
一つの図書館で持つ資料等の冊数を常識の範囲で限定することは可能か。また法律で10冊までとすることに関してはどうか。
【その他の委員】
非常に困る。図書館の持つ資料費とも深く関係もするし、本の選択というのは、図書館による自由な判断に基づく行為なので、それを規制することは好ましくない。
【その他の委員】
補償金も選択肢の一つとは思うが、はじめから絞り込む必要はない。
【事務局】
例えば、著作権法第38条第5項で対象をビデオ等だけではなく、本等にも拡大することは想定されるが、これから概念とか理論の整理では、様々な整理の仕方があるので、今後議論していただければと思っている。
事務局から、今後の日程について説明があった後、閉会となった。
(文化庁長官官房著作権課)