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文化審議会

2001/04/27議事録

文化審議会著作権分科会情報小委員会図書館等における著作物等の利用に関するワーキング・グループ(第1回)議事要旨

文化審議会著作権分科会情報小委員会図書館等における著作物等の利用に関するワーキング・グループ(第1回)議事要旨

平成13年4月27日(金)
10:30〜13:00
日本芸術文化振興会第1会議室

出席者

(委員)

紋谷座長、北川会長、糸賀委員、金原委員、児玉委員、後藤委員、齊藤委員、酒川委員、杉野委員、土屋委員、筒井委員、中西委員、名和委員、松村委員、三田委員

(事務局)

岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官

1.開会

2.委員及び文化庁出席者紹介

事務局から委員及び事務局の紹介が行われた。

3.議事

1図書館等における著作物等の利用に関するワーキング・グループ概要について

  事務局より、本ワーキング・グループの設置の趣旨や所掌事務等について説明が行われた。

2図書館等における著作物等の利用に関するワーキング・グループの議事の公開の対応方針の制定について

  事務局より、図書館等における著作物等の利用に関するワーキング・グループの議事の公開の対応方針について説明が行われ、了承された。

3図書館等における著作物等の利用の実態について

  酒川委員から図書館の機能、土屋委員から大学図書館の役割と電子図書館機能について発表が行われ、各委員による以下のような意見交換が行われた。

【委員】

 社会全体の動きを見据えた上で、図書館等における著作物等の利用について考えていくことが重要である。本・雑誌といった紙媒体での利用がパソコン画面で見るといったデジタル利用になることに伴い、またブックオフ、マンガ喫茶などに代表されるように本が財産であるという認識が薄れてきている。図書館においても、ベストセラーが何十冊と貸し出される状態にあり、著作者の経済的権利を守っていくことが難しくなっている。
  一方、情報氾濫の時代においては図書館の蔵書をデジタル情報に置き換えて保存することが必要に応じてできるようにするべきである。ただし、それを権利制限規定によって無断にできるようにするのではなく、必要に応じカウントして適正な著作権使用料を支払った上でコピーを取ったり、電子化したり、公衆送信すべきである。10月から著作権等管理事業法も施行されるので、管理団体による適切な管理も可能になると考えられる。ともかくも著作者の権利を保護して日本の文化を発展させるという視点で議論していただきたい。

【委員】

 図書館のコミュニケーションの場としての機能は年々高まっており、公共図書館における鑑賞会・映写会の件数は昭和53年と平成11年と比較すると約5倍、人数では3倍になっている。
  市販されているビデオは個人・家庭内において楽しむことを目的として、あくまでも上映目的のものは別に頒布している。著作権法第38条第1項の非営利・無料の公共施設による上映が無許諾でできることになっているが、現状の利用実態から考慮すると、権利者としては、時代にあった形で見直していただきたいと思っている。

【委員】

 大学図書館と日本複写権センターとの契約の話があったが、そもそも著作権法第31条の範囲内で複写を行っているのであれば、契約をすることもないと思うが、その辺の整合性についてどう考えているのか。

【説明を行った委員】

 著作権法第31条の範囲外の利用形態、特に自然科学系の方が最新刊の利用がしたいといったようなことがあり、どうしてもはみ出る部分が出てくる。よって、そのはみ出る部分について何らかの使用料を支払わなければならないということを説明したのである。図書館側で著作権法第31条を完全にコントロールして適用できればいいが、人的・経済的コストが足りず、その点の改善策として日本複写権センターと契約の話をしているのである。

【委員】

 日本電子出版協会としては、CD−ROM付きの書籍・雑誌等に関しては、権利者の中には、ある程度許諾を求めてほしいという出版社や、一体だから使ってもいいというケースなどがあり、図書館でそれを利用する場合にはなるべく広く活用できるようにしていきたいと思っている。
  横浜市立図書館でのコピーがかなり大きな問題になっているが、著作権法第30条と第31条の関係において様々な意見があり、結論が出ない。我々としては、図書館の中で行うなら、著作権法第31条の範囲内でやるというけじめがあった方がいいと考えるがどうか。

【説明を行った委員】

 CD−ROM付きの書籍・雑誌等に関してはCD−ROM自体は付随的なものであるケースとCD−ROMがなくては利用することができないケースがあるが、それらを分離して貸与するのではなく、きちんと許諾を得るようにと各図書館に対して言っている。現状としては必ずしもそれが守られていない部分もあり、きちんと連絡していくのと同時に、出版の時点でそのあたりのところをある程度、出版社の意向がある程度示される形にしていただきたいという希望がある。
  横浜市立図書館の問題は、我々としても困惑しており、私的利用だから問題ないというのは理屈が通らなく許されるべき問題ではない。この問題が出た当時に我々からもその横浜市立図書館に対してそのような行為は好ましくないという意見書を出している。図書館としては、著作権法31条の「著作物の1部分」という解釈についても非常に問題があるわけで、利用者とのトラブルも多々ある。だからこそ、図書館としては31条を遵守するためにがんばらなければとしているわけで、横浜市立図書館のような図書館の広がりがないよう、不十分な点はあるが、講習・研修、ハンドブックなどのマニュアルなどを利用して努力していきたい。

【委員】

 図書館での著作物の利用においてFAX送信による利用ができないのは不便であるから公衆送信権についても権利制限を認めてほしいとあるが、公衆送信権という言葉の中には広い意味が含まれており、インターネットでの送信や送信する手段のブロードバンド化に伴う想定されていなかった利用など様々なことができるようになり、横浜市立図書館の例にもあるように解釈によって利用者のために利用ができるということが行われたりすることがある。よって、利用する点において、ただ不便だということで権利制限すると何でもできることになってしまうのでその辺を考慮して検討していただきたい。

【説明を行った委員】

 不便だからといっているわけではなく、著作権法は権利者の擁護を中心としてあるが、著作権法第31条というのは権利者の権利を制限することによって学術文化の振興がなされるのある点も忘れてはいけないだろう。

【委員】

 公共図書館と大学図書館とでの利用形態を区別して議論をしないといけないだろう。

【委員】

 著作権法第31条にある「調査研究」に関して、学術的な目的で大学の先生とか学生が使うのと、大規模な企業が事業の発展のために使うものとは区別すべきだと思う。

【委員】

 図書館と権利者の取引プロセスは従来購入時点にあったが、これからはその後でも動くようになるのではないか。

【事務局】

 図書館の活動の内容、それがもつ公益性について議論したわけであるが、今後議論があるのは、公益を実現するためのコストを誰が負担するのかという問題である。利用者なのか、権利制限は公益性があるのだから著作者個人が負担するのか、公益性があるのなら税金でやるのかということである。またオールオアナッシングではなく、許諾権を維持しつつ、契約システムを作る、あるいは権利制限の対象にするのだが補償金のを支払うという手段もある。このWGは法改正に向けた検討をするものであり、契約システムについて検討するわけではないが、法改正について検討する上において、将来を見通して何か包括的な契約システム、包括的な合意によって、法改正によって著作者個人の負担を課したとしても、過度な負担がないようにする、あるいは税金で負担する部分を広げていくことなどを考慮していただければと思っている。

4.閉会

  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。

(文化庁長官官房著作権課)

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