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文化審議会

2001/05/17議事録

文化審議会著作権分科会情報小委員会著作物等の教育目的の利用に関するワーキング・グループ(第2回)議事要旨

文化審議会著作権分科会情報小委員会著作物等の教育目的の利用に関するワーキング・グループ(第2回)議事要旨

平成13年5月17日(木)
14:00〜16:00
日本芸術文化振興会第1会議室

出席者

(委員)

紋谷座長、荒谷委員、海野委員、金本委員、金原委員、神山委員、木村委員、久保田委員、里中委員、関口委員、田名部委員、中村委員、橋本委員、水島委員、三田委員、山地委員

(事務局)

岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官

1.開会

2.議事

【その他の委員】

  10月に施行される著作権等管理事業法により、音楽出版社が自己管理することが想定される中、音楽著作権の許諾環境はかなり変化すると思われる。日本音楽著作権協会では、学校現場における著作物利用の問題点を整理し、権利を管理している側としては、こういう被害があり、こういった問題意識があるということを整理したいと考えている。

【その他の委員】

  権利制限を拡大することにより、学校において自由に著作物を利用することができることになると、学校関係者(教師、学生等)の著作権意識が希薄になる。そこで提案として、著作物をコピーするときに、どの著作物を何部刷ったかを伝票に記載して、著作者の団体に報告し、著作物使用料又は補償金といった形での処理がいいのではないかと提案したい。そうすることにより、著作権感覚も養われると思われる。

【その他の委員】

  現行の著作権法第35条の権利制限の拡大というのは、補償金などの何らかの対価を支払うということも含まれるのか。

【事務局】

  今まで個別の許諾が必要だったところが、一定の条件を課すことによって、利用できるという意味では補償金制度も権利制限の拡大といえる。

【その他の委員】

  ここでいう教育目的の「教育」の範囲は一体どこまでを指しているのか。

【事務局】

  現行の著作権法第35条の範囲が一つの基準になると思われるが、特にその枠に縛られる必要はなく、幅広く検討していただきたい。参考までに、35条の学校その他の教育機関の範囲等については、昭和51年の著作権審議会第4小委員会において言及している。

【その他の委員】

  具体的にこういった利用の場合には権利制限がないと非常に困るといった事例があるとよく理解できるのだが。

【説明を行った委員】

  学校現場では日々著作物を利用しており、様々なニーズがある。

【その他の委員】

  学校で使用するものであってもスポーツ用具などの有体物であれば、学校が予算化して購入している。著作物の複製等の利用行為に関して、予算化しないで自由に利用させてほしいというのであれば、それなりの理由が必要なのではないか。

【その他の委員】

  補償金システムを導入した場合、補償金は国や地方公共団体が支えればよいということになると、小中学校の重要な時期に著作権というものは大切なもの、他人の著作物を利用することは大変なことであるという著作権思想が疎かになる。よって、それを救済する措置として、報告義務を課すことを提案したい。

【その他の委員】

  最近は絶版になった本でも、オンデマンド出版されることもあり、何らかの形で補償金を払う必要があるのではないか。

【その他の委員】

  補償の必要性はよくわかるが、そこまで必要なら許諾をとる方が楽なのではないか。実際に新聞記事を利用する場合、許諾をとることはそんなに難しくない。許諾ベースの検討からアプローチした方が比較的解決しやすいのではないか。

【その他の委員】

  新聞社に許諾を求める件数は毎日何十件、年間だと何千件とあるが、実際、円滑に許諾し利用している。許諾するということを前提にして話を進めていくことが現実的と思われる。

【その他の委員】

  高等学校の社会科では時事問題として新聞記事を利用することがある。この場合は、適時性・緊急性から許諾を受けずに早く使いたい。

【その他の委員】

  個別の記事を一つ一つ、その日の朝に許諾を得ることは大変ということは理解できるが、例えば、事前に包括契約をして後に事後報告をする等、場合によっては様々な解決法があると思われる。

【その他の委員】

  新聞記事に関しては、許諾をとることは比較的容易かもしれないが、文芸作家などは連絡することすら難しいケースもある。よって許諾に至るトランザクションコストを考えると、事後承諾ということで、補償金的システムを構築することがいいのではないか。

【その他の委員】

  学校現場での様々な著作物利用において権利制限を拡大したいという要望と、その場合における学校教育での著作権教育はどのように考えなのか。

【説明を行った委員】

  学校において著作権を守らなければならないという認識は現状でもかなりある。ただ実態として、それが守られていない面もある。

【その他の委員】

  残念ながら、日本の現状としては、著作権に対する意識はまだ高くはない。そのような状況の中、安易に権利制限の拡大をすると、逆効果になると思われるので、教育現場においても著作権意識の向上の視点を踏まえた検討をすべきだ。

【事務局】

  著作権教育は来年の新学習指導要領により、中学・高校で必修になる。また、日頃の授業の中でも著作権感覚を養える教育を期待したい。
  教育現場で利用される著作物には、子供たちの著作物もあり、学校における子供たちの著作権についてどうするのかという点も考慮して権利制限の検討をしなければならないだろう。

【その他の委員】

  子供の教育で親は「他人のものを盗んではいけない」と教えるが、「他人の著作物を無断で利用してはいけない」とは教えることは少ない。学校教育でその部分の教育が必要になる。また、子供の著作権の権利について、子供が絵を描く、作文をするといった場合に、先生や親に手直し等されることがよくあり、著作権的には、翻案権の侵害、同一性保持権の侵害ということなど、様々な問題があり、その部分も含めて検討した方がよい。

【その他の委員】

  子供の著作権に関し、昔はたしかに勝手に子供の写真とか作文等を利用していたかもしれないが、最近は肖像権も含めて、本人又は保護者の許諾を得て利用するケースが増えている。

【その他の委員】

  ソフトウエアの利用に関して、学校教育現場ではずいぶんと改善されてきている。一般に著作権意識は子供の時には、世界的にも見ても日本はかなりの水準になるが、高学歴になればなるほど、低くなってきているのが残念である。

【事務局】

  このWGでは、最初に学校現場でどういったことが起きているのか、どんな要望があるのか、ということを整理し、その整理に基づいて許諾でする、集中的な契約システムで対応する、権利制限の対象にする、あるいは権利制限の対象にするが補償金システムの導入で対応するといったように分類して、法改正が必要かどうかを判断する。ちなみに教育の範囲は何かという意見があったが、現状のところ、法令で教育又は学校教育について定義したものはない。

3.閉会

  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。

(文化庁長官官房著作権課)

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