文化審議会
2001/07/06議事録
平成13年7月6日(金)
10:30〜13:00
三田共用会議所大会議室
紋谷主査、金子委員、金原委員、上林委員、児玉委員、後藤委員、齊藤委員、杉野委員、田名部委員、筒井委員、名和委員、半田委員、松田委員、松村委員、水島委員、三田委員、山地委員
佐々木文化庁長官、銭谷文化庁次長、林長官官房審議官、岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官
【委員】
公益性に基づく権利制限を広くするか狭くするかについては、同種の業務に私企業が参入する場合の規制になっていないかどうかの視点を持つべきである。
【委員】
この場は産業政策を議論する場ではない。ビジネスでは利益効率のよいところしかしないが、残ったところはどうするのか。エンドユーザーが利用しやすい環境が必要ということを念頭において検討すべきであると考える。
【委員】
許諾なしの利用を例外的に認める必要性の変化の確認の際の視点は、この場で説明された部分に限定されるのか。
【事務局】
限定されるかどうかということも含めて、幅広く議論していただきたい。
【委員】
例示列挙と捉えた方がいいだろう。見直しという視点だけではなく、新たな権利を創設した場合に権利制限をどうするのかということも考えなければならない。
【事務局】
今回の見直しというのは、法律改正全般を念頭においている。
【委員】
著作物の性質に着目して、権利を制限する場合という整理があるが、それ以外にも著作権法第10条2項には事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は著作物に該当しないなど、著作物性から外すと方法、13条のように権利の目的とならない著作物として、著作権法の適用がないとする方法とある。著作物の性質を視点にあげるのならば、それらの点について整理する必要があるのではないか。
【委員】
明記してある視点に入らないカテゴリーもあるので、権利制限全般について網羅的に入るように整理した方がいいのではないか。
【事務局】
今後検討する資料としてわかりやすい形で整理したい。
【委員】
視点について時間を割くのはどうかと思われる。例えば教育目的の利用といった限定された特別の場合を具体的に検討した方がよい。また、条約上と国内法とのハーモナイズを考慮すると、3ステップテストが大きな尺度になるだろう。権利の管理などビジネスの動きと技術の動きと法制度のマッチングにも留意する必要がある。
【委員】
視点として考えるとしたら、入学試験などによる利用といった秘密領域といったものが上げられるのではないか。
【委員】
他の利用行為に通常随伴する利用の視点に関して、町の風景を撮影していたら、偶然音楽などが入っているというようなケースもあると思われる。また、情報化社会を推進する上で、問題にしなくていいもの、例えば、録音機能をもったデジタル機器の発表会で試しに10秒程度録音する行為など、著作物の利用といえないような利用もあるので、自由な視点で考えてもいいのではないか。
【委員】
新たな視点としてパロディを入れたらどうか。昨今のデジタル技術により、容易にパロディを作ることが可能であり、新たな表現物として作り出されている実態がある。
【委員】
パロディについては、権利制限規定といった立法上の位置付けがないと解決しない問題であろう。
【委員】
音楽・写真・絵画などについては、容易に合成して別のものを作ることが可能であり、そのような現状を踏まえて検討すべきである。
【委員】
コンピュータプログラムなどの産業的・機能的な著作物については、キャッシング、ミラーリングといったいろいろな問題があるので、別の視点を考慮した方がいいのではないか。また、禁止する旨の表示による権利制限の適用除外も検討事項とされているが、これを入れることによって、全ての権利制限を否定するということにならないか。
【事務局】
特別の行為について入れる必要性の有無について検討するものである。
【委員】
条約上の条件との関係との確認で特別の場合、
通常の利用、
正当な利益に対する不当な侵害とあるが、どれも優先すべき視点であると思うが。
【事務局】
順番は優先順位ではなく、すべて必要条件であり、どれか一つかけたら権利制限はされない。
【委員】
視点を中心にして議論するときりがないと思うので、特別の場合は何かということを主眼にして検討すべきである。特に各WGにおいて、特別の場合を検討しているので、その議論を参考にすべきだろう。
【委員】
規定ぶりに関する検討とはどういうことか。
【事務局】
個々の権利制限について法改正する場合にそれぞれ細かくするか、大まかにするかということである。
【委員】
個々の著作物の性格により、あらゆる角度の視点を加味して考えるべきであろう。
【委員】
特別の規定の必要性として補償金制度を検討するにしても、実効性について、枠組みまでをしっかりと具体に検討しないと、補償金制度が絵に描いた餅になってしまうだろう。
【委員】
たしかに補償金制度は実際にシステムを動かすのは難しいと思う。著作権法第38条5項の図書館における視聴覚資料の貸し出しについても、権利者側と図書館側と協議をしているが、なかなか話がまとまらず、結局補償金を上乗せした形での運用となっている。システムに法律がどこまで関与するのか。補償金制度といっても多種多様あるとのでかなり難しい問題と認識している。
【事務局】
仮に補償金に関する法律の規定を設けるのならば、実効的な補償金システムを構築することができるのかどうかの裏付けがないと法改正はできないだろう。パロディに関しては、自由な創作の保障ということで引用と同じ視点で考えるべき事項であり、キャッシュやミラーリング、機能的な著作物に関しては、随伴する利用の視点に包含されていると考えられる。
【委員】
ある行為に随伴して、偶然に、自動的に複製されてしまうといったケースで、その複製行為を権利制限で考えるというのはどうか。取引の社会においては当然そこまで許諾しているという認識で行われており、権利制限をするべきかどうかとは明確に区別して議論すべきだと思われる。
【委員】
権利制限を検討する前に、権利を与えるのかどうかという点を考慮する必要があろう。また巷では、インプライドライセンス(黙示の許諾)について議論されているが、それについてどのように解釈するかという観点を議論するべきではないのか。
【事務局】
権利に含めるかどうかの観点については、次回以降整理したい。インプライドライセンスに関しては、権利制限を拡大しようが、縮小しようが、許諾権が残る限り出る話であり、権利制限とは違う話だと思われる。
【委員】
権利制限を検討する場合に、著作権だけを念頭におくのではなくて、著作者人格権、著作隣接権も含めて、検討すべきだと考える。またすべてを視点に含めて検討するのではなく、パロディに関しても、特別の場合として見た場合に条約上の条件について、どういう問題が生じるのかという整理の仕方もあるので、まず特別の場合は何かということを検討した方が細かい議論ができると思われる。
【事務局】
条約上の要件には、特別の場合があって、通常の利用を妨げないというように、単に権利制限規定を置くことを容認にしているだけであり、国内法において権利制限するかどうかは別の問題であり、許諾なしの利用を例外的に認める必要があるという積極的要件を考えなければならない。消極的要件、積極的要件について整合性がとれるような考え方を求めておくべきであろう。
【委員】
著作権法第10条2項で事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は著作物ではないとされているが、新聞記事はあらためて著作物であると言わなければならないので迷惑している。また、同一構内については公衆送信権が働かないことについては見直してほしい。パロディについては、同一性保持権の問題もあるが、パロディが利用しやすい環境が望ましいと考えている。
【委員】
多数の権利者が複雑に絡み合った著作物を利用する場合、トランザクションコストの観点から許諾を得るプロセスが大変の場合が多々あるので、その点について検討すべきである。
【委員】
検討する視点として、入手困難性という観点があると思う。絶版になっていて図書館に行かなければ利用できない場合などは、何とかしなければならないのではないか。また、著作権法上の解釈や著作権者不明の場合の裁定制度の充実も重要だと思われる。例えば、著作権法第38条1項の営利を目的としない上演等における「営利性」の解釈に関して弾力的な解釈が望まれる。
【委員】
本小委員会で検討する資料の冒頭部分には、資料の性格といったものを記載していただきたい。
【事務局】
次回か次々回には明記したい。
事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。
(文化庁著作権課)