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文化審議会

2001/06/01議事録

文化審議会著作権分科会情報小委員会(第3回)議事要旨

文化審議会著作権分科会情報小委員会(第3回)議事要旨

平成13年6月1日(金)
10 : 30〜13 : 00
霞山会館会議室「うめ・さくら」

出席者

(委員)

紋谷主査、北川会長、金子委員、木村委員、久保田委員、児玉委員、後藤委員、齊藤委員、里中委員、杉野委員、田名部委員、名和委員、半田委員、松田委員、松村委員、三田委員、山地委員

(事務局)

佐々木文化庁長官、銭谷文化庁次長、林長官官房審議官、岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官

1.開会

2.議事

(1)  事務局より、本日の議事及び配付資料の説明があった。

(2)  事務局より、権利制限の全体的な検討についての説明があり、その後以下の通り質疑応答、意見交換が行われた。

【委員】

  権利の集中管理システムによる許諾権の行使という選択肢についても、この小委員会の議論の対象となるのか。

【事務局】

  権利制限規定をチェックするポイントとしてはある。

【委員】

  新しい許諾の仕組みを作り、その啓蒙活動をすることは難しいので、エンドユーザーの環境をあまり変えないという点から、補償金システムがいいのではないか。

【委員】

  デジタル化・ネットワーク化により、著作権法のカテゴリー、支分権が変化しており、その点も検討した方がいいと考える。最近、オーストラリアでは著作権法を簡素化する方向で、支分権、権利制限規定の在り方を全面的な見直しの動きをしていると聞いている。

【委員】

  わかりやすくする工夫は必要だが、難しいからいけないというわけではない。今後のデジタル技術等で、今まで「市場の失敗」により設けられてきた権利制限について著作物の個別処理が可能になる点は否定できない。権利者・利用者双方の利益を考慮し、個別処理、集中処理、又は補償金について権利制限規定の全体の中で工夫をすべきだろう。

【委員】

  検討の視点は、スリーステップテストによる構成で検討した方がいい。まず特別の場合は何か、次に個別的に通常の使用を妨げないのかどうか、著作権者の正当な利益を害していないかと検討するべきで、最初に特別な場合を決めないと議論が錯綜すると考えられる。
補償金制度の拡充という方向性のほか、ビジネスの状況も考慮しつつ電子的な著作権処理についても具体的に検討すべきだ。

【委員】

  著作権の本質は許諾権にあるので、補償金制度のように金銭的な満足を満たせば、権利制限をしてもいいという考え方はどうかと思う。

【委員】

  補償金制度については、利用者から著作者に対する報告義務を整備しておかないと制度自体がいいかんげんなものになると考えられる。

【委員】

  複製技術が格段に向上して、市販されている著作物との区別がつきにくい状況にあり、従来の教育目的又は図書館における複製行為に関しても、事後的にでも対価をいただきたいと考える。著作権等管理事業法によって、許諾を得やすい環境になると予想される。ただ許諾を拒否する著作者も想定されるので、その場合には、許諾ではなく適正な使用料を払って利用できるシステムの構築も考えられる。

【委員】

  権利制限規定を考える前提がデジタル技術の発達により変化していると考えられる。デジタル化により許諾ベースでも利用が阻害されないということもあるのではないか。また、許諾権にしても補償金にしても適切に権利者に還元される制度を検討すべきである。

【委員】

  権利制限の特別の場合に学術研究、又は研究目的による利用が入ることも検討してほしい。

【委員】

  音楽配信のように私的使用の場合も課金できるケースは今でもあり、このような権利者の選択の可能性という点も考慮すべきである。法律改正が必要なもの、技術的に解決できるもの、契約でできるもの等をよく検討しなければならないと考える。

【委員】

  補償金制度にするにしても、情報の管理、プライバシー等の保護を考慮して検討すべきだろう。

【委員】

  著作権に関与する事業者にプライバシーの保護、通信の秘密を課すことは非常に難しいのではないか。

【委員】

  以前のEUディレクティブだと、ある行為は著作権法上の侵害行為に該当するが責任は負わないという整理だったが、今回のEUディレクティブは、あらゆるデジタル技術現象をコピーの対象に含めたのだが、ある種の現象はそれには含まれないという決め方をしている。この点と、今検討している権利制限規定との関係についてはどうか。

【事務局】

  EUディレクティブで問題になったのは、一時的蓄積を複製と認めるか否かという点であり、そもそも複製には当たらないとする考え方と、複製の概念に入れ、権利制限で規定するという考え方が紛糾し、結局は折衷案として両方が取り入れられた次第である。日本の著作権法においては、公衆送信の定義の部分でそういった点の議論があった。

【委員】

  現行の著作権法では、いわゆるCSSなどのアクセスコントロール技術が規制の対象になっていない。権利制限規定だけではなく、アクセスコントロールや無反応機器の規制についても検討する必要がある。

【委員】

  今後は、権利制限規定と契約内容の関係の問題が非常に大きくなってくるのではないかと思う。例えば、権利制限行為を禁止する契約の効力はどうなるのか、そもそも権利制限規定の性質は強行規定なのか、任意規定なのかどうかという点である。

【委員】

  その点についてもこの小委員会で議論する必要があると考えられるが、条文を改正したときに性格を明らかにするということまでは難しい。

【委員】

  ノーアクションレター制度でそういった質問がされることも考えられるので、そのあたりのことも考えざるを得ない時代になっている。

【委員】

  各権利制限規定が強行規定か任意規定かの判断は、権利制限が公共的な理由から規定されたのか、経済的な調整をするために規定されたのか、一つずつ確認し、かつ契約で権利制限規定を外すケースでは、その契約の内容を吟味し、代替的措置があるのかどうかを判断することによって、議論をし、講学的なすみ分けをしていく方策しかなく、立法では解決できないと思われる。

【委員】

  CSSはアクセスコントロールという指摘があったが、厳密にいえば、暗号プラスコピーコントロールがセットになった技術なので、基本的にはコピーコントロールの技術と思われる。

【委員】

  権利制限を検討するときに、時間軸をどこに設定して検討すればよいのか。現在の技術、社会状況を時間軸にすればよいのか、未来に想定されうるデジタル技術による社会状況なのか。後者ならばかなり複雑になると考えられる。

【委員】

  権利制限を考える上で、デジタル対応による議論もそうだが、アナログ対応に関してもどういう扱いにするのか考えなければならない。

【委員】

  この小委員会の議論と各WG(ワーキング・グループ)の議論をどうかみ合わせるのか。

【事務局】

  本小委員会においては、一般の権利制限規定の全体的な検討を行っており、それを踏まえて各WGで検討することにしている。各WGでは現在実態把握を行っており、この内容に関しては本小委員会に報告することを考えている。

【委員】

  新たな著作物を創りだすときに、寄与する又は有効なものに権利制限を認めてもいいのではないか。例えば、フランスでパロディを認めていたり、アメリカで新しい著作物を創るのに必要な程度であれば、他の著作物を利用することがフェアユースとして認められた判決がある。

3.閉会

  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。

(文化庁長官官房著作権課)

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