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文化審議会

2001/10/26 議事録

文化審議会第14回総会議事要旨

文化審議会第14回総会議事要旨

1.日時

平成13年10月26日(金)10時00分〜13時00分

2.場所

霞が関東京會舘  シルバースタールーム

3.出席者

(委員)

高階会長、市川、井出、岡田、北川、齊藤、富沢、脇田、渡邊の各委員

(文部科学省・文化庁)

佐々木文化庁長官、銭谷文化庁次長、遠藤文化部長、木谷文化財部長、鈴木文化財鑑査官、大西伝統文化課長ほか関係者

4.概要

(1)配付資料についての確認があり、前回議事要旨については、意見がある場合は1週間以内に事務局に連絡することとされた。

(2)事務局より、文化財分科会企画調査会における審議状況等について説明があった。

(3)その後、次のような意見交換が行われた。

【委員】

  文化財を生かした地域づくりとして、文化的な景観を維持するためのビルの高さ規制や、建造物の色彩の統一などについては企画調査会ではどのような検討が行われたのか。

【事務局側】

  企画調査会においては、具体的な手法までは議論されていないが、都市計画や公園整備等とも連携を図りながら、従来の文化財保護の範囲内だけではなく、積極的に文化財を生かして地域づくりを進めてほしいという議論が行われた。

【委員】

  文化的な景観の維持については、私権との調整の問題などもあり、難しいことだが、外国では建物の高さを制限しているところもあると聞いており、もう少し国がイニシアチブをとって進めていくべきではないか。

【委員】

  都市においては、一律に景観を規制することは難しいが、地方では、それらにインセンティブがとられている例が増えている。例えば、伝統的な町並みが残されている地域では、それらを自らの地域の資産として有効に活用していこうとの動きが住民主導で出てきている。さらに、地場産業なども活用し、マーケットに生かすということもある。これまで文化財保護行政は、モノ主義で進められてきた。今後は、里山など自然を含めた生活空間といった、広がりの中で捉えるのがよいのではないか。

【委員】

  文化財のとらえ方が、有形文化財から始まり無形文化財へ広がり、そしてさらに自然を取り込んだ景観へと広がってきており、もはや「文化財」というより、「文化遺産」と広く受けとめたほうがいいのではないか。また、洒落た趣のある商店街が形成されていくというようなこともあり、文化財の「保存」のみならず、ビジネスの世界で文化を動かしていく視点もあるのではないか。文化財保護行政にプラスアルファが求められる。

【委員】

  文化財への愛情を深める取組みの前に、まずは文化財が存在していることを人々が知らなければならない。そのためには、文化財を囲い込んで保存するのではなく、いつでも触れることができるようにすることが必要である。文化財が現在に生き、そして人々が過去を見て、未来について考える際の糧となることが大切である。

【委員】

  例えば歌舞伎の保存については、多くの人がかかわる総合的なものであり、実演家と裏方を別々に支援していくのではなく、多面的、分野横断的に支援していくことが大切である。これは文化行政全般についてもいえることであり、省庁の垣根にとらわれず、総合的に文化政策を展開していくことが必要である。

【委員】

  文化財の分野ごとに保存するだけでなく、一体として保護すべきものについては総合的に把握をしていくことが重要であり、他省庁とも連携し、有効かつ友好的に政策を展開していかなければならない。

【委員】

  人々の文化財への理解と愛情を深め、社会全体で文化財を保護し、活用していくためには、子どものうちから本物の文化に触れる機会を、可能な限り提供することが必要である。それは日本人としてのアイデンティティーの確立にもつながるものである。仮に本物に触れることができなくても、子どものころに教科書で見た記憶は大人になっても心に残っているものであり、ITやCGなどを活用すればより強い印象を子どもたちに与えることができるのではないか。本物に触れるということとあわせて、様々な手法を活用して、文化財に触れるということを取り入れてほしい。

【委員】

  文化遺産の保存について、行政としては中心的なものを対象とするかもしれないが、保存すべきは全体である。現在の文化は、科学技術のように細分化、高度化しているが、この間を埋めるインターフェースが必要であり、それには行政のみならずNGOや企業などの民間部門が大きな役割を果たしていけるのではないか。

【委員】

  文化の各分野どうしや、芸術家と鑑賞者、文化の担い手とそれを支援する者などをつないでいくことは重要な課題であり、そのためには、ネットワークの整備と同時に、インターフェースとなる人材の育成が必要である。

【委員】

  伝統文化の保存は重要であるが、伝統芸能や祭礼などは各時代の社会を背景にして成り立っており、100年前の姿と同時に、100年後の社会に与える影響を想像し、未来のために何を残していくかを考えていくことが大切である。例えば、伝統文化の中には女性や子どもの参加を受け入れないものもあるが、それらをどのように扱うべきかという問題がある。

【委員】

  日本の伝統芸能を積極的に海外へ発信することは意義のあることであるが、そのためには、思い切って重点的な支援をすることも必要である。

【委員】

  日本の特質として、公的な機関において特定の分野を重点的に支援することは難しい面があり、そのために民間による支援が重要である。民間の多様な支援を幅広く集めるための基盤整備として、税制上の措置を講じていくことが必要である。

【委員】

  民間の支援が弱いときこそ公的な支援が必要である。科学技術基本法と同様に、文化についても、国としてその振興についての基本的な姿勢を明らかにし、思い切った投資をすることも必要ではないか。

【委員】

  公的な助成については、その仕組みや申請手続きを簡素化するなど、より使いやすいものにしていくことが大切である。

【委員】

  例えば歌舞伎については、受容する側の教育が極めて重要であり、その内容や意義について教えることのできる人材が求められている。それが教えられていないために、歌舞伎の公演を子どもに見せても理解ができず、効果が失われてしまう。学芸員を志す者や伝統芸能の愛好家は若い人に非常に多いので、彼らをボランティアや非常勤職員として教育の場で活用していくことも一つの方策ではないか。

【委員】

  受容する側の教育のためには、作品を解説し、人々に伝えていくための人材の育成は重要である。欧米では作品のレクチャーを行うボランティア育成のためのカリキュラムが発達している。

【委員】

  ある学校では高校生に能を鑑賞させたところ、逆に嫌いになる人が増えたという。教科書に伝統芸能などを盛り込むことなどにより生徒が学習した上で鑑賞しなければ、実際の舞台を見てもその良さは伝わらない。そのためには、教員がもう少し勉強して、生徒に説明できるようにしなければならない。まずは教員自身が学べるような環境をつくることが大切である。

【委員】

  文化に関する子どもの教育については、少人数に対して行うことが効果的である。その際、専門家や芸術家を活用すれば、子どもにインパクトを与えられる。学校の先生だけを頼りにしてはいけない。

【委員】

  受容の結果がポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、まずは、文化を受容することが大切である。

【委員】

  現在の文化政策の不十分さの原因は、文化を大切にしてこなかった戦後の教育行政の結果ともいえる。文化や人の心を大切にする社会を目指すためには、政府が文化への予算を思い切って増やす必要がある。また、教員の給与を引き上げるなど、経済的なインセンティブを活用し、優秀な教員を集める必要がある。

【委員】

  近代の学術資料についても、文化遺産としてその適切な保存について検討していく必要があるのではないか。

【委員】

  企画調査会においても、現在の文化財保護法とは違う新しい枠組みの中で、近代の学術資料なども保護の対象として検討していくべきであるという議論も行われたところである。

【委員】

  江戸時代以降の近代化遺産については、積極的に文化財保存の対象として考えているところである。しかし、モノは扱いやすいが、科学の成果のように形になっていないものは難しい面がある。

【委員】

  文化財は「人類共通の財産」であるが、外国の文化財が日本に入ってきた場合に、どこまで責任を負うべきかという問題がある。

【委員】

  例えば、つい最近日本に入ってきた外国の著名な絵画や、ピアニストのように西洋文化に関係の深い優れた技術の保持者など、日本にある外国の文化遺産について、どのように考えるべきかという問題がある。広い意味で文化遺産の継承を考えていくことが大切である。

【委員】

  グローバル化時代においては、日本固有の文化と、普遍的な文化の両方の視点が重要である。諮問理由説明の中に、「文化は国民性を特色付け、国民共通のよりどころとなるもの」とあるが、これだけでは内向きな文化に限っていると誤解されるおそれもあり、21世紀という多様化の時代の中での日本を考えるには、同時に、普遍的な文化についても触れていく必要がある。

【委員】

  文化を考える際には、固有の文化と他の文化とのつながりをどのように考えていくかは大きな課題である。

【委員】

  「美しく豊かな日本語」は抽象的で意味が伝わりにくい。もう少し具体的なものとすべきではないか。

【委員】

  「美しく豊かな日本語」を普及するための方策として、例えば、国語の教科書にもっと古典的なものを取り入れることが必要である。

【委員】

  人間の内面にあるエネルギーは文化を創造するものであり、文化の基本である。このエネルギーをどのように望ましい方向に向けるかが重要である。エネルギーを正へ転化させるためには、エネルギーをまず型にはめていくことが必要であり、それを担うのが、「型の継承」たる教育である。それには、まず徹底して型を教え込むべきであり、その上で自由に創意を発揮させていくべきである。

【委員】

  一方、型の継承においては、型の分類が固定化し、間に障壁ができてしまい、活力を失ってしまうことがないよう、同時に、分野横断的にとらえていくことが重要である。そのためには様々な分野を結ぶためのネットワークや、それを担う人材の養成が必要である。

(4)事務局より、次回総会の日程についての説明があり、閉会した。

(文化庁政策課)

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