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文化審議会

2001/10/17 議事録

文化審議会第13回総会議事要旨

文化審議会第13回総会議事要旨

1.日時

平成13年10月17日(水)  14:00〜16:00

2.場所

霞が関東京會舘  シルバースタールーム

3.出席者

(委員)

高階会長、北原副会長、内館、岡田、関口、津田、富沢、中村、乳井、野村、藤原、渡邊、の各委員

(文部科学省・文化庁)

佐々木文化庁長官、銭谷文化庁次長、天野長官官房審議官、遠藤文化部長、木谷文化財部長、鈴木文化財鑑査官、高塩文化庁政策課長ほか関係者

4.概要

(1)配付資料についての確認があり、前回議事要旨については、意見がある場合は1週間以内に事務局に連絡することとされた。

(2)事務局より、主な意見の整理(骨子)(案)について説明があった。

(3)その後、次のような意見交換が行われた。

  •   学問の重要性を訴える必要があるが、そのことがより正確かつ効果的に伝わるように書き方を工夫をしたほうがよいのではないか。
      我が国は、外国の文化を学ぶときに、西欧中心で、アジアを軽視してきた。
      建築物への文化性の導入については、個々の建物についてみれば、我が国の建築はトップレベルにあることを念頭に置かなければならない。また、建築物があまりりに統一されすぎるのも問題ではないか。
  •   著作者の権利の保護を起点にしながらも、その上で権利者との調整を図り、利用を進めていくことも、生み出されたものを普及させていくためには大切なことである。
  •   著作者の権利と、使用者の利便性のせめぎあいのなかで、どこまで著作者の権利を保護していけるかが著作権の課題である。
  •   情報通信技術や複製技術が進歩する中で、実物に近いものを手もとで見ることができる状況にあり、特に文化財情報については、所有者と利用者の調整を図っていかなければ、そのコンテンツが乏しい状況となるおそれがある。しかし、権利と利用の調整は難しい面がある。
  •   権利を過度に保護することになると、例えば、アメリカではテレビの番組中に画面に背景として映った美術品にまで権利が生じ、かえって番組の作成に支障が生じるなどの実際の問題も起こっている。
      また、この他にも、短歌や俳句など文学上の著作権や、著作物の2次利用の問題など、著作権についての課題があるが、これらは世界的な視野で考えていくべき問題であり、対応を怠ると、著作権やその利用について不利な立場に置かれ、創造活動や文化の享受にも支障をきたすことにもなってしまう。利用・普及ということと、権利者の保護の両面について考える必要がある。
  •   文化を大切にする社会を実現するためには、文化を大切にする心を育てることが何にもまして最初に取り組むべきことである。そのためには、家族、郷土、町並み、祖国を愛する気持ちや、美しいものに感動する心、もののあわれを感じる心がなければならず、これらを初等中等教育の段階でしっかり育んでいくことが大切である。また、母国語は、文化発信の基盤として重要だというのではなく、文化の中核をなすものであるということを明確にすべきである。その一つとして国語教育を質・量ともに充実させる必要がある。
  •   日本語は文化発信の道具としてと同時に、文化の基盤として重要である。
  •   「金銭が全てという価値観を改めるべき」や「日本文化は人にやさしい」など、当然のことは言わなくてもよいのではないのか。
  •   文化への支援の根拠として、伝統文化は手を差し伸べなければ消えていくということがある。
  •   「文化の振興は「国全体で」取り組むべき課題」とあるが、これでは行政機関としての「国」が中心という印象を与えてしまう。文化は国がつくるものではなく、社会の中から生まれてくるのであり、むしろ「社会全体で」としたほうがよいのではないか。
  •   国だけで文化を支えていくべきではないのならば、社会全体で文化を支援することを可能にするような体制を整える必要がある。
  •   従来は税金を国が一元的に集め、それを国の判断と責任において配分していたが、それでは地域の個々の活動まで支持するのは困難である。国はトップレベルの芸術家・芸術団体の育成を行い、草の根レベルの文化活動の支援は民間が行っていくべきである。それでこそ、地域において文化の裾野が広がり、多様で多彩な文化活動が展開するのである。そのためには、寄附をしやすい環境を整える必要があり、例えば特定公益増進法人について、数を増やしたり、弾力的な運営ができるようにすることが必要である。
  •   複数の公益法人がその支援を競い合っていくような環境も大切である。
  •   地域の文化を振興していくことは子どもの教育にも効果があり、例えば、祭りなど地域の伝統文化を活用し、そこに子ども達が参加し、エネルギーを注いでいくことによって非行の減少に成果をあげた取組もある。地域におけるこのような活動を民間が支援していくことが大切である。
  •   世界水準の芸術家・芸術団体の育成は国が責任を持って実現を図っていくものであり、一方、地域の文化については民間が支援していくことが望ましい。民間による支援の方法としては、優れた活動を行っている団体を顕彰することは、活動への動機付けや励みになり、効果的である。
  •   現在の日本は、社会経済の大きな流れとして、国の関与をできるだけ減らし、民間の知恵や努力を最大限に活用していくという方向にある。国は、民意の総意として行うべきことを行い、それ以外については、社会の構成員がそれぞれ能力を生かし活動しやすいような環境をつくる役割を担うべきである。そして、そのための具体策について検討する必要がある。
  •   文化は個から発せられ、個々人によって形成されているものである。文化を大切にし、文化の水準を高めていくためには、まずは人間の生き方をどう考えていくかが重要である。
  •   観光地に行くと、日本の美しい町並みはそこになく、外国の建物が溢れ、ここはどこの国なのか分からなくなる。日本としての魅力をもっと出し、それによって人を惹きつけていかなければ、日本の文化はどんどん失われていってしまう。
  •   海外の優れた指導者を活用して日本の若手芸術家を育成していくことも大切だが、日本国内に若くて優秀な指導者を育成することが重要である。日本に人材がいないわけでなく、問題はどのように育成するかということである。そのためには、緊張感に満ちた競争環境が必要であり、その中で自らの技を磨いていくことが大切である。
  •   外国に若手芸術家を派遣するだけでなく、外国の若手芸術家を招へいし、支援することも重要である。
  •   優れた芸術家の育成のためには、外国に依存するだけではいけない。そのためには、日本ではなかなか受け入れられないが、「エリート教育」や「競争の重視」ということを強調する必要があり、能力の適切な評価を行い、優れた者へ重点的な投資を行っていくことも考えていく必要がある。
  •   文化の支援方式としては、国が税金を再配分する方式と、民意が直接に決める方式がある。国による再分配方式は、公平性という面があるが、突出したものなどに個別に支持するのは難しい。一方、米国は民間からの寄付という形での支援が中心であり、どこへ支援するかはそれぞれが判断し、民意が直接反映されるが、市場原理の中で陽の当たらない分野は取り残されてしまう。日本はその両方の良いところをとり入れた第三の方式というべき道を考えていくべきではないか。
  •   残念ながら日本には寄付文化が根づいておらず、日本の場合は税金の再配分方式と併用していかざるを得ない。しかし、民間の支援を促進していくことは必要であり、そのための制度の構築が大切であることを答申で強く訴えていきたい。
  •   寄付を促進するための税制措置については、具体的に提言できないか。
  •   地方の人は、自分のまわりにあるものの良さに、意外に気がついていない。地方では、依然として国のお墨付きが重要である。日本の地方のよき部分が継承されずに失われてきており、それとともに地方が衰退してきている。子どもについての意見は多くでているが、大人についても、文化を大切にする心を育んでいかなければならない。そのためには、皆で文化の大切さを確認することができるような拠点を形成することが必要ではないか。
  •   文化を大切にする心を教えるために、教員の質の向上が不可欠である。
  •   「文化を守る」とよく言われるが、「文化で攻める」という視点が重要である。日本人は潜在的には想像力、創造力を有しているのだが、社会の中で育っていくにつれ、イマジネーションが失われ、創造力も小さくなっていってしまう。文化が栄えないと工業も栄えないのであり、文化を守り、継承するという姿勢とともに、文化で社会全体を鼓舞し、活気付けていくという視点が必要である。これからの日本を元気づけるために文化があるということを訴えられないか。
  •   文化財保護については、日本は外国に対し指導的立場にあるが、その能力を十分に発揮できるような体制を整えていく必要がある。
  •   外国の文化を理解することは大切であるが、欧米の文化に偏重しすぎず、アジアなどにも広く目を向けていくべきである。
  •   答申をまとめるにあたっては、世間に広くアピールするため、現状分析はあまり盛り込まなくてもいいのではないか。また、諮問の検討事項例にこだわらず結論から先に書く方法もあるのではないか。
  •   提言をわかりやすく、読み手に伝わりやすいものとするため、具体的な事例なども盛り込んでいけばより効果的である。また、キャッチフレーズのような、読み手の関心をひくタイトルをつけることも一つの方法ではないか。
  •   文化財、国語、芸能などは、文化を向上させていくのに必要な一つの側面であり、これらを列挙する方法もあるのではないか。
  •   検討事項例に盛り込まれていることを審議しながらも、例えばエッセンスを冒頭に書くなど重要な課題はクローズアップし、メリハリの利いたまとめ方としていきたい。

(4)事務局より、次回総会の日程についての説明があり、閉会した。

(文化庁政策課)

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