審議会情報へ

文化審議会

2001/02/05 議事録

文化審議会 第1回総会議事要旨

文化審議会第1回総会議事要旨

1.日時

平成13年2月5日(月)10時30分〜13時00分

2.場所

霞が関東京會舘シルバースタールーム

3.出席者

(委員)

  井出祥子,内館牧子,岡田冨美子,川村恒明,北川善太郎,北原保雄,齊藤博,関口欣也,高階秀爾,遠山敦子,津田和明,中村紘子,野村豊弘,藤原正彦,森まゆみ,脇田晴子,渡邊明義の各委員

(文部科学省・文化庁)

  町村文部科学大臣,大野文部科学副大臣,河村文部科学副大臣,池坊文部科学大臣政務官,小野事務次官,佐々木文化庁長官,銭谷文化庁次長,林長官官房審議官,遠藤文化部長,長谷川文化財部長,村上文化財鑑査官,加茂川大臣官房人事課長,高塩文化庁政策課長ほか関係者

4.概要

  • (1)事務局から,委員及び出席者の紹介があった。
  • (2)委員の互選により,高階委員が会長に選出された。
  • (3)北原委員が副会長に指名され,了承された。
  • (4)事務局より,文化審議会の概要及び委員の分科会への分属について説明があった。
  • (5)事務局より,「文化審議会運営規則(案)」についての説明があり,了承された。
  • (6)事務局より,「文化審議会の議事の公開について(案)」についての説明があり,了承された。
  • (7)文部科学大臣より,文化審議会発足に当たり,挨拶が行われた。
    •   従来,文化全体について議論する場がなかった。今回,省庁再編に伴って,文化審議会という大きな枠組みができ,その中で文化の振興や国際文化交流の振興等について様々な御議論をいただき,さらに各分科会で専門的な御議論をいただいていくという仕組みができたことは,大変意義のあることと思っている。
        大臣就任後の記者会見において,政治家としての目標は日本を文化大国にすることであると発言したが,その具体的な方策についても,委員の皆様方より御指導をいただきたいと思っている。
        我が国は経済的に豊かになったが,文化的な活動が十分できる環境を保障することについては,改善の余地が多々あると考えている。また,国際交流が進んだ時代の中で,文化を代表される方々が日本の顔になってくるのだろうと思う。そのために今後採るべき施策も議論としてあるのではないかと思っている。
        なお,平成13年度文化庁予算案は,飛躍的な伸びをみせ,対前年度12.4%増(100億増)の909億円となっている。厳しい財政の中で文化予算を増やすことができたのは,それだけ,文化に対する理解が広まっているのではないかと考えている。
        今後,委員の皆様には忌憚のない御意見をいただきたい。また,文化庁としても,皆様からの御意見を最大限実現するという思いである。
        最初のうちは自由に御議論いただき,そうした議論も踏まえながら,いずかの時期に,文化の振興に関する諮問をさせていただきたいと考えている。
  • (8)高階会長より,会長就任に当たり,挨拶が行われた。
    •   今回ここに新たに発足する文化審議会は,文化の振興及び国際文化交流の振興に関する重要事項に関し,議論することとされている。今後の社会において,文化の果たすべき役割は益々重要になっていくことは,疑いのないところである。このような中で文化審議会が発足し,文化の振興全般について議論を深めていくことは,極めて大きな意義を有することであると思っている。
        この審議会に与えられた使命を果たすため,本審議会としても,できる限りの努力をしてまいりたいと考えている。
  • (9)文化の振興全般について自由討議が行われた。
    •   相手を知り,それを相手に伝えることは,国語における敬意表現の基本であるが,文化交流についても,お互いの文化を理解することが,まず始まりである。
    •   敬意表現について,同じ人間なのだから目上も目下もない,と否定する意見があるが,「教える側」「教わる側」の立場の違いはある。基本的な礼儀,礼節までも画一的に否定することは,文化的な危機でもある。差別ではなく,差異を認めることが重要である。
    •   経済的,物質的にも豊かになったが,即物的な豊かさのみで,モノをつくることへの愛情を忘れているのではないか。文化は,単なる技術ではなく,対象を慈しむという,精神的なものである。そして,夢を実現させようとすることである。
    •   世界へ発信していくような,世界水準の文化は,生産財としての価値がある。国民が自らのものとして支えていくことが必要であり,そのための国,地方公共団体の投資は少なすぎる。
    •   文化財保護法は世界的に見ても先駆的で,素晴らしい法律であるが,世界的な遺産を保護しようとする観点に立っていない。一国のみならず,国際的な視点から,新しい文化財保護の体系についても議論していただきたい。
    •   文化においては「特殊」と「普遍」ということが重要である。例えば,能は日本独自の文化だと考えられているが,一方で世界的にみて普遍的なものを含んでいる。そうした中,著作権でいわれる「コピイする」ことは文化を「写す」という普遍的な行為であり,著作権制度は文化を支える基盤として重要である。
    •   文化と科学技術との関係が重要である。文化は科学技術に支えられて発展してきたし,また,科学技術それ自体が文化といえる。デジタル化の進展の中で,文化がデジタル技術に埋没してしまわないよう,デジタルとアナログの両面へ配慮することが必要である。科学技術の進展を視野に入れ,2020年,2030年といった,次の次の時代を見通した議論が必要である。
    •   文化は,その国の風土や環境と密接な関わりを有しており,外国文化との比較においてもそうした視点が必要である。
    •   諸外国に日本に対し敬意と友情を抱いてもらうためには,文化大国としての評価を得なければならない。そのためには,伝統文化を次世代へ継承していくとともに,万国共通のルールに基づいた文化を伸長しなければならない。特に,文化の裾野を広げることが効果的である。しかし一方で,地方では,展覧会や公演を実施しても人があまり集まらないのが実態である。地方での文化愛好者を増やしていくことも重要である。
    •   国が支援する文化は,ある程度評価が定まったものにならざるを得ないので,これからの発展が期待される文化に対する支援は,民間が重要な役割を果たす。芸術文化の多様性を維持するためにも,民間支援を誘導する方策を文化政策に位置付けてほしい。
    •   伝統文化に限らず,現代の文化や,お茶・お花等の生活文化も含めて日本文化に対する海外の興味・関心は高く,もっと自信を持ってもいいと思う。日本は文化大国たる可能性を有しており,そうした文化を今後一層発展させていくことが大切である。
    •   これまでの日本は,文化財の分野や個人あるいは少数の人たちの労力による世界発信に頼りすぎていたが,これからは世界水準の文化をどんどん世界へ向けて発信していくべきである。
    •   文化政策の在り方として,国が直接に文化に関わるフランス方式や,英・米のように文化に一定の距離を置きつつ支援していく方式等様々ある中で,日本は独自の新しい日本型方式を探っていくべきである。そのことが日本の存立基盤を確固たるものにし,日本の安全保障にもつながる。
    •   才能ある者を伸ばす寛大さが,文化を育てるためには必要である。外国のコンクールにおいては,日本人は自信がなさそうに見える。今,必要なことは,国として,人々が才能ある者を受け入れ自信をもたせるようにすることである。
    •   海外で日本語学習者や日本関連の講座が減少するなど,日本に対する関心が薄れてきている。これまでもいわれていることだが,今後は積極的に文化を発信していかねばならない。
    •   経済のみでの一流は羨望はされても,尊敬は得られない。国益としての文化を考えてほしい。美しい田園,道徳心といったものも含め,広義の文化を議論してほしい。それが普遍的価値につながるし,深い文化のないところには,科学技術の独創性も生まれない。また,国益を守るためには,他省庁や場合によっては国民とも衝突することがあるが,それをおそれないでほしい。例えば,文化にマイナスの影響をもたらす規制緩和やIT革命と衝突することもあるだろうし,また,国語教育の重視ということからは,文化庁と文部科学省が衝突することもあるかもしれない。
    •   文化というと「文化ホールを建てる」「建築物に彫刻を配置する」などになりがちであるが,地域の生活文化や風習が失われつつある中で,そうしたことを支援する仕組みがほとんどない。建物だけを保存するのではなく,そこでの生活やものがたりなども含めて再生,活用してほしい。
    •   大学の研究においても文化は軽視されているが,文化はすべての基礎であり,また,文化はその時代の社会全体の中で形づくられていくものであることから,非常に重要である。
    •   文化財保護行政については,これまで芸術至上主義であったが,今後は一般庶民の生活に密着した文化を大切にするなど,観点を広げるべきではないか。また,良いものだけでなく,悪いものも含めて考えないと,文化の全体は見えてこない。
    •   文化財保護法には,その目的に「世界文化への貢献」を掲げてあり,画期的である。一方で,文化財のうち物に対する関心は高いが,精神的なものに対する意識は成熟していない。また,文化の多様性が求められている中で,小さい単位のものが消滅しつつある。さらに,文化遺産と観光の関係にも積極的な位置づけが必要である。こうしたことを踏まえ,文化財保護法の指定範囲や保護体制の見直しについて議論していただきたい。
    •   他国から尊敬されるかどうかということ以前に,まず我々の生活が心豊かなものになるということが重要である。国の行う施策も重要だが,企業も含め,日本全体が文化を擁護する機運を高めるためにはどうしたらよいかを考えなければならない。
    •   低年齢のうちから一流の芸術文化に触れる機会を設けることが重要である。
    •   国語については,改善よりも普及が難しい。大人が次の世代をリードしていくことが必要である。
    •   文化審議会は,文化庁にとどまらず,様々な省庁や地方自治体,民間が一つになった文化政策について提言することが必要である。
    •   文化の国際的な重要性に鑑みて,文化に関する国際的なネットワークを形成することが必要である。例えば,世界経済フォーラム(ダボス会議)のように,世界文化フォーラムといったものが日本でできないか。それを30年間続ければ,世界的に評価される国になるのではないか。
  • (10)河村文部科学副大臣より,閉会のあいさつがあった。
    •   委員の皆様方の指摘にもあったが,今後,日本型の文化政策を打ち出していく必要があると思っており,その中で,文化審議会の役割は大変大きなものであると考えている。以前或る方より,文化立国と言うならば,まず憲法第25条を見るべきである,という意見を伺ったが,文化の振興に政治家として力を尽くしていかなければ,と感じた。
        今後,皆様の御議論を踏まえ,大臣から諮問をさせていただくことになろうかと思うが,文化の振興により,21世紀を明るいものに,そして子どもたちに自信をもたせることができると考えているので,一層の御協力をお願いしたい。
  • (11)事務局より,次回総会については,3月上旬を目途に開催するとの説明があり,閉会した。

(文化庁政策課)

ページの先頭へ