補助金等の交付により造成した基金等に関する基準

平成18年8月15日
閣議決定

 この基準は、「今後の行政改革の方針」(平成16年12月24日閣議決定)に基づき、補助金等の交付により造成した基金等(資金などの名称が使用されている場合も含む。以下「基金」という。)を保有する法人(独立行政法人、特殊法人、認可法人及び共済組合を除く。以下「基金法人」という。)が基金により実施している事業に関し、当該補助金等を交付した府省(以下「所管府省」という。)が補助金交付要綱等に基づく指導監督を行う場合の基準として、以下のとおり定める。

1   本基準の対象
   本基準は、国からの補助金等を財源として基金法人が保有している基金のうち、当該法人において2箇年度以上にわたり特定の事業を実施していくための基金を対象とする。

2   定義
   本基準における用語の意味は、次のとおりとする。
 
(1) 基金事業
   基金により実施している貸付事業、債務保証事業、利子補給事業、補助・補てん事業及び調査等その他事業の各事業のことをいう。
(2) 資金事業
   一つの基金事業において複数の事業を実施している場合において、各事業のことをいう。
(3) 取崩し型
   基金を基金事業の財源に充てることにより、基金が費消される運営形態のことをいう。
(4) 回転型
   貸付など、基金を繰り返して使用する運営形態のことをいう。
(5) 保有型
   債務保証など、基金を保有することにより基金事業を実施する運営形態のことをいう。
(6) 運用型
   基金を費消せず、その運用益を基金事業の財源に充てる運営形態のことをいう。

3   基金の設置及び基金事業に対する指導監督について
   所管府省は、以下の基準に適合するよう基金法人を指導監督するとともに、以下の基準に従い必要な措置を講ずることとする。
 新たに基金を設置する場合、所管府省は基金造成を目的とした補助金等を交付する際に補助金交付要綱等に以下の基準を明記することとする。
 
(1) 基金事業を終了する時期等に関する基準
 
 所管府省は、各基金について、以下の 1及び 2のとおり、基金事業を終了する時期(新規申請の受付を終了した後も既採択分の支払等の後年度負担が発生する事業(以下「後年度負担が発生する事業」という。)においては、新規申請の受付を終了する時期とする。以下同じ。)を設定することとする(ただし、法律を受けて実施される事業であって事業を終了する時期について法律に特段の定めがない基金事業、事業を終了する時期の設定が国際交渉に影響を及ぼすおそれのある基金事業又は犯罪被害者等の救済を継続して行う基金事業については、この限りではない。)。
 1  既に設置されている基金については、初回の見直しにあわせ、原則として平成27年度末を超えない範囲内で事業を終了する時期を設定することとする。
 2  新たに設置する基金については、原則として設置後10年を超えない範囲内で事業を終了する時期をあらかじめ設定することとする。
 なお、法律を受けて実施される事業であって事業を終了する時期について法律に特段の定めがない基金事業及び当面の危機対応や社会経済情勢の変化への対応等のために事業を継続する必要性が認められる基金事業について、所管府省は事業を終了する時期を延長することができる。

 基金法人は、少なくとも5年に1回は定期的に見直しを行うこととする。

 基金法人は、実施した見直しの概要及び次回の見直し時期について、所管府省に報告し、ホームページへ掲載するなど、国民が容易にその内容を把握できるよう適切な手段により公表することとする(以下、公表の手段については、同様とする)。なお、所管府省においても同様の公表を行うこととする。

(2) 基金事業の目標達成度の評価に関する基準
   基金事業については、基金法人に委ねられ長期にわたり実施されるため、効率的・効果的に基金事業が実施されているかどうかについて的確に検証することが必要であり、基金法人は、定期的な見直しを行う際に、所管府省が「政策評価に関する基本方針の改定について」(平成17年12月16日閣議決定)等の規定に準じて、あらかじめ事業の効果に着目して定めた目標(以下「基金事業の目標」という。)の達成度を評価し、当該結果を公表することとする。この場合、可能な限り資金事業ごとに評価し、当該結果を公表することとする。なお、所管府省においても同様の公表を行うこととする。

(3) 基金の保有に関する基準
 
 基金事業の今後の見通し又はこれまでの実績から見て、基金の規模が過大となっていないか等の状況を客観的に把握するため、定期的な見直しの際に、基金法人は基金の保有割合(基金事業に要する費用に対する保有基金額等の割合)を算出することとする。なお、基金の保有割合は、以下の例示を参考とし、基金法人及び関係府省間で協議された合理的な事業見通し又は実績を用いて算出することとする。また、一つの基金において複数の基金事業を実施している場合は、基金額、基金の運用益額、管理費等を事業実績比率等により按分するなど、合理的な方法を用いて基金事業ごとに基金の保有割合を算出することとする。基金法人は、基金の保有割合を所管府省に報告し、公表することとする。なお、所管府省においても同様の公表を行うこととする。
 
【例示】
 1  貸付事業(回転型)
   直近年度末の基金額 わる(貸付残高 たす貸付見込額 ひく回収見込額 たす管理費)
 2  債務保証事業(保有型)
   直近年度末の基金額 かける基金保有額に対する債務保証限度額の倍率 わる(債務保証残高 たす債務保証見込額 たす損失引当金等 たす管理費)
 3  利子補給事業(取崩し型)
   直近年度末の基金額 わる(事業が完了するまでに要する利子補給額及び管理費)
 4  利子補給事業(運用型)
   基金の運用益見込額 わる(利子補給見込額 たす管理費)
 5  補助・補てん事業(取崩し型)
   直近年度末の基金額 わる(事業が完了するまでに必要となる補助・補てん額及び管理費)
 6  補助・補てん事業(運用型)
   基金の運用益見込額 わる(補助・補てん見込額 たす管理費)
 7  調査等その他事業(取崩し型)
   直近年度末の基金額 わる(事業が完了するまでに必要となる事業費及び管理費)
 8  調査等その他事業(運用型)
   基金の運用益見込額 わる(事業費所要見込額 たす管理費)

 基金法人は、基金ごとに次の見直し時期に事業見通しの的確性が検証可能となるよう、基金の保有割合の公表にあわせて、当該算出に用いた算出方法(算式)及び数値を所管府省に報告し、公表することとする。なお、所管府省においても同様の公表を行うこととする。

 基金法人のうち公益法人が行う基金の運用は、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(平成8年9月20日閣議決定)5(5)の規定によることとし、公益法人以外の法人が行う基金の運用は当該規定に準ずることとする。

(4) 使用見込みの低い基金等に関する基準
 
 以下の基準に該当する基金(以下「使用見込みの低い基金等」という。)を保有する基金法人は、定期的な見直しの際に、基金の財源となっている国からの補助金等の国庫への返納など、その基金の取扱いを検討することとする(ただし、以下の 1に該当する基金については、事業を終了した時点で、直ちに国庫への返納等の検討に着手することとする。)。また、基金法人は当該検討結果を所管府省に報告し、公表することとする。なお、所管府省においても同様の公表を行うこととする。
 
【基準】
 1  事業を終了した基金(後年度負担が発生する事業においては、新規申請の受付を終了した基金とすることとする。)
 2  前回の見直し以降事業実績がない基金又は直近3年以上事業実績がない基金
 3  基金造成時の政策目的がなくなった基金又は変更になった基金
 4  本基準3(3)アにより算出した保有割合が「1」を大幅に上回っている基金(なお、前回の見直しにおいて保有割合の算出に用いた数値と実績とが著しく乖離している場合には、保有割合の見直しに当たって、当該実績又は当該実績を反映した堅実な事業見通しを用いて保有割合を算出することに特に留意する。)
 5  その他、使用見込みが低いと判断される基金

 使用見込みの低い基金等であって、当面の危機対応や社会経済情勢の変化への対応等のため所要額を残置する必要がある基金については、基金法人及び関係府省間で協議の上、基金法人において、残置が必要な理由、残置する所要額及び当該所要額の積算の根拠等を公表することとする。なお、所管府省においても同様の公表を行うこととする。

 使用見込みの低い基金等の取扱いの検討の結果、使用見込みのない資金として、基金法人が国からの補助金等を国庫へ返納する場合、国庫へ返納する額は、基金のうち国庫補助金等相当額(法定果実を含む。)を上限とすることとする。

 後年度負担が発生する事業においては、新規申請の受付を終了した年度以降、毎年度、基金法人において、支払財源等として必要のない額を国庫へ返納するなど、その基金の取扱いを検討することとする。また、基金法人は当該検討結果を所管府省に報告し、公表することとする。なお、所管府省においても同様の公表を行うこととする。

(5) 基金事業に対する指導監督に関する基準
   所管府省は、上記の基準以外にも必要がある場合には、基金事業に対し指導監督を行うこととする。

4   基金の基本的事項の公表
   基金法人は、基金の名称、基金額、基金のうち国庫補助金等相当額、基金事業の概要、基金事業を終了する時期、定期的な見直しの時期、基金事業の目標について、基金造成後速やかに公表することとする。なお、既に設置されている基金については、初回の見直しにあわせて、これらの基本的事項を公表することとする。また、所管府省においても同様の公表を行うこととする。

5   経過措置等
 
(1)  基金法人における初回の見直しは、原則として、平成18年度中に実施することとする。
(2)  所管府省は初回見直しにあわせ基金法人と協議し、補助金交付要綱等の所要の改正を行い、既存の基金事業に対して所管府省が指導監督を行う旨を明記するとともに、本基準の3に規定される各基準を盛り込むよう努めるものとする。
(3)  国が基金設置造成を目的として交付した補助金等であって、国以外の者を経由し、間接的に国の補助金等の交付を受けて設置造成されている基金についても、本基準と同様の見直しが行われるよう、所管府省は補助金等を経由させた法人(地方公共団体を除く。)に対し要請を行うこととする。
(4)  行政改革推進本部事務局は、本基準に従った基金の見直し状況について、当分の間必要に応じて取りまとめを行うこととする。


-- 登録:平成21年以前 --