1 日 時:平成15年6月8日(日)13:30~16:00 2 会 場:ウィルあいち(愛知県女性総合センター) 3 次 第:
4 概 要: (1)池坊保子文部科学大臣政務官挨拶 いつの時代にあっても変わらない教育の在り方について御意見を伺いたいと思い、今回の「教育改革フォーラム~教育改革の推進と教育基本法の改正について~」を開催したところ、多くの方々に集まっていただいた。御礼申し上げる。山口、北海道など5箇所で教育改革フォーラムを開催したが、今日がその締めである。 過去の経験から未来が予測できた今までと異なり、21世紀は将来を予測できない激動の時代になっていくことが予想されるが、その中にあって、人々の関心の柱は教育であると思う。資源がなく、人材しかなかった日本が今日の地位を築くことができたのも、先達が教育に力を注いできたからだと思う。これから後に続く人々のためにも、日本が尊敬と愛情を持って見つめられるような国にすべく教育を行うとともに、一人一人の意識にも訴えなければならない。 不登校、いじめ、道徳心や自律心の欠如など、現在の子どもを取りまく状況は決してよくない。文部科学省では、そういった状況も踏まえながら、「21世紀教育新生プラン」や「人間力戦略ビジョン」などを策定し、教育改革を進めてきた。その背景は、「画一と受身」の20世紀から「自立と創造」の21世紀へという流れであり、教育もそれに沿ったものであることが必要である。その趣旨を御理解いただけるよう、「教育の構造改革」というパンフレットを今回お配りしているが、そこに盛り込まれた4つの理念を御理解いただき、是非御協力いただきたい。 本年3月の中教審答申では、21世紀にふさわしい教育理念を、21世紀にふさわしい形で再構築するという観点から、教育基本法の改正と教育振興基本計画の策定について提言をいただいた。文部科学省では、その答申を受け止め、教育基本法の改正に向け様々な研究や準備を行っているが、大切なことは「教育基本法を改正することが必要だ」という国民の声の盛り上がりであると考える。それがないと改正は意味のないものになってしまうという思いから、こうして忌憚のない御意見を全国各地で伺っているところである。 生け花という日本の伝統文化が600年続いてきたのは、単に伝統を守ってきたからだけではなく、時代に応じて常に変化し続けてきたからである。 教育は国家百年の計というが、五年一昔とも言える激動の時代の中で、教育についても、守るべきものは時代を通して守り、変えるべきところは時代に応じて変えることが必要である。 21世紀の教育はどうあるべきかというのは、大変難しい問題である。それだけに、国民からの御意見をしっかり受け止め、その判断に誤りのなきようにして、教育改革を進めてまいりたい。 (2)基調講演(梶田叡一中央教育審議会委員) 子どもの育ちにとっていろいろと心配な現象が存在しており、自分たちが現役を終えるころ、今の子どもたちに社会を任せて、手放しではなかなか安心できないと思っている。例えば学力低下の問題がある。平成14年の文部科学白書では、初めてこの問題がはっきりと書かれたが、少なくとも昔と同程度に子どもが学んでいるとはいえない状況にある。もっと大変なのは、学習意欲の低下である。先進諸国で、学習意欲、勉強時間や読書時間は、いずれも最低レベルである。また、不登校者の数は10年前の2倍以上、年間約13万人にも上っている。学校ではこの10年間、「ゆとり」ということでいろいろとうるさいことを言ってこなかった。それが、ある方の言葉を借りれば、一部で自主性、自発性の美名に隠れた指導の放棄という事態を起こした。 一連の教育改革の根本にあるのは、今の社会を担う大人として、次世代に全面的な信頼を与えられないという思いであろう。「子どもはいずれ立派に育つ」という評論家もいるが、現実に子どもたちがゆゆしき問題を抱えている状況を踏まえると、この社会を担っている世代としてやるだけのことはやっておかなければならないと考えている。その際、それらに即効性があるかどうかではなく、いろいろなレベルの施策に取り組んでいくことが大切である。「教育基本法を変えることで、どこが具体的に良くなるのか」などと議論のための議論をしている場合ではない。できることからひとつずつ始めていくべきである。 本年3月に結論を出した中教審答申の中身については、手元にお配りした4月21日付の毎日新聞の記事を御参照いただきたい。自分は、子どもの未来のために、大人たちは、今何ができるのかという観点から、教育基本法の問題を考えたいと思う。その意味で、「教育勅語を復活せよ」という主張も、「現行基本法を堅持すべきである」という主張も、そこに重点を置くのであれば間違いであると思う。確かに教育勅語は素晴らしい理念を含んでいるが、聖徳太子の「十七条の憲法」と同様、歴史的文書に過ぎない。21世紀の今日、子どもたちの将来のために教育について何をなすべきか考えるにあたり、歴史的文書に頼ることはよくない。今の視点から教育基本法について、本当に大事な理念が入っているのか議論し、そのうえで結論を得る姿勢が大事であると思う。 例えば、次の3点については、現行教育基本法では十分でないと思う。 第一に、日本も批准している児童の権利条約は、子どもが意見を表明すればよいということを定めたものではなく、子ども自身が生きていく主体であるということを社会の根本原理の一つとして受け入れていくことに重点があると考えるが、現行教育基本法は、子どもを主体としてはとらえておらず、育成される者、保護される者としてとらえている。 第二に、男女共同参画についても、いわゆる「ジェンダーフリー」と一線を画しつつ、古典的な性別役割論を乗り越えたところに新しい社会の担い方があり、子どもたちにそのための準備ができるようにしなければならない。たしかに、子どもを産むのは男性にはできないことなので、その点での母性保護には十分留意しないと社会に未来はないが、責任の取り方については男女差をなくしていく必要がある。しかしながら、現行の教育基本法には、そのための教育理念は規定されていない。自分は女子大の学長をしているが、かつてアメリカに同じ母体の女子大の関係者を訪ねたとき、彼らは「アメリカの社会はレディーファーストであるが、それを当然として育つ女性は社会で責任ある地位にはつけない。本当に社会で責任を持つような女性を育てようと思えば、男でも女でも自分の椅子は自分で引き、自分が通るドアは自分で開けるくことが肝心である。女だからと甘えていては、社会のお荷物になるだけである。だから生涯のある時期における別学は有用である」と意気軒昂であった。一つの考え方であると思う。このように、現行の「男女共学は認められなければならない」という条文は男女共同参画や男女雇用機会均等法に応える条文ではない。これからは、新しい形での男女の手のつなぎ合いが必要であり、女性が本当に力をつけて社会で責任を持っていくためには、教育の基本理念に男女共同参画を謳う必要があると思う。 第三に、「国を愛する心」についてもいろいろな意見がある。一人一人が有意義な人生を送ることは重要だが、人は一人では生きていけないことも考えると、「滅私奉公」「滅公奉私」のいずれも困る。かつてケネディ大統領が国民に向けて「あなた達自身が、国のために何ができるかを考えないといけない」と語ったが、その意味を実際に考えるべきであると思う。 このように、教育基本法は制定以来56年が経過しており、21世紀の社会の在り方を考えると、今の教育基本法に書かれていなかった要素を新たに加えたり、趣旨を明確にしなければならない部分が、率直に言ってあると思う。政治や時のヘゲモニーに左右されることなく、ひとりの大人として、子どもを育てるにあたって、大事な理念が何であるかについて確認したいはずであり、それを国民的に議論していかないといけない。そのためには、性急に結論を出すのでなく、意見がある程度、収斂するまで議論を継続すべきである。 「教育基本法は準憲法的な法律だから改正してはならない」というのも不思議な議論だ。民主主義社会では、憲法がわれわれを縛るのではなく、われわれがよりよい未来をつくれるよう、憲法や教育基本法があるはずだ。そのために、必要に応じて憲法や教育基本法をよりよいものにしていこうという考えはむしろ自然なものだと思う。ただ、教育基本法が憲法と同じくらいの重みがあるという意見には賛成である。教育基本法は、教育の今後の在り方を定めるものであり、子どもがどう育ち、将来の社会をどんな発想と常識で形成していくかにかかわるものであるからである。 日本人はこれまで、与えられた状況に対応することに長けているといわれてきたが、われわれこそが社会の主人公である。できるときにできるだけのことをしておかないと、日本社会が外的な状況に流されていくだけになる危険性がある。戦後58年が経過したのだから、そろそろ主体性を回復し、自分たちの未来を自分たちで決めるべく、虚心坦懐に議論すべきだ。そこで議論すべきテーマの一つが教育である。今すぐに学校レベルでできることも、諸法令の改正で対処すべきこともあり、同時に、教育理念的なものも含めて考える必要がある。未来志向に立ち、自分たちの将来を自分でつくることの一環として、教育理念の在り方について本格的に議論すべきである。過去の教育勅語や今の教育基本法に縛られることなく、現在の人間観を踏まえながら、議論していただきたい。 (3)パネルディスカッション ○教育改革の推進や教育基本法の改正について
○教育基本法改正の必要性について
○8つの教育の基本理念について
○学校・家庭・地域社会の連携・協力について
○確かな学力の育成について
○会場からの意見紹介 (国を愛する心、公共の精神)
(家庭教育)
(教育行財政)
(社会教育)
(学校教育)
(総論)
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