第10条 (教育行政)

第10条 (教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。

2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

本条の趣旨
第1条以下で明らかにされている教育の目的、方針及び基本的諸原則を実現する「手段方法の基礎」としての「教育行政の在り方一般」を示したもの。
第1項は、教育と国民の関係を規定したもので、教育が国民の信託にこたえて、国民全体に対して直接責任を負うように行われるべきであり、党派的な不当な支配の介入や、一部の勢力の利益のために行われることがあってはならないことを示したものである。
第2項は、教育行政の在り方を規定したもので、教育行政は、第1項の自覚のもとに、教育の目的を達成するために必要な諸条件の整備確立を期して行われるべきものであることを明らかにしたもの。
   
「教育は」
  教育者、教育官吏及び教育内容等全てを含めて、一般に教育というものはという意味。
   
「直接に」
  制定当時、「直接にというのは、国民の意思と教育とが直結しているということである。国民の意思と教育との間にいかなる意志も介入してはならないのである。この国民の意思が教育と直結するためには、現実的な一般政治上の意志とは別に国民の教育に対する意志が表明され、それが教育の上に反映するような組織が立てられる必要があると思う。このような組織として現在米国において行われている教育委員会制度は、わが国においてもこれを採用する価値があると思われるのである。」と説明されている。
   
「責任を負う」
  教育が国民から信託されたものであり、教育は国民全体の意志に基づいて行われなければならないのであって、それに反する教育は排斥されなければならないということ。
   
「必要な諸条件の整備」
  昭和51年の最高裁判決において、許容される目的のため必要かつ合理的に認められる教育行政機関による教育内容及び方法に関する措置は、本条の禁止するものではないことが確認されている。

(参考)帝国議会における第10条に関する主な答弁

【「不当な支配」とはどういうものを指すのか。】
◎昭和22.3.14  衆・教育基本法案委員会
<辻田政府委員>  第十条の「不当な支配に服することなく」というのは、これは教育が国民の公正な意思に応じて行はれなければならぬことは当然でありますが、従来官僚とか一部の政党とか、その他の不当な外部的な干渉と申しますか、容啄と申しますかによつて教育の内容が随分ゆがめられたことのあることは、申し上げるまでもないことであります。そこでそういうふうな単なる官僚とかあるいは一部の政党とかいうふうなことのみでなく、一般に不当な支配に教育が服してはならないのでありましてここでは教育権の独立と申しますか、教権の独立ということについて、その精神を表したのであります。
 
【「直接に責任を負つて行われる」とはどういう意味か。「不当な支配に服さず」というのは当然でありあえて規定する必要があるのか。】
◎昭和22.3.19  貴・本会議
<高橋国務大臣答弁>  それから尚第十条「教育は、不当な支配に服することなく、」云々とありまするのは是迄におきまして、或いは超国家的な、或いは軍国主義的なものに動かされると云ふようなことがあつたものでありまするからして、この点を特に規定したものであります。
   
【学校教育の主体はだれか。】
◎昭和22.3.19  貴・教育基本法案特別委員会
<高橋国務大臣答弁>  地方教育に関しましては、地方分権の主義に則りまして、中央集権を廃して参りたい、斯う云ふ立場にあるのでありまするからして、矢張りそれぞれの地方公共団体が教育をする、斯う云ふことに相成るものと考へて居ります。