第5条 (男女共学)

第5条 (男女共学) 男女は、互いに敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない。


本条の趣旨
憲法第14条第1項の精神を敷衍したもの。
教育における男女平等については、教育基本法第3条で既に規定されているが、女子の社会的地位の向上を図るため女子教育の向上が特に必要との考えから企図された規定である。
「男女は、互いに敬重し、協力し合わなければならない」とは、男女が相互に人格を尊重し、価値を認め、理解し、その相互敬重の念の上に、社会のあらゆる活動において相互の特性を発揮し相補うことを意味する。
「教育上男女の共学は、認められなければならない」とは、1法律において男女共学の真価を認め、男女共学を推奨すること、2男女共学を国及びその機関が禁止しないこと、3同時に、男女共学を強制するものではないこと、とされている。
さらに、この規定は、教育は原則として男女共学で行われることが本来の在り方であるという視点も含まれていると考えられる。

(関係法令)
憲法第14条第1項  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

「男女は、互いに敬重し、協力し合わなければならない」
  旧来の日本においては、男尊女卑の観念と男女七歳にして席を同じうしないという両性の孤立主義が全く払拭されたものとは言い難いものがあり、この根本的な改革は主として教育の力にまたなければならないことを受けた規定。
   
「男女の共学は、認められなければならない。」
  男性と同水準の教育を求めて、男性しか入学を認められていなかった学校に、女性が入学許可を求める形で、女性の教育を受ける権利が要求されてきた歴史的経緯を踏まえたもの。
  戦前の日本においては、旧制高等学校への女子の入学は認められておらず、その結果、旧制官立大学への進学も著しく限られていた。同時に、中等教育においても、男子の中学校と女子の高等女学校とは別学であり、修業年限にも差があった。

(参考)帝国議会における第5条(男女共学)に関する主な答弁

【第5条を規定した理由】
○昭和22年3月14日衆議院教育基本法案委員会
<辻田政府委員答弁>  憲法第14条の精神をここへもってまいります場合に、基本法第3条の教育の機会均等に一応包含されるわけでありますが、従来、男女別学といいますか、分学と申しますか、男女共学というようなことについて、あまり考えられておらなかったし、また非常に男女の間に差別的な取扱いが行われておりましたので、この際特にこの男女の平等という、差別をしないという立場からいっても、また一方には今後一層民主的な平和的な国家を建設していきます場合に、特に男女が互いに協調し協力し合わなければならぬ。これを教育に生かす場合に、共学というような方法で行われるのが最も適当であるというふうに考えられまして、ここに非常に大切なことだと認めまして、これを特筆したわけであります。

 

男女共同参画社会基本法(平成11年6月23日  法律第78号)(抄)

(定義)
第二条   この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
  男女共同参画社会の形成  男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成することをいう。
  (略)
   
(男女の人権の尊重)
第三条   男女共同参画社会の形成は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人権が尊重されることを旨として、行われなければならない。
   
(国の責務)
第八条   国は、第三条から前条までに定める男女共同参画社会の形成についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策(積極的改善措置を含む。以下同じ。)を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
   
(国民の責務)
第十条   国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成に寄与するように努めなければならない。