第2条 (教育の方針)

第2条 (教育の方針) 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。


  本条の趣旨、内容
  本条は、第1条に規定する教育の目的を実現するための道筋(方法)、心構え、配慮事項を規定したものであり、名宛人は教育者のみならず一般国民を含むとされている。主な意味内容は以下の通り(「教育基本法の解説」より)。

     
 

(1) 「あらゆる機会に、あらゆる場所において」
  制定当時、それまで学校教育のみで教育は終了したものと考え、その後の研究修養を省みない弊風を改めるため、学校教育と並んで社会教育が大いに振興されるよう規定したもの。

(2) 「学問の自由を尊重し」
  憲法第23条「学問の自由は、これを保障する。」の学問の自由を侵してはならないとする消極的な規定をさらに進めて、積極的に尊重していこうとするもの。

(3) 「実際生活に即し」
  教育なり、学問なりが実際生活を基礎とし、そこから出発して行われなければならず、またその成果も実際生活に浸透していかなければならないという意味を示したもの。

(4) 「自発的精神を養い」
  自ら進んで学問をしたいという気持ちを起こさせ、個人の研究的態度を養うという意味。

(5) 「自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない」
  教師と生徒の間のみならず、教師相互、生徒相互の間に敬愛という心のつながりを持って、相互に教育し、教育され、協力一致していくところに偉大な文化の創造と発展が遂げられるという意味。

 

  制定時の帝国議会答弁においても、本条前段は、教育の目的を達成するためにどのような方針で進んだらよいかについて形式的な面を謳い、後段は実質的な方針、内容、すなわち、教育を取り扱う者の心構えについて謳っている旨答弁している。

(参考)帝国議会における第2条(教育の方針)に関する主な答弁

◎  第二条(教育の方針)について

【第二条(教育の方針)は意味がよくわからないのではないか。】
○昭和22年3月20日  貴族院・教育基本法案委員会
<辻田政府委員答弁>  第二条は御話の通り、前段と後段と色々と錯綜したりして居るではないかと云ふやうな御考もあるかと思ひますが、前段の方は謂はば教育の目的を達成致しまする為にはどう云ふやうな方針で進んだら宜いかと云ふことに付きましての形式的な面を謳つたのでありまして、次の「この目的を達成するために」とある「この目的」と申しまするのは、教育の目的と云うことでありまするが、是は此の後段の方は謂はば実質的な方針、内容を示したものであるのでございます。で、此の前段の方は特に御説明をする要はないかと思ひまするが、後段に付きましては、是は第一条に掲げてありまする教育の到達すべき目標を達成する為には、教育を取扱ふ者、教育に従ふ者は斯う云ふ風な心構へを以てやらなければならないと云うことを謳つて居るのであります。即ち是は学校の種類、程度、段階等におきまして、それぞれ重点は或いは違うかもしれませぬが、「学問の自由を尊重し、実際生活に即し」、唯学問の自由を尊重するだけで実際生活から全然遊離してしまうというようなことがあっては困りますので、「学問の自由を尊重し、実際生活に即し」というように致しましたが、是も学校の程度に依りまして、大学の場合と小学校の場合とは、それぞれその重点の置き所が違うことは当然であります。「自発的精神を養い」、是は学校の生徒が上から、先生から物を授けられると云うだけでなしに、生徒、児童が自発的に勉強して研究していくという態度、精神を養うという意味であります。「自他の敬愛と協力によって」と申しますのは、先程大臣から御説明がありましたように、是は相互の互に敬愛することと、又力を協せるということに依って、従来の色々欠陥であります所のものを矯正して、そうして立派な日本国としての文化を創造していかなければならぬ訳でありますので、この「自他の敬愛と協力によって」と、従来比較的欠陥となっておりましたようなことに付きまして掲げたのであります。大体以上が第二条の内容でございます。