「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の一部改正を行いました

令和5年3月27日

 文部科学省、厚生労働省及び経済産業省は、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を一部改正し、本日(3月27日)の官報にて告示しましたので、お知らせします。
 

1.趣旨

 人を対象とする生命科学・医学系研究については、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「指針」という。)により、その適正な実施を図ってきたところです。
 今般、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)の一部の規定が令和5年4月1日に施行されることに伴い、また、「生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議」における議論等を踏まえ、本日(令和5年3月27日)、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件」(令和5年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「改正指針」という。)を告示するとともに、同年7月1日から施行することとしました。

2.主な改正点

(1)用語の定義の見直し

 「適切な同意」のうち、個人情報等に関する研究対象者等の同意は、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の本人の同意に係る要求を満たす旨がより明確となるよう、定義の記載を適正化しました。

(2)指針の適用範囲の見直し

 日本の研究機関との共同研究でない研究や日本の研究者等が参加していない日本国外における研究についても、日本国内から日本国外にある研究者等に既存試料・情報を提供する場合は、指針の対象であることを明示しました。

(3)インフォームド・コンセント等の手続の見直し 

 指針で規定されるインフォームド・コンセント(以下「IC」という。)等の手続(試料・情報の取得・利用・提供)について、必要な見直しを行いました。

1 自機関で保有する既存試料・情報を用いて研究を実施する場合(指針第8の1(2))

  • 自らの研究機関において保有している情報から研究者等が新たに仮名加工情報を作成して研究に用いる場合の手続について、必ずしも研究対象者等のICを受けることを要さないものとし、IC又は適切な同意を受けない場合には、オプトアウト(研究対象者等に一定の事項を通知し、又は研究対象者等が容易に知り得る状態におき、かつ、研究対象者等が研究の実施等を拒否できる機会を保障する方法。以下同じ。)による利用が許容されるものとしました。
  • 研究対象者等のICを受けないで匿名加工情報を研究に用いることができる要件として、研究対象者等のIC取得が困難な場合であることが求められていたところ、これを削除しました。
  • 「社会的に重要性の高い研究に当該既存試料・情報が利用される場合」という要件について、平成14年制定時の旧疫学指針(疫学研究に関する倫理指針(平成14年6月17日文部科学省・厚生労働省告示第1号))のICの簡略化又は免除等の要件規定を踏まえて整理し、「当該既存試料を用いなければ研究の実施が困難である場合」に改めました。

2 他の研究機関に既存試料・情報を提供する場合(指針第8の1(3))

  • ICを受ける手続の簡略化に関する規定を削除しました。
  • 既存試料をオプトアウトにより提供しようとする場合の手続について、自らの研究機関において保有している既存試料・情報を研究に用いる場合の手続における試料の取扱いとの整合を図るため、「当該既存試料を用いなければ研究の実施が困難である場合」であることを要件に加えました。
  • 包括的に同意を受けた既存試料・情報を用いて研究を実施しようとする場合において、その後、当該同意を受けた範囲内における研究の内容(提供先等を含む。)が特定されたときは、当該研究の内容に係る研究計画書の作成又は変更を行い、オプトアウトを実施することを条件に、提供を可能とするものとしました。

3 既存試料・情報の提供を受けて研究を実施しようとする場合(指針第8の1(5))

  • ICを受ける手続の簡略化に関する規定を削除しました。

4 外国にある者へ試料・情報を提供する場合の取扱い(指針第8の1(6))

  • ICを受ける手続の簡略化に関する規定について、要配慮個人情報を研究対象者から新たに取得して外国に提供する場合のみを対象とした規定に改めました。

(4)オプトアウト手続の見直し 

 オプトアウトのあり方について、研究機関の長等の責務や説明事項などの必要な見直しを行いました。

1 研究機関の長等の責務(指針第5の2、第8の1(4))

  • 研究対象者等が容易に知り得る状態に置くべき事項の掲載場所に関するルールの策定、HP上での周知等を推進するため、研究機関の長及び既存試料・情報の提供のみを行う機関の長の責務として、オプトアウトの適切な実施を確保すべきである旨を明記しました。 

2 ICを受ける際の説明事項等(指針第7、第8の5)

  • 研究対象者等から同意を受ける時点では特定されなかった研究を行う場合のオプトアウトを行うことが想定される場合、実施される研究又は既存試料・情報の提供先の情報の確認方法(例えば、電子メールや文書による通知、ホームページのURL、電話番号等)を、研究計画書の記載事項及びICを受ける際の説明事項に加えました。

3 研究対象者等に通知し、又は研究対象者等が容易に知り得る状態に置くべき事項(指針第8の6)

  • 研究又は他の研究機関への提供の開始予定日を加えました。

(5)外国の研究機関に提供する場合の通知事項等の見直し(指針第8の1(6)、5、6)  

 外国にある者に対して試料・情報を提供する場合については、ICを受ける手続の簡略化やオプトアウトにより提供する場合であっても、研究対象者等に対して、試料・情報の提供先の国の名称等に関する情報提供を行うこととするとともに、その内容をICを受ける際の説明事項及び研究対象者等に通知し、又は研究対象者等が容易に知り得る状態に置くべき事項に加えました。

3.経過措置

 改正前の指針及びそれ以前の指針(廃止前の疫学研究に関する倫理指針、臨床研究に関する倫理指針、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針又は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針)の規定により実施中の研究については、個人情報保護関連法令及びガイドラインの規定が遵守される場合に限り、なお従前の例によることができます。

4.パブリック・コメント(意見公募手続)の結果

 改正指針の案の概要に関して実施したパブリック・コメント(令和4年11月28日~令和4年12月27日)の結果は、e-Govの「パブリック・コメント(結果公示案件)」に掲載しています。 

5.資料

 指針の本文など、本件に関する一連の資料を以下のホームページに掲載しておりますので、御参照ください。
  
  ホームページ:文部科学省ライフサイエンスの広場 生命倫理・安全に対する取組


 

お問合せ先

研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室
電話:03-5253-4111(内線4108)
 

(研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室)