「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の一部改正について

令和4年3月10日

 文部科学省、厚生労働省及び経済産業省は、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を一部改正し、本日(3月10日)の官報にて告示しましたので、お知らせします。(同時発表:厚生労働省、経済産業省)
 

1.趣旨

 人を対象とする生命科学・医学系研究については、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「指針」という。)により、その適正な実施を図ってきたところです。
 個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(令和2年法律第44号)及びデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)の第50条の施行に伴い、これらの法律の規定による改正後の個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「改正後個情法」という。)の規定を踏まえ、令和3年5月より、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省の3省による「生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議」において、指針の見直しについて検討を行ってきました。今般、令和3年に実施したパブリック・コメントにおける意見や、同合同会議における議論を踏まえ、改正指針を本日(令和4年3月10日)告示しました。本改正指針は、改正後個情法の施行と同日の4月1日から施行します。
 

2.主な改正点

(1)用語の定義の見直し

 生存する個人に関する情報についての用語は、改正後個情法における用語に合わせました。また、死者の情報に関する用語の定義は置かず、死者に係る情報を取り扱う研究について指針を準用する旨の規定を置きました。
 「匿名化」の用語は用いないこととし、匿名化されている情報については、改正後個情法上の該当する各用語を当てました。

(2)指針の適用範囲の見直し

 改正後個情法において仮名加工情報が新設されたこと等に伴い、「個人情報でない仮名加工情報」に相当する情報等についても、指針の対象とすることとしました。

(3)個人情報の管理主体の明示

 個人情報の管理主体は、研究機関の長又は既存試料・情報のみを行う者が所属する機関の長であることを明示しました。

(4)インフォームド・コンセント等の手続の見直し

 改正後個情法における学術例外規定の精緻化により、改正前の指針で規定されるインフォームド・コンセント(以下「IC」という。)等の手続(試料・情報の取得・利用・提供)について、例外要件ごとに規定する必要等が生じたため、見直しを行いました。

1 新たに試料・情報を取得して研究を実施する場合(指針第8の1(1))

  • 侵襲及び介入を行わず、試料を用いない研究については、一定の要件を満たす場合に、IC手続等を適切な形で簡略化することができるものとしました。
  • 改正後個情法第27条の規定も踏まえ、新たに取得した情報(要配慮個人情報を除く。)を共同研究機関に提供する場合のIC手続等については、既存の情報(要配慮個人情報を除く。)を他の研究機関に提供する場合のIC手続等を準用することとしました。

2 自機関で保有する既存試料・情報を用いて研究を実施する場合(指針第8の1(2))

  • IC手続等を行うことなく利用できる既存試料・情報は、既に特定の個人を識別できない状態に管理されている試料(当該試料から個人情報が取得されない場合に限る。)、既存の仮名加工情報、匿名加工情報及び個人関連情報としました。
  • 社会的に重要性の高い研究に既存試料・情報を用いる場合及び試料を用いない場合について、一定の要件を満たした場合には適切な同意又はオプトアウトが許容されることとしました。

3 他の研究機関に既存試料・情報を提供する場合(指針第8の1(3)・(4))

  • 提供される既存試料・情報の種類(試料又は要配慮個人情報を提供する場合か否か)によって場合分けをし、試料及び要配慮個人情報を提供しようとする場合は原則ICを取得することとし、要配慮個人情報以外の情報を提供しようとする場合は原則適切な同意を取得することとしました。
  • IC手続等を行うことなく提供することができる既存試料・情報は、既に特定の個人を識別できない状態に管理されている試料(当該試料から個人情報が取得されない場合に限る。)、個人関連情報(一定の場合に限る。)及び匿名加工情報(IC取得が困難な場合に限る。)としました。
  • 一定の要件を満たす場合にはIC手続等を簡略化できるものとし、簡略化の要件を満たさない場合であっても、改正後個情法第27条第1項に定める例外要件に該当する場合は、オプトアウトによる提供が許容されるものとしました。
  • 改正後個情法の内容も踏まえ、オプトアウトにより既存試料・情報を提供する際に研究対象者等へ通知し、又は研究対象者等が容易に知り得る状態に置くべき事項について見直しました。

4 外国にある者へ試料・情報を提供する場合の取扱い(指針第8の1(6))

  • 外国にある第三者に提供する場合には、引き続き、改正前の指針の規定を維持し、原則として、適切な同意を求めることとしました。
  • 改正後個情法第28条第1項に定める例外要件である改正後個情法第27条第1項各号に該当する場合であっても、原則として(ア)研究対象者等の適切な同意を得た場合、(イ)個人情報保護委員会が定める基準に適合する体制を整備している者に対する提供である場合又は(ウ)我が国と同等の水準国にある者に対する提供である場合に限り提供できるものとしました。
  • 改正後個情法第27条第1項各号に該当する場合であっても(ア)の場合には、改正後個情法第28条第2項と同様、同意取得に当たっては、外国の名称等の情報を研究対象者等に提供する必要があるものとしました。
  • 改正後個情法第27条第1項各号に該当する場合であっても(イ)の場合には、改正後個情法第28条第3項と同様、相当措置の継続的な実施を確保するために必要な措置を講ずるとともに、研究対象者等の求めに応じて当該必要な措置に関する情報を本人に提供する必要があるものとしました。
  • 改正後個情法第27条第1項各号に該当し、(イ)又は(ウ)に該当しない場合で、かつ、同意の取得が困難なときは、倫理審査委員会の意見を聴いた上で、オプトアウトが許容されるものとしました。

5 その他

  • 第三者提供の際の個人関連情報の取扱いについては、改正後個情法上の取扱いに準じた取扱いとしました。また、提供を受けた研究者等は、研究を実施するに当たっては、自機関で保有する既存情報を用いて研究を実施しようとする場合の規定に準じたIC手続等を行うものとしました。

(5)改正前の指針第9章(個人情報等及び匿名加工情報)の見直し

 第9章においては、個人情報等の取扱いについて改正後個情法を遵守し、改正後個情法の対象でない試料及び死者の試料・情報の取扱いについても、個人識別性、死者の尊厳及び遺族等の感情に鑑み、改正後個情法や条例等に準じた措置を講ずるよう努めることとしました。また、改正後個情法では学術研究機関等に対しても法の規律が適用されることに伴い、改正前の指針第18の2、第19、第20及び第21を削除しました。

(6)経過措置

 改正前の指針及びそれ以前の指針(廃止前の疫学研究に関する倫理指針、臨床研究に関する倫理指針、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針又は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針)の規定により実施中の研究については、個人情報保護関連法令及びガイドラインの規定が遵守される場合には、なお従前の例によることができます。

3.パブリック・コメント(意見公募手続)の結果

 改正指針の案の概要に関して実施したパブリック・コメント(令和3年11月8日~令和3年12月7日)の結果は、e-Govの「パブリック・コメント(結果公示案件)」に掲載しています。 

4.資料

 指針の本文など、本件に関する一連の資料を以下のホームページに掲載しておりますので、御参照ください。
  
  ホームページ:文部科学省ライフサイエンスの広場 生命倫理・安全に対する取組


 

お問合せ先

研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室
電話:03-5253-4111(内線4108)
 

(研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室)