「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」及び「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針」の一部改正について

令和3年7月30日

 文部科学省は、「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針(以下「ゲノム編集指針」という。)」及び「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針(以下「ART指針という。)」の一部を改正し、本日(7月30日)付けで告示しましたので、お知らせします。

1.趣旨

 令和元年6月に、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)において、「『ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方』見直し等に係る報告(第二次)~ヒト受精胚へのゲノム編集技術等の利用等について~」がとりまとめられ、ゲノム編集技術等を用いた基礎的研究におけるヒト胚の取扱いの方向性に関する見解として、ヒト胚の人又は動物への胎内移植、疾患関連目的以外の研究(エンハンスメント等)を容認しないことを前提とした上で、以下の研究について容認することが適当とされました。
  1.遺伝性・先天性疾患研究を目的とした余剰胚にゲノム編集技術等を用いる基礎的研究
  2.生殖補助医療研究を目的とした配偶子又は新規作成胚にゲノム編集技術等を用いる基礎的研究
 また、文部科学省及び厚生労働省において、関連指針の改正により、上記1及び2を踏まえた研究の適正な実施の確保を図るとともに、個別の研究計画について適切に容認の可否を判断できる厳格な審査の仕組みを構築することが求められました。
 本見解を踏まえ、文部科学省及び厚生労働省による合同委員会(※)において検討を行い、パブリック・コメントにおける意見の結果等も踏まえ、関連指針の改正を行い、これを令和3年7月30日付けで告示するとともに、同日から適用しております。

 (※)「ヒト受精胚等へのゲノム編集技術等を用いる研究に関する合同会議」
    文部科学省:科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会
              ヒト受精胚へのゲノム編集技術等を用いる研究に関する専門委員会
              生殖補助医療研究専門委員会
    厚生労働省:厚生科学審議会 科学技術部会 ヒト受精胚を用いる生殖補助医療研究等に関する専門委員会
 

2.主な改正内容

(1)ゲノム編集指針の一部改正

  1.研究の要件
   研究の要件として、「遺伝性又は先天性疾患の病態の解明及び治療の方法の開発に資する基礎的研究」を追加した。(第1章第3)
  2.インフォームド・コンセントに係る説明事項
   インフォームド・コンセントに明事項として、遺伝情報の取扱いを明確化するため、「ヒト受精胚について遺伝子の解析が行われる可能性がある場合には、その旨及びその遺伝子の解析が特定の個人を識別するものではないこと」及び「提供を受けたヒト受精胚に関する情報を提供者に開示しないこと」を追加した。(第3章第3)
  3.研究機関の基準
   研究機関の基準として、「遺伝性又は先天性疾患研究を行う場合、当該研究等に関する十分な実績及び技術的能力を有すること」を追加した。(第4章第1の1)
  4.研究責任者等の要件
   研究責任者等の要件として、「遺伝性又は先天性疾患研究を行う場合、当該研究等に関する倫理的な識見、十分な専門的知識及び経験を有すること」を追加した。(第4章第1の3)
  5.倫理審査委員会の要件
   遺伝性又は先天性疾患研究に関する審査を行う場合の倫理審査委員会の要件として、「遺伝医学の専門家に意見を求めること」を追加した。(第4章第1の4及び第2の3)
  6.ヒトES細胞の取扱いの要件
   研究の要件(第1章第3)の範囲内で研究に用いたヒト受精胚からヒトES細胞を作成し、使用する場合の要件として、その際に適用すべき規定を追加した。(第6章)
  7.「ART指針」との整合化等
   上記の項目に加え、「ART指針」との整合性や現行指針における規定の明確化を図るなど、所要の改正を行った。

(2)ART指針の一部改正

  1.目的
   指針の目的である「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療の向上に資する基礎的研究」について、「遺伝情報改変技術等を用いるものを含む」の旨を追加した。(第1章第1)
  2.インフォームド・コンセントに係る説明事項
   インフォームド・コンセントに係る説明事項として、遺伝情報の取扱いを明確化するため、「配偶子から作成したヒト受精胚について遺伝子の解析が行われる可能性がある場合には、その旨及びその遺伝子の解析が特定の個人を識別するものではないこと」及び「提供を受けた配偶子から作成したヒト受精胚に関する情報を提供者に開示しないこと」を追加した。(第2章第2の2)
  3.研究機関の基準
   研究機関の基準として、「遺伝情報改変技術等を用いる研究の場合、当該研究等に関する十分な実績及び技術的能力を有すること」、「提供者の個人情報及び遺伝情報の保護のための十分な措置が講じられていること」を追加した。(第4章第1の1)
  4.研究責任者等の要件
   研究責任者等の要件として、「遺伝情報改変技術等を用いる研究の場合、当該研究等に関する倫理的な識見、十分な専門的知識及び経験を有すること」を追加した。(第4章第1の3)
  5.倫理審査委員会の要件
   遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する審査を行う場合の倫理審査委員会の構成要件として、「遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する専門家」を追加した。また、「適切に審査を行うことができる場合は、自機関以外の機関に設置された倫理審査委員会への審査を依頼することを可能とする」の旨を追加した。(第4章第1の4及び第2の3)
  6.「ゲノム編集指針」との整合化等
   上記の項目に加え、「ゲノム編集指針」との整合性や現行指針における規定の明確化を図るなど、所要の改正を行った。

3.パブリック・コメント(意見公募手続)の結果

 ゲノム編集指針とART指針の一部改正案に関して実施したパブリック・コメント(令和2年11月5日~12月11日)の結果は、e-Govの「パブリック・コメント(結果公示案件)」に掲載しています。

4.資料

ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針の一部を改正する件(令和3年文部科学省・厚生労働省告示第4号)(令和3年9月28日に一部訂正して掲載)(PDF:136KB)
 ※令和3年9月22日の官報(第580号)に掲載した正誤の内容(PDF:57KB)を反映しております。
ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針の一部を改正する件(令和3年文部科学省・厚生労働省告示第3号)(PDF:214KB)
「ゲノム編集指針」及び「ART指針」の改正について(PDF:169KB)

お問合せ先

研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室
電話:03-5253-4111(内線4379)

(研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室)