「一家に1枚 日本列島7億年」ポスターの刊行について

平成31年4月9日

このたび、科学技術の理解増進施策の一環として、「一家に1枚 日本列島7億年」ポスターを刊行いたしました。
今後、平成31年度(第60回)科学技術週間(平成31年4月15日(月曜日)~21日(日曜日))における配布等を通じ、広く普及を図りたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
同ポスターについては、全国の小・中・高等学校等に送付するとともに、科学技術週間中に御協力いただける全国の科学館、博物館等を通じて広く配布を行う予定です。
なお、科学技術週間ウェブサイトでは、ダウンロード用の画像を公開しておりますので、御参照いただければ幸いです。
科学技術週間Webサイト(※科学技術週間Webサイトへリンク)


【経緯】 

国立大学附置研究所・研究センター、国立研究開発法人、大学共同利用機関法人等から御提案いただいた「一家に1枚」ポスターに係る企画について、全国の科学館来館者の投票、及び科学技術週間の取組等に関する検討会一家に1枚ポスター制作ワーキンググループにおける審議結果を踏まえて検討し、今年度は、日本地質学会に企画いただいたテーマに決定いたしました。

○科学技術週間の取組等に関する検討会
 一家に1枚ポスター制作ワーキンググループ 構成員(五十音順・敬称略)
 大草 芳江    NPO法人natural science 理事
 塚田 有那    「Bound Baw」編集長(大阪芸術大学アートサイエンス学科メディア)編集者、キュレーター
 濱 亜沙子    国立研究開発法人科学技術振興機構日本科学未来館事業部プログラム企画開発課プログラム推進・普及展開担当
 林 潤一郎    独立行政法人国立科学博物館事業推進部広報・運営戦略課長


また、制作に当たっては、下記の方々及び各機関に御協力いただきました。

<企画>
 一般社団法人 日本地質学会
<監修・アートディレクター>
 辻森樹(東北大学)、磯﨑行雄(東京大学)
<制作協力・写真提供>
 東北大学地学ゼミナール、東北大学総合学術博物館、東北大学東北アジア研究センター、東北大学大学院理学研究科地学専攻
<後援>
 公益社団法人 日本地球惑星科学連合、一般社団法人 日本鉱物科学会、日本古生物学会、NPO法人 地学オリンピック日本委員会
<編集・デザイン・イラスト>
 株式会社ミュール、前田和則、吉武昭雄、野田尚志、カサネ・治

【解説】「日本列島7億年」 

  • 日本列島に分布する多様な岩石や地層についての研究から、日本列島の約7億年間のダイナミックな変動の歴史が明らかにされてきました。
  • 表層に分布する岩石・地層・火山などの配列と区分を示した図、また日本列島産の岩石・地層の多様性を理解するため、日本国内の岩石の写真、図やコラムの合間には国産の美しい岩石・鉱物・化石の写真を配置しています。
  • プレート沈み込み帯である日本列島の地学現象についての基礎知識の習得は、とても大切なことです。身近な「石」を手に取ることで、私たちが経験できない長大な時間スケールの変動を意識してみて下さい。

 日本列島は豊かな自然と美しい風土に恵まれる一方で、火山噴火・地震などの自然災害を被っています。これは日本列島周辺がプレート沈み込み帯と呼ばれる地殻変動が活発な場であることと密接に関係しています。地殻変動の歴史は地質に刻まれており、岩石や地層を理解することで日本列島の約7億年の成り立ちを知ることができます。

 日本列島に分布する多様な岩石や地層についての研究から、日本列島の約7億年間のダイナミックな変動の歴史が明らかにされてきました。「一家に1枚 日本列島7億年」ポスターの中央には、表層に分布する岩石・地層・火山などの配列と区分を示した図があるので、日本列島の地質の複雑さと、周辺のプレート境界の位置を読みとってください。日本列島は複数のプレート沈み込み境界に位置しています。海洋側の太平洋プレートとフィリピン海プレートが、大陸側のプレート (北米プレートとユーラシアプレート)の下に沈み込んでいます。房総沖と富士山の下には3つのプレートが交差する場所があり、世界でも最も複雑な構造を持っています。プレート沈み込みで発生したマグマからできた火成岩(安山岩や花こう岩など)、過去の付加体(海洋プレート層序を構成する堆積岩など)、沈み込み帯深部や地殻の中でできた変成岩、さらにくさび状マントル岩(かんらん岩など)が変成した蛇紋岩など、多種多様な岩石や地層が日本列島の地殻を作っています。

 日本列島は、約7億年前(後期原生代)に超大陸ロディニアが分裂した時に生まれました。その時の岩石は日本には残っていませんが、約7億年前の超大陸分裂の証拠は東アジアで分かっています。日本が誕生した約7億年前を含む4つの主要な出来事、すなわち、(1)超大陸ロディニア分裂:日本・太平洋同時誕生、(2)沈み込み開始:大陸地殻成長開始、(3)アジアの中へ参加:南中国・北中国衝突、そして(4)日本列島として独立:日本海の形成、のそれぞれの時期をポスター上側の地質年表に示し、4コマのイラストとして描きました。また、はるか遠い未来、太平洋が消滅する約2億5000万年後までの間に日本列島がどのように変わっていくと予想されるのかについて、未来の2コマ((5)地殻成長終了:豪州アジアへ衝突と(6)北米衝突・大山脈化:太平洋の消滅)も加えました。ポスター下端には46億年の地球史年表を示し、その中で地球史の主要な出来事と地球の外観の変化、さらに日本列島7億年史の位置が描かれています。日本列島7億年+未来の地質年代表の背景には日本国内の美しい地質や岩石・鉱物・化石などの写真を配置しました。

 超大陸が分裂し、南中国大陸塊と北米大陸塊との間に太平洋が生まれました。原日本は、最初の2億年間、南中国塊のへりの(沈み込みのない)受動的大陸縁をなしていました。ところが、約5億年前から沈み込みが始まり、今のような太平洋型大陸縁となりました。それ以降は、プレート沈み込み帯でできるユニークな岩石や地層が断続的に日本列島に分布するようになりました。地学の諸現象に代表される自然の空間や時間スケールの多くは、我々の日常の時間とあまりにもかけ離れているため、5億年前といわれても、戸惑いが大きいと思います。このポスターでは地学現象の空間(大きさ)・時間の理解のため、数値が桁で変わる対数目盛りの座標のなかに、身近な事象と一緒に地学の諸現象を示し、過去の日本でもさまざまなスケールの出来事が起きて来たことを示しました。

 私達の美しい郷土にはプレート沈み込み帯を特徴付ける岩石や地層があります。ポスターの左側には日本列島の岩石・地層の多様性を理解するため、厳選した25種類の教科書的な岩石の写真を配列しました。それぞれの岩石は、『プレート沈み込み帯』、『付加体と「海洋プレート層序」』や『日本列島を構成する「石」』のコラム記事と関連しています。さらに、知的好奇心を呼び起すため、図やコラムの合間には国産の美しい岩石・鉱物・化石の13枚の写真を配置しました。

 大規模なプレートの水平移動は、地球表層と固体地球内部の物質循環を大きく支配しています。プレート沈み込みは、日本の美しく、また豊かな自然環境を提供する一方で、火山や地震などの自然災害の要因です。私たち日本人の多くは都市という人口密集域に住んでいます。私達にとって、プレート沈み込み帯である日本列島の地学現象についての基礎知識の習得は、とても大切なことです。身近な「石」を手に取ることで、私たちが経験できない長大な時間スケールの変動を意識してみて下さい。きっと知的な好奇心と探究心が大いに育まれると期待します。

 最後になりましたが、本ポスター制作にあたり、御協力いただきました多くの皆様に改めてお礼申し上げます。

辻森 樹(東北大学)
磯﨑行雄(東京大学)

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