解説「一家に1枚 光マップ」

理化学研究所 河田 聡

[概要]

 光は、自然界にいつも存在していて、あらゆる植物や生物、人類の生命と営みを支えています。太陽からの光は、地球上に温度をもたらし、植物の光合成のエネルギーとなります。蛍光灯やランプは私たちの生活を明るく照らします。レーザーは材料を加工したり、手術や治療をします。ラジオやテレビや携帯電話の信号を送る電波、電子レンジで使われるマイクロ波、電気ごたつや電熱線で加熱に用いる赤外線、日焼けや殺菌作用がある紫外線、レントゲン写真に用いるX線や、原子崩壊のときに発生するγ線などすべて、光のなかまです。
 この光マップは、光が自然界や私たちの生活の中でどのように創られ、どのように使われているかをまとめたものです。ポスター中央に、光の波長(スケール)スケールが左右に延びており、左から波長の長い順に、電波、遠赤外光、中赤外光、近赤外光、可視光、紫外光、軟X線、X線、γ線と区分けして光のマップがあります。中央に位置する可視光は、われわれ人間が目で見える光で、それ以外の光は目には見えません。可視光の領域だけ背景が着色されていますが、光の波長と実際に我々の目が感じる色と対応した色です。それ以外の光も、大まかな波長域で視覚的に分かりやすいよう区切ってあります。実際はおおよそそのあたりの波長で性質が変わりますが、光の境界(例えば電波と遠赤外光の境)がはっきり存在するわけではありません。スケールバー内に、それぞれの光が、どんな波長と振動数に対応し、どんな性質を持つかについて記しました。そしてスケールの上段には、特定の波長の光で利用される技術や光源を示しました。スケールの下段には、それぞれの波長域で見られる自然現象や光科学、光技術を示しました。
 さらにマップの上には、光がどのようにして生まれるのか、光と電子の関係について紹介し、光に関するノーベル賞のリストを紹介しました。マップの下には、すべての光が持つ共通の性質を身近な例や最新の光科学ともに紹介し、我々の目に見える色の見え方についての説明も加えました。
 このマップをご覧になれば、様々な種類の光の共通点と、波長(振動数)による性質の違いとを、同時に理解いただけると思います。

[制作までのいきさつ]

 「一家に1枚光マップ」は、「一家に1枚」シリーズの第4弾です。
 “光”と一言でいっても、直感的に思い浮かぶいわゆる可視光(目に見える光)の他にも、赤外、紫外、さらには電波やX線、γ線も光の一種で、発生原理から性質、応用まで全く異なります。また、遠くは宇宙の果て何万光年を調べる手がかりから、ナノテクノロジーや分子・原子を一つ一つ捉え操作する技術までありとあらゆる応用があります。これらを“光”という共通点のもと一つのマップにまとめなければなりません。何度も検討を重ねた結果、11月末に、A3サイズの用紙を横長に2枚連ねた変則的な用紙サイズを決定し、その用紙を左右に光の波長のスケールが延びた原案に至りました。河田聡(理化学研究所主任研究員/大阪大学教授)の監修のもと、藤田克昌(大阪大学准教授)と庄司暁(大阪大学助教)が原案作成からコンテンツ、コラムの内容までほとんどすべての企画を手がけ、河田芹菜、株式会社アドスリー、株式会社モフの協力でデザインを作成し、年末から3月にかけてコンテンツのブラッシュアップを徹底的に行い、3月末のぎりぎりにようやく完成いたしました。
 紙面の都合上、ポスターに入りきらなかった情報は膨大な量ですが、それぞれの波長域の光が自然界や私たちの生活の中でどのように作られ、どのように使われているのかが分かりやすく外観できることをまず重視しました。分光技術など広い波長域を同時に用いる技術や、波長を限定できない光技術も数多くあり、マップを整理する際に非常に苦心しました。やむを得ずこの光マップから省略したものは非常に多くあります。ご興味の方はほかにどんな性質や応用があるか調べてみられるのも面白いかと思います。
 最後に、文部科学省関係者の方々、マップ作製に携わったすべての方々、画像を提供していただいた方々に厚く御礼申し上げます。

科学技術週間のURL:http://stw.mext.go.jp/

[光マップの内容に関するお問い合わせ先]

〒351-0198 埼玉県和光市広沢2-1
理化学研究所 河田ナノフォトニクス研究室
電話:048-467-9338
Fax:048-467-9170
E-mail:kawata@riken.jp

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1
大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻 河田研究室
電話:06-6879-7845
Fax:06-6879-7330
E-mail:kawata@skawata.com