学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の公布について(通知)

3文科教第1485号
令和4年3月31日



各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事               殿
附属学校を置く各国公立大学法人の長
構造改革特別区域法第12 条第1項の
認定を受けた各地方公共団体の長殿

文部科学省総合教育政策局長

藤原 章夫

 

学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の公布について(通知)

 

 このたび、別添1のとおり「学校教育法施行規則の一部を改正する省令(令和4年文部科学省令第15号)」、別添2のとおり「学校教育法施行規則第百四十条の規定による特別の教育課程について定める件及び学校教育法施行規則第五十六条の二等の規定による特別の教育課程について定める件の一部を改正する告示(令和4年文部科学省告示第54号)」及び別添3のとおり「高等学校学習指導要領及び特別支援学校高等部学習指導要領の一部を改正する告示(令和4年文部科学省告示第55号)」が令和4年3月31日に公布され、令和5年4月1日から施行されることとなりました。

 これら省令及び告示の改正の趣旨、概要及び留意事項については、下記のとおりですので、十分に御了知の上、その運用に当たっては遺漏のないよう御対応願います。

 また、各都道府県教育委員会教育長におかれては所管の高等学校等(高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部をいう。以下この文において同じ。)及び高等学校等を設置する域内の市区町村教育委員会(指定都市教育委員会を除く。)に対し、各指定都市教育委員会教育長におかれては所管の高等学校等に対し、各都道府県知事におかれては所轄の高等学校等及び学校法人に対し、附属学校を置く各国公立大学法人の長におかれては附属の高等学校等に対し、構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては所轄の高等学校等及び学校設置会社に対し、本通知の趣旨について十分御周知くださるようお願いします。

 

 

第1 改正の趣旨

 今回の省令及び告示の改正については、令和3年1月の中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」及び令和3年9月の高等学校における日本語指導の在り方に関する検討会議報告「高等学校における日本語指導の制度化及び充実方策について(報告)」の提言を踏まえ、現在、小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の小学部及び中学部において実施されている、特別の教育課程を編成して行う日本語指導を、高等学校等においても実施できるよう、所要の規定を整備するものである。

 

第2 改正の概要

 1 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号。以下「規則」という。)の一部改正

(1)  高等学校、中等教育学校の後期課程又は特別支援学校の高等部において、日本語に通じない生徒のうち、当該生徒の日本語を理解し、使用する能力に応じた特別の指導(以下「日本語の能力に応じた特別の指導」という。)を行う必要があるものを教育する場合には、文部科学大臣が別に定めるところにより、規則第83条又は第84条の規定にかかわらず、特別の教育課程によることができること。(第86条の2、第108条、第132条の3関係)

 

(2)  第86条の2の規定により特別の教育課程による場合においては、校長は、生徒が、設置者の定めるところにより他の高等学校、中等教育学校の後期課程又は特別支援学校の高等部において受けた授業を、当該生徒の在学する高等学校、中等教育学校の後期課程又は特別支援学校の高等部において受けた当該特別の教育課程に係る授業とみなすことができること。(第86条の3、第108条、第132条の4関係)

 

 2 学校教育法施行規則第百四十条の規定による特別の教育課程について定める件(平成5年文部省告示第7号。以下「平成5年告示」という。)の一部改正

   高等学校又は中等教育学校の後期課程において平成5年告示に定める障害に応じた特別の指導に加え、日本語の能力に応じた特別の指導を行うときは、2種類の指導に係る修得単位数の合計が21単位を超えないものとすること。(3関係)

 

 3 学校教育法施行規則第五十六条の二等の規定による特別の教育課程について定める件(平成26年文部科学省告示第1号)の一部改正

(1) 高等学校、中等教育学校の後期課程又は特別支援学校の高等部等において、上記1(1)に該当する生徒に対し、規則第86条の2(第108条第2項において読み替えて準用する場合を含む。)又は第132条の3の規定による特別の教育課程を編成するに当たっては、日本語の能力に応じた特別の指導を、その教育課程に加え、又はその一部に替えることができることとすること。ただし、次の各号に掲げる学校においては、日本語の能力に応じた特別の指導を、それぞれ当該各号に掲げるものに替えることはできないものとすること。(本文)

1. 高等学校及び中等教育学校の後期課程においては、高等学校学習指導要領(平成30年文部科学省告示第68号。以下、単に「高等学校学習指導要領」という。)第一章第二款の3(2)のアに規定する必履修教科・科目及び総合的な探究の時間、同款の3(2)のイに規定する普通科以外の普通教育を主とする学科において全ての生徒に履修させる学校設定教科に関する科目、同款の3(2)のウに規定する専門学科において全ての生徒に履修させる専門教科・科目、同款の3(2)のエに規定する総合学科における「産業社会と人間」並びに同款の3(3)のエ、オ及びカ並びに同款の5(7)の規定により行う特別活動

2. 特別支援学校の高等部(知的障害者である生徒に対する教育を行うものを除く。)においては、特別支援学校高等部学習指導要領(平成31年文部科学省告示第14号。以下、単に「特別支援学校高等部学習指導要領」という。)第一章第二節第二款の3(1)のイ(ア)に規定する必履修教科・科目及び総合的な探究の時間、同款の3(1)のイ(イ)に規定する専門学科において全ての生徒に履修させる専門教科・科目並びに同款の3(1)のウ(ウ)及び(エ)の規定により行う特別活動

3. 特別支援学校の高等部(知的障害者である生徒に対する教育を行うものに限る。)においては、特別支援学校高等部学習指導要領第一章第二節第二款の3(2)のア(イ)㋐に規定する全ての生徒に履修させる各教科、道徳科、総合的な探究の時間及び自立活動の全部、同款の3(2)のア(ウ)に規定する専門学科において一以上履修させる専門教科の全部並びに同款の3(2)のイ(エ)及び(オ)の規定により行う特別活動

(2) 高等学校、中等教育学校の後期課程又は特別支援学校の高等部(知的障害者である生徒に対する教育を行うものを除く。)において、日本語の能力に応じた特別の指導に係る単位を修得したときは、21単位を超えない範囲で当該高等学校、中等教育学校又は特別支援学校が定めた全課程の修了を認めるに必要な単位数のうちに加えることができるものとすること。

また、高等学校又は中等教育学校の後期課程において日本語の能力に応じた特別の指導に加え、平成5年告示に定める障害に応じた特別の指導を行う場合は、2種類の指導に係る修得単位数の合計が21単位を超えない範囲で、当該高等学校又は中等教育学校が定めた全課程の修了を認めるに必要な単位数のうちに加えることができるものとすること。(3関係)

(3) 特別支援学校の高等部(知的障害者である生徒に対する教育を行うものに限る。)における日本語の能力に応じた特別の指導に係る授業時数について、894単位時間を超えない範囲で当該特別支援学校が定めた全課程の修了を認めるに必要な授業時数のうちに加えることができるものとすること。ただし、この場合においても、専門学科においては、全ての生徒に履修させる専門教科の授業時数が875単位時間を下回らないものとすること。(4関係)

 

 4 高等学校学習指導要領の一部改正

日本語の修得に困難のある生徒に対して、規則第86条の2の規定に基づき、特別の教育課程を編成し、日本語の能力に応じた特別の指導を行う場合には、教師間の連携に努め、指導についての計画を個別に作成することなどにより、効果的な指導に努めるものとすること。

なお、日本語の能力に応じた特別の指導の単位の修得の認定については、次のとおりとすること。(第1章第5款2(2)のウ関係)

1. 学校においては、生徒が学校の定める個別の指導計画に従って日本語の能力に応じた特別の指導を履修し、その成果が個別に設定された指導目標からみて満足できると認められる場合には、当該学校の単位を修得したことを認定しなければならないこと。

2. 学校においては、生徒が日本語の能力に応じた特別の指導を2以上の年次にわたって履修したときは、各年次ごとに当該学校の単位を修得したことを認定することを原則とすること。ただし、年度途中から通級による日本語指導を開始するなど、特定の年度における授業時数が、1単位として計算する標準の単位時間に満たない場合は、次年度以降に日本語の能力に応じた特別の指導の時間を設定し、2以上の年次にわたる授業時数を合算して単位の修得の認定を行うことができること。また、単位の修得の認定を学期の区分ごとに行うことができること。

 

5 特別支援学校高等部学習指導要領の一部改正

    日本語の修得に困難のある生徒に対して、規則第132条の3の規定に基づき、特別の教育課程を編成し、日本語の能力に応じた特別の指導を行う場合には、教師間の連携に努め、指導についての計画を個別に作成することなどにより、効果的な指導に努めるものとすること。

    なお、視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者又は病弱者である生徒に対する教育を行う特別支援学校においては、日本語の能力に応じた特別の指導における単位の修得の認定については、次のとおりとすること。(第1章第5款2(3)関係)

1. 学校においては、生徒が学校の定める個別の指導計画に従って日本語の能力に応じた特別の指導を履修し、その成果が個別に設定された指導目標からみて満足できると認められる場合には、当該学校の単位を修得したことを認定しなければならないこと。

2. 学校においては、生徒が日本語の能力に応じた特別の指導を2以上の年次にわたって履修したときは、各年次ごとに当該学校の単位を修得したことを認定することを原則とすること。ただし、年度途中から日本語の能力に応じた特別の指導を開始するなど、特定の年度における授業時数が、1単位として計算する標準の単位時間に満たない場合は、次年度以降に日本語の能力に応じた特別の指導の時間を設定し、2以上の年次にわたる授業時数を合算して単位の修得の認定を行うことができること。また、単位の修得の認定を学期の区分ごとに行うことができること。

 

第3 留意事項

 1 指導の内容等について

(1)  日本語の能力に応じた特別の指導には、当該指導の対象となる生徒の日本語の能力を高める指導のみならず、当該生徒が各教科等の指導に主体的に参画することができることを目的とする指導も含むものとすること。

(2)  日本語の能力に応じた特別の指導の週当たりの授業時数については、当該生徒の状況等を十分考慮し、過度な負担とならないよう配慮すること。なお、生徒の日本語の能力等の実態を踏まえ、高等学校等入学直後における集中的な指導や週当たりの授業時数の段階的な設定等、弾力的な運用にも留意すること。

(3)  指導要録の記載に関しては、高等学校生徒指導要録(参考様式)及び[視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者又は病弱者である生徒に対する教育を行う特別支援学校]高等部生徒指導要録(参考様式)の様式1(学籍に関する記録)裏面の「各教科・科目等の修得単位数の記録」及び様式2(指導に関する記録)の「各教科・科目等の学習の記録」の「総合的な探究の時間」の欄の次に「日本語指導」の欄を設けて修得単位数の計を記載すること。また、高等学校及び特別支援学校高等部指導要録(参考様式)の様式2(指導に関する記録)の「総合所見及び指導上参考となる諸事項」の欄に、日本語の能力に応じた特別の指導を受けた学校名、授業時数及び指導期間、指導の内容や結果等を記載すること。なお、他の学校において日本語の能力に応じた特別の指導を受けた場合には、当該学校からの通知に基づき記載すること。

 

 2 対象となる生徒について

(1)  日本語の能力に応じた特別の指導の対象となる生徒については、その国籍を問わず、海外に一定期間在留した後に来日又は帰国した生徒や、日本国内で生まれ育ったが家庭内で日本語以外の言語を使用する生活歴のある生徒等のうち、学校生活を送るとともに各教科等の学習活動に取り組むための日本語の能力が十分でないものを指すものとすること。

(2)  日本語の能力に応じた特別の指導の対象とすることが適当な生徒の判断については、学校長の責任の下で行うこととする。その際、日本語の能力に応じた特別の指導を担当する教師を始めとする複数人により、生徒の日本語の能力等の実態を多面的な観点から把握・評価した結果を参考とすることが望ましいこと。

 

 3 実施形態について

(1)  日本語の能力に応じた特別の指導の実施については、1.生徒が在学する学校において指導を受ける、2.他の学校に週に何単位時間か定期的に通学し、指導を受ける、3.日本語の指導を担当する教師が該当する生徒が在学する学校に赴き、又は複数の学校を巡回して指導を行う、という形態が考えられる。実施に当たっては、対象となる生徒の人数と指導の教育的効果との関係性、生徒や保護者にとっての心理的な抵抗感・通学の負担・学校との相談の利便性、日本語の指導の担当教師と各教科等の担任教師との連絡調整・連携の利便性等を総合的に勘案し、各学校や地域の実情を踏まえて効果的な形態を選択すること。

(2)  他の学校において指導を行う場合の取り扱いについては、当該指導を受ける生徒が在学する学校の設置者が適切に定めることとし、当該定めに従って実施すること。その際、当該指導を受ける生徒の特別の教育課程については、その在学する学校が責任をもって編成すること。

(3)  他の学校に在学する生徒を受け入れる学校にあっては、当該生徒を自校の生徒と同様に責任をもって指導するとともに、日本語の能力に応じた特別の指導の記録を作成し、当該生徒の氏名、在学している学校名、授業時数及び指導期間、指導の内容等を記載し、適正に管理すること。また、当該生徒が在学する学校に対して、当該記録の写しを通知すること。

(4)  日本語の能力に応じた特別の指導を受ける生徒が在学する学校の設置者は、当該生徒が他の学校において指導を受ける場合には、当該生徒の教育について、あらかじめ、日本語の能力に応じた特別の指導を行う学校の設置者と十分に協議を行うこと。

(5)  特別支援学校の高等部に在学する生徒に対して日本語の能力に応じた特別の指導を実施する場合についても、(1)と同様の実施形態が考えられる。なお、当該生徒に対し、他の学校において日本語の能力に応じた特別の指導を実施する場合は、次に掲げる事項について留意すること。

1. 日本語の能力に応じた特別の指導を行う学校において、障害のある生徒を指導するための体制や施設設備が十分に整備されていること。

2. 障害のある生徒が、在学する学校又は自宅等から日本語の能力に応じた特別の指導を行う学校に通学するに当たっては、その距離や時間、生徒の障害の状態等を勘案し、教職員や保護者等との相互の連携・協力の下、安全面に十分配慮すること。

 

 4 担当する教師等について

(1) 日本語の能力に応じた特別の指導を担当する教師は、高等学校教諭免許状を有する必要があり、加えて、日本語の指導に関する知識や経験を有する教師であることが望ましいが、特定の教科の免許状を保有している必要はないこと。

(2) 日本語の能力に応じた特別の指導を担当する教師は、日本語の能力等を始めとした生徒の実態の把握や指導計画の作成、日本語の指導及び学習の評価を行うものとする。また、日本語の能力に応じた特別の指導を担当する教師は、指導を受ける生徒の在籍学級の担任教師との間で定期的な情報交換を行ったり、助言を行ったりするなど、両者の連携協力が図られるよう十分に配慮すること。

(3) 教師が、本務となる学校以外の学校において日本語の能力に応じた特別の指導を実施する場合には、任命権者が、兼務発令や非常勤講師の任命等により、当該教師の身分取扱いを明確にすること。

(4) 学校・地域等の実情に応じて、日本語の指導に関する専門的な知識を有する者や外国語に通じる者を配置し、日本語の能力に応じた特別の指導の補助や母語による支援等を行うものとすること。

 

 5 個別の指導計画の作成・引継ぎ等について

(1) 日本語の能力に応じた特別の指導の対象となる生徒が在学する学校において   個別の指導計画を作成するに当たっては、対象となる生徒の日本語の能力や生活・学習の状況、学習への姿勢・態度等の多面的な把握に基づき、指導の目標及び指導内容を明確にすること。また、生徒の日本語の習得状況を踏まえ、定期的に見直すことが望ましいこと。

 なお、指導計画の様式は学校・各地域の実情等に応じて定めるものとすること。

(2) 中学校等においても日本語の能力に応じた特別の指導の対象であった生徒については、その指導内容に係る中学校等からの引継ぎや情報提供のための仕組み作りが必要であること。このため、中学校等を設置する市区町村教育委員会等においては、高等学校等を設置する都道府県教育委員会等とも連携しながら、当該生徒の中学校等における個別の指導計画の作成や高等学校等への引継ぎを促進するなどの体制構築に努めること。なお、保護者の同意を事前に得るなど、個人情報の取扱いには十分に留意すること。

 

6 その他

(1) 日本語の能力に応じた特別の指導の対象となる生徒が在学する高等学校等においては、日本語の指導を始めとするきめ細かな指導を実施できるよう、組織的な指導体制作りに努めること。その際に、学校・地域の実情に応じて、国際交流協会やNPO等の関係機関と連携を図ること。

(2) 各教科等の授業においても、当該生徒の日本語の理解促進を意識した指導を行うことが重要であることを全ての教師が理解し、学校全体での指導力の向上に努めること。

(3) 高等学校等を設置する都道府県教育委員会等は、市区町村教育委員会等と連携しつつ、外国人生徒・保護者を対象とした高等学校進学ガイダンスの実施や公立高等学校入学者選抜における外国人生徒・帰国生徒等に対する取組の実施などに努めること。また、首長部局(多文化共生部局、福祉部局等)や国際交流協会、NPO等の関係機関と連携し、高等学校における指導体制構築を支援すること。
 

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

 電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2035)

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