小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)

30文科初第1845号

平成31年3月29日

各都道府県教育委員会教育長殿
各指定都市教育委員会教育長殿
各都道府県知事殿
附属学校を置く各国公立大学長殿
小中高等学校を設置する学校設置会社
を所轄する構造改革特別区域法第12条
第1項の認定を受けた各地方公共団体の長殿

文部科学省初等中等教育局長
                           永山 賀久

小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)

 この度,中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会において,「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(平成31年1月21日)(以下「報告」という。)がとりまとめられました。
 報告においては,新学習指導要領の下での学習評価の重要性を踏まえた上で,その基本的な考え方や具体的な改善の方向性についてまとめられています。
 文部科学省においては,報告を受け,新学習指導要領の下での学習評価が適切に行われるとともに,各設置者による指導要録の様式の決定や各学校における指導要録の作成の参考となるよう,学習評価を行うに当たっての配慮事項,指導要録に記載する事項及び各学校における指導要録作成に当たっての配慮事項等を別紙1~5及び参考様式のとおりとりまとめました。
 ついては,下記に示す学習評価を行うに当たっての配慮事項及び指導要録に記載する事項の見直しの要点並びに別紙について十分に御了知の上,各都道府県教育委員会におかれては,所管の学校及び域内の市区町村教育委員会に対し,各指定都市教育委員会におかれては,所管の学校に対し,各都道府県知事及び小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長におかれては,所轄の学校及び学校法人等に対し,附属学校を置く各国公立大学長におかれては,その管下の学校に対し,新学習指導要領の下で,報告の趣旨を踏まえた学習指導及び学習評価並びに指導要録の様式の設定等が適切に行われるよう,これらの十分な周知及び必要な指導等をお願いします。さらに,幼稚園,特別支援学校幼稚部,保育所及び幼保連携型認定こども園(以下「幼稚園等」という。)と小学校(義務教育学校の前期課程を含む。以下同じ。)及び特別支援学校小学部との緊密な連携を図る観点から,幼稚園等においてもこの通知の趣旨の理解が図られるようお願いします。
 なお,平成22年5月11日付け22文科初第1号「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」のうち,小学校及び特別支援学校小学部に関する部分は2020年3月31日をもって,中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。以下同じ。)及び特別支援学校中学部に関する部分は2021年3月31日をもって廃止することとし,また高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。以下同じ。)及び特別支援学校高等部に関する部分は2022年4月1日以降に高等学校及び特別支援学校高等部に入学する生徒(編入学による場合を除く。)について順次廃止することとします。
 なお,本通知に記載するところのほか,小学校,中学校及び特別支援学校小学部・中学部における特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)の学習評価等については,引き続き平成28年7月29日付け28文科初第604号「学習指導要領の一部改正に伴う小学校,中学校及び特別支援学校小学部・中学部における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」によるところとし,特別支援学校(知的障害)高等部における道徳科の学習評価等については,同通知に準ずるものとします。

 

 

1.学習評価についての基本的な考え方

(1)カリキュラム・マネジメントの一環としての指導と評価
 「学習指導」と「学習評価」は学校の教育活動の根幹であり,教育課程に基づいて組織的かつ計画的に教育活動の質の向上を図る「カリキュラム・マネジメント」の中核的な役割を担っていること。
(2)主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善と評価
 指導と評価の一体化の観点から,新学習指導要領で重視している「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を通して各教科等における資質・能力を確実に育成する上で,学習評価は重要な役割を担っていること。
(3)学習評価について指摘されている課題
 学習評価の現状としては,(1)及び(2)で述べたような教育課程の改善や授業改善の一連の過程に学習評価を適切に位置付けた学校運営の取組がなされる一方で,例えば,学校や教師の状況によっては,
・ 学期末や学年末などの事後での評価に終始してしまうことが多く,評価の結果が児童生徒の具体的な学習改善につながっていない,
・ 現行の「関心・意欲・態度」の観点について,挙手の回数や毎時間ノートをとっているかなど,性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭しきれていない,
・ 教師によって評価の方針が異なり,学習改善につなげにくい,
・ 教師が評価のための「記録」に労力を割かれて,指導に注力できない,
・ 相当な労力をかけて記述した指導要録が,次の学年や学校段階において十分に活用されていない,
 といった課題が指摘されていること。
(4)学習評価の改善の基本的な方向性
 (3)で述べた課題に応えるとともに,学校における働き方改革が喫緊の課題となっていることも踏まえ,次の基本的な考え方に立って,学習評価を真に意味のあるものとすることが重要であること。
【1】 児童生徒の学習改善につながるものにしていくこと
【2】 教師の指導改善につながるものにしていくこと
【3】 これまで慣行として行われてきたことでも,必要性・妥当性が認められないものは見直していくこと
 これに基づく主な改善点は次項以降に示すところによること。

 

2.学習評価の主な改善点について

(1)各教科等の目標及び内容を「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の資質・能力の三つの柱で再整理した新学習指導要領の下での指導と評価の一体化を推進する観点から,観点別学習状況の評価の観点についても,これらの資質・能力に関わる「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理して示し,設置者において,これに基づく適切な観点を設定することとしたこと。その際,「学びに向かう力,人間性等」については,「主体的に学習に取り組む態度」として観点別学習状況の評価を通じて見取ることができる部分と観点別学習状況の評価にはなじまず,個人内評価等を通じて見取る部分があることに留意する必要があることを明確にしたこと。
(2)「主体的に学習に取り組む態度」については,各教科等の観点の趣旨に照らし,知識及び技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組の中で,自らの学習を調整しようとしているかどうかを含めて評価することとしたこと(各教科等の観点の趣旨は,本通知の別紙4及び別紙5に示している)。
(3)学習評価の結果の活用に際しては,各教科等の児童生徒の学習状況を観点別に捉え,各教科等における学習状況を分析的に把握することが可能な観点別学習状況の評価と,各教科等の児童生徒の学習状況を総括的に捉え,教育課程全体における各教科等の学習状況を把握することが可能な評定の双方の特長を踏まえつつ,その後の指導の改善等を図ることが重要であることを明確にしたこと。
(4)特に高等学校及び特別支援学校(視覚障害,聴覚障害,肢体不自由又は病弱)高等部における各教科・科目の評価について,学習状況を分析的に捉える観点別学習状況の評価と,これらを総括的に捉える評定の両方について,学習指導要領に示す各教科・科目の目標に基づき学校が地域や生徒の実態に即して定めた当該教科・科目の目標や内容に照らし,その実現状況を評価する,目標に準拠した評価として実施することを明確にしたこと。

 

3.指導要録の主な改善点について 

 指導要録の改善点は以下に示すほか,別紙1から別紙3まで及び参考様式に示すとおりであること。設置者や各学校においては,それらを参考に指導要録の様式の設定や作成に当たることが求められること。
(1)小学校及び特別支援学校(視覚障害,聴覚障害,肢体不自由又は病弱)小学部における「外国語活動の記録」については,従来,観点別に設けていた文章記述欄を一本化した上で,評価の観点に即して,児童の学習状況に顕著な事項がある場合にその特徴を記入することとしたこと。
(2)高等学校及び特別支援学校(視覚障害,聴覚障害,肢体不自由又は病弱)高等部における「各教科・科目等の学習の記録」については,観点別学習状況の評価を充実する観点から,各教科・科目の観点別学習状況を記載することとしたこと。
(3)高等学校及び特別支援学校(視覚障害,聴覚障害,肢体不自由又は病弱)高等部における「特別活動の記録」については,教師の勤務負担軽減を図り,観点別学習状況の評価を充実する観点から,文章記述を改め,各学校が設定した観点を記入した上で,各活動・学校行事ごとに,評価の観点に照らして十分満足できる活動の状況にあると判断される場合に,○印を記入することとしたこと。
(4)特別支援学校(知的障害)各教科については,特別支援学校の新学習指導要領において,小・中・高等学校等との学びの連続性を重視する観点から小・中・高等学校の各教科と同様に育成を目指す資質・能力の三つの柱で目標及び内容が整理されたことを踏まえ,その学習評価においても観点別学習状況を踏まえて文章記述を行うこととしたこと。
(5)教師の勤務負担軽減の観点から,【1】「総合所見及び指導上参考となる諸事項」については,要点を箇条書きとするなど,その記載事項を必要最小限にとどめるとともに,【2】通級による指導を受けている児童生徒について,個別の指導計画を作成しており,通級による指導に関して記載すべき事項が当該指導計画に記載されている場合には,その写しを指導要録の様式に添付することをもって指導要録への記入に替えることも可能とするなど,その記述の簡素化を図ることとしたこと。

 

4.学習評価の円滑な実施に向けた取組について 

(1)各学校においては,教師の勤務負担軽減を図りながら学習評価の妥当性や信頼性が高められるよう,学校全体としての組織的かつ計画的な取組を行うことが重要であること。具体的には,例えば以下の取組が考えられること。
・ 評価規準や評価方法を事前に教師同士で検討し明確化することや評価に関する実践事例を蓄積し共有すること。
・ 評価結果の検討等を通じて評価に関する教師の力量の向上を図ること。
・ 教務主任や研究主任を中心として学年会や教科等部会等の校内組織を活用すること。
(2)学習評価については,日々の授業の中で児童生徒の学習状況を適宜把握して指導の改善に生かすことに重点を置くことが重要であること。したがって観点別学習状況の評価の記録に用いる評価については,毎回の授業ではなく原則として単元や題材など内容や時間のまとまりごとに,それぞれの実現状況を把握できる段階で行うなど,その場面を精選することが重要であること。
(3)観点別学習状況の評価になじまず個人内評価の対象となるものについては,児童生徒が学習したことの意義や価値を実感できるよう,日々の教育活動等の中で児童生徒に伝えることが重要であること。特に「学びに向かう力,人間性等」のうち「感性や思いやり」など児童生徒一人一人のよい点や可能性,進歩の状況などを積極的に評価し児童生徒に伝えることが重要であること。
(4)言語能力,情報活用能力や問題発見・解決能力など教科等横断的な視点で育成を目指すこととされた資質・能力は,各教科等における「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」の評価に反映することとし,各教科等の学習の文脈の中で,これらの資質・能力が横断的に育成・発揮されることが重要であること。
(5)学習評価の方針を事前に児童生徒と共有する場面を必要に応じて設けることは,学習評価の妥当性や信頼性を高めるとともに,児童生徒自身に学習の見通しをもたせる上で重要であること。その際,児童生徒の発達の段階等を踏まえ,適切な工夫が求められること。
(6)全国学力・学習状況調査や高校生のための学びの基礎診断の認定を受けた測定ツールなどの外部試験や検定等の結果は,児童生徒の学習状況を把握するために用いることで,教師が自らの評価を補完したり,必要に応じて修正したりしていく上で重要であること。
 このような外部試験や検定等の結果の利用に際しては,それらが学習指導要領に示す目標に準拠したものでない場合や,学習指導要領に示す各教科の内容を網羅的に扱うものではない場合があることから,これらの結果は教師が行う学習評価の補完材料であることに十分留意が必要であること。
(7)法令に基づく文書である指導要録について,書面の作成,保存,送付を情報通信技術を用いて行うことは現行の制度上も可能であり,その活用を通して指導要録等に係る事務の改善を推進することが重要であること。特に,統合型校務支援システムの整備により文章記述欄などの記載事項が共通する指導要録といわゆる通知表のデータの連動を図ることは教師の勤務負担軽減に不可欠であり,設置者等においては統合型校務支援システムの導入を積極的に推進すること。仮に統合型校務支援システムの整備が直ちに困難な場合であっても,校務用端末を利用して指導要録等に係る事務を電磁的に処理することも効率的であること。
 これらの方法によらない場合であっても,域内の学校が定めるいわゆる通知表の記載事項が,当該学校の設置者が様式を定める指導要録の「指導に関する記録」に記載する事項を全て満たす場合には,設置者の判断により,指導要録の様式を通知表の様式と共通のものとすることが現行の制度上も可能であること。その際,例えば次のような工夫が考えられるが,様式を共通のものとする際には,指導要録と通知表のそれぞれの役割を踏まえることも重要であること。
・ 通知表に,学期ごとの学習評価の結果の記録に加え,年度末の評価結果を追記することとすること。
・ 通知表の文章記述の評価について,指導要録と同様に,学期ごとにではなく年間を通じた学習状況をまとめて記載することとすること。
・ 指導要録の「指導に関する記録」の様式を,通知表と同様に学年ごとに記録する様式とすること。
(8)今後,国においても学習評価の参考となる資料を作成することとしているが,都道府県教育委員会等においても,学習評価に関する研究を進め,学習評価に関する参考となる資料を示すとともに,具体的な事例の収集・提示を行うことが重要であること。特に高等学校については,今般の指導要録の改善において,観点別学習状況の評価が一層重視されたこと等を踏まえ,教員研修の充実など学習評価の改善に向けた取組に一層,重点を置くことが求められること。国が作成する高等学校の参考資料についても,例えば,定期考査や実技など現在の高等学校で取り組んでいる学習評価の場面で活用可能な事例を盛り込むなど,高等学校の実態や教師の勤務負担軽減に配慮しつつ学習評価の充実を図ることを可能とする内容とする予定であること。

 

5.学習評価の改善を受けた高等学校入学者選抜,大学入学者選抜の改善について 

 「1.学習評価についての基本的な考え方」に示すとおり,学習評価は,学習や指導の改善を目的として行われているものであり,入学者選抜に用いることを一義的な目的として行われるものではないこと。したがって,学習評価の結果を入学者選抜に用いる際には,このような学習評価の特性を踏まえつつ適切に行うことが重要であること。
(1)高等学校入学者選抜の改善について
 報告を踏まえ,高等学校及びその設置者において今般の学習評価の改善を受けた入学者選抜の在り方について検討を行う際には,以下に留意すること。
・ 新学習指導要領の趣旨を踏まえた各高等学校の教育目標の実現に向け,入学者選抜の質的改善を図るため,改めて入学者選抜の方針や選抜方法の組合せ,調査書の利用方法,学力検査の内容等について見直すこと。
・ 調査書の利用に当たっては,そのねらいを明らかにし,学力検査の成績との比重や,学年ごとの学習評価の重み付け等について検討すること。例えば都道府県教育委員会等において,所管の高等学校に一律の比重で調査書の利用を義務付けているような場合には,各高等学校の入学者選抜の方針に基づいた適切な調査書の利用となるよう改善を図ること。
・ 入学者選抜の改善に当たっては,新学習指導要領の趣旨等も踏まえつつ,学校における働き方改革の観点から,調査書の作成のために中学校の教職員に過重な負担がかかったり,生徒の主体的な学習活動に悪影響を及ぼしたりすることのないよう,入学者選抜のために必要な情報の整理や市区町村教育委員会及び中学校等との情報共有・連携を図ること。
(2)大学入学者選抜の改善について
 国においては新高等学校学習指導要領の下で学んだ生徒に係る「2025年度大学入学者選抜実施要項」の内容について2021年度に予告することとしており,予告に向けた検討に際しては,報告及び本通知の趣旨を踏まえ以下に留意して検討を行う予定であること。
・ 各大学において,特に学校外で行う多様な活動については,調査書に過度に依存することなく,それぞれのアドミッション・ポリシーに基づいて,生徒一人一人の多面的・多角的な評価が行われるよう,各学校が作成する調査書や志願者本人の記載する資料,申告等を適切に組み合わせるなどの利用方法を検討すること。
・ 学校における働き方改革の観点から,指導要録を基に作成される調査書についても,観点別学習状況の評価の活用を含めて,入学者選抜で必要となる情報を整理した上で検討すること。 

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