三 文教関係の税制

寄附金に関する税制

 教育、学術、文化、スポーツ等の事業に対して法人や個人が支出する寄附金に関して、1)国又は地方公共団体に対する寄附金、2)使途等の審査により認められる「指定寄附金」、3)「特定公益増進法人」(昭和六十二年度までは「試験研究法人等」)に対する寄附金について、税制上損金算入(法人)や寄附金控除(個人)の上で優遇措置が講じられ、年々広く活用されてきている。

 このうち、科学技術の振興に寄与する寄附金の募集を容易にするために三十六年度に創設された「試験研究法人等」については、当初の科学技術に関する試験研究を主たる目的とする法人、学術に関する研究を主たる目的とする法人で日本育英会の奨学金返還免除対象法人、科学技術に関する試験研究に対する助成を主たる目的とする法人、科学技術に関する知識思想の総合的普及啓発を主たる目的とする法人、学校教育に対する助成を主たる目的とする法人、学資の支給貸与や寄宿舎の設置運営を主たる目的とする法人、学校教育法第一条に規定する学校の設置を主たる目的とする学校法人、日本育英会、私立学校振興会(現在の日本私学振興財団)の限定された範囲から、その後、日本学術振興会(四十二年度)、財団法人日本体育協会(四十六年度)、青少年に対する健全な社会教育を主たる目的とする法人(四十八年度)、芸術の普及向上又は文化財の保存活用を主たる目的とする法人(五十一年度)、大学の教授研究のための宿泊研修施設の設置運営を主たる目的とする法人(五十二年度)、放送大学学園(五十七年度)が追加された。六十三年度には、「試験研究法人等」から「特定公益増進法人」に改称されるとともに、人文科学に対する助成を主たる目的とする法人が追加され、その後更に、国立劇場(現在の日本芸術文化振興会)(平成元年度)、財団法人日本オリンピック委員会(三年度)、博物館の振興を主たる目的とする法人(三年度)、日本体育・学校健康センター(四年度)、留学生交流を主たる目的とする法人(四年度)が追加された。

 また、昭和六十二年度には、著しく公益性が高いと認定された公益信託についても、特定公益増進法人と同様の優遇措置を講じる「特定公益信託」が創設され、科学技術に関する試験研究に対する助成を目的とする公益信託、学校教育に対する助成を目的とする公益信託、学資の支給貸与を目的とする公益信託、芸術の普及向上又は文化財の保存活用に関する助成を目的とする公益信託について認められている。

 寄附金控除については、四十八年度の最高限度額の引上げ(所得金額の一五%から二五%)及び四十九年度の最低限度額の引下げ(一〇万円から一万円)により控除枠が拡大された。

公益法人に関する税制

 学校法人、宗教法人、民法法人等の公益法人について、利子所得、配当所得等に係る所得税の非課税措置及び非収益事業に係る法人税の非課税措置や収益事業に係る法人税の軽減税率の措置が講じられている。収益事業に係る法人税の軽減された税率は、この措置は昭和二十七年に設けられたが、四十一年度二三%、五十六年度二五%、五十九年度二六%、六十年度二八%と変更され、六十二年度以降二七%となっている。

 また、学校法人が行う収益事業による所得金額を学校法人会計に繰り入れる場合、一定の限度額以内において、繰り入れた金額を損金に算入する措置が講じられている。損金算入の限度額については、この措置が設けられた二十五年度には所得金額の三〇%であったが、四十二年度に五〇%に引き上げられ、五十年度以降は五〇%と年二〇〇万円のいずれか大きい金額となっている。

 このほか、平成三年度に新たに創設された地価税において、公益法人の有する土地は、未利用地等を除き原則として非課税とされた。

その他の税制

 所得税、住民税において従来から、人的控除として勤労学生控除の制度が設けられていたが、これに加え、家計の教育費等の負担の軽減の見地から、昭和六十一年四月及び六十二年四月の臨時教育審議会答申(「特に高校生、大学生を抱える中高年齢層など教育費負担の重い層への配慮がなされる必要がある。」)などを背景として、所得税については平成元年分から、住民税については二年度から、教育費などの支出のかさむ十六~二十二歳の扶養親族に係る扶養控除額の割増措置(所得税については一人当たり一〇万円、住民税については同五万円)を講ずる特定扶養親族の制度が創設された。

 間接税においては、元年度から新たに消費税が導入された。これに伴い、物品税、入場税が廃止され、これまで免税制度が設けられていた、学校、図書館・博物館、大学・民間学術研究機関等による物品の購入や、学校、社会教育関係団体等主催の催物への入場についても課税されることとなった。消費税は、すべての物品やサービスを課税の対象とすることが原則であるが、政策的配慮により、文教関係では、授業料、入学検定料について非課税とされ、さらに、三年十月から入学金、施設設備費等及び教科用図書が非課税範囲に追加された。

 文化財関係では、これまでの、重要文化財や史跡名勝等に指定された家屋及びその敷地の固定資産税の非課税措置(昭和二十五年度)や個人又は法人が史跡等に指定された土地を国又は地方公共団体に譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(四十四年度)に加え、四十七年度には個人が国に重要文化財(土地以外)を譲渡する場合の譲渡所得の非課税措置が、平成元年度には伝統的建造物の家屋に係る固定資産税の非課税措置が、三年度には指定文化財に係る土地についての地価税の非課税措置が講じられた。

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-- 登録:平成21年以前 --