二 文教予算

昭和五十六年度までの文教予算

 昭和四十七年度の国の一般会計総予算額は、一一兆四、六七七億円でこのうち文部省所管の予算額は、一兆一、八一二億円(国の総予算額に占める割合一〇・三%)であった。これが十年後の五十六年度には国の一般会計総予算額は、四六兆七、八八一億円に、文部省所管の予算額も四兆四、六八七億円(国の総予算に占める割合九・六%)に達している。その間、文教予算に関連しては、学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法の制定(四十九年)、私立学校振興助成法の成立(五十年)、養護学校義務制の実施(五十四年)、小・中学校の四十人学級の実施を含む教職員定数改善計画の着手(五十五年)などの重要な施策が講じられている。

 国の一般会計予算額も文部省所管の予算額も五十四年度までは一〇%台の増加を続けたが、五十五年度からは一桁台の伸びに落ち込んだ。その背景には、四十八年に起こった第一次石油危機後の不況による租税収入の減少に対処するため、政府は五十年度補正予算からいわゆる赤字公債の発行を余儀なくされ、その後、国の財政が大きく公債に依存するようになった事情がある。このため財政再建が政府の課題となり、五十六年に設置された臨時行政調査会の第一次答申では、「財政の再建と行政の効率化」を「時代の要請にこたえ得る行財政を実現する上で避けて通れない第一の関門」と位置付け、緊急に取り組むべき方策の一つとして、「支出削減等と財政再建の推進」を挙げ、「行財政の徹底した合理化・効率化を進めるべきである」として、五十七年度予算に臨むべき方針を示した。

財政再建下の文教予算

 この答申を受けて昭和五十七年度予算案は、歳出規模を厳しく抑制するなど公債発行額を着実に縮減することを基本として編成された。特に、各省庁の概算要求に先立ちその要求の基準を示した概算要求基準において示されている概算要求基準枠については、五十七年度予算からいわゆるゼロシーリングとなり、五十八年度にはマイナスシーリングとなり、文教予算にとっても極めて厳しい対応が迫られた。

 この結果、国の一般会計予算の増加率は、五十七年度から平成四年度までの間で年平均約四%で推移し、また、文部省所管の予算額も年平均一%台の低い伸びに落ち込んだ。この間、国債の元利払費の増等により国の予算全体の規模が増大したことにより、一般歳出(国債費や地方交付税交付金を除いた政策的経費)が国の一般会計予算額に占める割合が減少した。文部省一般会計予算額が国の一般会計予算額に占める比率も減少し、昭和五十六年度には九・六%と一〇%を切り、平成四年度には七・四%となっている。しかし、国の一般歳出に占める文部省一般会計予算額の割合は、ここ数年一四%前後で推移している。四年度の文部省一般会計予算の事項別構成比を見ると、義務・養護教育費国庫負担金が二兆八、三〇九億円で全体の五三・二%を占めている。次いで、国立学校特別会計への繰入れが、一兆三、七九六億円で二五・九%、私学経常費助成が三、四二五億円で六・五%、公立学校施設費が二、五〇六億円で四・七%となっている。さらに、育英奨学事業費が八二九億円で一・六%、科学研究費補助金が六四六億円で一・二%となっている。

 この厳しい財政事情の下で、文部省予算に占める人件費の割合は、昭和五十六年度に六三・六%であったが、平成四年度には七八・〇%となっており、文教予算は、時代の要請にこたえる新たな政策的経費への対応が難しくなっている。

 このような状況の中でも二十一世紀を担う国民の育成を図るため教育施策の着実な推進を図っていかなければならない。特に、昭和五十九年八月に発足した臨時教育審議会は、二十一世紀を展望して我が国の教育全般の見直しを審議し、生涯学習体制の整備、初等中等教育の充実と改善、高等教育の個性化・高度化、学術研究の振興など広範な事項について四次にわたる答申を行った。その中では教育改革を推進するため教育財政の充実と重点配分、教育財政の合理化・効率化などが強調されている。文部省においては答申の趣旨に沿って、各般の教育改革を推進するため予算の重点配分等の配慮を行ってきたところである。そして、臨時教育審議会の答申の趣旨をも踏まえて、平成四年度までに生涯学習を推進するためのモデル市町村事業など種々の施策の推進、初任者研修制度の導入、小・中学校の四十人学級の実施を含む教職員定数改善計画の達成、特色ある教育研究プロジェクトに対する助成を重視するなど私学助成の推進、科学研究費補助金の大幅拡充などの学術の振興、二十一世紀初頭における一〇万人の留学生受入れ計画の推進などの施策を着実に進めてきたところである。さらに、二年三月には芸術文化振興基金、また、二年十二月にはスポーツ振興基金が、それぞれ国と民間の出資を基に設置されるなど、様々な行財政上の工夫も採られつつあるところである。

 なお、本格的な高齢化社会の到来する二十一世紀を見据え、着実に社会資本整備の充実を図っていくため、二年六月に「公共投資基本計画」が閣議了解され、、今後十年間におおむね四三〇兆円の公共投資を行うこととされた。この計画の中で文教全体が「生活環境・文化機能」の中に位置付けられている。四年度予算では、この計画の着実な実施を図るため、三年度予算から、いわゆる「生活関連重点化枠」等が設けられており、文部省予算においては、これらを活用して公立学校や国立学校施設、社会教育施設、文化関係施設の整備を行っている。

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