三 帰国子女教育の充実

 海外子女数の増加に伴い、海外から帰国する子女も、平成二年度には約一万三、〇〇〇人を数え昭和四十七年度の五・八倍に達している。これら帰国子女の国内の学校への受入れについては、小学校及び中学校では、原則として年齢相当学年に編入学することとなるが、我が国とは異なる生活習慣、言語、ものの見方等を持つ社会での生活を経験しているため、日本での学校生活にすぐにはなじめない者が多い。このため、四十年度から、国立大学附属学校に帰国子女教育学級等を設置するとともに、四十二年度からは、帰国子女教育研究協力校等を指定し、公・私立学校における受入れ体制の充実を図ってきている。高等学校・大学の入学・編入学についても、別枠定員の設定や特別の選抜方法の実施など、帰国子女に対して必要な配慮を行う学校が増加した。また、帰国子女受入れを主たる目的とする高校として、五十三年に国際基督教大学高等学校が開設されたのに始まり、五十四、五十五年にこのような学校が一校ずつ設置された。これらはいずれも私立学校であるが、文部省はその新設に特別助成を行った。このように帰国子女教育が進展するにつれて、帰国子女教育の在り方について、近年、学校生活への適応を第一義とする従来の考え方から、豊かな国際性を身に付けた日本人の育成という観点をより重視し、海外で身に付けた能力・特性などの保持伸長を目指すものへと移ってきている。

 さらに、四十七年の日中国交正常化以来、中国残留孤児等の日本への帰国が活発に行われるようになり、その同伴する子女数も増加した。これらの子女は保護者ともどもこれまで一度も経験したことのない生活環境に置かれており、日本語指導、生活面・学習面での指導について特段の配慮が必要なことから、文部省では、これらの子女に対する適切な教育機会を確保するため、研究協力校の指定、教員が日本語指導等を行うに当たってその指導に協力する者を定期的に巡回指導させる事業の委嘱等種々の施策を進めてきた。

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